365 Days Album 201-300

365 Days Album 301-365

365 Days Album new 001-100

365 Days Album new 101-170

365 Days Album new 171-




Sound
Like
Every Morning
365 Days



今朝、聴いたアルバムを紹介していくことにしよう。
といっても前日の夜、
次の朝に聴こうと用意しておいたもの。
朝に流す音楽の中に一日のイメージが創られていく。

add some music to my days,
add some music to your days too

J.N






誰も知らないアルバムを見つけようとしているわけではない、

手に入らないレコードの自慢話をしているわけでもない、

ここに紹介しているアルバムに辿り着くことができなくても、

"どんな音だろう"と思いを巡らしてみよう。

アルバム・ジャケットと文章から自分の気持 (ココロ)に

"どんな音楽なんだろう"と聴いてみたくなった思いが芽生えれば、

これらのアルバムの音を実際に耳にするより、

もっと豊かなイメージが拡がっていくかもしれない。


J.N






200/ 365

2010.11.16

The Knack / Original Motion Piture Soundtrack - John Barry

United Artists 1965



2010年11月16日、

世界を巡る音楽の旅が続く。

昨夜中、降り続いた雨は止み、きれいな朝やけがすぐに青空になっていった。

少々肌寒いこのような日、雨上がり、何故だかロンドンの朝のイメージがする。

ホテルの部屋のガラスは結露で曇っている、

くもりガラスを手で擦る、窓の下にはロンドンの街。


ロンドンに出てきた田舎娘、ナンシーがその都会でうまくやっていくこと、

そのコツ、それを英単語で"The Knack"という。

ビートルズ映画も撮っていたリチャード・レスター監督の1965年、

カンヌ映画祭でグランプリを取った映画「The Knack」のサウンドトラックが今朝聴いた一枚。



両親が映画館を経営していたというジョン・バリーによるスコア。

1950年代から映画音楽を書き始め、自らジャズ・コンボも結成していたジョン・バリーは、

007シリーズの音楽で有名だが、「野生のエルザ」、「真夜中のカウボーイ」、

「冬のライオン」、「フォロー・ミー」、「ペギー・スーの結婚」、「愛と哀しみの果て」など

それ以外にもよく知られている膨大な数のサウンドトラックを手掛けている映画音楽作曲家。

ここでは哀愁のあるナックのメイン・テーマのスリリングなオーケストレーションに

ヒップなオルガンの音色を登場させ、ときにホーン・セクションと女性コーラスを絡ませ、

マリンバやピッコロ、ピッチカート、ミュート・トランペットの隠し味を効かせ、

絶妙のブリティッシュ・ジャズ歌謡サウンドトラックを創り出している。



さて、少々寒い朝だが、リージェント・パークをひと回りしてみよう、

森の落葉は、昨夜の雨に充分に濡れ湿っているだろう。





199/ 365

2010.11.15

Caravaggio 1610 / Simon Fisher Turner

Cherry Red 1986



遠い昔の虚無、がスピーカーから流れる。

それはどのようなもの、と聞かれても答えられない。


ローマ、ナポリ、マルタ島、シチリア島、ナポリと転々とした画家、

ミケランジェロ・カラヴァッジオを描いたデレク・ジャーマン映画のために作られたサイモン・ターナーによる音楽。

ということだが1573年生まれのポスト・ルネッサンスの画家、

カラヴァッジオのことはあまり詳しくない、デレク・ジャーマンの映像にも不案内だ。


しかしフラメンコ・ギターやリュートの繊細な音、

ヴァイオリンやヴィオラ、チェロの寂寥感のある響き、聖歌隊のような荘厳なコーラス、

ハープシコードやリコーダーの中世の時代に奏でられているような音色、そこに

波のSEや虫の声が散りばめられた宗教音楽のループのような音像に、

今朝の未明、イタリアのどこかの教会の大きな絵画の前に連れ出されてしまった。

つまりは2010年11月15日の未明に、そのような時代、

1600年初頭の、ヨーーロッパのそのような場所へと、存在とは非存在とが混ざり合ったそのような異国情緒のある場所へ。


遠い昔の虚無がスピーカーから流れた。





198 / 365

2010.11.12

Music Of El Topo / Martin Fierro

recorded in 1970, issued at 2004



きみはアレハンドロ・ホドロフスキー監督の映画、「El Topo」を観たことがあるかい?

ひとりの女と知り合って、

4人の導師と戦って全員に勝ったら彼女は彼のものになると彼女に言われ果たし合いをする。

舞台は砂漠、放浪のガンマン無宿、西部劇か、いや違う。

アクションものか、そういったシーンもあるが違う。

その女との恋愛ものか、全く違う。

行きずりで知り合った小さな男の子を連れている、ほう、西洋版、子連れ狼的か.....

そんなところも2秒くらいそんなところもあるが、それくらいで全然違う。

では一体、何なのか、どんな映画なのか、

よくわからない、観ているのに、心はそこにはない。

エル・トポは何人目かと戦って死ぬ。が映画は終わらない。

また生き返っている。死んでも死なない、ということは生きていても死んでいる。





マーティン・フィエロの"エル・トポのための音楽"を聴いて


私は樹となる種だった

私が樹だということはわかってる

だが気分はそうではなかった


大地と水

エネルギーを有して混ざり合う

木々と果実ははるか想像を越えて大きくなる


自分が成長するのを見ながら

私はそこにいた


地球の深みから跳び出したかった

そして果実の内側へと入り込む

ところが未来の種は、それらのあるものは

もうすでにそこにあったんだ


- アレハンドロ・ホドロフスキー -




無くても在った、あってもない、死んでも生きてる、

生きていても死んでいる... オー、エル・トポ、トポトポトポトポ、エル・トポ、

We're looking for our Holy Mountain!





メキシコのジャズ・ミュージシャン、マーティン・フィエロ

(フルート、テナー・サックス、スクラッチ、カウベル)が

映画「El Topo」に感銘を受け、総勢15人のホーン・セクションや

リズム隊を率いてホドロフスキー作曲のエル・トポの音楽をアレンジした。

サンフランシスコで1970年に録音されている。

かくしてエル・トポの牧歌的メロディは、メキシコのジャズ・ミューシシャンにより、

場末の飲屋街を循環するような哀愁を漂わせている。





197 / 365

2010.11.11

The Marble Index / Nico

Electra 1969



夜の讃歌。

夜が明けたばかりなのに、これを選んで聴いたばっかりに... また夜へ。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとニコ、いやジョン・ケイルとニコだ。

クレジットはシンプル。


Words & Music Nico

Arrangements John Cale


ニコの弾くハーモニウムの他はジョン・ケイルがすべてのサウンドを創っている。

ピアノ、オルガン、ヴィオラ、サントゥールにノイズ、ひとりでダビングしている。

ドラム、ベース、ギターはこのアルバムには入っていない。

曲はメロディがあって無いニコ節、まるでお経を唱えているような。

そこに重ねられたヴィオラやハーモニウムがうねり.....

えっ、暗いんじゃないかって。

真っ黒だ。黒く塗ってある。



神秘を告げる沈黙の使者(死者)ニコの、夜の讃歌。

永遠に続く神聖なる眠りの世界に入る手段が隠されているアルバム。


今日の東京は秋晴れのとてもいい天気だ。

この青空はその美しさを夜に負っているのだろうか...。





196 / 365

2010.11.10

Before Your Time... / Simon Nicol

Woodworm Records 1987



"歌に心動かされた人よ、そのメロディのイメージを抱いて、

11月、12月、ランカシャーの秋の丘を行く.....。"


秋の曲、"Over The Lancashire Hills"はこの季節に何度も聴きたくなる名曲だ。

その歌を説く人は、哀切の節を辿る人は、サイモン・ニコル。

陽の光に照らされた秋の麦畑の黄金色のようなアルバムは「Before Your Time...」。


英国のフォーク・ロック・バンド、フェアポート・コンベンションの

結成時のメンバーでギターとバック・ヴォーカルを担当。

リチャード・トンプソンという名人ギタリストの影に隠れて目立たない存在だったが、

トンプソンがバンドを抜けてもバンドを支え続け、その後バンドを抜けたり、

戻ってきたりして、結局はそのバンドの長い歴史の中で、バンドの顔になった人。

表舞台に出ようとしないが、しっかり自分の好きなことをやり続ける、

職人のようなタイプのミュージシャン。



フェアポート・コンベンションの2作目のアルバム、

「What We Did On Our Holiday」の最後に収められている"End Of The Holiday"

というサイモン・ニコル作曲の短いアコースティック・ギターのインストがあるが、

慎ましいギターの小品で、何とも言えない余韻を残す名曲。

そうなんだ、それがある、この人の音楽には。

この彼の数少ないソロ・アルバムもそうだ。

聴き終えた後に余韻が残る、秋の日の午後を過ごした余韻が。



1987年4月から5月、イギリス、オックスフォードで

最小限のバンド仲間を迎えてのホーム・メイド・レコーディング。

ドラムとベースにフェアポート時代の仲間、テイヴ・マタクス(1曲のみジェリー・コンウェイ)と

デイヴ・ペグ、ジョン・カークパトリックのアコーディオン1曲、

リック・サンダースのヴァイオリン2曲、そしてキーボードが加えられた3曲以外は

ほとんどシンプルなバック・トラック。

イギリスの英語(あたり前だが今となっては格別なイントネーションだ)

の端正な歌、収められている曲はすべてオリジナルではないが、

どれも彼の創った曲のように響く。





195 / 365

2010.11.9

Clandestin / Dominique Lawalree

Walrus 1982



ミル・フィーユのような音楽。

枯れた葉っぱが一枚一枚重なって、いつの間にか、枯れ葉のじゅうたんになっているような。


ピアノ・ソロはいつの間にか、ウーリッツァー(エレクトリック・ピアノ)に引き継がれて、

ほんの少しのグロッケンと、かすかなパーカッションのコトコト音、

いやトボトボが入って、短い同じフレーズが穏やかな波のようにくり返される。


音階を通過するパッセージ


くり返されるキーボードによるシンプルなフレーズは

聴いている者を音の向こう側へと連れ出してくれる。





おや、ベンチに座って動物たちや乗り物が逃げ出して

誰もいなくなったメリーゴーランドを眺めている女の娘がひとり。

そんなジャケットの絵に答えるようにアルバムの主人公、ベルギー(だろうか)の

キーボード奏者、ドミニク・ローレンスさんはシャケットの裏の写真で

枯れ葉のじゅうたんの(表の絵の実物版のような)公園のベンチに座っている。



サイドAに2曲、1曲目のタイトルは"Rainy Sunday : dimanche pluvieux"。

サイドBに4曲。最後の曲は"Now Peace For Beatle John"、

ジョンの亡くなった翌日のラジオのニュースが挿入されて...。


彼の使用楽器は、ピアノ(ベーゼンドルファー)、エレクトリック・ウーリッツァー、

ヤマハCS80、ローランド、パーカッションと時代を感じさせるものだ。

が録音されている音はそうではない。

とても静かで優しい。

冬の近い秋の日に、陽だまりにいて日の光が背中に暖かく感じる、

この音楽はあの感触だ。





194 / 365

2010.11.8

Ossian / Ossian

Springthyme Records 1977



気高い調べのオシアンの演奏者たちよ、

青い武具の戦士たちの面影が心の中に群がり浮かび昔を語る歌人たちよ、

その音楽に聴こえる悲しみの中に宿る歓びは心地よい。


Ossian : オシアン。

3世紀のスコットランド北部の王子、オシアンの名前をグループ名にした4人組。

ケルティック・ハープ、イーリアン・パイプ、ティン・ホイッスル担当のビリー・ジャクソン、

フィドル、マンドリン、チェロのジョン・マーチン、

フィドル、マンドリン、フルート、ホイッスル、ギターのジョージ・ジャクソン、

ギター、ホイッスル、ダルシマーのビリー・ロスの4人がスコットランドで1976年に結成したグループ。

これは77年発表の彼らのデビュー・アルバム。

ゲーリックの歌、ジグ、シェットランドのリール、バグ・パイプのマーチ、

曲のオリジナルは必ずしもトラディショナル・ミュージックではないのに

何世紀もずっと伝わってきた音楽のように響く。



オシアンの奏でる古色蒼然とした楽器類、ハープの音色はケルトのトラディションを受け継ぎ、

時に2本重ねられたフィドルはハーディ・ガーディのように響き、

ゲール語の優しい歌は、聴く者を遠い昔の物語、過ぎた世の出来事へと誘ってくれる。


またしても月曜日から、はるか世俗を離れて.....。





193 / 365

2010.11.5

Not Far From Land / Gordon Tyrall

Celtic Music 1990



大分県湯布院にあるタムボリン田圃鈴という通販CDショップには敬意を払わずにはいられない。

そこの店主はCDの通販案内に自ら気に入ったアルバムのコメントに

たびたび"夢見心地"という言葉を用いているが、ほんとうに、タムボリンを介して

手元に集まった音楽のいくつかはまさにそれだ、その夢見心地という時間を提供してくれる。

それらのいくつかの素晴らしいアルバムは店主の案内なしには

僕のところへは届かなかったものばかり。


スペインの女性シンガー、Roza Zaragoza、同じくスペイン、ガリシア地方のハープ奏者、

シンガー、ソングライター、Emilio CaoにJoaquin Diaz、Jose Afonso、

イギリス、ダーハムのJez Roweにハーディ・ガーディ・マン、Jake Walton、

そしてこのトラディショナル・フォーク・シンガー、ソングライター、Gordon Tyrall、

制作はWill Jackson、英国、北ヨークシャーの録音、1990年、Celtic Musicとある。



英国トラディショナル・フォークに詳しい人には、マーティン・カーシィの歌唱と

ニック・ジョーンズのギター・サウンドを持ち合わせた、と云えばいいか。

ギターを中心にコンサティーナ、マンドリン、ヴァイオリンといった楽器が

サポート・ミュージシャンによって少々プラスされ、

それにウィル・ジャクソンのシンセサイザーとある。

シンセを使うなんて、さすがに90年代のトラッド・アルバムなんだろうが、

全くそれと気づかせない音色を選び、全体に淡々と心落ちつく歌と、

曲によってギター・インストゥメンタルが続く。

そこにはMusic Dreamerが横たわって夢を見る小川が流れている。

そしてその川べりに案内してくれたのは、タムボリンの店主、ミスター・タムボリン・マンだ。


タムボリンの店主の推薦なしには聴くことの無かった至高の、夢見心地の音楽。

なおタムボリンの名前は昨日いたカナダのシンガー、

ソングライター、イアン・タンブリンから由来する。


[タムボリン・ホームページ]
http://www.tambourine-japan.com/home_001.htm





192 / 365

2010.11.4

Voice In The Wilderness / Ian Tamblyn

North Track Records 2001



海の深みに消える小川の心を想察し、秋冬の自然の死の床を想い、

枯れてゆく冬に向かう森の木を観察し、カナダの春の山脈に撒かれた花々を描写し、

夏の青空の女神にハーモニーをつけてもらい、そうして時の精霊が諸天界を進み行く様を歌う、

カナダのシンガーソングライター、フィールド・ウォーカー、イアン・タンブリン。


カナダ、ケベックのスタジオで録音されたサウンドはギター中心に、

ペニー・ホイッスルやフィドル、マンドリンが隠し味になって

曲によって数名のコーラスがイアン・タンブリンのヴォーカルを

少し遅れて追いかけていく、まるで巡礼者にお供するように。


雪と光り輝く霜の凡ての姿、荒涼たる場所にも目を向けて、

自然のあらゆる心象を歌っている、

まさに"Voice In The Wilderness "。



ジャケットに使われているシルク・スクリーンの絵のタイトルは

"Floating Ice"。



歌詞カードのブックレットにはイアン・タンブリン自身による

カナダの自然を捉えた写真が数点付けられて

アルバムのサウンドと呼応している。





191 / 365

2010.11.2

雑魚 / Marc Benno

A&M 1971



秋も、それとは気づかずに過ぎようとしている、ちょっと待って...。

うららかな日に、マーク・ベノのスワンプ・ロックで一杯。

日本酒か、いやビールでも、ワインでもいけるね、

ウィスキーでも全く問題ない、

このアルバム「Minnows」を肴には。


アルバム・タイトルは"Minnows = 小魚、ざこ"、そうなんだ

実際にこのアルバムのジャケットを見開くと、魚拓が登場する。



オマケにはマーク・ベノのピアノを弾く写真の裏に魚や甲殻類のイラストのカード一枚、



マーク・ベノ・モノクロ・ポートレイトの裏に銀箔の一匹の雑魚の魚拓のもう一枚のカード。

ジャケットは海を見つめる男、裏は海底の写真。



ストーンズ「Flowers」「Beggars Banquet」、サジタリアス「Present Tense」 、

ヴァン・ダイク・パークス「Song Cycle」...

60年代から数多くの名作ジャケット・デザインを手掛けてきたトム・ウィルキスの意匠だ。

ジャニス・ジョップリンもフィル・オクスも、ジョージ・ハリスンのアルバムも

ビートルズのコンピレーションもあった。ニール・ヤングの「ハーヴェスト」もそうだ。


このテキサス、ダラス出身の白人ギタリスト、ソングライター、シンガー、

マーク・ベノの、アメリカ南部ミシシッピーのブルース・ロック・アルバムも、

トム・ウィルキスのデザインで特別なムードを漂わせるアルバムになった。

何年も前のとある夜、トムズ・キャビンの麻田氏が僕に何度も言った。

"マーク・ベノがいいんだよ、とくに「ロスト・イン・オースティン」のアルバムが"。

家に帰って次の日、4枚あるマーク・ベノのアルバムを聴き直した。


スワンプだ、Swamp : 湿地、沼地。

動詞では、浸す、水浸しにする、湿地(沼地)にはまり込んだ。

OK、充分はまり込んだ。

麻田浩氏に感謝。

その日も今日のような秋の晴天の日のような記憶が...。

一年の内、何回かマーク・ベノの待ち伏せにあう。

そして数年前、「Minnows」は紙ジャケットでCD化され、デザインも忠実に再現された。

それには僕の持っているアナログ盤が使用された。

それを企画してくれてCDでもいい感じでマーク・ベノを聴けるようにしてくれた長門芳郎氏に感謝。





190 / 365

2010.11.1

Another Monday / John Renbourn

Transatlantic 1966



月曜日は日曜日の次の日、少々憂鬱だとよく言われる。

そうだろう、まして雨の朝と月曜日は、

とギターでその気持ちに同調してくれるジョン・レンボーンのフォーク・ギター・ブルース・アルバム。

今日のような月曜日の朝にいい感じだ。


ジョン・レンボーンという英国のギタリストはもう40年以上前にすでに

バート・ヤンシュというもうひとりのギター・プレイヤーと並んで

イギリスの有名なアコースティック・ギタリストだった。


ブルースに、50年代にはイギリス人も熱心だった、60年代も、

アメリカの黒人音楽はイギリスの音とも熱心にもつれ合った。

ストーンズがいた、ヤードバーズもアニマルズも、スペンサー・デイヴィス・グループも。



本作は1966年の録音。

指がタペストリーのように絡むインストゥルメンタルのオリジナル曲に、

たまにブルースものにヴォーカルが入る。

イギリスのトラディショナル・フォークやバロック調のクラシカルな曲想も多い人だが、

このアルバムは全体でアメリカのフォーク・ブルースを表現している。

"月曜日のブルー"がテーマだからね。

12曲中7曲が1分台の長さであっという間に終わる。

そして1曲目の"Another Monday"のところに書かれたコメントは次のようなもの。



Another Monday, Much the same as another Tuesday






189 / 365

2010.10.29

When October Goes / Various Artists

Philo / Rounder Records 1991



秋の後ろ姿が見えた。

もうそこの街角を曲がって行こうとしている、

あの優雅な穏やかな日々が、今年はもう続かないのか、

黄色い木の葉を透かして、太陽の光を見るメランコリックな瞬間、

衰えゆくその季節の憂愁と共に過ごす日々は、足早に去ってゆくのか.....

