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伊藤洋行 10Feb.2000
追加 20Sep.2000
より詳細な”ヤーコンの成分と健康効果の総説”
要約
ヤーコンのイモと葉の成分及び薬理作用研究の現状を概観した。イモの成分はフラクトオリゴ糖とポリフェノールの一種であるクロロゲン酸により特徴付けられ、葉の成分はフラボノイドとセスキテルペンにより特徴付けられる。イモには整腸作用や抗酸化作用が、葉には抗酸化作用や血糖値低下作用がある。健康雑誌に書かれている体験談は成分の薬理作用の研究結果と矛盾はない。
ヤーコンはアンデス地域が原産で、そこでは昔から、イモは果物として利用されてきた。
葉は食用とされたり、お茶として飲まれており、糖尿病や高血圧に効果があるとされてきた。
1989菅野はヤーコンの栽培の論文(農業および園芸、64(1989)538 )において、3人の糖尿病患者についてヤーコンの効果を調べ、記載した。摂取の仕方は、イモについては収穫後1ヵ月を経過したものの皮を剥きスライスにして3~4切れ生で食べる。茎葉部については、自然乾燥させたものを裁断し、お茶代わりに毎日2杯程度飲む。血糖値が低下するまでに、イモなら7~10日程度、茎葉部なら4~6日程度かかった。この記載は、私が知る限り、日本におけるヤーコンのイモと葉の薬理作用についての最初の記録である。しかし、医学の論文ではないし、データの数が少ないと言う批判は当然あるが、イモも茎葉も血糖値低下作用があり、それらの成分は異なることを示唆している。本報では化学成分と薬理作用の研究の現状について概観し、健康雑誌の記事との比較を試みた。
最近、色々な健康雑誌でヤーコンを摂取した時の健康に良い面が取り上げられるようになった。健康雑誌に載った体験談については、目次を入力してあるので、それを参照されたい。体験談は個人の経験であり、医学の論文とは異なる。従って、きちんとした解析が必要であり、本報告では試験管レベルの試験や動物試験の結果との比較を試みたい。
体験談を分析してみると、ヤーコンのイモの効果は便秘の改善が最も多い。それに伴い、肩こり、肌荒れや不眠が解消している例がある。高血圧、高血糖値、糖尿病、高脂血症、肥満が改善した例や、体重が低下した(ダイエット効果)例もある。離乳食に利用している例も寄せられている。
お茶として摂取した場合、血糖値が低下したと言う例が最も多く、中性脂肪や高血圧が改善したり、胃潰瘍やアトピーの改善の例もあった。
最近、ヤーコン葉の水抽出物、すなわちお茶については、動物実験で食後過血糖を抑えることが示された。これは、糖の身体への取り込みを抑制することと、インスリン様作用の2つのメカニズムで起きている。また、脂質代謝改善作用(高脂血症改善)や体重増加の抑制なども示された。ヒトでの試験でも、お茶を飲むことにより中性脂肪の減少がみられている。
ヤーコンのイモの化学成分について最も重要なものはフラクトオリゴ糖とクロロゲン酸(ポリフェノールの一種)である。他にもいくつかの成分化合物が報告されているが、解明はあまり進んでいない。葉については抗菌性成分について報告されている。
フラクトオリゴ糖が大量に含まれていることは新潟大学の大山、茨城大学の浅見・月橋などの先生方により発見された。この研究は、これまで信じられていた“ヤーコンにはイヌリン(甘くなく、味がない)が含まれている”という定説を覆すもので、とても興味深い論文である。この研究が発表された頃、明治製菓では砂糖から酵素法によりフラクトオリゴ糖を合成・精製し、フラクトオリゴ糖の薬理作用を調べていた。この結果、純粋なフラクトオリゴ糖には次のような性質があることが分かった。
(1) 腸内の善玉菌であるビフィズスを増やす。有害菌が減少し、腸内が健全になり、便秘の改善など整腸効果がある。腸内にビフィズス菌が少しでもいれば、ヨーグルトを食べなくても、ビフィズス菌が増える。(腸内がビフィズス菌で優勢であれば、病原性大腸菌O-157が口から入ってきても、腸内で増殖できず発病しないだろうと言う研究者もいる。)
(2) 食物繊維に類似した作用を持ち、便通を良くし、コレステロールを正常化する。
(3) 胃や小腸の消化酵素では分解・吸収されず、大腸にそのまま到達しビフィズス菌により分解されるため、カロリーは砂糖の半分の 2kcal/gと低カロリーであり、肥満の防止や改善をする。
(4) ビフィズス菌により分解されてできた有機酸がカルシウムやマグネシウムなどのミネラルの吸収を高める。
(5) 虫歯菌により分解されないので、虫歯になりにくい。
フラクトオリゴ糖はショ糖にフラクトースが1〜9個程度化合物の混合物であり、このまま胃腸管から体内に取り込まれることはない。
