プロトンポンプ阻害薬proton pump inhibitor(PPI)
消化性潰瘍治療薬の開発において,1967年にスウェーデンのアストラ社が約500種の化合物の中から選択したオメプラゾールにはじまる新しい作用機序の薬剤である.胃の壁細胞における胃酸分泌機構の最終段階は分泌細管の微絨毛に存在するH+,K+‐ATPase(プロトンポンプproton pump)によってHCIが形成されるといわれており,この合成機構を阻害する作用機序をもつ薬をPPIと総称している.例えば腸管吸収されたオメプラゾールは酸性環境下に分泌細管に入ると活性型のスルホンアミドに変換されてとどまり,酵素タンパクに不可逆的に結合することによりH+,K+‐ATPaseの阻害作用を示す.したがって,新しくH+,K+‐ATPaseが合成されるまでは酸分泌機能が回復しない.また血中濃度と効果持続時間は関係しない.他の消化性潰瘍治療薬に比較して胃酸分泌抑制および持続時間が強力であり,究極の潰瘍治療薬と期待されたが,承認されている用量では治癒しない症例も現れている.また,酸抑制に伴うfeedback機構により血中ガストリン上昇が考えられ二次的に粘膜の過形成やカルチノイド腫瘍の発生が心配されているが,現在のところ報告はみられていない.現在市販されているものはオメプラゾールomeprazoleとランソプラゾールlansoprazoleの2剤であるが,さらに何種類かが開発中である.いずれも基本構造式はbenzimidazoleである.
"no acid,no ulcer"という言葉が示すように、以前から消化性潰瘍の治療では、胃内酸度の調節を主眼として来ました。
壁細胞での酸分泌刺激経路には、副交換神経、ヒスタミン、ガストリンの3つのルートがあります。H2受容体拮抗剤はこのうちヒスタミンルートを抑制するもので、その臨床成績は従来の潰瘍治療薬に比し革新的進歩をもたらしました。
しかし近年、これらの3経路とは全く異なり、酸分泌の最終過程で抑制するプロトンポンプインヒビター(阻害剤)が開発され、その酸分泌抑制作用はH2受容体拮抗剤(H2ブロッカー)を上回り、その臨床効果に世界的な期待を持たれています。
<メカニズム>
壁細胞を直接刺激する科学伝達物質の主たるものには、
1)胃粘膜神経末端より遊離されるアセチルコリン
2)血液を介して到達するガストリン
3)胃粘膜の分泌細胞から酸分泌細胞近傍の細胞外空間に遊離されるヒスタミンの3つに分けられます。
この3つの化学伝達物質が各々のレセプターに結合すると、ヒスタミンはcAMP、アセチルコリンとガストリンはCa++がセカンドメッセンジャーとなり分泌側細胞膜に存在するH+、K+ATPase(プロトンポンプ)を稼働させ、壁細胞からH+が放出されHCL(塩酸)として胃内腔に分泌させます。
プロトンポンプ阻害剤の作用部位は、分泌の最終過程にあるH+、K+ATPaseのみを阻害し、H2受容体拮抗剤よりも更に基礎および各刺激酸分泌を強力にしかも長時間抑制することによって、その臨床効果が得られます。
しかし動物実験でECL(エンテロクロマフィン様細胞)増加が見られることがあり、長期使用した場合に若干の懸念があります。
http://www.sam.hi-ho.ne.jp/tootake/199181.htm#p3
ゴホンといえばPPI
咳嗽(がいそう)とは咳(せき)のこと
PPI:プロトンポンプ阻害剤
咳といえば風邪に付き物です。風邪では普通1〜2週間持続しますが、3週間以上持続することは少なく、8週間以上継続することは希です。
3週間以上持続する咳嗽を「持続性咳嗽」、8週間以上継続する咳嗽を「慢性咳嗽」と区別して表現することもあります。
3週間以上継続する咳嗽の原因として普通、肺癌や肺結核などが浮かび上がってきますが、実際に肺癌や結核である頻度は以外と少ないのです。
欧米では、慢性の咳嗽原因として
*後鼻漏症候群(約41%)、気管支喘息(約24%)、
逆流性食道炎(約21%)、慢性気管支炎(約5%)、
気管支拡張症(約4%)があげられています。
*後鼻漏症候群は日本のアトピー咳嗽+副鼻腔気管支症候群と考えて下さい。
つまり、欧米では日本で咳嗽の原因と考えられていない逆流性食道炎が、慢性の咳嗽の3位となっているのです。
日本で逆流性食道炎による慢性咳嗽の報告が少ないのは、逆流性食道炎患者に咳嗽の合併が極端に少ないのではなく、咳嗽により消化器症状が強い患者の方が多いためと思われます。
最近、PPI(プロトンポンプ阻害剤)で、再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法の適応が認められました。ですから、PPIを飲めば慢性の咳嗽が治る可能性が大いにあります。
実際に、咳嗽を伴う患者の咳嗽感受性は咳嗽を伴わない患者に比べ有意に亢進し、PPIにより改善したことから、咳嗽を発現する患者は、逆流性食道炎より咳嗽咳感受性が亢進していることが示唆されています。http://www.sam.hi-ho.ne.jp/tootake/1998.8.1.htm