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さ し み(兄貴よ)
野 草 洋 二
(台詞)兄貴よ お前はタフな海の男だった それが……二日寝付いただけで死んでしまった。畳の上で死ねたのだから……、
皆に手厚く看取られたのだから、考えようによっては幸せだったかもしれないな。 でも、それにしても……四十代で逝くなんてないぞ。 一、兄貴の電話は 少しどもり 「船が入った 帰りに寄れよ」
「オウ」 俺はずかり上がりこむ
柱のキズは けんかの跡だ
日焼けた顔を 見せないままで
刺身をつくる 「釣ったばかりだ
油がのって うまいぞ ここは……」
(台詞)兄貴よ お前はちいさいころから魚釣りが好きだった。悩みの深い陸よりは
好きな魚釣りを広い太平洋で存分にやれたんだから……。そう、思いようによっ ては最高の人生だったかもしれないな……。 二、兄貴の電話は 言葉すくなく 「魚を食いに ちょっと来いよ」
「オウ」 もう こうはいかないな
お前はあの世に 船こぎ出した
親も子供も 片付けないままで
ねじり鉢巻き 帰れよふいに
言ってくれよ 「うまいぞ これは……」
(台詞)兄貴よ 俺は 今もなぁー、電話を待っているぞ〜。
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