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人生の行事ときもの・・・衣更え<きものと季節>水無月(みなずき)◆衣更え 「ひとつ脱いで後においぬ衣がえ」 芭蕉 これはみちのくを旅する芭蕉が、衣更えの日に上衣の一枚を脱いだという句です。風薫る五月のさわやかさ、冬から春にかけて着ていたものを脱いで単衣の軽さが身にうれしい季節です、俳句の世界では「衣更え」は五月の季題と なっています。現今では六月と十月の一日をもって衣更えをするしきたりがあります、街角で見かける学生さんの制服が夏服に変わったり、交番のお巡さんのすがすがしい白い制服などを目にして、青葉越しの薫風に初夏を感じます。きものの衣更えも大ざっぱにいって、単衣(ひとえ)のきもの、と袷(あわせ)のきものが六月と十月を境に行われるのですが現在の異常気象は寒暖の変化も激しく、必ずしもこの衣更えが快適な衣生活とは言えなくなりました、今年は殊のほか異常気温で五月の中頃には関東も三〇度近くの暑い日があり、朝から照りつける日差しに単衣の結城紬に日傘で仕事に向かいました、20分程のいつもの道のりなのに、袷のきものと違って軽やかさは裾にあって、足取りの弾みはこころまで軽く街路樹の青葉が単衣の背中にじかに感じられ、一枚脱ぎすてた爽やかさを実感いたしました。 ◆きものと季節 @きものは布によって季節感を表す よく口にされる例には「春結城・秋大島」と言う言葉があります、同じ紬(つむぎ)でも結城紬は春に着るもの、大島紬は秋にふさわしい、ということです、と言うのは結城紬は比較的地厚で単仕立てにしたほうが美しく着こなせるのと、どことなく軽快な生地味をもつ織物であるからです。それに対して大島紬は繊維が細く地質も薄くて張りがあることから、袷仕立てにしたほうが良くまた光沢があってしっとりとした雰囲気が冬に向かう季節に適しているからでしょう、このようにきものは布のもっている感じが季節感を表すその一例です。 A色彩が季節を表現する 日本は四季の周期がはっきりと交替し折々に移り変わる風景の美しさは、自然が失われつつある現代でさえも私たちの心を引きつけずにはおりません、日本人の色彩感覚の大きなポイントをなすものとして、平安時代の女官たちが衣服の配色の美的表現に心をくばったものに「襲色目」(かさねのいろめ)があります 、色と色を重ねて優美を楽しむ、自然界の重なりをそのまま、きものの色襲ねにする、四季折々の植物の色から衣服に取り入れたもので、その数は二百種にものぼるといわれます、この襲色目に示された王朝の女性たちの色彩感覚の多様と鋭さによる衣服美の色調の伝統の上に、更に江戸時代の美に対する意識によって完成された「日本のきものの色」は独特の美しさをもっています、現代のきものの上着と下着・裏地や裾回し・袖口の配色などに受け継がれていますが、この日本人の自然愛から生まれた呼び名の深い味わいとともに、私たちの暮らしの中にいつまでも残しておきたいものです。![]() Bきものは季節を重んじる模様で・・・ きものの柄には具象的な描写がたいへん多く手描友禅のほとんどはそれです、生活の中に季節の移り変りをなにより愛した感覚の表れとして、季節にさきがけた柄のきものを着るのが心ある人のお洒落というものでしょう。 ![]() 梅の柄は梅春と云われてお正月からか、二月に着るきものです/桜は桜の時期/蝶も三・四月/あやめ・しょうぶなら五・六月/流水や波・柳は七・八月の夏物/九月からのきものは秋草で涼しさを求めます/晩秋になると紅葉/十二月なら雪景色/と言うように日本は四季の変化に富み、季節が来るともたらされるものに非常な喜びと自然への感謝をもって暮してきた日本人は、きものの色や模様に季節を描き出しその季節を待つ楽しみや着る喜びには深い感情があります。 ![]() また模様の呼び方一つにも“吹き寄せ”“こぼれ松葉” など季節を重んじる俳句にも似た形容詞が沢山あります。ですから、きものを見ただけで春夏秋冬がわかり、その上初秋か晩秋かまでがわかります。このようなきものの伝統美は心得ておきたいものです。 C季節に関係なく着られる模様 昔から季節に関係なく一年中着られる柄としては、四君子(欄・菊・梅・竹)あるいは牡丹の模様、このように一種類の花や草ではなく春秋あるいは四季の植物をいくつかまぜて模様にしたときには季節なしのきものになります。また唐草や唐花といった想像上の植物や鳥等、また、図案化したもので例えば梅でも紋章にあるような梅鉢とか裏梅といった完成された柄も季節を問いません、紅型模様や更紗模様も季節なしのパターンがほとんどです、最近はこうした柄付けや図案がふえています、晴れ着用には時期を限定されない選び方から始めるとよいでしょう。 ![]() ◆Myきもの衣更え暦 季節を伝える更衣、これは宮廷から起こった習慣で四月一日に夏装束・十月一日に冬装束にと年に二回衣服を改めるきまりでしたが、これは陰暦を中心にしていますから、その後の太陽暦で現在に改まったのですが、現今はさらに地球上の異常気象や気温の上昇などと、生活様式の違いは言うまでもなく時代の変化に応じた快適な衣更えを考えたいものです、しかし日本人の生活が自然と常に密着し、風のうつろいに季節を感じ肌にふれる衣の感触に哀れを感じる・・・そうした情緒は失いたくないものです、きものの持つ伝統的なしきたりをふまえ上述のように布の質感や色や模様に季節感を盛り込みきものの四季を楽しみたいものですね。 ![]() では現在の衣更えを考えるとき、きものの季節を参考にしてみましょう、きものの季節はだいたい七つに分けられます、<一月〜二月は梅あわせ>梅春といわれる初春の袷きもの・<三月〜四月は春あわせ>純春となる春袷・<五月〜六月は春ひとえ>初夏の単衣きもの・<七月〜八月は夏の透けるひとえ>盛夏で透ける単衣・<九月一日〜三十日は秋ひとえ>初秋の単衣・<十月〜十一月中頃までは秋あわせ>晩秋にかけての袷きもの・<十一月中頃〜十二月は冬あわせ>このように袷きものの季節は四つに区分され、また単衣きものの季節は三つに区分されますがそれぞれの季節を表現するには色や柄・布質などでコーディネートするとよいでしょう、しかし細長い日本列島では桜前線も三月から開花し北上し北海道では五月、今年の異常気温では五月二七日に稚内市でえぞ桜が満開だったとか!住む土地やその時々の気候にあわせて着る「Myきもの衣更え暦」できものと季節を楽しんだらいかがでしょうか。 では次回で ご機嫌よう
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