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きものの品格 --- きものの常識 et cetera< 家紋について>(7)

  天文地理編
  家紋について、つらつらと書きとめているうちに今回で7回目となり3年が経過してしまいました。前回は「天文地文」の日紋・月紋・星紋・にふれましたが、自然現象の中の山や波や雲・雪・霞・露といった現実を極限の美に発展させた紋章のバリエーションが多くあります。
 ◆山紋
  山の形を図案化または記号化した紋で山の高く美しい姿・泰然自若としているさまが尊ばれ、武田信玄は「動かざること山の如し」として旗幟に「風林火山」の文字を用いています、特に紋として富士山が用いられるのは霊山として崇められているからです、バリエーションには山に霞や雲のかかっているもの等があります。
  
 ◆波紋
  
波はさざ波から怒涛にいたるまで千差万別ですが、きわめてダイナミックで昔から人々に強い印象を与えたのでしょう、古代人は波を水神のしわざと考え海が荒れると弟橘姫のように入水して神の魂を鎮める・また後世になると戦国武将は波文様を紋章の旗印に、あるいは武具にとおおいに利用しています、とくに斎藤道三はこの超自然的な力を戦陣に用いたようです、また漁師も海上の平安を祈って波紋を海神のシンボルとしました。
  
波紋には、その配列により①立波<波の盛り上がりを形象化したもので、一頭(ひとつがしら)・二頭・・・等と、②波丸は波を丸でデザインしたもので波に千鳥・波に兎・波に燕・波に月・・・等の組み合わせがあり、波紋には立波と波丸の二種類があります。
 ◆雪紋
  
雪の結晶を図案化したもので六角のパターンを基本としています、雪は昔から豊年のめでたいしるしとも見られていたようです、紋章としては「雪輪」といって他の紋の輪郭に用いたものや雪自身を形にした「初雪」・「降雪」などがあり、さらにはデフォルメした美しい文様も幾つかあります。
  
 ◆雲紋
  
天空を象徴し古代では雲の変化が運命の吉凶や予言を現わしていると信じていたようです、京都の東寺にも雲の印が見られますが極楽に庶民を導く雲といわれています、雲紋は多く寺院の寺紋として用いられています、古くは正倉院の鏡の文様にみられます。
  
 ◆霞紋
日本は霞の国といわれるくらい湿気の多く日本の風景には霞が絵画や模様にたくみに使われ美感に一段と陰影を添えています、また屏風絵や絵巻物にも多く用いられ、時間的経過・空間の奥行き・場面の転換などを表しています、家紋はこうした霞をたくみに用い、しかも図のように単純化した美的感性は素晴らしいものです、能の家元の喜多家の紋は「春霞」で申すまでもなくすばらしいものです。
  
 ◆雷紋
稲妻を文様化したもので古くからあった雷電を描いた文様から転化されたものと思われています、公家の山科家は「稲妻菱」を用いています。
  
  
 ◆露紋

露は露点ともいわれ紋章の一部に付けられた点のことをいいます、いわば紋章の付属品で同じ紋章に露点をつけることによって家紋を区別する意味合いがあり露点の数もそれぞれの違いがあります、また露点を付けることによって文様に風趣をそえたり、ひとつのアクセントにもしたのでしょう。

 このように日本の家紋は花鳥・風月から文字にいたるまで、あらゆるものを採りいれて、それらを極限の美にまで発展させた日本人の知恵とセンスはすばらしいものと思います。自然現象の星を丸で表したり雪を花模様で表現したり夢と現実との巧みな交錯によってうまれたユニークな家紋・紋章は日本の遺産といえるでしょう。
 次回は植物紋にふれたいと思います、お楽しみに! ではご機嫌よう

    
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