このまま冬になるとは思えないが、今年の天候は少々急いでいるよう。



夏が去ってしまって悲しいけど、一年で最も美しいシーズン、秋が来るから大丈夫。

秋に触発されて誕生した素晴らしい曲がいっぱいある、ずっと思ってたの、

それらを一枚のアルバムで聴けたらなって。

それがこの15曲....




と、コメントを寄せているのはアルバムのまとめ役でもあり、

自らも一曲参加しているクリスチャン・レヴィン。

"From A Distance"という名曲を書いたジュリー・ゴールドや

"When I Need You Most Of All" という代表曲のある

デヴィッド・バスキンといった知る人ぞ知るシンガー、ソングライターたちの秋の歌15曲。

1991年に発表されたアルバムだから90年前後の曲が多いが、

どれも逝く秋の風情たっぷりの名曲。

アルバム・タイトルは「When October Goes」。

アルバムの11曲目に収められている同名の曲から付けられたもの。

"ムーンリヴァー"を始め数多くのスタンダード・ナンバーの作詞を手掛けてきた

ジョニー・マーサーが生前に書いて未発表のまま何年も埋もれていた詩、"When October Goes"。

数年前それに曲をつけたのがバリー・マニロウだった。

そしてここで歌っているのはミーガン・マクドノー。

クリスチャン・レヴィンのコメントによるとミーガンの

"悲しい時だけよ、アイルランド人が楽しくなるのは"という言葉を聞いて

彼女にこのアルバムの企画でその曲を歌ってもらおうと思いたったらしい。



そしてその歌声は、この枯葉のはらはら舞うようなアルバムの曲の中でも、

とくに紅葉の色具合を深めている。





188 / 365

2010.10.28

Fonte Do Arano / Emilo Cao

novola 1977



旅をするということは、日常を離れてそうしていることは、

それだけで、いつもとは違う風景、時間の流れを味わっていて、特別な気分をもたらしてくれる。


電車に乗って1時間、2時間、日帰りでまた家に戻ってくるのではその気分は味わえない。

1泊、2泊、1週間、10日間、国内のどこかの温泉でもそれはある。

しかし外国であれば完璧だ。異国の地で誰だってエトランゼだ。

初めての道を、見知らぬ通りを歩いているだけで、

ホテルに戻ってくるだけで非日常の中の異邦人の自分がいる。


エミリオ・カオ、このスペイン、ガリシア地方のハープ奏者、

シンガー、ソングライターのアルバムを聴いていると、

ヨーロッパのどこかの石畳の路地を歩いている自分がいる。

ハープのアルペジオやフルートのたおやかな響き、時おり聴こえてくる

エミリオさんの澄んだ声質のスペイン語の歌が、訪れたこともないのに

紀元前6世紀頃にケルト人が定着したガリシアの湿気に包まれた海岸線の緑濃い村を想像させる。

おお、そうなのか、旅だ、旅をしている。


ハープは独学らしいが素晴らしい。しかもロック・バンドでベースを弾いていたという面影は

どちらかというとクラシカルな彼の音楽にはない、ずっとハープひと筋で、というイメージだ。

とくにこのアルバムはシンプルで、ハープの背後にはハーディ・ガーディ、

フルート、少々のギター、その他僅かな楽器と数曲に歌が入っているが

ほとんどハープ・ソロといったシンプルなサウンド。



気がつけばアナログ・レコード4枚、CD2枚のオリジナル・アルバムが手元に。

ずっと旅が続いているんだ、エミリオ・カオのハープの音と.....。





187 / 365

2010.10.27

Twelve / Anthony Phillips

Blueprint 1995



ずっと音楽を聴いている。

すると季節も巡っている。

春、夏... あの暑い日が続いた今年の夏は何処へ行った?

いやいや、アンドレ・ジイドが書いた次の一行がある。


" 春と夏が秋の中に入り混じっている"


アンソニー・フィリップスというギタリストが

1月から12月までをイメージした12曲が収められたアルバム「Twelve」を聴く。

10月はどんな曲想だろう、

1曲目、1月から聴き始めているから、楽しみだ。



初期のジェネシスに在籍していたがすぐにソロへと歩み始め、

マイ・ペースで音楽活動し、20枚程のソロ作品を残してきた。

本作は"Private Parts & Pieces" と名付けられた

7枚あるデモ・レコーディング的なシリーズの84年9月に録音された5作目。

全編、12弦ギター一本で各曲を弾き通している。

1月にスタートして、すぐにどの曲がどの月かよくわからなくなる。


ここでは春と夏が秋の中に入り混じっている


おお、まさにそれだ。

えーっと10曲目だな、10月がやって来た、6分23秒の10月。

アルバムの中で12月と同じくらい長い。

マイナー・コードを響かせた、ゆっくりとした曲想、

今日のような寒さを感じる10月だな。

そしてアルバムは11月、12月、冬へと続く.....。





186 / 365

2010.10.26

Joy Of A Toy / Kevin Ayers

EMI Harvest 1969



ソフト・マシーンを辞めた時、ケヴィン・エアーズは

白いフェンダー・ジャズ・ベースを

(ソフト・マシーンではギタリストとしてデイヴィッド・アレンが参加したおかげで、

ケヴィンはベースを弾くようになっていた)ノエル・レディングに売り、

そのお金でスペイン、イビサ島のビーチに行った。


しかし、ケヴィンに音楽を止めないように、とギブソンのアコースティック・ギター、

J-200をプレゼントした男がいた。

ジミ・ヘンドリックスだ。


そしてイビサで曲を作り、ソロとしてケヴィンが発表したのが、このアルバム...

なんてカッコ良すぎる話だが、この黄色いジャケットの、カエルの吹奏に合わせて踊る

オモチャの喜びの音楽は、そんな話と同じくらい、カッコいい。


ここにある空気が、自由な空気が。



to be cotinued.....





185 / 365

2010.10.25

Eve Future Recall / Kriedler

Wonder 2004



3人のドイツ人から成るユニット、なのだろうか、Kreidler。

ハープやヴァイヴの生音をサンプリングしたループに続き、

一定のパータンの中で少しずつフレーズは変化していく、

リード楽器があってメロディを奏でているわけではないが、

なんとなくメロディらしき輪郭が.....

しかそれらの音階は聴く人に委ねられている。


アルバムをB面にしてみよう、ピアノ・ソロをバックにフランス語の女性の語り、

ストリングスにティンパニー、ピッチカート、まるで映画のサウンドトラックだ。

しかし日本の時代劇の音楽のような、妙なサウンドだ。

3、4枚ほどこのユニットのアルバムを持っているが

アルバムによってどれもサウンドを変えている。

ドラム、パーカッションのループにシンセが乗って

テクノ・スタイルを展開したと思えば、このアルバムのようにサントラふうな音作り。


すると回る黒いビニール盤が語り出した。

"... わたしは、またの名を<平和>、<悦び>、また<怠惰>、とも<放浪>、とも

<恍惚>とも呼ばれます。でもたいていはレコードと言われてますが....."





184 / 365

2010.10.22

Backwoods / Gay & Terry Woods

Polydor 1975



僕は昔、幌馬車の車輪だった

僕は昔、一頭の鯨だった

他の惑星の住人だったこともある

少なくとも15の星は思い出せる

宇宙のはしからはしまで行った

でもたいていは地球にいた


紫のヒースの丘で野生のタイムの匂いをかぐために


ゲイ&テリー・ウッズの

「Backwoods」を聴くために







183 / 365

2010.10.21

Homemade Electroscope / Electroscope

Wuritzer Jukebox 1997



郵便配達の途中、変った形の石につまずいたシュヴァル、

その石を家に持ち帰り、翌日また同じ場所に行く。

そこで長い石運びの生活が始まった。

ポケットに石を詰めこんで25年間、

そうしてガウディのミニチュア版とも言える手作りの夢の宮殿を作り上げた。

それはフランスのオートリーヴという町に建つ、郵便配達夫、シュヴァルの理想宮。



このエレクトロスコープなるユニットはイギリスのBBC放送に勤める男、

ジョンとデルガドスやアドヴェンチャーズ・イン・ステレオ他のバンドで

歌ってきた女性、ゲイルのふたり。彼らの場合は1996年の春の日、

屋根裏部屋で古いオープン・リールのテープをいじっていたことに始まった。

ある日、アナログ・テープ・デッキにつまずいたふたりが

そこに音を録音しそのテープを映像のフィルムを編集するように切り貼りし

作り上げたジョンとゲイルの音の理想宮がこれだ。



牧歌的宇宙音楽、手作り電子ミュージック、初心者向き怪奇と幻想の音織物.....

そんな言葉を綴ると、漢字ばかり並んでいるどこかの国の文章のようで、表現方法を変えよう、

"I hear a new world in a old fashioned Homemade Tape Sound"。

ごわーん、ぶーん、ピコピコ、ドゥワァンワァンワァン.....


さて、と。紅茶にオレンジ・ピールを浮かべ、チョコチップをひとかじりしようかな...。





182 / 365

2010.10.20

I Suoni In Una Sfera / Celeste

Mellow Records 1974



今朝たどりついたのはこれだ。

今にも泣き出しそうな空模様、太陽の明るい陽射しのない日、

突然イタリアのバンド、チェレステのアルバムに手が伸びる。

今朝の「世界の魂」はこの音と在った。


チェレステ、英語でセレステ、その単語はドノヴァンの曲で知って耳馴染みだ。

celestial... 空の、天の、天上の、神聖な... そのような名前に相応しいバンドだ。

ベース、ギター、ピアノ、ドラムスのリズム隊を持つロック・バンドなのだが、

そこに響くのは繊細なガット・ギター、メロトロン、フルート、サックス、

木の葉が散りゆくようなパーカッション類.....

フランスの作家、モーリス・ブランショの一文を借りれば、

そのサウンドは、"生からの解放? 開かれる無限? 幸福でもなく不幸でもなく、

恐れの不在でもなく、そしてもしかしたら彼方への一歩。....."というイメージか。


この"I Suoni In Una Sfera " は同名の映画のサウンドトラックで、

ヴォーカルは入ってないインストだが、思いっきりマイナー哀愁イタリア歌謡メロディに

イタリア語の歌の、あの異国情緒たっぷりのイントネーションが聴こえてくるよう.....。





181 / 365

2010.10.19

Songs Of David Lewis / David Lewis

Vinyl Japan 2003



デイヴさん、こうして家にお邪魔してピアノを弾きながら歌ってもらうと、

あなたの曲の良さが最もよく分かります。

それにその味のある声の渋さも、しみじみと。

もう何曲目でしょうか、すっかりうとうとしていました。


「さぁ、ピアノとギターはそれくらいにして、コーヒーが入りましたよ」

という言葉も耳に入らないくらい、デイヴさんの家の居間での弾き語りに夢見心地の時が過ぎて.....


..... という場面を想像してしまうくらい、

ソングライターのデモ・テープというのは魅力的なもの。

その人の家にお邪魔しているようだ。

プロデュースされていない分、その人なりの息づかいが感じられて

とてもアットホームに音の(その人の)世界に入り込んでいく。


70年代にイギリスでわずかの間活動したアンドウェラという

アメリカ南部音楽志向のバンドのソングライターであり、ヴォーカルの

アイルランド、ベルファースト生まれのデイヴ・ルイス。

アンドウェラ解散後、70年代にソロ・アルバムが2枚程あるが、

このソング・デモはいつ頃のものだろうか、ソロ・デビュー用のデモと言われているが

当時はたった50枚プレスされただけだったという。

日本で2003年にCD化されたクレジットによると70年の制作とある。


曲はポップス志向だが、なんともくすんだ声が暗いメロディを歌う、

だが心底暗くはない、思いっきりポピュラーなところへも行かない、微妙な感じ、

そう、微妙な感じが好きな人には、とっておきの一枚。





180 / 365

2010.10.18

King Of Highland Pipers
-Dance, Tunes, Marchess, Airs and Pibroch Played on the Highland Bagpipe-
/ John Burgess

Topic Records 1969



部屋ごとそんな場所へ転送される。

ここは伊豆高原か、いや日光霧降高原か、

それとも早朝の奈良春日大社の参拝道か...

いや、いつものリヴィング・ルームだが。


スコットランドのバグパイプのアルバム「King Of Highland Pipers」をスピーカーから流す。

ふいごに空気を入れて、持続音を鳴らし、リズムのあるメロディの上を指が踊り続けている。

スコットランドのハイランド・パイプにはジグやリール、スロウ・エアと呼ばれるリズムがあり、

各々が違ったシンコペーションを持つ。

それに合わせた踊りや、行進や、人々の生活の場面があった...

そんな歴史を持つバグパイプ・ミュージックのアルバム。

演奏者はジョン・バージェスなる1934年生まれのスコティッシュ。

アルバム一枚、たったひとりのバグパイプの演奏だ。



バグパイプのアカペラがずっと続く。

A面のレコードの溝からB面の最後の溝まで、レコード針はバグパイプを響かせる。

秋晴れの青空の空気の中、あのずっと向こうまで見渡せる土地で、

ブドウ畑のブドウ作りにブドウの栽培の極意を聞いている気分だ。





179 / 365

2010.10.15

Songbird / Suzie Adams And Helen Watson

Dingle's Records 1983



これは通りがかった学校の校舎の窓から聴こえてくるオルガンと女性の歌だ。

いつか子供たちに授業で歌って聴かせようと練習しているのか、

ピアノに合わせ2人の女性がユニゾンで歌い続ける。


このアルバムはジャケ買いではない。

この2人の女性、スージィ・アダムスとヘレン・ワトソンが在籍していた

Muckram Wakesという英国のフォーク・グループが好きだったからだ。

そして、ヘレン・ワトソンという人は、ニック・ジョーンズという70年代に

名作を残した英国フォーク・シンガーのアルバムで、

ハーモニウムを弾いていた女性だったから。

それは雲の中を歩く(歩いたことはないが)ような音色だった。

そしてもうひとりの女性、スージィ・アダムスのクレジットにVoclas, Triangleとあったから。

トライアングルが彼女の担当楽器だ。



トラディショナルに混じって歌われるジェシ・ウインチェスター、

ディランといったカナダやアメリカのシンガーソングライターの曲も

ここではイギリスの地方の小学校で歌われる唱歌のように

(それも聴いたことはないが) 響く。


バラ色の靄に包まれたこの午後遅く

心に浮かぶノスタルジーの雲と甘味な優しさ、

..... 完全な散歩者にとって一日のしめくくりにとても大切な一枚。


いかにして僕はこのアルバムと出会ったか。

レコード・ショップの店内の散策で、放浪にも似た

その狭い店内の、レコードの森の散策で。





178 / 365

2010.10.14

Artists' Rifles / Piano Magic

rocket girl 2000



輝き、香り、色彩、そして淡白さ..... 秩序.....

さまざな貴重で物珍しいもの..... 魅力のある人物像..

そして、多様性..... 手際よい処理..... 豪華な生活の諸特性。


.....

十字軍。

愛と..... 宗教の百態。悪魔の宗教的必然性。

.....

.....

詩人にとって必要なものは、落ち着いた、注意深い感覚.....

地上的な業務とつまらぬ雑用を忘れさせる理念や情熱、

気がかりなことのない境遇..... 旅..... 多種多様な人間との知己.....

さまざまな観照..... 軽妙さ..... 記憶力..... 弁舌の才.....

