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特集  バフィン島遠征

 

6/17をもって実質的登攀は完了いたしました。

登攀記録 (テレビクルー〜AGS-Jを介して情報です。)

 

 

1000mの岩壁を擁するウォカー・シタデル
バフィン島・サム・フォード・フィヨルド・ウォーカー・シタデル

岩壁登攀計画

Baffin land Walker Citadel Rock Climbing

1. 趣      旨
 登山は大きく分けると二通りあります。一つは歩くことを主体にした「登山」です。
そしてもう一つは攀じることを主体にした「登攀」です。
一般的「登山」は頂上に立つことが最大の目標で、確実に頂上にたつため、最も易しいルートが選ば
れることが多いものです。
しかし、「登攀」は頂上に立つこと自体はそれほど大きな目標ではありません。むしろ山麓と山頂と
の間に横たわる急峻な岩壁や氷壁そのものを登攀対象として、そこに内在する理想的な登攀ルートを
切り拓き、それを完登することが最大の目標です。
頂上はその結果として得られる最高到達点に過ぎません。見るからに克服不可能に思える課題に挑戦
し、さまざまな登山をとおして培った知識と経験を十二分にいかして新たなルートを切り拓く、これ
こそが登攀の醍醐味です。

私はこれまで世界最高峰エベレスト(8848m)や第6位の高峰チョー・オユー(8201m)など世界各地の山
々で、歩くことを主体とした登頂ルートから山頂を目指し、その頂きに立つ一方で、標高はこれらの
山に比べるとはるかに低いのですが、確固とした登攀技術がなければまったく手も足も出ない困難な
岩壁や氷壁に挑戦し、成功を収めてきました。
世界一の落差を誇る瀑布、南米・ギアナ高地のエンジェル・フォール <高距979m 5.10b/A5+
約30ピッチ>。
-40℃以下の寒気に耐え、2500mの標高差を攀じ登った北米大陸最高峰マッキンリー(6194m)南壁
<5.7/A2 約100ピッチ>。
平地の二分の一以下の低酸素に耐え、世界最大級の標高差2000mの絶壁に困難なフリークライミングの
ピッチを交えた新ルートを開拓したカラコルムのグレート・トランゴ(6284m)北東壁
<5.12-/A2 約75ピッチ>。
周囲が1000mの絶壁で守られ、岩壁を攀じる以外にその頂きに立つ方法はなく、山頂に立つこと自体が
非常に困難な岩峰トランゴ・ネイムレスタワー(6239m)南西壁。
アフリカ大陸赤道直下に聳え立つ鋭峰ケニヤ山(5199m)南壁にかかる一条の氷柱、ダイヤモンド・
クーロワール登攀などです。
大きな岩壁や氷壁を従えた気になる山は世界各地にたくさんありますが、その多くは辺境の地にあ
ります。今回目指すバフィン島東岸もその例にもれません。

 いつか行こうと心に決め、登攀の機会を虎視眈々と狙っていた場所の一つでもあるバフィン島は、
カナダ北極圏に位置する世界第5位の大きな島で、島内にはいくつかの集落がありますが、集落を結ぶ
道路はありません。
バフィン島のクライミングエリアとしては北極圏(北緯63°30"以北)すれすれに位置し、特異な山容を
持つアスガート、エリア屈指の岩壁ほ持つトールなどを擁するアウユイトック国立公園が有名です。
しかし、今回は更に北の、バフィン東岸に刻まれた荒々しいフィヨルド群を目指します。
これらのフィヨルド群はその両岸が高度差1000mの絶壁となっています。
その中でも一際目を引いたのがバフィン島北東部サム・フォード・フィヨルドのウォーカー・アームに
聳え立つウォーカー・シデタルでした。

ウォーカー・シデタルは、標高4500ft(1350m)あまりの小さな山に過ぎませんが、標高からは想像出来
ない高度差4000ft(1200m)もの岩壁を従えています。それは海面から直接そそり立つ巨大な岩壁です。
この岩壁はかつて大陸ほ覆っていた厚い氷が硬い岩盤を削り取って作り上げたものです。
実のところ、フィヨルドの両岸には魅力的な岩壁が延々と続いているのですが、冬は極寒にさらされ
登攀には適さず、登攀に適する短い夏はフィヨルド一面を覆い尽くしていた厚さ2mもの氷が割れ、
海面が顔を出し、壁に近づくことはおろか脱出ことさえ困難になるため、この山域を目指すクライマー
は極端に少なく、登攀ルートもごくわずかしか開拓されていません。
アプローチに合わせると登攀が困難になり、登攀に合わせるとアプローチが困難になるという悪条件
を抱えた地域なのです。

私達は、この山域特有の過酷な条件をしのぎ、ウォーカー・シデタルの巨大な絶壁に新たなルート
を刻む計画です。
登攀メンバーは全員山岳ガイドという職業につき、普段はクライアントの夢を叶える山行をしています。
しかし、今回は私達自信の夢に挑戦します。
山岳ガイドという職業は、初めての山だから、初めての岩壁だから案内できない、という姿勢ではまっ
たく通用しない職業です。だから、この挑戦は自分自身の登山技術や精神力を試す機会であるとともに、
更に磨きをかけ、一回り大きな力を身につけるための山行でもあるのです。
私達は、私達自信の夢を叶えるだけでなく、視聴者に勇気と感動を与える登攀が出来るよう最大の努力
を惜しまず、困難に立ち向かうつもりです。この登攀の模様は後日、テレビ放送される予定です。

 隊員一同この登攀に渾身の力を傾ける所存です。皆様方の暖かい支援、ご声援を此処よりお願い申し
あげます。

             2003.5.15      カナダ北極圏バフィン島東岸 サム・フォード・フィヨルド
                         ウォーカー・シタデル登山隊
                         隊長      木本 哲(きもと さとし)

2.スケデュール
5/18 成田〜バンクーバー 登山装備、冷凍乾燥食料の最終チェック
5/18バンクーバー〜トロント
5/19トロント〜イカルイット〜クライド・リバー
5/20クライド・リバー 食料買出し、出発準備
5/21クライド・リバー〜サム・フォード・フィヨルド
(スノーモビル、ソリにて2泊3日行程)
5/23サム・フォード・フィヨルド ウォーカー・アーム ウォーカー・シタデルにBC建設
 (周辺偵察後に登攀ルート決定)
5/24登攀活動開始
  (活動期間最長3週間)
6/13登攀活動終了
6/14ウォーカー・シタデルに撤収
6/15クライド・リバー
6/16クライド・リバー〜イカルイット
6/17イカルイット〜トロント〜バンクーバー
6/18バンクーバー〜
6/19〜成田
登攀メーバー
木本 哲(隊長)     AGS-J
ツベート・ポドロガル  AGS-J
熊田 光治
(くまだ みつじ) JAGU
江本 悠二
(えもと ゆうじ) JAGU
他テレビ撮影クルー同行

 

遠征壮行会での木本氏(右)とツベート氏

 

参考LINK
既成クライミングルート-1
既成クライミングルート-2
既成クライミングルート-3
既成クライミングルート-4
極北ランドスケープ
クライド・リバー本日の天気

 

 

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