鍵盤ハーモニカとリコーダー
/ 音が出る仕組みについて / 鍵盤ハーモニカの基礎知識 / 鍵盤ハーモニカの歴史/  リコーダーの基礎知識
/ バロック式運指、ジヤーマン式運指 / 左右の手の位置について / 鍵盤ハーモニカとリコーダーの練習

小学校で一般的に全員が購入する楽器
 私が今まで勤務してきた小学校で全員が購入している楽器に鍵盤ハーモニカ(1年生で購入)とリコーダー(3年生で購入)があります。これは、小学校学習指導要領の音楽科の記述を根拠としているものです。
 平成14年4月1日から施行されるいわゆる新学習指導要領には、以下のように記載されています。
各学年で取り上げる打楽器は,木琴,鉄琴,我が国や諸外国に伝わる様々な楽器を含めて,演奏の効果,学校や児童の実態を考慮して選択すること。
第1学年及び第2学年で取り上げる身近な楽器は,様々な打楽器,オルガン,ハーモニカなどの中から児童の実態を考慮して選択すること。
第3学年及び第4学年で取り上げる旋律楽器は,既習の楽器を含めて,リコーダーや鍵盤楽器などの中から児童の実態を考慮して選択すること。
第5学年及び第6学年で取り上げる旋律楽器は,既習の楽器を含めて,電子楽器,我が国や諸外国に伝わる楽器などの中から児童の実態に応じて選択すること。

 それぞれの記述から鍵盤ハーモニカとリコーダーが選ばれているということになります。実際には、「・・などの中から」との記述がありますので児童の実態を考慮して選ばれているはずなのですが、真剣にそして充分に考慮しているかどうかは疑問です。ほとんどの場合は、使用する教科書に扱われていることと、以前からその楽器を習慣的に購入しているということが理由ではないでしょうか。
 多くの学校で鍵盤ハーモニカとリコーダーを全員に購入させる理由として考えられるのは、1.比較的安価である。2.比較的持ち運びに便利な大きさである。3.習得が簡単な楽器と思われている。ということだと考えられます。
 必要数が揃い指導体制が整うのなら、トランペットでもヴァイオリンでも尺八でも大正琴でもいいということになるので、私なら管楽器を取り上げたいところですが、実現するまでの道は険しそうです。

楽器の音が出る仕組みについて
 音が出る仕組みによってそれぞれの楽器は、大きく分けて表のような7つのグループに分けられます。


(1)リード振動楽器 1)フリーリード アコーディオン、ハーモニカ鍵盤ハーモニカ 等
2)シングルリード クラリネット、サクソフォーン 等
3)ダブルリード オーボエ、ファゴット 等
(2)空気振動楽器 (エアリード) フルート、リコーダー、尺八 等
(3)唇振動楽器 (リップリード) トランペット、トロンボーン 等
(4)叩く楽器 1)金属を叩く楽器 シンバル、ビブラフォーン、鉄琴、トライアングル 等
2)木質を叩く楽器 マリンバ、木琴、ウッドブロック、カイタネット 等
3)膜を叩く楽器 小太鼓、大太鼓、ティンパニ  等
4)弦を叩く楽器 ピアノ、チター 等
(5)こする楽器 ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ 等
(6)はじく楽器 チェンバロ、ギター、琴、三味線 等
(7)電気楽器 シンセサイザー、電子オルガン 等

 学校で使われている楽器では、アコーディオンや鍵盤ハーモニカは、リードと呼ばれる金属製の板状の物が振動して発音する楽器です。リコーダー(笛)は、空気の流れが楽器の内側や外側に流れ込んだり流れ出したりすることによって、空気が振動し発音する楽器です。金管バンド等で使っているトロンボーン等の楽器は、唇を振わせて発音する楽器です。シンバル・木琴・鉄琴・大太鼓等の打楽器は、叩くことによって板や膜や金属を振動させて発音する楽器です。ピアノは、鍵盤を通して、金属でできた弦を叩いて発音する楽器です。キーボードや電子オルガンは、電気を利用してスピーカーの膜を振動させて発音する楽器です。 なにげなく使っている楽器ですが、音を出す仕組みには、少しずつ違いがあるということです。
 よい音を出すためには、それぞれの楽器の発音の原理を理解していることが必要だと思います。楽器そのものが質のよい楽器であることは、もちろん必要ですが、発音の原理を理解し奏法の工夫をすることがよい音を出すために必要だと思います。