ひとつの対象に執着しないこと、

精一杯の情熱を控えること.....多面的な感受性。




ノヴァーリス 1800年1月の草案より抜粋




ピアノ・マジックの音楽にはドイツの詩人、ノヴァーリスの

上記のような文章の断片がしっくりくる。

ピアノ・マジックの音楽を好きになって久しいが、

そのサウンド・スタイルは流動的でよくわからない。

しかしピアノ・マジックなどという少々安易なアーティスト名と

その音楽は対極にあるといっていいくらい彼らのサウンドは深遠だ。

ただし、そのサウンド・スタイルはシンセを多様したエレクトロニクスだったり、

ダークなギター・リフをくり返すアンビエント・ミュージックだったりと

アルバムによって装いを変えていく。



1918年、戦争で亡くなった兵士の思い出を歌ったこのアルバム、

「Artists' Rifles 」ではバンドでの生演奏。

バンドも4人編成のクレジット、エレクトリック・ギター2人、ベース、ドラムだ。

他に4曲でチェロ、ヴォイスに2名。

20002年11月から15日のレコーディングとクレジットされている。

ここではバンド・スタイルのピアノ・マジックだが、

どこかヨーロッパの詩人がサウンドの中に溶け入っている。





177 / 365

2010.10.13

The Egyptian Music / Soliman Gamill

Touch To:7 1987



「僕の初旅世界一周では.....」

「エジプトにも行かれたんですね、コクトーさん、

おや、今ピラミッドの番人、スフィンクスが動いたような気がしましたが」

「いやいや、あれは単3電池を300個入れてあってね、それで.....」

「た・ん・さ・ん...? じゃぁ、あのスフィンクスの口からBGMに流れてくるのは.....」

「もちろん、きみ、カセットだよ、カセットを仕込んであるのだよ」

「カ・セ・ッ・ト.....」

「じゃ、きみ、MDとでも思ったのかね?」

「エム・ディ.....?」

「あっははっ、そうして色々と消えてゆくのだよ.....」



Instruments on this record

Kanoun (strings instrument),

Arghoul (double pipe bamboo),

Sallamiya (flute),

Rababa (trumpet, tabla, doff, nay,

wooden column with a coconut sounding box),

Sinsimia (5 stringed instrument)

composer and musicologist

Soliman Gamil







176 / 365

2010.10.12

Wil Malone / Wil Malone

fontana 1970



室内楽のあい間から、ギターとつぶやくような歌がこぼれてくる。

オーボエ、フルートがチェロを中心とした小編成の弦楽に絡み合う、

今朝のような雨の朝、誰もこんな日には訪れる人のいない

すっかり濡れている公園の木々の茂みに迷い込んだ気分。


ウィル・マローン、このアナログ・レコードがどうして手元にたどり着いたのかは全くの謎だ。

ヒプノシスやロジャー・ディーンと並び、数多くの印象的なジャケットを

手掛けてきたキーフによるジャケットの表、裏の写真も、書かれているクレジットも

(使用楽器や歌詞の一部抜粋)も中途半端で怪しい。



ずっと後に知ったが、70年代前後に英国のオレンジ・バイシクルというグループに参加していたり、

マザー・ライトというユニットを組んでたいりしたウィル・マローンは

ロンドンのモーガン・スタジオの主要関係者だったり、

アレンジやプロデュースも結構手掛けてきたキーボード・プレイヤーということだ。


えもいわれぬ物憂さと曖昧さ、つかみどころのなさが、

ギターのアルペジオのまわりにうつろ気な微笑みのように浮かんでいる。

あたりの景色は暗い、そして人工着色のような..... 森、

そこは夢見心地の人間たちで溢れた"どこでもない場所".....





175 / 365

2010.10.8

Irish To Be Sure / The McPeak Family

Windmill Records 1972



まったく、僕の音楽にリコーダーや歌で参加してくれるOraNoaという人は素敵な人だ。

このアイルランドの家族グループ、マックピーク・ファミリーのアルバムを聴き終える頃、

"このレコード、いいですねぇ"と感嘆のようなひと言をつぶやくのだから。


アイリッシュ・ハープにイーリアン・パイプ(バグ・パイプ)、フルートを従えて

家族3代の世代が一同に歌うアイルランドの歌、枯れている。

盤の状態が良くないのか、レコード・ノイズがパチパチ、チリチリとリズムを刻む、

エレクトロニカか? 聴くたびにもうろうとし、茫然とする、アシッドか?

いやいや1950年代から、もっと以前からファミリーでトラディショナル・ソングを歌っている人たちだ。

フランシーとフランシス父子に、その娘キャサリンと息子ジェームス、

従兄弟のトミー・マクデンのファミリー・グループ、マックピーク。


いつからか、この人たちのアルバムを捜す旅に出ていた。

そして手元には10枚近くもレコードがある。

マックピーク・ファミリーの有名なレパートリー、スコットランドの歌で

アイルランドでも親しまれている"Will Ye Go Lassie Go"のシングル盤! も手元にある。



CDにはなっていない(かな)、インターネットで音源を... そんなものはない、

花屋さんで売られているきれいに飾ったものではなく、

原っぱの無くなっていく名もない雑草のような音楽だから.....


しかしその原っぱは風に吹かれて気高く夕日を讃えている。





174 / 365

2010.10.7

The Far Coast Of Cicily / Aes Dana

Hi, Folks Records 1987



マルタ島を旅している友人がいる。

しばらく前に旅立って現在も滞在中だ。

マルタ? どこだ。

ハープ・アルパートとティファナ・ブラスに"マルタ島の砂"という曲があった。

その島の名前は知っている。

たしか、「マルタの鷹」というハンフリー・ボガード主演の映画もあった。

だがマルタはどこにある? どこに.....


イタリアのシシリー島の近くの島だった。

シチリア、そこの音楽は素晴らしい。

そこの人々の歌は素朴で哀しくて...。

マルタ島にはどんな音楽があるんだろう、どんな文化なんだろう...。

友人が戻ってきたらまずそのことを尋いてみよう。


そこで勝手に想像して、いつ、どこで手に入れたか

全く記憶にない一枚のアルバムを引っぱり出すことにした。

ジャケットが気に入って買ったのだろうか、それともアルバムのタイトル、

「The Far Coast Of Cicily」、"シシリーのはるか彼岸"に魅かれたのか。

これまでに何度か、もう聴かないで手放そうととしたが、手元に生き残った一枚。



シシリーの南にあるパレルモという街のAes Danaという

7人編成のグループによるドラディショナル・ミュージック。

イングランド、アイルランドの曲をモチーフにしたケルティック・ハープ、

ダルシマー、シターン、グロッケン、ティン・ホイッスル、フルート、ボウドラン.....

アイリッシュ楽器を従えてイタリアのシシリーに在住するミュージシャン、

イタリア人による英語の歌、少々イタリア訛りだ。


とっておいてよかった。

今日のような湿気の少ない秋の日に、どこに在るか場所も知らなかった

マルタの島国の想像上の地中海旅行気分を満喫した。

このアルバムの良さが浮上してきた、一枚のアルバムの完全復活だ。

これだからレコードは持ち続けないと。


さて、彼女が旅から帰ったら、マルタ語と英語、イタリア語で

僕の新しいアルバムのレコーディングで歌ってもらおう。





173 / 365

2010.10.6

You're Going To Love Our Defeatist Attitude / The Remote Viewer

City Centreoffices 2005





ゲストに迎えられたエンプレスのニコラの淡々としたヴォーカルは

ずっとくり返されるループの波にいつの間にか、のまれていく。

いつそうなったかは気づかないが、そうなっている。

僕たちの日常のくり返しのように。

そうだ、この耽美な美しさに溢れるリモート・ヴューワーのアルバムを聴くと、

いつも、浮かんでくるセンテンスがある。


"風景は無意識のうちに完璧なものになる。"



マックス・エルンストのコラージュ・ブック、「百頭女」の絵に付けられた一文だ。

今では文庫本にもなっているが僕の手元にあるのは大きなサイズの単行本。

帯に書いてあるこの本のシリーズ名は"眼は未開の状態にある叢書 1"。

その3は同じくマックス・エルンストのコラージュ本、「絵画の彼岸」。



それらのシリーズ名やタイトルをそのまま、

このリモート・ヴューワーのアルバムのサウンドに言い換えよう。


"耳は未開の状態にあるアルバム"、"音の彼岸"。


とにかくサウンドもジャケットも淡々と美しく、超現実的。

え、エンプレス、ニコラ、リモート・ヴューワー、フッド、マックス・エルンスト.....

誰って、ふーむ.....。






172 / 365

2010.10.5

Haunt Me, Haunt Me Do It Again / Tim Hecker

Substractif 2003



チリ、チリ、チリ、ブーン、ブーン、ブーン、カラン、カラン、カラン.....

おや、クーラーの室外機に雑草が絡まってるのかな、おかしいな、

クーラーは動かしていないのに.....。


おや、7曲目に"October"という曲が入ってる。

今朝このアルバムを手にしたのはたまたまだが、

十月という月が巡り合わせてくれたんだろうか。

その7曲目、"October"はどんな曲だろう、と聴き進む。

ゴーン、チリチリ、ブーン、ジーン、ゴロゴロとずっと続いている、

どれがどの曲か分からない。

なになに、よく曲目を見ると1曲目の次に2、3曲目がなくて

いきなり4曲目だ、その次が6曲目、全19曲となっているが、

クレジットには9曲しか書かれていない。



サウンドのイメージは? エレクトロニカ.....

なんて言わないでおこう、コレデヨロシイカくらいにしておこう。

このティム・ヘッカーなる人物の音の織物と滞留する、

どこかの異国、アフリカに近いヨーロッパの市街地の古い石畳の上をこの音と彷徨っているな.....

そこに迷い込んでから、どれくらいの時間が経ったのだろうか.....千年!?







171 / 365

2010.10.4

October / Claire Hamill

Island 1973



10月に入ってクレア・ハミルの「October」を聴く。

"今朝は、いつもより寒く感じる、なにかすっかり葉っぱを落とした樹のような気分、

でも年をとったってことじゃない.....

10月は心を湿らせて、11月は瞳を曇らせる、

でも年をとったってことじゃない....."



恋人と別れて独りになった秋の日々、若き日の美しいクレア・ハミルの

10月から12月までの淋しさを歌っている曲、"I Don't Get Any Older"が

アルバム・タイトル「October」の元になっている。

ピアノだけで歌われる静かな、安らぎに満ちた曲。

静かな、と言えばこのアルバムは全編から文章では表現し難いアコースティックな味わいが染み出てくる。

この質感は誰かのアルバムにも共通するぞ。

そうだ初期のキャット・スティーヴンスやマレイ・ヘッドのアルバムと同じ質感だ。

それはこのアルバムのプロデューサー、ポール・サミュエル・スミスによるもの。



アコースティック・ギターやピアノをベーシックに、時にオルガンを絡ませ、

ウッド・ベースやストリングスもおとなしく参加させてはいるが

意外にそれらの楽器が目立ち、ポイントになっている。。

アルバム全体の中にはリズムの強いアレンジも2、3曲入れて、

しかしトータルでは叙情性に溢れた静かなものに仕上げている。

ポール・サミュエルスミス独自のプロデュースのサウンドだ。


70年代前半のブリティッシュ・メイドの見事なシンガーソングライター・アルバム、

クレア・ハミルの「October」は勿論、今年も10月に聴いた。





170 / 365

2010.10.1

The Body / Ron Geesin & Roger Waters

EMI 1970



膝を叩くパーカッションにゲップといびきが乗って、

ため息がはき出されスタートする珍しいアルバム。

ロン・ギーシンの仕業だ。

そのサウンド・エフェクトはロジャー・ウォーターズのアコースティック・ギターのつま弾きによる牧歌的な歌に変っていく。

現代音楽作家のロン・ギーシンとピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズの組み合わせは

「Atom Heart Mother」とこの「The Body」という映画のサウンドトラックに留まった。


ロン・ギーシンが担当したサウンドトラックに、ロジャー・ウォーターズが

ゲストとして2、3曲参加したという具合。

二人の名義のアルバムになっているが、二人で作ったらしきトラックは無さそうで、

ロン・ギーシンのしつらえた弦楽の不穏な耳ざわり、プリペアード・ピアノ、オルガンに

ロジャー・ウォーターズのつま弾くアコースティック・ギターと鼻歌を見え隠れさせたもの。

しかしこの少々奇妙なアルバムの外観の中身は、とても静かで心安らぐ。



キモチの悪いジャケットがマイナスだ。

もっと知られてもいい名盤だ。

それは単に外観だと言っておこう。


人は心にボディをまとっているが、しょせんそれは物体、

その存在は愚かな幻影にすぎない、

しかしそれにとても左右されているんじゃないか、きみたちは、と

ピンク・フロイドのアトム・ハート・マザーの父は静かな口調で歌う....。





169 / 365

2010.9.30

Days Of Heaven / Original Soundtrack - Ennio Morricone

Pacific Arts 1978



親愛なるN君へ


エンニオ・モリコーネの音楽をこよなく愛する君にこのアルバムを

「聴いてみて、僕のいちばん好きなエンニオ・モリコーネのサントラなんだ」

と言って渡したのはいつの日だったか。

そして君は数日後、"天国の日々"という曲が出来ました、

と、とても嬉しそうなひと言を添えてアルバムを戻してくれた。


それからライヴで君の"天国の日々"を何度か聴く機会があった。

それはこのアルバムのどこを、ということではなく

トータルでイメージしたものにインスパイアされた曲で、とてもいい歌詞の歌だった。


あれから何度もこのアルバムの話をしたね。

ずっと昔のいつかの日、深夜の時間帯にうつろな意識で観ていた

テレビの画面から流れてゆく映像、それは開拓時代のアメリカの

西部の自然を捉えた、美しさと不思議な怪しさを持ったもので、

暗い部屋の中で幻のように光っていた。

その映像をより印象的にしていたのが、モリコーネの音楽で、

先にこのアルバムが手元にあり、その何年後かに偶然観た映画から

記憶の片隅にあったこの音が流れてきた時は感動したよ、

と高校生のように君に話をしたのもつい昨日のことのようだ。



西部の映画だから、アメリカのタコマ・レーベルからアルバムを発表していた

アコースティック・ギタリストのレオ・コッケや

ケイジャン・ミュージックのフィドル・プレイヤー、

ダグ・カーショウのトラックが1曲ずつ入ってるんだとか、

ダグ・カーショウは映画の中でも収穫を祝ってみんなが踊るシーンで

フィドルを弾いて登場しているんだとか、そうだ、渋谷のレコファンに行けば、

レオ・コッケのアルバムが何種類か、900円くらいで売ってたよ、

何故だろうね、誰も知らないし、きっと売れないのに.....とか、

まるでライ麦畑の主人公、ホールディンのように次から次へとそんな話をしたね、

きっと君はすべて覚えているだろう。


ところで僕にはこのアルバム、

今日のような雨の日にとてもしっくりくるんだ、

君はどうだい?


そうそう、君が11月に発表するニュー・アルバムには、

"天国の日々"が入っているんだね、とても楽しみにしているよ。


J.N

rainy day in september, 3oth 2010





168 / 365

2010.9.29

Between Us / Murray Head

Phillips 1979



パリのシャンゼリゼ通りにあったレコード店、Lido Musique。

古い建物で日本橋の高島屋のような内装で

たしか2階があり、そこでこのレコードの他に

マレー・ヘッドのアルバムを3、4枚買った記憶がある。

アナログ・レコードしかない時代、30年以上も前の話だ。

レコードや音楽というものはそんなもの。

それに出会った時のことをずっと覚えている。



で、このマレー・ヘッドのアルバム「Between Us」は

そんな異国での昔の場面を思い出す懐かしいノスタルジックなものかというと、

そんなサウンドではない。

ルパート・ハインのプロデュースでペギン・カフェ・オーケストラりメンバーを起用、

1979年制作だがタイムレスなアンビエントなオケにヨーロッパ感覚のヴォーカルが乗り

いつ手を伸ばしても、このアルバムを聴きたいと思った日、つまり今朝の気分。

今日ならやっと晴れて、夏がすっかり逝ってしまった秋の日の朝、

そんなずっと続いてきた昔ながの毎日なのに、

夜が明けるとその日は、いつも新しい日、そんなサウンドだ。


えっ、分かりにくいって、そりゃそうだね、

音楽だから説明してしまうと、それとは違うものに.....。

マレー・ヘッドの経歴はどうかって。ケイレキ.....


イギリス人ながらヨーロッパで人気のある俳優、マレー・ヘッドの3作目、

デビュー作は3月に紹介した「Nigele Lived」。


between us... そこにあるのは心の微妙さ、奇妙といってもいいかもしれない、



美しいジャケットに包まれた美しいアルバム。





167 / 365

2010.9.28

Gone / Greg Keelor

Wea Canada 1997



もしアルバムの憂愁度というものが計れるものなら、

ニック・ドレイクやレナード・コーエンと並んで

最高値になるのがグレッグ・キーラーのこの一枚。


こんな雨の日に、ああ!

ほんとうのことばというよりは囁き、

ほとんどことばにはなっていないつぶやき、

ことばなき倦怠の嘆息のような音楽。


カナダのBlue Rodeoというバンドのメンバー、

グレッグ・キーラーのソロ・アルバム。

ギターのアルペジオは雨だれのように、時おり入るチェロは

ぬかるむ土くれの道にとられる歩み、タブラは水たまりに生まれる足音のリズムのように.....


日常の何気ない物事のなりゆきにさえつまづく、そんな人々を歌っているような、

悲嘆と郷愁の哀歌、今日のような雨にどっぷりの日がこの音楽に迎わせた。


アルバム・タイトルは「Gone」。

そうなんだね、還らぬ時と郷愁を奏でているんだね、きっと。





166 / 365

2010.9.27

Bored Civilians / Keith Cross & Peter Ross

Decca 1972



きみは日曜日の雨の日、ロンドン、ポートベローの通りを歩いたことがあるかい、

土曜日のマーケットの賑わいはなく、ぽつりぽつりと灯りの見えるパブや

アーケードの店の一部に開いているところはあるものの、

そぼ降る雨にその道はロンドン市内によくある、

少し店はあるが、なんということはない、どちらかというと淋しいただの通りだ。

じゃ退屈かいって、いやノッティング・ヒル近辺の住宅街にある

その道の日曜日は、都会のどこにでもある住宅街の日常の風景でいい具合の静けさだ。

月曜日の朝だってそうだ、とくに雨の日と月曜日が重なった今日のような日の、

その通りは、この音楽にも似て.....。







165 / 365

2010.9.24

Rags / Lindsay Cooper

ATC Records 1980



永遠に未完のメロディを宿しつつ、開かれたままになったピアノ、あれで....

あれで曲は作りません、あれは見てるだけ、ここにあるオーボエとフルート、

たまにサキソフォン、ソプラノの...を吹いて作るんです。




と彼女は言ってないが、このリンジー・クーパーのアルバム「Rags」を聴いていると、

そんなふうに、和音=コードを鳴らしてメロディに乗せるというよりも

一音一音が波のように揺らいで曲になっている感じがする。

バスーン、ソプラノ、ソプラニーノ・サックス、オーボエ、

フルート、キーボード、アコーディオン、それに1曲だけドラムをプレイしたと

クレジットのあるこのアルバムの主人公はリンジー・クーパー。



時々聴こえる不思議な歌声はゲスト・ヴォーカルの男女、

リンジー・クーパーは歌っていない。

他に入ってる楽器はトランペット、チェロ、ドラムにクリス・カトラー、

ベースにジョージ・ボーン、そしてフレッド・クリスがギター、

アヴァンギャルドなロック・シーンで知られる彼らの参加はヘンリー・カウというバンドからの流れ。



イギリスの1979年の"The Song Of Shirt"というフィルムのための音楽とある。

なる程、タイトルには"縫い込まれていく糸"なんていう曲もある全18ピース。

難解な音楽、だからこそパズルを解くように何回も耳を傾けたくなる。





164 / 365

2010.9.22

No Home Is Really Happy Without Them / De Danann All Stars

Shanachie Records Inc. 1989



気分はこうだ。

ずっと昔にアメリカに移住したアイルランド移民の.....