ヤーコンを離乳食に利用している方もいるということだが、フラクトオリゴ糖を豚の離乳食に利用している例がある(石倉:機能性食品の驚異、(講談社ブルーバックス、1990) p.192)。子豚は1ヶ月で離乳するが、その時下痢をすることが多いが、0.1%のフラクトオリゴ糖を添加した飼料を与えると、下痢をする頻度が減少し、体重減少はなくなり、発育が順調になる。また、糞便中のアンモニア、スカトールなどの腐敗物質も大幅に減少し、体重増加と飼料効率が著しく向上する。犬やネコなどのペットにフラクトオリゴ糖を与えると、便秘や下痢が減少し、便の臭気が少なくなる。このため、明治製菓のフラクトオリゴ糖のかなりの量が飼料用として消費されている。
もうひとつの化学成分、クロロゲン酸に関しては、私自身、酢と重曹を使った台所化学の方法で存在を推定しており、実際、大型の機器分析装置を使って確かめられた。クロロゲン酸は生のコーヒー豆に大量に入っており、リンゴやサツマイモにも入っている。これらの食品に関連して、クロロゲン酸の薬理作用が調べられた。抗酸化作用、ガンの抑制、抗変異原性(発ガン予防)、アンジオテンシンI変換酵素阻害活性(血圧に関与)、メラニン生成抑制(シミやソバカスの生成に関与)、糖の吸収阻害(血糖値に関与)などが報告されている。活性成分は未同定であるが、イモのエーテル可溶画分はシクロオキシゲナーゼ(血栓生成に関与)を強く阻害し、エーテル不溶画分も12-リポキシゲナーゼ(アレルギーや動脈硬化に関与)を阻害する。Dukeのデータベースでは、クロロゲン酸の薬理作用について、抗ガン、抗潰瘍、抗ウイルス、ロイコトリエン阻害、リポキシゲナーゼ阻害、肝臓保護作用、金属キレータ作用などが登録されている。上で述べたエーテル不溶画分はクロロゲン酸であろう。
フラクトオリゴ糖もクロロゲン酸も水溶性である。
葉には、葉緑素(クロロフィル)のほかに、フラボノイド類やクロロゲン酸などのポリフェノールが大量に入っていると思われるが、成分化合物の詳細な報告は未だない。ヒトへの作用を考える限り、苦味のあるフラボノイド類と考えて良いであろう。フラボノイド類は、置換基の種類や位置の違いにより4000種類ほど報告されているが、その内どれがヤーコンの葉に多く含まれているかなどについては未だ分かっていない。
そこで他の植物で見出されているフラボノイド類についてこれまでに分かっていることを述べてみよう。ケルセチンやルチン、カテキン、アントシアニンなどについては薬理作用が良く研究されている。試験管レベルの実験で、ケルセチンやカテキンなどのフラボノイド類はインシュリンの分泌を促進することが示されている。ケルセチン配糖体は抗変異原性(遺伝子の障害に伴う突然変異を抑制する作用)、アレルギー抑制作用、アルコール性胃粘膜障害に対する予防作用があると報告されている。
高脂質・高タンパク質を摂取していても、赤ワインを沢山飲むフランス人には心臓病で死ぬヒトが少ないと言う、いわゆるフレンチパラドックスからフラボノイド(アントシアニン)の摂取は心臓病予防の効果があるとされている。これがポリフェノール ブームの発端となり、その後チョコレート・ココア ブームが起きた。フラボノイドは冠動脈疾患の予防、脳梗塞の予防、虚血性心疾患の予防などに有効であることが示されている。
大豆に含まれるゲニステインはイソフラボンと言われるものだが、女性ホルモン(エストロゲン)受容体と結合し、女性ホルモン様作用を示し、骨粗鬆症・更年期障害の予防と治療に有効であることは良く知られている。女性ホルモン受容体にはα-とβ-の2種類ある。お茶に含まれるカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレートはα-受容体とのみ結合する。ガロカテキンはα-、β-のいずれとも結合する。ドクダミやお茶に含まれるケルセチンとその配糖体ケルシトリンはα-、β-共に強く結合する。モモやお茶に含まれるケンフェロールとミリセチンもα-、β-共に強く結合するなどのことも分かってきた。
活性酸素は体内に入ってきたウイルスなどを攻撃して取り除いてくれるので必要な物質ではあるが、色々な原因(ストレス、喫煙、過激な運動など)により過剰に生産されると、身体を攻撃し、いろいろな病気(炎症、アレルギー、糖尿病、リウマチ、ガンなど)を引き起こすことになる。一般的に言って、フラボノイド類には抗酸化作用(活性酸素除去作用)があり、生体内で発生した過剰の活性酸素による各種病状は、フラボノイドの作用により治療効果があると考えられている。
糖が結合したフラボノイド類は水溶性(疎水性 logP<0)だが、糖が取れると(logPが3程度)と溶けなくなる。 フラボノイド類は配糖体のまま吸収され、血液中に存在するという報告がある。
一般的に言って、化学物質(薬物)が薬理作用を示すには腸管からの吸収(Absorption)に続いて体内に分布(Distribution)し、受容体で薬理作用の発現をする必要がある。作用を示した物質は代謝(Metabolism)された後、排泄(Excretion)される。従って、野菜類のように作用の弱い化学物質を摂取した場合には、薬理作用を体感できるまでには長期間かかる。この間に毒性を示してはいけないが、ヤーコンの場合長年摂取されてきており、通常の摂取量では毒性はないと考えてよいであろう。