鍵盤ハーモニカの基礎知識
 鍵盤ハーモニカは、奏者の息(呼気)で鳴らす楽器の一種です。他に奏者の息で鳴らす楽器には、トランペット・フルート・サクソフォーン等もありますが、それぞれの楽器から音が出る仕組みは、違います。
 鍵盤ハーモニカは、奏者の息が楽器内にあるリードと呼ばれる薄い金属片を振わせて発音します。1つの音に1枚のリードがついていますので、学校で使っている32鍵の鍵盤ハーモニカには、32枚のリードがついていることになりまてす。
 ハーモニカは息の出入りの穴が多数並び、そこに口を直接つけて演奏しますが、鍵盤ハーモニカは吹口が一か所だけでピアノと同形の鍵盤で音を選びます。それぞれの音 に対応して1枚ずつのリードが振動して発音します。
 鍵盤ハーモニカのケースに入っている短い吹口は、立奏用です。息がストレートで楽器に入りますので、発音の反応が早くなります。長いパイプは、卓奏用としてついているもので、手もとを目で確かめることができます。息がプラスチックの蛇腹パイプを経由して楽器に入りますので、発音の反応は鈍くなります。それぞれ音色が微妙に異なります。  また、本体の重量が軽いので子どもが持って歩くことが可能です。手もとを目で確かめることができること、軽い楽器だということが、学校で使用される理由でもあると考えられます。
鍵盤ハーモニカの歴史

 もともとハーモニカは、日本の「笙」という楽器のようなフリーリード(リードに口をつけないで演奏するおもちゃのラッパ等の発音原理)の原理から欧米人が開発してきた楽器を基にしています。18世紀頃には様々な開発がなされ始め、19世紀には、現在のハーモニカ、アコーディオンなどの開発が試みられました。

 口吹き有鍵の楽器では、イギリスの押しボタン式のシンフォニアム(1829特許)という楽器やドイツのノイ・チャン、プサルメロディコンなどが現在の鍵盤ハーモニカの始まりと思われます。日本に口吹き有鍵の楽器が伝わったのは第2次世界大戦後で、ホーナー社(ハーモニカ製造で有名)のメロデイカ(押しボタン式)、イタリア製のクラヴィェッタ(鍵盤式)だったと思われます。ジャズブームの頃には、メロデイカを使用して演奏する欧米人ジャズプレイヤーがいたそうです。

 1961年(昭和36年)には、鈴木楽器がボタン式のメロディオン(メロデイカをコピーしたもの)を製品化、その後鍵盤式に改めました。

 また、トンボ楽器のピアノホーン。東海楽器のピアニカ。全音のピアニーなども製品化されてきました。

 手もとを目で確かめられ、重音なども容易で派生音もそろっていて、跳躍進行のレガート演奏ができ、タンギングやヴィブラートもできるということで、日本では、教育楽器としてさかんに使用されています。また、最近になって鍵盤ハーモニカで路上パフォーマンスをするプレーヤーも出てきているなど、使用者の広がりも見られます。

2002年1月に各社にメールで問い合わせて調査しました。

鈴木楽器(メロディオン)
1961年(昭和36年) ホーナーのメロディカをモデルにボタン式メロディオンを開発
1963年(昭和38年) 鍵盤式メロディオンを発売(世界初)。ボタン式メロディオンの発売中止
1965年(昭和40年) ジャバラ式卓奏唄口セットを開発・発売
トンボ楽器(ピアノホーン)
****年(昭和**年) 鍵盤式のハーモニカを発売(日本初)
****年(昭和**年) ピアノホーンの発売を中止
東海楽器製造(ピアニカ)
1961年(昭和36年) 鍵盤式ハーモニカ(ピアニカ)を開発発売
1967年(昭和42年) ピアニカをYAMAHAブランドで発売
1985年(昭和60年) 東海楽器ブランドで発売
ヤマハ(ピアニカ)
1967年(昭和42年) 東海楽器製ピアニカをOEMで発売
1973年(昭和48年) 自社開発ピアニカを発売
全音(ピアニー)
****年(昭和**年) 発売
河合楽器製作所
1983年(昭和58年)  鈴木楽器製をOEMで発売
 今回の調査では、「鈴木楽器」「トンボ楽器」「東海楽器」の3社が、鍵盤ハーモニカ元祖を主張しているという結果になりました。ただし、もっとも丁寧に(年代も含め)回答をしていただいた会社が鈴木楽器であることを考えると、「鍵盤ハーモニカの開発メーカーは、鈴木楽器である。」とも感じました。
 なお、今ではホーナー社のメロデイカも鍵盤式の製品が発売されています。