南部の山岳地帯、アパラチアで音楽を楽しむ人々の.....。


夏の戻った日の午後、日暮れ前、

手持ちの楽器、フィドル、フルート、アコーディオン、ブーズーキ、ギター、

ボウドラン、バンジョーを持ち寄って始まる音楽に合わせて踊る人々の.....。



はるか昔にアメリカに持ち込まれた音楽、

心の底からただ音楽を演奏する、故郷アイルランドに思いを馳せ、

ずっとずっと寂しい気持ちを込めて演奏し始める、

その時、アパラチアの山高く、もの哀しくサウンドが響く.....。


リール、ジグ、ホーンパイプ、スロー・エアといったリズムによって

ステップを変え、あぜ道をクロスロード・ダンスは続く.....。


ケルトのトゥアハ・デ・ダナーン族からとられたグループ名を持つデ・ダナン。

アイルランド、ゴールウェイのパブでのセッションからスタートしたという

彼らはアイルランド・トラディショナル・ミュージックを素材にした

フォーク・バンドで、1975年から活動している。



ここで演奏される"ヘイ・ジュード"は後半、ホーンパイプと呼ばれるダンス・リズムにアレンジされた

アイリッシュ・カントリー・ミュージック仕立てのビートルズ・チューン。

このグループ(アイルランド・トラディショナル・ミュージック)にアレンジされた

その曲("ヘイ・ジュード")を聴いてみたかったのが、このアルバムを手に入れた理由。

結果、19世紀のいつかの日の、アメリカ南部、アパラチアのアイルランド移民の楽しい夕べに巡り会えた。





163 / 365

2010.9.17

Suspending Disbelief / Jimmy Webb

Electra 1993



8曲目に収められている"Postcard From Paris"を聴くために

何度も何度もアルバムをプレイ・バックする。

するとそこまでには、エルヴィス、ウォーレン・ジヴォン、

ローウェル・ジョージに影響を受けたロックン・ローラー、ジミー・ウェッブがいる。

そして8曲目のパリで買った絵葉書を飛行機の中で書いている男の歌に耳が止まる。

くり返しくり返し、懐かしい友人から送られてきた絵葉書をいつくしむようにその曲に耳を傾ける。


ニューヨークからローマ、パリへ旅に出た男が、

ロンドンに立ち寄って、帰路の飛行機の中で書いた思い、

.....パリはまるで絵葉書のよう、エッフェル塔に登って、

ノートルダム寺院では祈った、シャンゼリゼ通りでは恋人たちが手をつないでいたよ、

このひかりの街は素晴らしい... きみがここにいてくれたら......

何度も何度もくり返し聴いていると、ひとり旅をしている気分の自分がいる。

その8曲目の"Postcard From Paris"からラストの11曲目、"I Will Arise"と

ずっと秋の深まりを感じさせるような静かな曲が続く。


僕がこのアルバムを最後に聴いたのは1993年の秋、函館の港の見える丘だった。

古い港町に異国の絵葉書の歌、そこに何年か前の秋の最初の日があったのを鮮明に覚えている。


さて、しばらく東京をあとにしてみよう、

アルバムのページに戻ってくるのは9月22日だ。

see you next week!






162 / 365

2010.9.16

In Search Of The Trojan War / Terry Oldfield

BBC Records 1985



昨夜はずっと雨だった。

今朝も降り続き、明日もあさっても雨が.....


ガルシア・マルケスの小説「百年の孤独」に登場するマコンドの村の雨のように

くる日もくる日も降り続き、いつしか何100日もずっと雨、

今日がいつの日か分からなくなる.....

なんていうことはなく明日には晴れているだろう。

日々、あちこちに溢れる天気予報情報がそう言っている。


貴重な雨の日だ。そんな、どんよりとした朝が導いてくれたのは

テリー・オールドフィールドの音楽、「In Search Of The Trojan War」。

イギリス、BBCが制作したギリシャの伝説、

トロイ戦争のドキュメンタリー番組のために作曲された音楽。



..... オールドフィールド、そうなんだ、

あの一人多重録音で完成させた「チューブラー・ベルズ」で

名を馳せたマイク・オールドフィールドのお兄さんだ。

サリー・オールドフィールドという、

こちらもまた何枚もアルバムを録音しているお姉さんもいる。


ギリシャのイドラ島に住んでいたこともあるテリー・オールドフィールドは

インド音楽も学んでいて、ここでもタブラを使ったり、フルート、パンパイプを吹き、

壮大なシンセサイザーでフレーズを多重録音している。

ギリシャ神話、昔の魂のさまざまな形を重ねた音の層は、雨の日の讃歌のように響いた。





161 / 365

2010.9.15

The Rout Of The Blues / Robin & Barry Dransfield

Trailer 1970



ここでのブルースは、アメリカの黒人のそれではない。

南イングランドのソールスベリー平原のブルース。

ヨークシャー州の住人からロビンとバリーの兄弟が学んだブルース、

"The Rout Of The Blues"。

他にもイングランド、スコットランド、

アイルランドに伝わるトラディショナル・フォーク・ソングを

レパートリーにしたバリーのフィドル、歌、兄ロビンのギター、歌の2人組。



イギリス、リーズという街を中心にフォーク・クラブを回って

レパートリーを増やしていった若き二人はヨークシャー生まれだが、

アイルランドにルーツがあるようで、その国独得の英語の節まわしが感じられる。

あのサイモン&ガーファンクルで有名な"スカボロ・フェア"だって、

ここで歌われるのはダウナーなメロディの全く違うメロディのヴァージョン。

渋いフォーク・ブルースだ。


まだ暗い森、そこを数多く、鳥の飛び立つのを目で追うロビンとバリー、

朝の光がわずかに差してくる....。

このアルバムとの巡り会わせは今朝の東京の空気にピッタリとパーフェクト・フィット。

そこの森に、イングランド、ソールスベリーの平原のストーンヘンジの石に、東京の空の下に.....。

The Rout Of The Blues、ブルースの群れ.....。





160 / 365

2010.9.14

All Harm Ends Here / Early Day Miners

Secretly Canadian 2005



見るのを視ることはできる。

聴くのを聴くことはできない。

- M.D.




M.D. ? 誰だ、

マルグリッド・デュラス、

いや違う、マルセル・デュシャン。



エレクトリック・ギターのアルペジオに絡むタム、スネア、

シンバル、ハイハット、ベースはさり気なく、

気がつくとオルガンも、

淡々としたヴォーカルは


「のどが渇いているのかい」

ときく。


「ああ」

と答える。


「そう、じゃあ、冷たい水をぐっと飲んで.....」







159 / 365

2010.9.13

Like An Old Fashioned Waltz / Sandy Denny

Island 1973



おっと、うっかり聴き逃すところだった。

夏の名残りのある日々、

そんなひとつ季節が過ぎ去ろうとしている一日に、この名作を。



人はみな生まれた時から孤独なもの

それぞれの道をぞれぞれに歩み

そして一生を終えてゆく

人生は一人旅

そうじゃないかしら.....




夏が逝って次のシーズンへ

去りゆく時と郷愁.....


そして夕暮れにはいちばん大切な人を思い、旅を続ける一人の女性、

そんな女性を描いたアルバム、「Like An Old Fashioned Waltz」。

女性シンガーソングライターのなかでも

No.1ではないか、ソングライティング、アレンジ、声と、

どれをとっても素晴らしい、サンディ・デニーという人は。


30年、40年が過ぎ去っても、

秋の訪れを告げる名作中の名作、

「Like An Old Fashioned Waltz」。



イギリス、ロンドンの近く、ウィンブルドンに生まれた彼女は

ティーンの時からギターを抱え歌い始め、ストローブス、

フェアポート・コンベンションといったフォーク・ロック・バンドに参加しソロ・デビューへ。

自らのバンド、フォザリンゲイを結成するも、その後、彼女はまたソロ活動に。

その後またフェアポート・コンベンションに復帰したり、

親しい友人のようなミュージシャンたちとソロ・アルバムを4枚残した。


そして20代の若さで友人の家の階段から落ちて亡くなってしまう。

この素晴らしいソングライター、シンガーが存命で今でもずっと活動していたとしたら、

年齢と共にどんな歌声を残してくれたんだろうか、

本作は73年に発表の3枚目のソロ・アルバム。


朝、夜は涼しくなってきた、

夏の終わりに、過ぎゆく夏を歌うアルバム聴く、

旬を聴く。






158 / 365

2010.9.10

Paul Kent / Paul Kent

B&C Record 1971



セプテンバー・プロダクションとはよく言ったもの。

このアルバムはそこでエンジニアを務めていた

ジュリー・ボーイズがポール・ケントと制作した一枚。

セプテンバー・プロダクションだ、9月の今、この時に聴いておこう、

旬のものだ。


というわけではない、近所に"十二月文庫"という古本屋さんがあるが、

12月の本だけを揃えている本屋さんではないし、

ストーンズのコンピレーション・アルバム「December's Children」だって、

ちゃんとand everybody'sと付けられている。


ポール・ケントのピアノと歌の静寂にしのび込んでくるベース、

ハイハットにスネア・ドラム、3、4人のコーラス、リズムはしっかりキープされ、

ティム・レンウィックのエレクトリック・ギターのトーンは伸びやか。

ハーモニカもサックスもクラリネットも入ってくるが、

基本的にドラム、ベース、ピアノ、ギターのリズムの組み合わせでのシンプルなバッキングで

ポール・ケントの軽快なヴォーカルを際立たせている。



どちらかというとポップなフォーク・ロックだが、

不思議な詩情を漂わせるアルバム。

ポール・ケントさん、貴方のこの一枚を聴くと

まだ暑さの残った9月の芝生の上に寝転んで、

ひとり言をつぶやいている自分がいるんです。


「古い友が忘れられるだろうか、いやとても忘れられない」





157 / 365

2010.9.9

Ernie Graham / Ernie Graham

Liberty Records 1971



全く、空気感というものは聴きたい音楽を選ばせる。

今朝はすっかり"秋"になっていた。

天気予報によると今日だけらしいが.....。

この曇り空はイギリスだ、ロンドンの朝だ。


そこで昨日用意していた数枚のアルバムは置いたままにして

アーニー・グラハムの「Ernie Graham」のアナログ・レコードをターンテーブルで回す。

数本のアコースティック・ギターが淡々と刻まれ、

"セバスチャン、セバスチャン、これはきみの歌なんだよ..."

とねちっとした少々しゃがれた声が。



黒いビニール盤は回り回る、"ターン、ターン、ターン"、

まるで季節が巡ってくるように回り、回る。

いつしかハイド・パークのベンチで、うとうとしている自分に気ずく。

"セバスチャン、セバスチャン、これはきみの歌なんだよ..."

はっと目が覚めて、カレンダーを見ると

その最初のフレーズを耳にしてから300年経っていた。


ブリンズリー・シュワルツやヘルプ・ユアセルフという

イギリスの渋いロック・バンドのメンバーを従えて、

アイルランド、ベルファスト生まれのアーニー・グラハムは、

明日はまた夏がやってくるとも知らずに、

ねっとりしっとり公園に枯葉のじゅうたんを敷いてくれた。





156 / 365

2010.9.8

Rattlebone & Ploughjack / Ashley Hatchings

Island Records 1976



シャーウッドの森でロビン・フッドに出会ったのはいつだったか、

ルイス・キャロルことチャールズ・ドジソン教授が9月のとある雨の日、

オックスフォードの緑の丘の上を傘を差しながら、

写真機を抱えて歩いている姿を見かけたのはいつだったか.....。


そんな話ではなく、ここはレコードの話をしなければ。

レコード? 何ですか、それは、ああCD、シィディ? A B C D...?

いやいやネットでダウンロードして.....ダウンロード...。


そんな言葉とは無縁の、イギリスに伝わる祭りや催し物の時に踊るモーリス・ダンス、

そこに寄り添うダンス・ミュージックが今朝の音楽。

といってもあのダンス・ミュージックじゃないよ、

きみが小学生の頃のフォーク・ダンスだよ、

"誰かさんと誰かさんが..."というような。



イギリス訛りの英語(英語なのに)のナレーションに導かれて

カントリー・ダンス・ミュージックが聴こえてくる。

スプーン、木の棒、スネア・ドラム、木ぐつ(クロッグス)のステップがリズムを刻み、

コンサーティナ、メロディオン、フィドルがメロディ、ハーモニーをつける。

そしてまたまたツバを飲み込むような英語のナレーションが登場してくる。

時にバンジョーと歌、ハーモニカと足ぶみ、バグ・パイプやエレクトリック・ギター、

ベース、ドラムもあるぞ、この不思議なフォーク・ロック・ダンス・ナレーション・アルバム

をまとめたのはアシュレイ・ハッチングスという人。


ロンドン市内からすぐのマスウェル・ヒル(僕は勝手に東京でいうと用賀だと思ってる)で

スキッフルやブルースが人気の時代に育ったこの男が、

キンクスのようなバンドを作ってもよさそうなのに

そうはならずに、英国民謡ロックの探究に入っていったのは

リチャード・トンプソンやサンディ・デニー、ティム・ハートやマディ・プライア、

そして妻だったシャーリー・コリンズやジョン・カークパトリックといった人たちとの

音楽交流があったからだろう。


フェアポート・コンベンション、スティールアイ・スパン、

アルビオン・カントリー・バンド... とバンドを結成してはそこを辞めていく...

フォーク・ロックの断片男、フォーク・ロック大学の教授、

ヒューマン・コラージュ、このアルバムもコラージュだ、

英国の民衆音楽の音を借りて断片だらけこの世界を表現している。


最高の傑作だ。えっ、毎日、どの最高のアルバムだって言ってるじゃないかって。

そうなんだ。それを聴いているものだから.....。






155 / 365

2010.9.7

a beach full of shells / Al Stewart

Appleseed Recordings 2005



秋が最初にやってくるのは海か、山肌からか、空の、あのうろこ雲からか.....

..... 僕には音楽からやってきた。

今朝はアル・スチュワートという人の音楽に最初の秋の訪れを感じた。


頼りない歌声、カタカナで発音しているような英語、

少々下世話なマイナー・コード多用の曲.....

なんだ、じゃあ良くないってことじゃないかって。

いやそれらのすべてがいいんだ。


秋だ、秋のものだ。


心細く、寂しくなるその季節、

アル・スチュワートの歌声はそこにはかなく流れていく。


スコットランド、グラスゴー生まれのアル・スチュワートは

60年代にイギリスの音楽シーンに登場、

若くして渋い、しかし内省的な言葉を赤裸々に綴ったフォーク・アルバム

「Love Chronocles」を発表し、70年代に入ってアラン・パーソンズを

プロデューサーに迎え、独自のムーディなフォーク・ロック作品を発表するも

その中途半端なポピュラー路線は注目されず、音楽ファンの前から行方不明になった。


ところがアル・スチュワートはずっとマイ・ペースだった。

アメリカ、カリフォルニアにいてアルバムを発表し続けてる。

カリフォルニアに暮らし、ワイン・エキスパートになり、

2005年にはワインを賞賛した全編ワインに関する詩が歌われたアルバム

「Down In The Celler」も発表していた。

「a beach full of shells」はそんなアル・スチュワートから

2005年に届けられた絵葉書のような一枚。



1915年、イギリスのどこかの港町の古い駅のプラット・ホームで夢を見た男の話、

"Somewhere In England 1915"。

男にはひと組のカップルが別れを惜しんでいるのが目に入る、

夢の中でいつの間にかホームに入ってきた汽車は船になっていて、

プラット・ホームは貝殻いっぱいの海辺の砂浜に.....

アルバム・タイトルの「a beach full of shells」は

その5曲目"Somewhere In England 1915"の中の一節、

90年前に見た夢を回想する男の話、去りゆく時間と郷愁が歌われる.....


秋だ、秋のことだ。





154 / 365

2010.9.6

Bobby Charles / Bobby Charles

Warner Bros. 1972



このアルバムの主人公の男はスイカをハーモニカを吹くように食べている。

このアルバムの主人公の男は川辺で犬にジャレられ

鼻をなめられているところをジャケットにした。



最高に気さくだ。ざっくばらんにスタジオでセッションされた音、

参加ミュージシャンは多いがサウンドは至ってシンプル、この上なく自由だ。


ニューヨークからニュージャージィを通って2時間少々、

山あいを行くとベアズヴィルの小さな町がある。

あのウッドストック・フェスティヴァルの丘とは少々離れているが

いつしかウッドストックと言われるその辺り、

そんなスモール・タウンにあるレコード会社、ベアズヴィルからの便り。


ルイジアナの音楽と酒にどっぷり浸かってる田舎たい男が、

少々オシャレ(でもないのだが)なロック・スタイルでレコーディングすると、

両者が混じり合い丁度いい具合。



"All Musical Arrangements Homemade"、なぁんだクレジットに書いてあるじゃないか、

ホームメイドでリラックスしたボビー・チャールズの歌やジョン・サイモンや

ザ・バンド、ウッドストックのミュージシャンの渋い演奏、最高のアルバムだ。





153 / 365

2010.9.3

Fifteen Vespers / Manos Hadjidakis

EMI Greece 1973



ついに来た、何故今朝だったのかは分からないが、

僕の持っているすべてのレコード、CDの中でベスト・ワンを聴いた日が。


気に入ったものや好きなものにはあまり頻繁に接しないようにしている、

それに慣れてしまったり、その細かいところまで覚えてしまうと、

イメージよりも現実を把握してしまうから。


そんなことで聴かないでずっとしまっておかれたマノス・ハジダキスの

「Fifteen Vespers」が今朝、2010年9月3日、

(9月2日の次の日だ。あたり前だ、明日は9月4日だろう。)

部屋の空気を伝わり耳に、いや心にと言ったほうがいいだろう、入ってきた。


マタゲ、ハギノ..... ハギタリス、いやちがう、マノス・ハジダキスだ。

覚えられなくて普通だ。(ミキオ・テオドラキスという音楽家もいる)