成分化合物についてヒトでの臨床試験で確認された作用については健康雑誌の記事を信じても問題ない。動物試験で確認された作用が健康雑誌の記事と一致すれば、これも問題ないであろう。試験管レベルでの試験で確認された作用(例えば、酵素阻害)が雑誌記事と矛盾がなければ、ヒトで試験したら記事のようになるのだろうと予測しても良いであろう。もちろん、化学成分の吸収性(膜透過性)なども考慮に入れなければならないが。
ヤーコンのイモのフラクトオリゴ糖は腸から吸収されず、その作用は1〜2日という短期間に体感できる。それは、腸内にわずかでも残っているビフィズス菌がヤーコンのフラクトオリゴ糖をエサとして急激に増殖する(細菌類が急激に増殖することは食中毒の例から分かるだろう)ことにより、便やおならの臭いに変化が現れるためだ。また、健康雑誌の体験談にあるように、便秘の改善に著しい効果がある。高脂血症、肥満の改善もフラクトオリゴ糖の効果であるが、これを体感するにはある程度の時間がかかる。
イモを食べて高血糖値が改善したのは、クロロゲン酸による糖の吸収阻害によるもの、高血圧の改善はクロロゲン酸によるアンジオテンシンI変換酵素阻害によるものであろう。
葉にはフラボノイド類やクロロゲン酸などのポリフェノールが入っていることは確実であるが、その構造までは特定されていない。お茶を摂取した場合に血糖値が低下したのはクロロゲン酸や構造未知のフラボノイド類の糖の吸収阻害作用によるものであろう。
上にケルセチンやカテキンなどのフラボノイド類はインシュリンの分泌を促進すると言う報告を述べた。ヤーコン葉には、これらの化合物あるいはこれらに似た構造のフラボノイドがインシュリン分泌を促進し、血糖値が低下したことも考えられる。動物実験から得られたインシュリン様作用については、その化学物質を特定しない限り何ともいえない。体験談で、中性脂肪が改善されたと言うことは動物試験の結果と一致している。高血圧、胃潰瘍、アトピーの改善もフラボノイド類の薬理作用と矛盾はないが、その構造を特定する必要がある。
ヤーコンのイモの薬理作用は、フラクトオリゴ糖とクロロゲン酸の作用によりほぼ説明できた。葉の作用についてはフラボノイド類やクロロゲン酸などのポリフェノールにより説明できると思われるが、葉に含まれている化学成分の分析が殆ど報告されていない現状では、推定は出来ても結論は出せない。しかし、健康雑誌の体験談は色々な薬理試験の結果と矛盾はない。また、この報告では時間の関係もありフラボノイド類の薬理作用についての文献調査も完全ではなかった。現在、フラボノイド類の薬理作用についての徹底調査と、ヤーコンと同じキク科植物である他の植物の成分についての文献調査を実施中である。後日、再度報告したい。
他にも、ホドイモ(アピオス)、クズイモ(ヤムビーン)など色々面白そうなものがある。今後は、これらの植物にも注目したい。
本文中に出てきた成分化合物の代表的なものを示す。
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ショ糖 |
フラクトオリゴ糖 |
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ショ糖にフラクトースが1つずつ結合していったものがフラクトオリゴ糖で、ここにはその内3種類のみを示した。
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クロロゲン酸 |
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フラボノイドの基本構造 |
イソフラボン |
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ケルセチン |
アントシアニジン |
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カテキン |
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ヤーコン、成分について、Googleサイト内検索をしてみましょう。
http://www1.ocn.ne.jp/~amiyacon/
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ご質問などは E-Mail
または、TEL/FAX:0298-87-9564 でお願い致します。
携帯電話:090-4755-6419
300-0332 茨城県稲敷郡阿見町中央2-15-27 伊藤洋行
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