この項目の一部2002年2月2日に部分追加
 その後、トンボ楽器からメールが届きました。(2002年2月26日)
リコーダー(recorder)の基礎知識
 リコーダーも奏者の息で鳴らす楽器の一種です。リコーダーは、吹き込んだ息が楽器の中と外に流れ込んだり流れ出したりして空気そのものが振動(エアリード)し発音します。
 リコーダーという楽器名の語源は、鳥などが「歌う」「さえずる」という意味のrecordorというラテン語だという説など諸説があります。
 その歴史は古く、14世紀後半には、すでに現在と同じ構造のものが存在していたことがオランダの博物館に現物が保存されていることから分かります。それよりかなり古い時代の絵や石壁の彫刻などにも縦笛は存在しています。
 リコーダーは、16世紀から18世紀にかけて西欧諸国で重要な地位を占めた楽器で、当時は単にフルートと呼ばれていました。ルネサンス、バロック時代の花形楽器としてバッハやヘンデル、テレマン等がリコーダーを使用した曲を多数作曲しました。しかし、18世紀中期以後に登場する強弱変化の激しい音楽にはふさわしくなかったため忘れられた楽器となってしまいました。
 ところが、19世紀末から、中世の音楽・楽器・文学(シェークスピア)への研究が盛んになり、再びリコーダーに目を向ける人々が出現しました。(イギリス人のアーノルド・ドルメッチ氏が最初にリコーダーを復活させたという記述をしているものもあります)最初は、芸術音楽の場でリコーダーがよみがえりましたが、ドイツでは青年運動の一環としてリコーダーを取り上げ、単純化した運指(ジャーマン式)が編み出されました。
 日本にリコーダーが伝わったのも第2次世界大戦後だとおもわれます。リコーダーは、元来、木材等を材料に一つ一つ手作りで作製していたのですが、近年のプラスチック成型技術の発達に伴い、安価で基本性能がしっかりしたものが大量生産できるようになりました。安価で品質の安定した楽器の存在が教育楽器としてさかんに使われる理由でもあります。
バロック式運指(イギリス式)、ジヤーマン式運指(ドイツ式)について
 ドイツの青年運動や初等教育に利用されるに当たって指孔を小さくして運指の簡便化(ファの音)をはかったのがジャーマン式運指です。ファの音の運指は簡便化されましたが、半音階的変化に対して対応に問題が生じました。楽器本来のバランスを崩し能力を狭めた改悪だと思われます。リコーダーは指を一つ開ければ全音上がるのですから、半音のミ・ファ間はクロス・フィンガリングでなくてはなりません。
 また、中学校音楽科で使用しているリコーダーは、ほとんどがバロック式運指のものですので、小中連携を考えるべきと思います。したがって、バロック式運指のリコーダーを購入し、指導すべきだと考えます。
左右の手の位置について
 現在製造販売されているリコーダーは全て、左手を上(口に近い場所)・右手を下(口から遠い場所)の位置で楽器を構えるように設計されています。つまり、そういうふうに作られているということなのです。
 人の手は左右対称に出来ているので、使う道具には右手用左手用があります。楽器に目を向けてみると、サキソフォーン・クラリネット・フルート・オーボエ等のメカニックな部品の付いた管楽器は両手の指をほぼ全てを使う楽器で、左手右手の位置があります。それを間違うと楽器の操作に支障(穴をふさげない)があり、音階を演奏できないということになります。それらの楽器の左右の手の位置はどれもリコーダーと同じく左が上、右が下の位置となっています。手で扱う楽器の共通性と言えると思います。
 ソプラノ・リコーダー(小学校で買う楽器)やアルト・リコーダー(中学校で買う)、テナー・リコーダーには、メカニックな部分がないのですが、同じリコーダーの仲間であるバス・リコーダー等の大型のリコーダーには、メカニック(キーと言います)が装置されています。これがないと穴をふさぐことが出来ないのです。同じ種類の楽器の仲間で手の位置が違うというのは、不都合があります。したがって、キーのついていないソプラノ・リコーダーもバス・リコーダー等と同様な左右の手の位置になっているのです。
 そこでソプラノ・リコーダーに開いている穴をじっくり見ると、一直線に並んでいるのではなく、微妙に左右に振られているのがわかります。特に右手小指で押さえる穴は、左手の小指では、きちんとふさぐことが出来ずらくなっています。楽器の性能を充分に生かすためには、左手を上・右手を下の位置で楽器を構える必要があります。
 さて、この左右の手の位置は、普遍のものかと言うとそうではなく、楽器の成立期には、どちらでも良かったらしいのです。それが時代を経るに従って楽器を持ち替えるときの不便さや操作性の向上のための楽器改良が行われた結果、今のような持ち方に統一されてきたのです。
 ちなみに、今の時代にもへそ曲がりな人はいますので、お金をかけて左右反対の手で操作する楽器を作らせたりする人がいます。雑誌の写真でそういうサキソフォーンを見たことがあります。お金持ちの道楽ですね。
 また、リコーダーは両手を全部使う楽器なので、左利きだからという理由は意味がないとも言えます。左利き用と称するピアノや自動車や自転車やコンピューター用キーボードを製造しないのと同じです。
 リコーダーは穴が開いているだけの楽器なので、左右の手の位置がどうでもいいように感じるのかもしれませんが、穴の位置は左右を考慮された位置に開いているのです。それを間違うとなめらかな音楽を奏でることは出来ません。
左右の手の位置項目2002.1.18記載
鍵盤ハーモニカとリコーダーの練習について
(1)めあてを持ち毎日練習する