ギリシャの映画音楽作家だ。

古いギリシャ映画のテーマ曲、"日曜はダメよ"は御存知の人もいるかもしれない。

そのテーマ曲を作った欧米ではよく知られた巨匠だ。


普段はオーケストラ・スコアを書き、指揮する人がここでは

グランド・ピアノを弾き、ハープの女性、ガット・ギター2人に

コントラ・バス・プレイヤーとスタジオでの同時録音セッション。



織物のように重なっていくアコースティック楽器のメロディは、

いつの間にかマイナーからメジャー・コードへ、

メジャーからマイナー・コードに、気づかずに変化していく、

そう日々の出来事のように、季節の移ろいのように、とても繊細に。


15曲の宵の明星 = Fefteen Vespers は、

これから世の中の大きさを学び始めるマノス・ハジダキスの息子に捧げられている。


「それで、やはりベスト・ワンの一枚でしたか。」

「そうなんだ、」

「それで、無人島へ持っていくなら、これですか。」

「いやいや、何も持っていかないよ、イメージがあるから、きみ、イメージがね.....」





152 / 365

2010.9.2

Geography / Stephen Whynott

Music Is Medicine 1978



ずっと続く大地、そこをずっとずっと歩いていくような気分にしてくれるアルバム。

何本も重ねられたアコースティック・ギターとヴォーカル・ハーモニー、静かにうねるサックス、

モデラート・カンタービレで進むステファン・ワイノットの歌、それらとずっとずっと歩いていく。


暑い8月は過ぎ、9月は秋に辿り着こうと身をかがめているよう、まだ2日目だけど。

暑気は、今日もまだまだ8月の続きだと言わんばかりに

その太陽の光りで大地の道のじゃまものをとりのぞき、

地平線に向かう巡礼者の前に陽の光の輪をつくる。

ステファン・ワイノットの織物のようなアコースティック・ギターと

テナー・ヴォィスに導かれて9月の初めの大地の道をずっとずっと歩いていく.....。



マサチューセッツ、ボストンからワシントンへ移った

アメリカン・シンガー・ソングライター、ステファン・ワイノットの

2作目の手作りアルバム「Geography」。





151 / 365

2010.9.1

A Simpler Time / Michael Katakis

A&M 1977



伯父さん、散歩ですか、木陰を選んで。

白い長袖のシャツに白い帽子、さすがに上着を着てると暑いですよね。

久しぶりにこの道で会いしましたが、ジャケット写真のあなたの姿は変りませんね。



ガット・ギターとピアノに味のある歌、時々聴こえる静かな女性コーラス、

小編成のように聴こえるストリングス、

ニック・デカロがアレンジした弦楽は22人もいるんですね、でもとても慎ましい。


人生に起こる初めてのものに接する喜びや移ろいゆく季節のように

すべてが去ってゆくことをアルバム一枚でトータルに表現している。

様々な出来事がある人生、それをシンプラー・タイムと歌って、

去りゆく時と郷愁を捉えた素晴らしい一枚。

マイケル・カタキスさん、僕はあなたの音楽を知ってずいぶん長い年月が過ぎましたが、

あなたがどこの誰かは、これまた全く知りません、何十年も。


部屋に差し込む光が変っている

公園の緑の木陰は以前より涼しく

9月は、ゆっくり1ヶ月かけて次の季節へと僕たちを運んでゆく

今日も暑いよ..... そうでしょ、でもいつの間にか.....。





150 / 365

2010.8.31

David Tyack with Richard Tomlinson and Naomi Hart / David Tyack

Twisted Nerve 2001



ディヴッド・ティアクはダコタ・オークというユニットの人だ。

いやダコタ・オークがディヴッド・ティアクのユニットだ。

といってもディヴッド・ティアクだけの(たぶん)。

バッドリィ・ドローン・ボーイのレーベル、トゥイステッド・ナーヴから

数枚のシングルやアルバムを発表している。


これはディヴッド・ティアク名義のアナログ・アルバム、2001年製。

同レーベルのmum & dadのメンバー(たぶん)、ナオミとリックとデイヴという人を

ゲストに迎えて、アコースティック・ピアノ、ギター、チェロ、トランペット、

歌少々が小さな部屋で同時録音されたもの。

ちゃんとアレンジされた、つま弾き。ちゃんと歌われた鼻歌だ。



ギターのつま弾きリズムにチェロのピッチカートとロング・トーンの

カウンター・メロディが交差する1曲、"Avenue"。

まさにダコタ・オークの森に入ってゆく時に流れる行進曲のようにゆったりとしている。

ヴァージニア・アシュトレイが小編成のバンドで音を出し始めたらこんな感じだろうか。

アナログ・レコードA面には11曲。そしてB面には、B面にはA面がそっくり収められている。

つまりこのアルバムはA面だけ。



かつてダコタ・オークはニール・ヤングの"Helpless"をヨレヨレにカヴァーしていたが、

ここでもタウン・ヴァン・ザントの"Colorad Girl"をのんびりと歌っている。

ところでダコタ・オークって誰?

よく知らないんだけど、音以外は。





149 / 365

2010.8.30

If You're Lonely / Eric Justin Kaz

Atlantic 1972



エリック・ジャスティン・カズという名前の響きはいい感じだ。


2曲目に入ってるアルバム・タイトル曲が"イフ・ユア・ロンリー"、

いいタイトルだ。

歌詞の中に次のようなフレーズがある。

"Every Clown Lost In Every Town... 道化は何処でも路に迷う"、

クラウンとタウンの韻を踏んでいるだけだ。

If You're Lonely...... きみが淋しくてどうにもならなくても、僕にはどうにもならない、

気を楽にしよう、物事はあるがままだから...

そうだ、僕たちは日々の韻を踏み続けて進んでいる。


デオダートによるストリングス、ゴスペル・フレーバーのソウルフルなコーラス隊、

シンガーソングライターぽくないポップなプロダクションなのに、

とても手作り感のあるシンプルなサウンドと歌、

エリック・ジャスティン・カズによる朴訥ともいえるピアノと歌、

"きみが淋しいのなら、その理由を話して、僕のと一緒にしまっておくから"

とアルバム一枚で、そう語ってるように聴こえる。


「If You're Lonely」というアルバム・タイトルの響き、

いい感じだ。





148 / 365

2010.8.27

Waxie's Dargle / Harbour Folk

Polydor 1969



早朝、これから訪れる秋の日を感じさせる空気が漂う。

季節はその得もいわれぬ次の季節のイメージを

いまある季節の真只中に心にむすびつける。

そのようなことに気づきもせず小鳥は朝からさえずり、

夏に咲く花はきびしい陽射しに照らされても

今日も元気にその大気を楽しんでいる。



今朝はそのような自然の中で、終わりなきごとくギターを弾き歌うことにいそしむ、

優しさ、希望(のぞみ)ごころを喚起(よびおこ)す

女性4人のフォーク・グループのアルバムを聴いた。



どこの海岸で憩っているのか、4人の女性は揃ってブルーのスカートにブーツのユニフォーム姿、

昔のフォーク・グループのスタイルだ。

しかしアイルランド、ゲイル語やイングランド、ウェールズの方言で

歌われるフォーク・ソングは少しも古くはない。そこの道端に咲く花のように。


1曲目"There Is A Ship"はトラディショナル・ソング、

"Water Is Wide"の別名だ。

そこに船がある、ここに歌がある、ただそれだけ。





147 / 365

2010.8.26

Sound Image -a magazine of aural and visual art- / Various

Sound Image 1975



何かを喚起してくれるもの、人、

何ごとかを触発させてくれるモノゴトは楽しい。


今朝の一枚はそんなアルバムだった。

何を呼び覚まされたか、

"旅"だ。

それも見知らぬ外国。

初めて訪れる土地での異邦人気分が味わえた。



耳が眼と出会う、というのが

この「サウンド・イメージ」というシリーズのコンセプト。

エオリアン・ハープ、中近東の笛、

マダカスカルのフォーク・ミュージック、

アフロ・アメリカンのパーカッションに聴いたこともない言葉の合唱.....。



ハード・カヴァーの見開きのジャケットにはポケットがあり、

17枚もの立派な紙質にプリントされた写真が付いている。

レコードにも8ページの解説、サウンド・イメージというのは

アメリカ、マサチューセッツにあるこのアルバムを発売したフィルム・アート会社のようだ。

それをこのシリーズ(といってもこのアルバムとVOL.2「Greece」があるだけのよう)の

アルバム・タイトルにした。


いつ、どこで、どうやって手に入れて今手元にあるのか全く思い出せない。

異国情緒溢れる中近東の国の石畳の上で見知らぬ人に手渡しされた一枚、

と勝手に思い込んでいる。





146 / 365

2010.8.25

Under The Blanket / Pisano & Ruff

A&M 1970



朝日のように爽やかに、

午後の陽射しのようにのんびりと、

夕涼みという言葉がある時刻に、

夜、ウイスキーがお好きでしょ、

そうですね、いい味のものなら.....




John Pisano : guitar, bass, percussion, piano

Willie Ruff : horn, bass, hambone, percussion, vocal, guitar

それに少々のセッション・ミュージシャンの押さえた演奏、

このようにシンプルに在る。


ご機嫌よう、パイザノとラフ、

また次回聴く時まで.....





145 / 365

2010.8.24

流されて -Swept Away / Original Soundtrack

Leters International 1975
SCL Japan 1995



今朝はかなりムーディな映画音楽を選んでしまった。

天気予報によると今日もこれから晴れるのだろうが、朝は雲に覆われた空。

青になる前の淋しそうな白い空、

そこでこのサウンドトラックを選んだわけではないと思うが

(自分でもわからないので他人の事のように)

ここから流れてくるのはマイナー・メロディの洪水、哀愁の波。


イタリア映画「流されて」のサウンドトラック、音楽はピエロ・ピッチオーニ。

原題は"Travolti Da Un Insolito Destino Nell' Azzurro Mare D'agosto"、

八月の紺碧の海で、常ならぬ運命の逆転といったところか。

映画も観た。B級ムーヴィだった。

ヨットでヴァカンスを楽しむ実業家夫人と使用人が流された無人島、そこで立場は逆転する。

ありがちなストーリーがずっと八月の海と空と砂浜のロケーションに続く。



テーマ音楽はボサノヴァ、多作なイタリアの映画音楽家の大胆な

マイナー歌謡メロディを奏でるギター、フルート、トランペット、女性コーラス、

ストリングス、ときにアカペラで、ときにそれらは絡み合い、マイナーの和音で哀感に満ち、

太陽がいっぱいの夏に忍び寄っている秋の気配を感じさせる。



日本版のCDは海をイメージする青が美しくコラージュされたブックレットに

映画の各シーンが使われたとてもよく出来たもの。

今朝はこのアルバムに流れていってよかった。





144 / 365

2010.8.23

lake boon retreat, ep / minnetonka




かつてミネトンカを紹介するのに、"ナメトンカ"と書いたことがある。

A面かB面か、何も書かれていないレーベルの盤に針を落とす。

人の気配の音と共に、ボコッと何かにマイクがぶつかる音がする、ナメトンカ。



ギターをとり囲んで何人かが細々と歌を歌っている。ポロン、ポロンと。

ジャケットは大学ノートにペンで書かれた自転車のイラスト。

裏にはブーン湖周辺のイラスト(ホントにあるのだろうか)と手書きの地図、ナメトンカ。



ホントウに存在する場所なのだろうか、それとも.....。

ミネアポリスの西にレイク・ミネトンカはあるという。

ミシシッピー川の源流には一万もの湖があるらしい、

その地域はランド・オブ・テン・サウザンド・レイクスと呼ばれている。

そんな湖があるのかな、と思っているととなりのウィスコンシン州には1万5千あるという話だ。


自然に囲まれた土地で、のほほんとした音楽に充分なめられていい気分、ナメトンカ。

週明けずっと続く猛暑日、ミネトンカと、どの至純の精気をくらう。



セカンド・アルバムらしき「minnetonka」もイラストのジャケット、

そこにはOrchard Street Sounds 〜果樹園造りのサウンド、と書かれている。





143 / 365

2010.8.20

Summer Into Winter / Ben Watt

Cherry Red 1982




夏から冬へ。

えっ、秋は何処へ

春は.....


ウォルターとジョンは長い間友だちだった

7歳の時に初めて会った

庭にテントを張った

寒かったけどすごく楽しくて

一睡もできなかった

きみは言う、大切なことは何なのか


ウォルターとジョンはいつも一緒

お互いの心は兄弟のように近かった

10代になっても手に手をとって

遠くの絶壁の海へとスキップしていった


「何処の海だい?」

「ノース・マリン・ドライヴさ、イギリスのブライトンだ」

「ところで秋や春は.....

「その季節はこのミニ・アルバムに入ってる」





142 / 365

2010.8.19

Island / Cyrus Faryar

Electra 1973




ブラッドベリィ・トラベルは常夏の国への旅をお約束します。

このアルバムはどこを聴かれても"夏"を味わえます。

あの、どのページをめくっても夏が封印されている本の中のたんぽぽのお酒のように。

1973年に製造され、夏休みの旅はこの一枚に封じ込められました。


イランのテヘランに生まれたサイラス・ファーヤーは

ギターをペルシャ湾を渡るヨットの上で覚えたという。

ほんとうか。


父親が外交官で世界20カ国を転々として母親と暮らし始めた場所はハワイ。

ホノルルで始めたコーヒー・ハウスの名前がグリーンスリーヴス。

ほんとうか。


フォーク・グループ、モダン・フォーク・カルテットに参加してニューヨークから西海岸に。

L.Aの住まいはザ・ファームと呼ばれ、ミュージシャンのコミューンのようになっていたという。

その家を建てるのを手伝った人たちの中には、俳優になる前のハリソン・フォードもいたという。

ほんとうか。


1曲目は"Bright Island 〜 So We Sailed 〜 On The Sea"、

2曲目は"Dolphins"、他に"Livin' In A Land Of O'Sunshine"に

"Paradise"、最後は海に訪れる夕焼けの歌、"At Sunset"。




寄せては返す波のようなゆったりとしたリズムがアルバム全編を包み、

たおやかな安らぎに満ちたサイラスの声がその波間に浮かぶ、

このアルバムには豊かな夏がたっぷりと封じ込められている。

ほんとうだ。





141 / 365

2010.8.18

Salt, Sun & Time / Bruce Cockburn

True North 1974




暑さも絶頂を極める日々もまた楽しい。

あの照りつける陽射しの道にわずかにできる、家並みやビル、

木々の影、そんな場所を選んで歩くように音楽を選ぶ。


ブルース・コバーンのアルバム、Salt, Sun & Time、

日本語にすると、塩と太陽と時。

いい響きだ。



僕にとってすべてだと思えるこの世のダイヤモンド、

それは大海原にきらめいている風と太陽の光の魔法に呼びよせられているもの.....


1曲目、そんな歌詞で始まる"All The Diamonds In The World"は波について歌ってる。

続くアルバム・タイトルにもなっている"Salt, Sun & Time"は

ギターだけのインストゥルメンタル。



ブルース・コバーンのくすんだ声に続くギター・インスト、

暑い夏か、それはいいじゃないか、きみはずっと昔のどこまでも続く

夏休みのイメージが好きだろって語りかけてくれる。





140 / 365

2010.8.17

A Bao A Qu / Virginia Astley

WHY 1982



From Gardens Where We Feel Secure / Virginia Astley

Happy Valley 1983



その日の光や、空気や、流す時間で音楽を選ぶ、

それが季節とピッタリと合うと至福の時をもたらす。


寝苦しい夜だった。

朝、窓を開けても風の気配すらない。

音楽で思っきり暑さを倍増させるか、

清涼を運んでくるものにするか、

..... 今朝は後者にした。


昨日のドリー・ミクスチャーが導いた

ヴァージニア・アストレイのアナログ・レコード畑。

何枚かあるEP盤や30cmシングル、LP盤、編集ものだったり、

再演されているものがあったり、どれがどれかよく分からないまま

アナログ・レコードが畑に育ったままの野菜のようになっている。



写真にペインティングされた美しいブルーのジャケットの10インチEPレコード

「A Bao A Qu」の1曲目はザ・フーのピート・タウンゼントの娘たちのソプラノが清楚に響く。

アルバム「From Gardens Where We Feel Secure」の始まりは

オックスフォードシャーのマンスフォードとサウス・ストークという田園で、

1982年4月25日朝、5時30分に収録された小鳥のさえずりだ。


ヴァージニア・アストレイはロンドンの近く、スタンモア生まれで

14歳でオックスフォードシャーに引っ越し、ピアノ、フルートを学び、

音楽学校へ通うために再びロンドンへ。

ケイト・ST・ジョンとニッキー・ホランドの2人とラヴィシング・ビューティーズを結成し、

クラシカルな、ほんの少しポップな音楽を目差していたようだ。

残念ながらそのグループの音源は発表されていないが、

その後のケイト・ST・ジョンとヴァージニア・アストレイのソロ作を聴けば想像がつく。

クラッシックの素養がありながら、形式に囚われずアンビエントな、

明るいダウナーな室内楽、それが彼女の音楽。





139 / 365

2010.8.16

The Fireside E.P. / Dolly Mixture

Cordelia Records 1984



ピアノ、チェロ、ヴァイオリンによる室内楽。

ジャケットにはドレス・アップした3人の若い女性の笑顔の記念写真。

A面3曲、1曲目は"Coriander - Let's Cook!"、

ハープのコリアンダーのことだ。料理しましょうって。

B面にも3曲目、1曲目は"Three O'clock Rhapsody"、3時のラプソディ.....。


ヴォーカルが入っているのはA、B面に1曲ずつ、

あとはヴァージニア・アシュトレイを想わせるクラシカルな室内楽。

ヴァージニア.... 知らないよ、そんな名前って。

その人のアルバムは明日聴くことにしよう。



ところでこのドリー・ミクスチャーはパンク衰退期のイギリスに

登場した女性のギター、ベース、ドラムの3ピース・バンド、

小っさゃなリハーサル・スタジオでドタバタ演ってるタイプだ。

キャプテン・センスティヴのバック・コーラスも務めていた。

Fireside E.P. ... 暖炉の前で... いやいや夏の早朝に聴いた。

とても涼しかった。

ガールズ・パンク・バンドのクラシカルな室内楽、それはいい。





138 / 365

2010.8.13

Smile / The Beach Boys

1967 Unreleased Version
Sea Of Tunes



2010年8月13日、夏の曇り空の下、スマイル号は船出した

ずっと空と海が続く

船内の娯楽ルームにはオモチャやゲームがいっぱい用意されている

デッキに出れば、波また波

百の真新しい釣針をつけた美しい線が空に架かる

海は凪いだ

数えきれぬほどの耳が詩に開かれた


1967年の船旅は素晴らしかった

2004年にもう一度、同じ海路を辿ってみた

あの時の感激はなかった


ブライアン・ウィルソンの未完の告白


ビーチ・ボーイズのメンバーを好きな順に書いてみる。

ブライアン・ウィルソン、デニス・ウィルソン.....

なんだ、もう順番が変ってる。





137 / 365

2010.8.12

Pacific Ocean Blue / Dennis Wilson

Sony Music 2008



ビーチ・ボーイズのメンバーを好きな順に書いてみる。

デニス・ウィルソン、ブライアン・ウィルソン、カール・ウィルソン、

デニス・ウィルソン、ブライアン・ウィルソン、カール・ウィルソン.....

