諫早湾干拓の水門開放を!始華干拓地に学ぶ

平野みどり(県民クラブ)



干拓地の向こうに淡水化が断念された始華湖が見える。その先が12.6kmの堤防。


始華干拓地の位置:ソウル市から西南へ約40kmの黄海沿岸の、京幾道安山市(キョンギドウ・アンサン市)、始興市(シフン市)、華城市(ファソン市)に面する入り江(12.6kmの堤防完成後、始華湖となる)。 始華干拓事業の目的:農地や水資源確保のための淡水湖、工業用地の造成を目的に、5000億ウオン(約500億円)が投入された公共事業。事業面積は、1万7300ヘクタール(約7000万坪)。諫早湾干拓事業の約6倍。

 

 

 

■経過と背景■  
補償金と引き換えに、漁業で生計をたてていた人々はブドウや霊芝栽培などの農業や、観光客を見込んでの土産物屋や飲食業に転業。
・1987年4月堤防工事に着工、94年1月に完成。海が閉め切られる。
・1995年、干潟の枯渇とともに塩分が空気中に飛散。ブドウなどに塩害が出始める。
・1996年、急激な人口流入による生活排水や工業団地の排水が閉め切られた始華湖に流入し、水質悪化が深刻化。汚染魚を食べた渡り鳥が死んでいった。湖水は醤油色で、住民は悪臭に悩まされる。観光収入は激減。韓国環境運動連合(KEFM)や漁民は、汚染された工業排水が流入している始華湖の水を海へ流すことに反対したが、水質改善の策を講じるとして、水資源公社・農業公社は強行。
・1997年7月、試験的に水門を開放。海水を湖に入れ汚染水を海に流した。汚染度を表すCOD値(化学的酸素要求量)は、20.8mg/lから1998年12月には6mg/lまで回復。2001年現在は、水門付近は閉め切り以前の3mg/lにほぼ近い3.7mg/l。しかし、湖奥部はいまだに17mg/lで簡単には改善しない。
・1999年、「湿地保全法」が施行される。
・2001年2月、水資源公社は正式に「始華湖の淡水化計画の白紙化」を発表。
   

12.5kmの堤防。画面右側が外海。画面左側が始華湖。今ではほとんど色が変わらなくなったが1997年には左側の湖水は「醤油色」をしていたそうだ。
 

■水門開放後の各政府機関、自治体、市民団体の思惑
   −尚も継続される干拓事業− ■
・2000年5月、アンサン市テーマパーク計画 (自然や恐竜の遺跡などを活かして)
・2001年2月、政府は「始華湖の淡水化計 画白紙化」を発表。堤防は残したまま。各関連機関の思惑が交錯:
農林部:橋(堤防)ができ、干拓地ができたので税金の無駄遣いではない。
韓国電力: 堤防近くに人工の島をつくり送電鉄塔建てたい。
建設交通部:産業団地をつくりたい。(すでにアンサン工業団地、シファ工業団地工業団地があるが)
海洋部:潮力発電所をつくりたい.
環境部:ゴミ処理場をつくりたい。
京幾道:観光施設を作りたい。
その他:火力発電所建設中。核廃棄物処理場計画は、丸一年かけて白紙化にした。

■「希望を与える始華湖づくり市民連帯会議」の結成■  
ファソン市、アンサン市、シフン市の市民団体で構成された。開発計画を撤回し、環境を復元し自然公園化しようと、希望を持って活動してきた10団体。開発しようとする政府機関との公開討論会、説明会等で、市民団体の主張などが積極的に受け入れられるよう働きかけた。たまには何回かのデモも行った。3000人くらい集まる決起大会も開いた。そして市民団体の主張は、政府機関や専門家たち、地元の人たちに相当反響を呼んだ。その過程で2001年2月11日、政府は始華湖の淡水化を正式に断念した。しかし、彼らは始華湖の干拓地の開発計画はあきらめていない。 市民団体としては、始華湖の干潟は復活させたい。干拓地の活用方法についてはいろいろな意見があり、国民の多くは干拓地の活用を主張している。その中で、市民団体としては、「全部復元せよ」とまでは言えない。なるべくたくさんの面積を生かすよう努力したい。市民団体と国民の温度差はあるが、それを埋めながら、始華湖開発計画の全面的中止むけて、今後も取り組んでいく。  関係自治体については、市民団体と共に連帯して活動している。しかし、その一方、中央政府と市民団体は対立している。

 
 

■水門の増設を■
また、KFEMを始めとする自然保護団体は、潮受堤防内にある2ヶ所の水門開放だけでは淡水湖の水質改善には限度があるとして、政府に対して水門の増設などによる本格的な海水の導入を強く求めている。

■民間環境監視団■
シファ工業団地・アンサン工業団地には5000程の企業があるが、ほとんどが中小企業で、現在も環境汚染を発生させている。環境部傘下の環境庁、キョンギドウ、アンサン市、市民団体が共同で、民間環境監視団を構成し取り締まりを行っている。市民団体の熱心な活動にもかかわらず、全体的な力量は足りていない。

■更なる大規模干拓 セマングム干拓事業■
約400平方キロメートルの広大な面積を干拓するために、長さ33キロメートルに渡る潮受け堤防が計画され、現在では堤防工事の47パーセントが完了している。韓国最大の干拓事業であるこの計画には、環境に与える影響だけでなく、経済面からも計画の正当性に疑問を持つ声があがり、政府主催の公開討論会が開かれて中止に向けての市民運動が活発化している。  始華地区干拓事業の問題は、大規模干拓が与える影響を広く国民に知らせ、結果的に湿地保全の世論を高めことにつながったが、前述のように大規模干拓計画が現在も進められている。セマングム地域でも、たくさんの市民団体が連帯して「生命・平和連帯会議」という連合団体が構成されたが、シファ地域もこの団体と連帯して行動している。


[「トンガンダム」「韓国環境連合」の視察報告は 今回一緒に視察した「環境ネットワークくまもと」のHPに掲載されています。