 上手になろうと思えば、わずかな時間(2〜3分)でも毎日楽器に触れることが必要だと考えます。そして、めあてを持つことが大切だと思います。

  めあての例  a)息のスピードをそろえよう。
         b)きれいな音をだそう。
         c)少しずつできるようにしよう。
         d)できるようになったら他の人と合わせてみよう。
         e)一息でたくさん演奏しよう。
         f)上手な人をまねしよう。       etc.

(2)腹式呼吸を実行する。

 音楽には演奏者の呼吸が重要な意味を持っています。どのようなタイミングで息を吸い、そして吐くかが音楽に命を与えます。特に鍵盤ハーモニカやリコーダーは、心も体もリラックスしてどれだけたっぷりの息を吸い、そして、どれだけコントロールできた息を吐くことができるのかが、きれいな音を出したり音程を揃えたりするのに大切になってきます。そのためには、腹式呼吸が必要だと考えられます。

(3)タンギングをする

 音を出すときにはTU,TE,TI,TA,TO,DU,RUなどの舌の動きを行います。タンギングの種類によって音楽のニユアンスが変わるので、リコーダーの演奏をするときには、必ず実行したほうがよいと思います。


(4)指を押さえ直さない

 鍵盤ハーモニカでは、同じ音が続く時にはピアノのように鍵盤を押さえ直すのではなく、タンギングを行い音をくぎります。

(5)指を指定する。

 鍵盤ハーモニカでは、どの音のときにどの指を使うのかを指定します。音楽の流れを統一するためにも、指番号を指定して指導します。

(6)読譜力をつける。

 かんたんな曲をたくさん用意して練習します。読譜力がつくと音楽がおもしろくなります。

参考文献:音楽大事典(平凡社)、新しい楽器体系(ヤマハ教販)
(C) HIRAIDE-HISASHI
 19960922版
2000.8.28部分修正
2002.1.18項目付け加え
2002.1.20部分改訂
2002.2.2一部付け加え