えっ、マイク・ラヴとアル・ジャーディンは?

そうだな、アルバム「Holland」に収録された"カリフォルニア・サーガ"と

"ビッグ・サー・タペストリー"を作ったから、

3人の兄弟に続いてマイク・ラヴ、アル・ジャーディンだ。

おっと、それにブルース・ジョンストンも重要な人だった。

ビーチ・ボーイズのメンバーをそのグループの音を象徴する順に書いてみる、

ブライアン・ウィルソン、マイク・ラヴ、

カール・ウィルソン、ブルース・ジョンストン.........。



ビーチ・ボーイズのメンバーの名をロサンゼルスの街がイメージする

キャラクターの順に書いてみる、

デニス・ウィルソン、マイク・ラヴ、ブルース・ジョンストン、

デニス・ウィルソン、マイク・ラヴ、ブルース・ジョンストン.....。

ビーチ・ボーイズのメンバーで、

ワン・マン・ピンク・フロイドのような人の名を挙げてみる、

デニス・ウィルソン、デニス・ウィルソン、デニス・ウィルソン.....。

ビーチ・ボーイズのメンバーを好きな順に書いてみる、

デニス・ウィルソン、デニス・ウィルソン、デニス・ウィルソン.....。





136 / 365

2010.8.11

Banjoland / Clive Palmer

Sunbeam Records 2005



春(3月8日)に訪ねたバンジョー王国に再び訪れる。


このアルバムは1967年に録音されて2005年に発表された。

38年間、録音テープは寝かされたままだった。

これはワインか。

40年近くも前の録音、えっ、音は古いのかって。

古いも新しいもない、一本の田舎道のようなアルバムだ。

そこにずっとある、いつ訪ねても、ただずっとある。

素朴に、ずっと向こうに拡がっている。



バンジョーランド、ジャケットも少しサーカスの

アトラクション小屋の入り口のようで楽しい。

名前を発音するだけで何故だか嬉しくなるバンド、

インクレディブル・ストリング・バンドの創設メンバーで

ファースト・アルバムにだけ参加してグループを抜けた


クライヴ・パーマーのソロ・アルバム。

何故今日はこのバンジョーランドを訪れたか、

ロンドン北部のエンフィールド生まれのクライヴ・パーマーが

各地を転々とし、移り住んだのがイギリスのコーンウォール。

大工、庭師、楽器制作の仕事をしながらバンジョーを弾いているという。

昨日聴いたゴードン・ハスケルはドーセット出身、

マイケル・ジャイルスの住まいもドーセット、

このクライヴ・パーーマーが音楽を奏でる場所はコーンウォール、

そうなんだ、ここ2、3日の東京の夏の曇り空に、

英国の海岸線をイメージして音楽散策を楽しむ。

すると今日、8月11日の空には雲の間から英国の空の色のような青が。



バンジョーランドは、ほとんどバンジョーとウィズ・ジョーンズの少々のギター、

たまにヴォーカルが入ってるだけ、シンプルなサウンドは

英国南西部の海岸地方の風景の如く、悠々と美しさを讃えている。





135 / 365

2010.8.10

Sail In My Boat / Gordon Haskell

CBS 1969



アルバムのジャケット写真を撮影するのに、

わざわざ曇りの日を選んだわけじゃないだろう。

イギリスのことだ、予定していた日の天気が、やはり今ひとつだった。


タイトルは、「Sail In My Boat」。

ジャケット写真は、湖か川か、浮かんでいる小さなボートで男が両手を拡げている。

笑顔か、淋しそうな顔をしているのか、写真が暗くて全く分からない、



ジャケット裏面は夕焼けのつもりだろう、赤をのせた、ほとんど写真はシルエットのようになっている。

ピンの甘い、曖昧な写真、そうなんだこのジャケットに包まれてるサウンドは甘く、曖昧なもの。

そんな言い回しはないが、英国ポップ歌謡とでも言おうか。

ざっくりしてマイナー・コード中心の曲がなんでもないオーケストラ・アレンジのオケをバックに

ロー・テナー・ヴォイスで歌われ、A、B面あっという間に終わってしまう。


なんだ、あまり好きでないアルバムなんだ、って。

いやいやそれらのぼんやりのすべてが好きだ。

このトボケたアルバムにある哀愁が.....。

初めて降り立った駅の淋し気な商店街のような、

散策する人など誰もいない陽が暮れかかった小さな公園のような、

ボートに乗っていて気がつくと急に夕闇が迫ってきたような.....。


ボートに乗っていて..... そうだ、1曲目は"Boat Trip"でラストは"Slow Boat"、

そしてアルバム・タイトルは「Sail In My Boat」だった。

だからジャケットもぼやけてていいんだね、

ぼんやりと、ゆっくりとするゴードン・ハスケルとのボートの旅、

もう一度A面から付き合うことにした。

ドーセット出身のゴードン・ハスケルはこの後、

同郷のロバート・フリップに誘われてヴォーカル、ベースの

グレッグ・レイクの後任としてキング・クリムゾンに参加する。

ロバート・フリップの目差すサウンドとは似ても似つかない

このヴォーカル・アルバムを発表していたゴードン・ハスケルを

一時的にキング・クリムゾンのメンバーにした。

結果、クリムゾンの2ndアルバム「ポセイドンのめざめ」に入ってる

"Cadence And Cascade"という名曲を残すことになる。

不安定なヴォーカルで一般的にその名曲の評価は低いが、

はかなさが漂い、その曲を印象に残るものにした。





134 / 365

2010.8.9

Progress / Michael Giles

Voiceprint 2002



ロンドン市内を鉄道で出発、イギリス南西部に位置する海辺の街、

コーンウォールズに朝もやの中、到着。

乗客は友人や家族と再会し、それぞれの場所へと向かう、

実際にドーセットに家を持ち、ロンドン市内のスタジオに

レコーディング・セッションに通っていたドラム・プレイヤー、

マイケル・ジャイルズは1978真夏に見た鉄道の旅の夢を一枚のアルバムにした。



ドーセットの一軒家の自宅の1階をスタジオにして

プロデューサー、ルパート・ハインのセッションで顔馴染みのミュージシャン、

ジョフリィ・リチャードソンやジョン・ペリーといったバンド、キャラヴァンの連中や

弟のベーシスト、ピート・ジャイルズを呼び寄せてレコーディング。

音の具合はジャイル・ジャイルズ&フィリップ20%、キング・クリムゾン20%、

マクドナルド&ジャイルズ30%、キャラヴァン20%、

70年代後半フュージョン10%が車窓に流れ.....



おや列車は終着駅に到着した。

雨だ、夏の雨、イギリスの夏のような空模様の日、午後には陽も差してきた。

さて、コーンウォールにあるリザード岬へ向かうことにしよう。





133 / 365

2010.8.6

Don't It Drag On / Chris Smither

Poppy 1972



この男も、昨夜はとても暑かったのだろう、裸だ。

というわけではない。

見開きのジャケットに使われたモノクロの写真4枚には

"The Four Conditions Of Man"とあり、

それぞの写真に人の状態がクレジットされている。



が僕の持っているレコードはジャケットの左端が切られているカット・アウト盤

(廃盤 = 製造中止になったものはその印としてアルバムのジャケットのどこかに

穴を開けたり、どこかの部分がカットされていた)というやつで、

2面、4面の英語が読めなくなっている。

体が消えている2枚の写真、男はどんなコンディションなのだろうか。



タウン・ヴァン・ザントという素晴らしいシンガーソングライターの

アルバムも発表していたポピー・レコードは、レコードを入れる袋にえんじ色の紙を使い、

レコード盤のレーベルにはカラフルなポピー = ケシの花のイラストが使われ、

このアルバムでは男の謎の白黒の裸のジャケットとのコントラストがいい。



忘れてた。アルバムの男はクリス・スミザー、

1972年ウッドストック、ベアズビル産の音は、

白人のフォーク・ブルース、

年に何度か聴きたくなるブルース、

この風変わりなジャケットに包まれてこの白人のフォーク・ブルースは

とても強い印象を残すことになった。





132 / 365

2010.8.5

The Lonely Surfer / Jack Nitzsche

Reprise 1963



僕はかつて"ジャック・ニッチェのチェッ"という曲を作ったことがある、

英語タイトルは、Jack Nitzsche Said "Tche"。

フィル・スペクターと行動を共にし、ストーンズに関わり、

ニール・ヤングともセッションしていたジャック・ニッチェ、Nitzsche、ニーチェか。

ドイツ系だ、がニッチェのほうがしっくりくる、"チェ"がいい発音具合。

50年代終わり、60年代からアレンジャーとして活動し、

フィル・スペクターと知り合いポップス畑の仕事をしてきたが、

ストーンズやバッファロー・スプリングフィールドのセッションから

ニール・ヤングとの関わりでロック・スタイルのニッチェになっていく。

これはジャック・ニッチェの浜辺にロックの波が押し寄せる前夜、

1963年に録音されたポップス・ストリングス・インストもの。


ジャケットにはダークスーツに短髪のジャック・ニッチェ、

70年前後、ニール・ヤングと知り合ってからはヒッピー・スタイルになっていた。

スタジオにセットされたミニ砂浜にはヒトデと魚一匹、

木の椅子に腰掛けた指揮棒を持つニッチェ、

アルバム・タイトルは「The Lonely Surfer」。

いかにもフェイクだぞ、と語りかけてくる。

ジャケットの裏には、フィル・スペクターがライナー・ノーツ、

至って普通の解説が書かれている。


サウンドはなんでもないオーケストラもの、これといって特徴もなく、

"Ebb Tide"や"Mondo Cane"や"Da Doo Ron Ron"といった曲に

少々のオリジナルを加えて無難にオーケストラ・アレンジものにしました、的なもの。

ただし、リード・メロは6弦ベース。

しかし、そのなんでもなさが今となっては変になった。

こんな、なんでもないムード・ミュージックを、いつ聴くんだい?、て。

8月に入った今日のような、昨日と同じような晴天の日射しの続きの日さ。





131 / 365

2010.8.4

Old No.1 / Guy Clark

RCA Records 1975



夏が続く、これから永遠に続くと思ってしまう程に、ずっと夏の日々が.....。

さあ、感傷的な秋が忍び込む前に旅を続けよう.....って、

もう哀愁を漂わせて感傷的になっているではないか。


それは今朝聴いているシンガーソングライター、

ガイ・クラークの音楽のせい。

しわがれたその歌声のせい、

砂ぼこり舞うようなバッキング・プレイヤーの演奏のせい。



昨日のロニー・レインが楽団を率いて回ったのはイギリスの田舎町のパブ、

こちらはアメリカ西部、テキサス、アマリロあたりのライヴ・ハウスか。

年老いた男たちや、くたびれた列車、昔の思い出、汽車を待つ無法者.....

しわがれた声が歌うのは夏の、人生の蜃気楼。





130 / 365

2010.8.3

One For The Road / Ronnie Lane's Slim Chance

Island 1976



朝、窓を開けると風が涼しい。

忍び寄る秋の気配か、まさか、8月が始まったばかりだ。

青空を見渡す、早朝からセミのBGM付きの風景だ。

すぐに暑い一日になりそうだ。

今朝しばらくレコード棚を眺めて手にしたのは

何枚かがまとめられていたロニー・レインのアルバム数枚。

どれもいいが、3作目の「One For The Road」をピック・アップ、

朝一番からブリティッシュ・カントリー・ロック、

少々ラフに、陽気にギター、ドラム、ベースを響かせて、

マンドリン、フィドルを絡ませて、少々ドタバタと陽気に、

アップ・テンポで、田舎道を音楽についていく。



ナショナル・スチール・ギターのカッティングで始まる曲、

"見えたものが俺の見たもの、ライヴ演って夢見て、

彼女の行くところならどこへでも出かけて、ただそれだけ....."

と歌われる"Don't Try 'N' Change My Mind"に、あぜ道の埃舞う。

"Burning Summer"なんて曲はマイナー調で物哀しい夏の嵐を乞う歌、

農場が寒波に見舞われて、出来た歌だとか。

"Harvest Home"も心地良いインスト、

アコーディオンに絡むアルペジオの音色、やはりドブロ・ギター。



全編に漂うロックン・ロール、ブルースの気概に、

我関せずのロニー・レイン流カントリー・ロック、

楽しくバンドを、音楽を奏でる良心の人、ロニー・レイン。

バンド仲間と自分たちの録音スタジオ、移動モービルの前で記念写真、

ジャケット裏には、草原の輝き.....。





129 / 365

2010.8.2

Gotta Take That One Last Ride / Jan & Dean

United Artists 1974



ビーチ・ボーイズのマイク・ラヴ要素だけを凝縮してみました。

ブライアン・ウィルソンに曲を作ってもらいに行き、

"サーフィンU.S.A" ではなく"サーフ・シティ"を譲り受け

全米NO.1ヒットになりました。



60年代にヒットした曲を集めて2枚組コンピレーション・アルバムを作りました。

タイトルに"サーフィン"が付いた曲が5曲もあります。

他にも"サンシャイン"や"ホノルル"、"トップレス"......

そうなんです、サーフィン、ホットロッド、60年代半ば、

僕たちはアメリカ西海岸からのポップス・ミュージックの波に乗ったんです。


音楽的リーダーはジャン、ジャケット・デザインやコスチューム・イメージはディーン。

ジャケットは貝殻を敷きつめたところに、サーフィンの写真をコラージュ、

裏にはパーム・ツリーをバックに記念写真のピンのあまいジャンとディーンの写真、

かなりの手抜きデザインのイージーなジャケット。



中を見開くとサーフィンを捉えた美しい写真、そしてオマケとして付けられているのは

青空に浮かぶ鳥をコラージュした意味不明なポスター。



一度もちゃんと耳を傾けたことがなく、何度も何度も手放そうとしたこの2枚組、

この暑い朝についに2枚通して聴いた。

脳天気になり、ノー天気からこの音楽は、イエス天気 = この季節、この暑さに合流した。





128 / 365

2010.7.30

Paris 1919 / John Cale

Warner Bros. Records 1973



僕は曇り空の朝、如何にしてジョン・ケイルの「Paris 1919」を聴くに至ったか?

ニューヨークで、ウォーホールの子供たちとしてヴェルヴェット・アンダーグラウンドの

メンバーだったジョン・ケイルはバンド解散後、しばらくして西海岸にいた。

自身のソロ作やプロデューサーとしての仕事の場をロサンゼルスに移していた。

73年のL.A録音の女性シンガー、ジェニファー・ウォーンズのアルバム

「Jennifer」もそんな中でジョン・ケイルによってプロデュースされた一枚。

ビージーズの曲、"In The Morning"、ドノヴァンの"Sand And Foam"、

ジャクソン・ブラウンの"Those Days"、プロコル・ハルムの"Magdalene"といった

ユニークな選曲に加えて、ジミー・ウェッブの"P.F. Sloan"、"All My Love's Laughter"、

これらをニック・デカロやジーン・ペイジといったアレンジャーを使ったり、

自らもアレンジして制作したアルバム、「Jennifer」。



昨日聴いたマリー・マキャスリンに続いて昨日から今朝に、と用意していたそのアルバムを

片面聴き終えたところで、サウンドの質感が似ているジョン・ケイル自身のソロの「Paris 1919」へと向かった。


そこで思い出す。このアルバムのことをよく友人と話していたことを。

1973年だったと思う。会話の内容ははっきり思い出せないが

リトル・フィートのメンバーが参加していること、倒れていくジョン・ケイルの



ジャケットの裏の写真が面白いこと、1曲目の"Child Christmas In Wales"

というタイトルの響きがいいこと.....

そうだそれから35年経って、近所の古本屋で英国ウェールズの作家、

ディラン・トーマスの"Child Christmas In Wales"の小さな本を見つける。

英語に仏語訳が付けられているフランス版だ。

英仏語で読みはしないのに買う。ジョン・ケイルの「Paris 1919」がそれを購入させる。



こうして40年近くも「Paris 1919」は頭の中にある。

音楽とは、そういうものだ。

いつまでもいつまでも巡ってる、響いている、エコーしている。

きみの山で僕の山で.....。





127 / 365

2010.7.29

Goodnight Everybody / Mary McCaslin

Barnaby Record 1969



自作曲は1曲もない。

ビートルズの"Help"や"Blackbird"、

ヴァニラ・ファッジの"You Keep Me Hangin' On"

といったポピュラーな曲のカヴァーもある。

ギターとヴォーカルだけを担当のアルバムの主人公の

アメリカ、インディアナ州出身の女性シンガー、マリー・マキャスリン。

この美しい女性は、いかにしてシンガーになったのか、

どのような経過でこのアルバムを制作することが出来たのだろうか。


歌手たちはどこから、すべての歌手たちはどこから、やって来るのだろう.....。



アルバムは70年代、L.Aフォーク、カントリー・シーンで

重要な役割を果たしたラリー・マーレイにプロデュースされ、

味のあるL.Aのセッション・アコースティック・ギタリスト、

ディック・ロシミニにサポートされ、

シンプルだが不思議なアレンジが全編を覆う。



突然の夏のスコールの避難場所に走り込んだ。

大きな樹の下が、この上なく心地良かったような.....

