第19回 脳死と臓器移植 |
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| 死の判定の変遷 |
死の判定は、従来は、心臓の停止、呼吸の停止、瞳孔の散大の3つの兆候によって行われこれらを確認することによって、死の宣告が下されてきました。
ところが、近年、心臓の拍動を止めて心臓の手術を行い、そのあとでまた心臓を動かす手術法が開発されました。また、脳機能を失い、自力呼吸が出来なくなっても、人工呼吸器の使用と人工的な栄養補給で、循環や新陳代謝の機能を保つことができるようになりました。
すなわち、心臓停止と呼吸停止によって死を判定することが難しいケースが増えてきたのです。そこで出てきたのが、脳死を死の基準とする考え方です。
脳死とは、「脳全体のすべての機能が完全に停止して、元に戻ることはありえない状態」です。 |
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| 脳死の判定基準 |
脳死の判定は、非常に難しい技術です。たとえば、大脳が機能を喪失していて、意識は全くなく、移動・食事・排泄などが自力では不可能だが、脳幹が機能しているため、呼吸は可能という場合があります。この状態が続いている人を植物人間といいますが、これを脳死といえるかどうかは困難です。
ここから出てきたのが、脳幹死をもって脳死とする考え方です。脳幹には、呼吸や血圧を維持する中枢があり、ここが死ねば、大脳をはじめ、脳の他の部分も、必然的に死に至ります。
したがって、脳幹の死だけで脳死の判定には十分、というわけです。
イギリスではこの基準を採用していますが、アメリカでは、脳幹死も含めた脳全体の死=全脳死を脳死の基準としてます。
我が国も全脳死の立場をとっています。1985年、厚生省の「脳死研究班」は、脳死判定の基準を発表しましたが、そこでいう脳死とは、全脳死です。
その基準は、次の6点。@ふかい昏睡 A自発的呼吸の消失 B瞳孔が固定し、瞳孔径は左右とも4mm以上 C脳幹反射の消失 D平坦脳波 E以上の条件が満たされたのち、6時間経過を見て変化がないことを確認する。 |
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| 脳死と植物状態との相違点 |
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| 全脳死 |
脳幹死 |
植物状態 |
| 大脳半球・小脳・脳幹を含めた脳全体の機能喪失 |
脳幹の機能喪失。ここが死ねば、脳の他の部分も必然的に死ぬ |
大脳が機能を喪失しているため意識はないが、脳幹が生きているため呼吸は可能という状態 |
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| 脳死と植物状態との相違点 |
- 脳死
- すべての脳機能が不可逆的に停止
- 意識はまったくない。自発呼吸がなく、人工呼吸が必要
- 回復の可能性はなく、通常、1週間程度で心停止に至る。
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- 植物状態
- 脳幹(間脳・中枢・橋・延髄)の機能が一部残存
- 高度の意識障害があるが刺激に反応する場合もある。多くは、自発呼吸がある。
- まれに回復することもある。何年も生存する場合がある。
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| 脳死 |
植物状態 |
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| 臓器移植の問題 |
脳死が問題になるのは、生死観という倫理に関わる問題のほかに、臓器移植の可能性にも関わっているからです。
心臓・肝臓などの移植には、これらの臓器を脳死状態で摘出することが不可欠ですが、脳死が死と認められなければ、移植治療の可能性は、非常に低くなってしまいます。
脳死を確実に診断する方法や、脳死を即個体の死とできるかどうかについては、いろいろな意見がありますが、全体としては、脳死と臓器移植を認める方向に向かっています。 |