でもあたりの空は、まだ不安そうな表情で.....。


今日のような夏雨模様の風景が浮かぶ一枚。





126 / 365

2010.7.28

Girl From Ipanema / Antonio Carlos Jobin

A&M 1971



繊細で、複雑で、とても凝っていて、しかし大らかで、シンプルで、

何事も気にすることはないような空気を漂わせる音楽、ボサノヴァ。

手元にある500ページもあるボサノヴァの本のタイトルを

ずっと「ボサノヴァの真実」だと思っていたが、

「ボサノヴァの歴史」だったことに今朝、気づいた。



よく耳を傾けると、とても細やかにアレンジされているが、

聴き流すとムード音楽、ビール片手に音楽にふと気づくと、

夏の公園の噴水の水しぶきのような細やかなパーカッションが涼しい。


アントニオ・カルロス・ジョビンがA&Mレコードに残した2枚のアルバムを

イギリスのA&Mがまとめたコンピレーション・シリーズ "Mayfair"の中の一枚。

ジャケットもイギリス独自に制作されたものだが、

海辺のやしの木にトップレスの女性、まるでどこかのデパートの

サマー・ギフトの包装紙の色づかいで安っぽい。



が、そんなものに愛着がわく、なんでもない安っぽいものに。

さて、「ボサノヴァの歴史」の巻末に付いている

イパネマ海岸の市街地図を眺めながらビールをもう一缶開けることにしよう、

夏の午後、何も考えないでボヤーっと。





125 / 365

2010.7.27

Black Rose / John David Souther

Asylum Records 1976



昨日聴いたジミー・ウェッブの新作は、

彼の数あるアルバムの中で僕にはベスト・ワンになった。

そこで今日もまた聴く。

どちらかというとソングライターとして、

ポップスのソングライターとして曲作り職人的な立場で

60年代にそのキャリアをスタートさせたジミー・ウェッブは、

60歳を越えた今では、自ら歌うことが大好きになり、

ピアノさえ用意してあればどこでも歌います、

というライヴ・パフォーマーになっていった。


ニューヨークにあった音楽出版社が集まった建物、ブリル・ビルディングのある界隈は

ティン・パン・アレーと呼ばれたが、そこにはヒット・ソングを生み出すべく、

職業作詞家、作曲家がたむろしていたところ。

ジミー・ウェッブはオクラホマ出身でロサンゼルスに出てスタジオの雑用の仕事に就いて

音楽の仕事に関わっていくが、ソングライターとしては、

東海岸のブリル・ビルディングの曲作り職人としての味わいもある。

ピアノで作曲され、メロディのバックにあるハーモニーや、

難解なラインなのにシンプルに聴こえるようなコード・プログレッションを持つ

よく練られたものだからだろう、詩もアメリカの地名が象徴的に登場したり、

恋愛の側面を巧みに表現した、昔ながらの職業作詞家が作るような側面もあるからだろう。

誰もが歌いたくなるような"何か"が潜むポップ・ソングを作ってきた。

そんなジミー・ウェッブが60歳を優に越えて今年発表した2枚目の新作が

ナッシュビルで録音された自作曲のセルフ・カヴァー集(一部新曲を含む)だった、


それは76年に発表されたジョン・デヴィッド・サウザーの

「Black Rose」を2010年に再現しました、かのようなL.A.カントリー・ロック仕立て。

ヴォーカルも40年かかってそのアルバムのような境地に辿り着いている。


ジミー・ウェッブが40年かかって到達した境地を

ジョン・デヴィッド・サウザーの「Black Rose」は、

70年代に何事もなかったように作り上げていた。

恐るべし、酔いどれ男の素敵な音楽。





124 / 365

2010.7.26

Just Across The River / Jimmy Webb

Victor Entertainment 2010



それ程期待はしていなかった。

好きなソングライターの新作なのに.....。

聴き終えた結果は、最高のアルバムだった。

これは音楽ではなく、人生だ。

誰かの、人生。


オクラホマ、ウイチタ、フィラデルフィア、ガルベストン、

ロンドン・ブリッジ、フェニックス、カリフォルニア、テキサス、

ニューメキシコ、ビッグ・サー、コロラド.....

アルバムの歌に出てくるアメリカやイギリスの場所、

そしてずっと彼方の人生の様々な河の向こうで、言葉は果てる.....

音楽を越えてしまったジミー・ウェッブ。


これらの曲は、歌ではなく毎日やってくる光のよう。





123 / 365

2010.7.23

Ridgeriders -Songs Of The Soothern English Landscape From Television Series -
/ Phil Beer, Ashley Hutchings & Chris While


HTD Records 1999



60年代にイギリスでフォーク・ロック・バンド、フェアポート・コンベンションを結成するもすぐに脱退。

よりトラディショナル・ルーツを追求するバンド、スティーライ・スパンを創成し、

そのグループも早々に抜け、以来、不定期にアルビオン・バンド、アルビオン・カントリー・バンドを

様々なメンバーと構成し、アルビオン (=英国)の民衆の音楽を追求し続けてきた男、

アシュレー・ハッチングスによる数ある英国風土探究アルバムのひとつ、「Ridgeriders」。

ハンプシャーにあるローカル・テレビ局の1994年に始まった、南イングランドを

バイクでツーリングし紹介していく人気シリーズ番組、"Ridgeriders"をベースにしたアルバム。



アシュレー・ハッチングス(Bass, Vocal)は、このアルバムでは

フィル・ビアー(Guitar, Mandocello, Fiddle, Mandolin, Vocal)と

クリス・ホワイト(Guitar, Vocal)と3人の名義でユニットを結成。

不定形アルビオン・バンドのメンバーを加えて、

英国の島の風景を、苔むした小道を、カンタベリーの丘を、

ドーゼット州の修道院の庭を、緑の丘また丘の彼方へ続く道を旅する仲間たちの旅行記を歌にした。

昔なら馬で旅するところ、現代ではバイクでツーリングしながら巡礼、

といった今に生きる人が歴史の探索をする感慨を.....。


盛夏の季節に聴く英国フォーク・ミュージック、緑の濃い木陰を歩いていくようだ。





122 / 365

2010.7.22

Other World Other Sounds / Esquivel And His Orchestra

RCA Victor 1958



これは寝苦しい夜のイージー・リスニング、

これはめっきりライヴ・ハウスへも行かなくなった

30代も半ばからのイージー・リスニング。


エスキュヴァル率いるオールド・ファッションなオーケストラは、

きみを何十年前のプール・サイドに、ハリウッド・ムーヴィーの書き割りの宇宙旅行に.....

そんな別世界に連れ出してくれる。

今から52年前のステレオフォニック・サウンド?で。

Hot Summer, Go Stereo!

とアルバムに入っているレコード袋には書いてあった。



プール・サイドのスピーカーからアナウンスが流れてきた。

"間もなく7時をもちまして当プールは閉館いたします。忘れものなきよう、

またのお越しをお待ちしております"。





121 / 365

2010.7.21

Mallet Mischief / Harry Breuer And His Quintet

Audio Fidelity 1958



これは、せんだみつおのアルバムではない。

ハリー・ブリュワーというマリンバ・ブレイヤーのリーダー・アルバムだ。

ジャケットの裏にある解説によるとマリンバ、ヴァイヴ、グロッケン、

ブロック、スティック、カスタネット... と打楽器に転じるまでは

ヴァイオリンを学んでいたというハリー・ブリュワーは、

ニューヨーク、ブルックリン生まれ、シロフォン・プレイヤーとして

1950年代からラジオ、テレビ、映画にと、その音色はよく聴かれるようになったとある。



そういえば50年代、60年代半ばくらいまでのテレビの音楽には

こんな(マリンバのひょうきんな)音楽が主流だった。

マリンバが主体となった音楽、その音色のキャラクターゆえにとても陽気だ、

うーん、そうだなクレイジー・キャッツ、いやNHKのテレビ番組

「今日の料理」のテーマ...... ジャック・タチ映画のサントラのアメリカ版のような....。

やはりこれはせんだみつおのアルバムだ。

暑い夏には、これだ。





120 / 365

2010.7.20

Hold Me / The Weird Weeds

zumo 2004



変なものは変だ。

普通のものは普通。

それはそうだ、そう感じるのだから。

では変な方が面白い、かというとそういうことでもない。

が、そういうことの方が多い、

だから"変" = オカシイ、ということだろう。


ヘタクソな演奏だが、それがいい。

ヘタなのが好きなのではない。

心から出たヘタ、そこのところはなかなかいいものがある。

バンドなのにとても静か、でもただきれいでおとなしいのではない。

彼らの存在を知っていなければ絶対に買うことのない、

わけのわからないイラストのジャケット。

3月の終わりに、エイプリル・フール前日の夢として紹介した

彼らの「I Miss This」はジャケ買いしてしまったアルバムだった。



がこれは彼らのCDRで自主制作販売していたものを

アナログ・アルバムにまとめたもののようだ。

わぁ、The Weird Weed、久しぶりに興味深い神秘の森。

Sandy Ewen : guitar, vocals
Nick Hennies : drums, vocals
Kurt Newman : lead guitar
Aron Russel : guitar

というクレジットだが、そんな、ギター中心のバンド編成のサウンドではない。

デリケートで大らかな音。

この世のほかの森、この世のほかの流れのほとりに

ロック・バンドがいるとしたら、こんなふうな.....。





119 / 365

2010.7.17

One Day I'll Be On Time / The Album Leaf

Tiger Style Records 2001



6月のエコー・マウンテン・パーラーで、

このアルバム・リーフEP CDと

ジャン・コクトーの語りのシングルをRe-Mixしたら、とても良く響いた。

数人の人に "これは何ですか?" と質問された。

水の波紋のように続くエレクトクリック・ピアノやアコースティック・ギター。


アメリカの西海岸、サンディエゴの人、

ジミー・ラヴェルくんのプロジェクト名、The Album Leaf、

この "365 Days Album" の第一回に紹介したThe Album Leaf、

秋に聴くとピッタリだと思っていたThe Album Leaf、

湿気の多い今日のくもり空にも、いい具合に空気に溶けていった。


たゆたう淡々と、めくるめく、ゆらゆらと、

雨だれがループのようになってサウンドに溶け込んでいく.....





118 / 365

2010.7.16

Hefti In Gotham City / Neal Hefti His Orchestra And Chorus

RCA Victor 1966



2010年7月16日、朝からとても陽気になった。

ゴッサム・シティのスウィング・バンドが笛を吹いて行進し、

バットマンを讃えたアップ・テンポの曲を演奏する。

バットマン、バットマン、あの3コードのブルース・パータンなのに陽気なやつだ。

コンダクターはニール・ヘフティ。

50年代から60年代、コンボからオーケストラまで

ジャズ、クラッシックの要素で曲、アレンジをし様々なアルバムを残してきた人。

バットマンの暮らす街、ゴッサム・シティの旅行記は陽気なブルースで少々、

エキゾチックな音楽で綴られている。



"セニョリータ・ブー・バム"という曲はスパニッシュ、

"ロンリー・グリーク"は哀愁味のあるブーズーキが加わりギリシャ・テイスト。

ジャケットの裏の、土曜から、ゴッサム・シティを去る金曜までの

1週間の出来事が書かれたヘフティのメモによると、

"Turkis Delight"は、バットマンと夕食の後、

訪れたナイトクラブで、中近東のダンサーの踊りを見ながら

エキゾチックな飲み物を楽しんている時に流れる曲とある。

そしてアルバムの最後に訪れるのは安らぎに満ちた"Queen Of Freedom"。

ゴッサム・シティに別れを告げる日、

太陽は西に沈みゆき、その街を美しく照らしていた、

と日記はしめくくられるが、"Queen Of Freedom"は

そんな時時刻に流れるなんとも表現し難い美しい曲。


さて、土、日、きみはどこかへ旅行かい?

僕はもう一度、ゴッサム・シティへ出かけようと思う。





117 / 365

2010.7.15

He Stands / Ron Geesin

Ron Records 1973



ここではないどこか、聴いているのに聴いていない、

メロディがあるのにない、弦楽は整っているのに不穏な空気が漂い、

ピアノはランダムに、しかしちゃんとハンマーがフェルト鉄弦を打つ、

絵を描くときに使うロン・ギーシンの鉛筆の芯、

折れているのにそれでスケッチすると、いい感じなんだ、

とても想像力豊かなデッサンになる。



デュエットとストリート・マーケット (2声 / ポートベロー・ロードのストリート・マーケットの音)

人生を待つ

惑星キーボードをくるんで (ピアノ / 電気処理したバンジョー)

心のかなたに

シンバルと多量のエレクトロニクス (シンバル一枚 / エレクトロニクス )

ロジャー・ウォーターズよ君がどこにいても (声 / 風 / 火 / 83の電気バグ・パイプ)

..... 各曲のタイトルだ。

1曲目はピンク・フロイドの「原子心母」の室内楽版。



鏡の国のアリスの中のチェシャー猫のくだりだったか、

塀に腰かけニンマリするロン・ギーシンが現れては消えてゆくモノクロ写真、

このアルバムは確か、不思議ジャケットに魅かれ買いしたような記憶がある。

そしてジャケットが中に入っている音を見事に表現していた。


日本中が雨で東京だけが晴れ、

だが台風の去っていった次の日のような強い風の日、

湿り気たっぷりの空気の日にロン・ギーシンはそこの公園の塀に腰かけていた。

今日は7月の中旬、いやもう9月23日っていう感じ.....

でしょ、とロン・ギーシンのオルガンが語りかけてくる。





116 / 365

2010.7.14

by the roads and the fields / Crescent

fatcat records 2003



もしニコが生きていたら、ヴェルヴェット・アンターグラウンド以外には

このバンドに参加したことだろう。


イメージは、ガット・ギターにポータブル・オルガン、ドラム・キットに

手作りのウッド・ベース、アナログ・テープ・レコーダーのノイズ、

サックス、クラリネットにパイナップルのトイ・ホーン.....

といった楽器でニコのアルバム「デザート・ショア」を演奏してみました、といったもの。



バンドの引率者、マット・ジョーンズによると2000年から2003年の

3年間にリハーサル用の場所(リハーサル・スタジオではない)や

自宅の部屋で、ツバメが飛ぶのを見ながら、窓を開けっ放しにして。



またある曲はキングス・スクエア(彼らはイギリス、ブリストルのバンド)の映画館で

桜の開花時期に、リズムはスクリーンの前で、ホーンの3人は客席で.....。



そられのレコーディングはフランスのヌヴェールでスタートし、

窓から家の屋根や電車が見えるイギリスのマット・ジョーンズの自宅の部屋で終わったと。


春の終わりの暗いサウンドをくぐり抜けると、

午後の東京は湿気をたっぷり含んだ風の強い陽が照りつけた、

まるで台風の去ったの次の日、9月の午後のような.....。


もしニコが生きていたら、ヴェルヴェット・アンターグラウンド以外には

このバンドに参加したことだろう。





115 / 365

2010.7.13

Songfall / Philip Goodhand-Tait

DJM Record 1972



薄日が差している火曜日の朝に、"歌" は落ちてきた。


今朝は、まるで京都の旅館で目覚めたような気分だ。

濃いコーヒーをひと口。

スピーカーから流れてくるピアノと歌が、"味" のように耳に入ってくる。


フィリップ・グッドハンド=テイトという英国のソングライター、シンガーの、

何枚かあるアルバムの中でも、最もシンプルで落ち着いたサウンドの「Songfall」。

アコースティック・ピアノやギターは、雲のかかった空から、少々しゃがれた声の"歌" に

その速度をスローモーションになるように寄り添い舞い降りてくる、

ときにアルペジオで、ときにリズムを刻み.....。



70年代に「Rehearsal」、「I Think I'll Write A Song」と

ソロ・アルバムを発表し、この「Songfall」は3枚目。

その後もアルバムを発表しているが、僕の手元にはこの一枚が残った。

くすんだサウンドに耳を傾けているとオックスフォード・ストリートからマーブル・アーチ、

いや河原町三条から百万通を歩いている気分。

少々オールド・ファッションな百万通の古本屋を巡って、その後は吉田山へ。

薄日が差している火曜日の朝に、"歌" は落ちてきた。





114 / 365

2010.7.12

La Guerre D'algerie / Original Motion Pictures Soundtrack

saravah 1972



一面の曇り空、暗い、しかも月曜日だ。

ポール・ウィリアムスなら、

"雨の日と月曜日はいつだって僕をゆううつにする"と歌うんだろう。

こんな日に、耳からもっと雨模様にのめり込もうか、深く沈み込もうか、それとも.....。


フランス語でいっぱいにしてみた。

きみは月曜日の朝から仕事に行くのか、

僕は雨に濡れたサンジェルマン・デプレの通りを歩いていた。

フランス映画「アルジェリアの戦い」のサウンドトラック、

アナログ・レコードの2枚組、戦争映画だが観たことも内容も知らない。

このレコードを買ったのは音楽がフランソワ・ド・ルーベと記されていたから。



それは何年も前だったが、レコードに針を落としてみると、

ずっと映画のセリフだった。音楽は全体の10%も入っていない。

失望した、ほとんどフランス語の会話じゃないか、

しかも2枚分たっぷりとフランス語。


このレコードはその印象のまま封印された。

歳月は流れ、ある時、ふと聴いてみた。

ずっと続くフランス語の響きが、いいじゃないか、

フランスに行かないかぎり、こんなに長い時間、

フランス語を耳にすることもない、いいじゃいか、そんな日も、

自宅のリヴィングからは雨にくすぶるモンマルトルの丘が見えた。





113 / 365

2010.7.9

Nightpiece / Tracy, Munro, Tracy



いったい音楽が宝物だなんてことがあるだろうか。

僕にはある。ここにある。

Tracy, Munro, Tracyのアルバム「Nightpiece」を聴くたびにそう思う。

今回もまたそうだった。素朴で可憐で、はかなくも美しい、

これは音楽ではなく、尾瀬の高地から、彼方の山脈を眺めているような、風景。


ふたつのトレイシーの名前は写真からすると兄と妹か。

リン・トレイシー : ヴォーカル、ダルシマー、ピアノ、キーボードと

デニス・トレイシー : ヴォーカル、アコースティック・ギター、

それにオーストラリアのフォーク・シーンではよく知られる

ジョン・ムンロー : ヴォーカル、アコースティック & エレクトリック・ギター、マンドリン。

その3人だけの演奏と歌。


80年代にオーストラリアのシドニーで買った。

ジャケ買いだったと思うが。

イギリス 60%、アメリカ 30%、アジア、オセアニア 10%という風土が影響しているのか、

英国トラディショナル・ミュージックにアメリカのアパラチアン・フォークを滲ませ、

オーストラリアという拡い土地の大らかな風を吹かせて、

このうえなく、たおやかに歌われる彼らが愛着を持っている曲が、楽器演奏が、

優しくなびいてくる。


これは空気を伝わって心に流れ込む、僕の宝物。





112 / 365

2010.7.8

Shangri-La / Robert Maxell

Decca Records 60's




Let's Get Away From It All / Robert Maxwell

Decca Records 60's



10年以上は手さげ紙袋にずっとしまってあったレコードの一群、

久しぶりに袋を開けてみる。

久しく会っていない友人に再会したような、その人となりはよく知っているが、

身の上にあったことはしばらくわからなかったような.....。


1950年代、60年代に活動していたロバート・マックスウェルとという

アメリカのハープ奏者のリーダー・アルバム、かつては何枚も集めた。

10枚以上のアルバムがある。

それらを捜す旅に出るように、あのレコード店、この街のレコード店へと入っていった。

CDショップじゃないよ、ネットで検索でもなく、レコード店さ、

懐かしいだろ、でも僕は今でも当たり前のようにレコードを毎日聴いている。

何故ロバート・マックスウェルのレコードを集めたか、

たぶん"引き潮 = Ebb Tide" という曲の作曲者だったからだろうか、

しかしもう旅に出た理由は思い出せない。

何故、今日その友人に会いたくなったのか。

天気だ、東京は朝から快晴だ、朝から久しぶりの日差し、

何でもない、ボヤっとしていられる音楽、そうなんだ、

かつてはムード音楽と呼ばれていたものをただぶらっと流しておきたくなった。

音ではなく光の具合に気がいくように.....。


1枚は印象的なヘアー・スタイルの女性のジャケットの「Shangri-La」、

"The Breeze And I"、"The Sounds Of Summer"といった曲は涼しく、

もう一枚はいかにもムード・ミュージックらしく、

オープン・カーで寄り添うカップルのジャケットの「Let's Get Away From It All」。

少々オールド・ファッションなオーケストラ・アレンジ、

しかしハープのリード・アルバムだ、色々工夫がしてある、古いのに新鮮。

で、これがリヴィングの60年代の大きなフロア・スピーカーから流れると、

NHKローカルFM局のアナウンサーの気分になってしまう、

「... 午後の昼下がり、如何お過ごしですか、

今日はまず、安曇野のソバの花の話題から....」。





111 / 365

2010.7.7

The Next Man / Original Motion Pictures Soundtrack
Music by Michael Kamen


Buddah 1976



誰もが何かに影響を受けている。

いつか観た映画や、友だちや、山や川や、父や母や.....

ビートルズやストーンズ、ビーチ・ボーイズから、

あの雑誌のファッションから、テレビの画面から.....


ここに観たことのない映画のサウンドトラックがある。

ジャケットから想像するには、ショーン・コネリー出演のサスペンスもののようだ。

何故観たこともない映画のサントラが手元にあるのかというと、

マイケル・ケイメンという人が音楽を手掛けていたからだった。

ニューヨーク・ロックンロール・アンサンブルという

クラッシックとロックを融合したバンドを70年代前後に結成して

ソロ・アルバムも一枚発表し、その後は映画音楽を中心に活動していく。

映画「未来世紀ブラジル」の音楽も彼が担当していた。


そんなマイケル・ケイメンという映画音楽作家が、

たっぷりブラジルのギタリスト、作曲家のルイス・ボンファの

映画「黒いオルフェ」のテーマ曲に影響を受けて

(いや、ほとんどそのストラクチャーで) 作ったのが、

この「The Next Man」のメイン・メロディ。

なんだ、それじぁ、二番煎じじゃないかって?

ほんとによく似ているんだけど、意外に、いい味なんだ、

そんなものが、似ていたってこっちもいい曲だ。

物哀しいマイナー・メロディがこんなすっかり雲に覆われて、

朝からじとっとする日にはピッタリ。


この世界に新しいものはない、すでに在るものから続いてる、

といった人がいたが、言い換えればすべてが新しい、

あらゆる影響を受けているから、誰の影響も受けていない、

何故なら、誰もがその人だけ、だから。

each one uniqueだから。





110 / 365

2010.7.6

Island / King Crimson

Island 1971



リザード岬に行き、イングランド最南端の、海に落ち込む

あの高い岩の頂きに、一時間ほど座っていた。

海は鋼鉄のように青く光り、ひとつひとつの岩のまわりに

小さな水泡の円が出来ているのを除けば、

ほとんど波ひとつ見えず、果てしもなく伸び拡がって、

あたかも世界全体を浸してしまうように見えた。


クリムゾン・キングの宮殿を旅立ち、

ポセイドンの目覚めに立ち合い、

リザード岬の教会の礼拝堂の鏡の音にも別れを告げ、

今朝は、この島に辿り着いた。


マクドナルド&ジャイルズ兄弟も、グレッグ・レイクも、

みんないなくなってもキング・クリムゾンは"島"だった。

ふいに大きな波が襲ってきたり、

凪ぎの水面がこの上なく安らかな気分を運んでくれる.....。





109 / 365

2010.7.5

McDonald And Giles / McDonald And Giles



ヴァン・ダイク・パークス、メイソン・ウィリアムスと聴いていた先週、

ところが月曜日、キング・クリムゾンの話なのかいって。

それはそうだね。何の脈絡も関連性もない。

しかし、僕は聴く。

この素晴らしいアルバムを。

ロバート・フィリップのワン・マン・バンド、

キング・クリムゾンを早々に脱退して発表した

イアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズのふたりが創った、

たった一枚のアルバムは初期のキング・クリムゾンより、キング・クリムゾンらしい。


ギター、ピアノ、オルガンを担うマルチ・インストゥルメント・プレイヤーの

イアン・マクドナルドの初期キング・クリムゾンの諸曲を思わせる美しい曲と

印象的なフルートのフレーズ、クラリネットの音色、変拍子になる曲想、

マイケル・ジャイルズのドラムを叩きながらハミングして作曲したようなロックン・ロールに

絡むホーン・セクション、マイナー・メロディの時でも何故か見捨てられた淋しさはなく、

メジャーな曲想の時にも、脳天気な楽しくはない不思議な味わい。

ベースにこれもキング・クリムゾンを抜けたマイケル・ジャイルズの弟、

ピーター・ジャイルズが全面参加、それと1曲にスティーヴ・ウィンウッドをオルガン、

ピアノでゲストとして迎えているものの、ほとんどのサウンドをふたりで創り上げた手作りプログレ・アルバム。

1970年、5、6、7月に英国のアイランド・スタジオでの録音。

スタジオで録音された音のいい手作り宅録ロック・アルバムの味わい。


僕はこの一枚をマクドナルド&ジャイルズの"紫のアルバム"と呼んでいる。

ジャケットは互いにガルーフレンドに腕をまわし

(ジャイルズは奥さんだろう)、森の小径を歩くジャケット、大胆だ。



デビュー作にして女性たちと腕を組んでジャケットに登場する男たち。

しかもジャケットの内側にはイアン・マクドナルドのジャケットに寄り添っている彼女、

シャルロットのヘタな絵を全面に使っている。



やりたい放題の二人。しかしそのピンクの上手くない絵が、いい味だ。

そのシャルロットに捧げられた1曲目、"組曲ハ長調"がDmになり

インプロヴィゼーションを展開するとピンクとオレンジと紫の、

その絵の中を惑星のハイウェイを飛翔している自分がいる。





108 / 365

2010.7.2

The Mason Williams Phonograph Record / Mason Williams



このアルバムは昨日紹介したヴァン・ダイク・パークスの

「Song Cycle」と同じように素晴らしい。

それとは違うものなのに同じだ。

違うのに同じ、どういうことだ。

そういうことだ。


「ほとんどのレコードはその人に出来ることしかしていない。

シンガーは歌い、プレイヤーは演奏する。

僕の問題は、自分に出来る以上のことを思いついてしまうこと。

例えば、"バロック・ア・ノヴァ"と"サンフラワー"を書いたのは僕だけど、

演奏は完全にオーケストラに任せている。

この2曲に関しては、僕よりずっと上手く扱えるからね。

12曲全部でメイソン・ウィリアムスが前に出る必要はない。

僕がいなくても、アイデアは生きるんだ。」


ソング・サイクルと同じコンセプトだ。

参加ミュージシャン、40名以上、L.A録音、同じレコード会社、

同じジャケット・デザイナー、エド・スラッシャーによるアルバム・カヴァー、

1968年同じ年の発表。

おやおや、ハープ奏者のゲイル・ラヴァン女史もどちらのアルバムにも参加して。

"ソング・サイクル"にも人名が曲のタイトルになっているものや、

ハーブの"ポプリ"がラスト・ソングのタイトルになっていたりするが、

このメイソン・ウィリアムスのアルバムでも

英国ウェールズの詩人、"ディラン・トーマス"が曲タイトルになっていたり、

花の名前、"サンフラワー"が曲になっている。


ディラン・トーマスはたった30秒の曲。


"ディラン・トーマスは現れて消えた

現れて消えた、現れて消えた

ディラン・トーマスは現れて消えた

彼の血は言葉に変った"


これがバンジョーをバックにたった1回歌われるだけ。

1曲目の"ライフ・ソング"もたった1回歌われて27秒で消えていく。


"人生ってすてきじゃないか

人生って楽しいじゃないか

人生って完璧じゃないか

時間つぶしには..."


クロディーヌ・ロンジェがカヴァーした

"ワンダー・ラヴ"の歌詩の素晴らしさはどうだ。


"さぁ、ふたりで彷徨おう

見たり、知ったりできる人生のすべてを

失われた季節の中を僕たちは漂う

万物が現れ、万物が消えてゆく


さぁ、おいで、ふたりで彷徨おう

なにが見つかるか確かめるために

おたがいを見つけるだけだとしても

それで旅に出た甲斐はあるはず


愛はまるで天の星

果てしない空で燃え盛り

落ちるときはばらばらに散ってゆく

生けるがごとく滅するんだ

生けるがごとく滅するんだ





107 / 365

2010.7.1

Song Cycle / Van Dyke Parks



構築されているのに構築されていない

こうして聴いていると現実にある音なのに現実ではない

地図で行き方を確かめているのに別れ道にさしかかると、

右へ行くのか左へ行くのか決めかねてしまうような.....

譜面に書かれたオーケストレーションなのに、

気まぐれなサンプリングのように響く、リズム、テンポ、

オーケストラ・アレンジ、パーカッション、ハープ、

バンジョー、オート・ハープ、ティンパニー、バラライカ、

オールド・ファッション・ホーン、木管、コーラス隊、

このアルバムのことを思いながら、かつてのパーム・デザート、

ロサンゼルスの街をドライヴしたことがあった、

ヴァイン・ストリート、ローレル・キャニオン・ブールヴァード..... ハリウッド・ブールヴァード.....

何故だかその都会は、とても懐かしく、ノスタルジックに映った。



南部ミシシッピーに生まれ、東海岸のニュージャージーの高校に通い、

西海岸でビーチ・ボーイズ、ブライアン・ウィルソンと曲を作っていた男は、

ハリウッド的なアメリカや西部開拓時代のアメリカ、

そして60年代後半にして早くも複雑で難解なアメリカを提示していた。


これだけ語り継がれて、しかも謎につつまれて存在し続けるアルバムは他にはない。


右へ行くのか左へ行くのか、つねに行方の定まらぬ哀れなシャツ屋が

ヴァイン・ストリートを注文のシャツを届けようと歩いていると誰かの声が聞こえてくる。

"有限による無限の不法監禁はない"。

シャツは届かず仕事部屋に戻り、哀れなシャツ屋は

シャツの形をしていないシャツを作り始めた。





106 / 365

2010.6.30

All Good Men / Beaver & Krause



僕は長年、ビーヴァー&クラウセのアルバム・タイトル

「All Good Men」の響きに魅かれ続けている。


僕は長年、ビーヴァー&クラウセの謎のアルバム・カヴァーに魅かれ続けている。


僕は長年、ビーヴァー&クラウセの「All Good Men」のアルバム・バック・カヴァー、

カーライルのインディアン学校で1904年6月に撮影されたビーヴァー&クラウセとは

何の関係もない二人の男の写真に魅かれ続けている。



僕は長年、ビーヴァー&クラウセがムーグ・シンセサイザーの

2人組、という存在でアルバムを発表していたことに魅かれ続けている。


僕は長年、ヴァン・ダイク・パークスの「Song Cycle」と同じように

このビーヴァー&クラウセの「All Good Men」の音楽に魅かれ続けている。





105 / 365

2010.6.29

a neuf / Julverne



一枚のアルバム、音楽、は道のよう。

右へ曲がろうとして、つい左へ。

いつもの道でも、違った発見をすることもある。

天気によって、雨や夕暮れや、時刻によって、夜明け前や真夜中に、

そのいつもの道を通ると少々違った印象を受けたりする。

そんな道を通るように、今日は、ふらっとJulverneという

ベルギーの室内楽団のアルバム「a nuef」に足が、いや耳が向いた。



フルート、クラリネット、バスーン、チューバ、アルト・サックス、

ピアノ、コントラバス、ヴィヴラフォン、ヴァイオリン、チェロ等による

現代音楽、印象は、何度も歩いているのによく思い出せない道のような。

1、2度訪れた旅先の、ここは通ったような気がするけど、

どうだったかな、というような.....。

印象のないことが印象としてよく残っているような、

したがって何度聴いても新鮮ということだ。


と、ここまで読んできても、どんな音楽かよく分からないでしょ。

そうなんだ、聴いている本人にもよく分からない、

存在と非存在の室内楽。

そうだな、ジャン・コクトーの映画のタイトル・バックに流れてくるといい具合かもしれない。





104 / 365

2010.6.28

I' individualist, Un ami dort / Jean Cocteau (45's)



京都河原町四条の喫茶店、フランソワ界隈に見まがうような路地をくぐり抜け、

木造りの階段をあがるとレイン・オン・ザ・ルーフ。

そこでレコードの溝にプレイヤーの針を落とす。

黒いビニールの円盤は回り、回り、季節と回り.....

もう4年も続いているレコード・リスニングの時間、エコー・マウンテン・パーラー、

先週の土曜日も、その時間は何度も訪れてくれる人たちと和やかに過ぎていった。


毎回参加してくれて顔見知りになった青年が帰り際に言った。

「これから、ヴァン・モリソンのあのアルバム

(No Guru, No Method, No Teacher)を捜しに行きます。」



またここ最近、欠かさず参加してくれる男女二人、

彼らは生活空間の中で会話しながらその時間を楽しんでくれているよう、

ジャン・コクトーのシングル盤をふたりでじっと見つめていたので、

「これは京都の恵文社で見つけたものです。」と言うと、

「いくらぐらいだったんですか」と。

はっきり覚えていなかったが、

「1000円くらいだったかと、でも聴いてみると音楽なしの語り、だったんですよ」と答えた。

「そうですか、ジャン・コクトーのシングル、内容がどんなものであっても、

その存在だけで、それだけでいいですよね。」


さて、僕たちは梅雨の日々も楽しく音楽の巡礼の道を行く。





103 / 365

2010.6.25

Cyrus / Cyrus Faryar



大地と音楽、そのようなものが今朝の朝焼けの空に導かれた。

南アフリカでサッカー・ボールが転がり、

イギリス、ウィンブルドンのセンター・コートに日が差して、

東京の朝はといえば短い時間ではあったが、きれいな赤に空が染められた。


とっておきの一枚のアルバム、サイラス・ファーヤーの「Cyrus」も朝日を浴びた。

1971年に発表されたタイム・マシーンだ。

この音楽に乗るとタイムレス、

ちょうどレイ・ブラッドベリの小説「たんぽぽのお酒」のページをめくると、

そこからの夏のにおいが溢れ出すように、時代、年齢、

場所に関係なく、ただ夏の大地が現れるような具合。

えっ、そんな話はいいから、サイラスというのは、どこの誰で、

何年生まれで、何をしてきて..... って。

どこの誰かは知らないけれど、僕は今日、また確認した、

このサウンドが夏の大地と暗闇からそっとやってくる赤いものだと。


ロサンゼルス、ハリウッド・フリーウェイとバーバンクの真ん中にある

バーハム・ブールヴァードにあったサイラスの自宅で録音された宅録アルバム、

そのサウンドスケールは大きい。


P.S.

その自宅に手作りのスタジオ小屋を建てる時に手伝った人たちの中には、

ハリソン・フォードもいたという。

そしてジェームス・テイラーの「Sweet Baby James」の

ジャケット・カヴァーのポートレイトはそこで撮影されたもの。

手元にアルバムがある人はジャケットを見てみよう、

リラックスしたジェームス・テイラーがいる。





102 / 365

2010.6.24

Wild Tales / Graham Nash



グラハム・ナッシュ、思いっきりニール・ヤングのアルバム

「Harvest」の影響を受けました。

そのようにバンドで録ってみました。

ドラムのジョニー・バーバタにアルバム「Harvest」の

ドラムのように叩いてくれ、と指示しました。

ハーモニカもぷうぷう吹き、録音しました。

カントリー・タッチの曲も入れました。

ベースも少々、ボコン、ボコン弾いてもらってます。

ニールの"サザン・マン"のようなマイナーの曲も入れました。

全体に、ラフなドラム、ベース、ギター、

それにエレクトリック・ピアノのリズム・セクションでサーッと録音しました。



ニールにこれを聴かせると、気に入って翌年の彼の「On The Beach」では

エレクトリック・ピアノを何曲か自分で弾いていました。

これは73年で、彼の「On The Beach」が74年の発表です。

ほとんど同じ頃でした。


そうそう、ジョニ・ミッチェルと彼女のローレル・キャニオンの

家での同棲はやめましたが、1曲"Another Sleep Song"で参加してもらっています。

結局、それが別れの歌になりました。

ジャケットの裏の絵は彼女が描いてくれたものです。

"あまり語られることはないけど僕自身はこのアルバム、とても気に入っています"

とグラハム・ナッシュになりきった僕は言う。





101 / 365

2010.6.23

On The Beach / Neil Young



ニール・ヤングは最高だ。何故だかわからないけど。

1969年からそう思ってるから、もう41年だ。

どのアルバムがベストだって?

きみならセカンド・アルバム、「Everybody Knows This I Nowhere」かい。

それともあれもいい、これも、と巡り巡って「After The Gold Rush」かい。

「Tonight The Night」がいちばん好きだという人もいた。

が、その人は何年か前に行方不明になった。

意外に、「Comes A Time」も人気かもしれない。

えっ、「Journey Through THe Past」のサウンドトラックがいいって、支離滅裂で。

それは、わかる、でもやっぱりセカンドかい.....。


黄色いジャケットに白いズボン、まるで上野の演芸場に出てくる

漫才師のような出立ちのニール・ヤングの後ろ姿がブーツをぬいで砂浜に。

ズーマ・ビーチだろうか。

パラソルの傍にはロケットが砂浜につんのめっている。



少々離れて、か細い植木鉢が一個。

パラソルの傘の色はニール・ヤングの服と同じ、黄色に白、

内側の生地の模様は、アナログ・ジャケットでは、ジャケットの紙の内側の全面に。



演奏はラフだ、歌もいつものように鼻先で歌ってる、

でもブルースをね、こわれそうな雲と雨のことをね。

確かマーキュリー・レヴはこのアルバムの中の"Vampire Blues"をカヴァーしていた。

わかる、変った人たちは、みんなニール・ヤングが好きだ。


1974年のL.A録音(2曲はサンフランシスコの自宅)だ。

74年のアメリカ、西海岸でこのブルースだ。

10年くらい前だろうか、カーネーションの直枝くんと

「On Tne Beach」がいちばんいいね、という話になった。

今、2010年6月23日の今日の日はどうだい? Mr. Naoe。






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