昨日といひ けふとくらして あすか川 流れて速き 月日なりけり

( きのうといい きょうとくらして あすかがわ ながれてはやき つきひなりけり )

春道列樹(はるみちのつらき)

解説

「古今和歌集」の冬の歌です。

昨日と言ってたらもう今日が来て、すぐに明日か。
ホント、「あすか川」の流れみたいに月日がたつのは早いもんだ。

「あすか川」という言葉に「明日」を引っかける「掛詞」という技法が使われています。
でも「昨日」「今日(けふ)」「明日」と並んだ言葉があまり古典文法を感じさせなず、
わかりやすい句になっています。

この歌は「年のはてに」詠んだ歌です。
年の瀬に「あぁ、もう今年も終わりかぁ。月日がたつのは早いモンだ」なんてしみじみと
感慨に耽るのは1000年前も今も変わらないようです(^^)


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梅の花 それとも見えず 久方の 天霧る雪の なべて降れれば

うめのはな それともみえず ひさかたの あまぎるゆきの なべてふれれば

よみびとしらず

解説

同じく「古今和歌集」より、冬の和歌。
作者は不明になっていますが、柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)の歌とも言われているようです。

「久方の」は、次の「天」にかかる枕詞です。
「天霧る」とは、霧や雲などで空が一面に曇る様子を言いますが、この場合は
雪が空一杯に降ってくる様子を「天霧る」と表現したわけです。

梅の花がそこにあると区別がつかないよ、
空一面に真っ白い雪が降っているから。

ご存じの通り、梅の花というのは真っ白な花です。白い梅の花に雪が降りかかる風情を
「それともみえず」と表現したわけです。
梅の花と雪を結びつける表現は人気があったようで、他にも多くの歌が残されています。


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小夜ふくる ままに汀や 凍るらむ 遠ざかりゆく 志賀の浦波

さよふくる ままにみぎわや こおるらん とおざかりゆく しがのうらなみ

快覚(かいかく)

解説

「後拾遺集」484番より。「汀」とは「波打ち際」のこと。「志賀の浦」は現在の
琵琶湖西岸のことです。解釈は

夜が更けるにつれて、波打ち際が凍っていっているのだろうか。
波打ち際に寄せる波の音が、だんだんと遠ざかっていくように聞こえる・・・

夜も更けて、ふと窓の外に耳を澄ますと、湖の波打つ音がだんだんと遠く聞こえ・・・
といった風情でしょうか。実のところ、この歌それほど好きというわけでもないのですが(笑)
「遠ざかりゆく」という表現がちょっと気に入ってます。


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淡路島 かよふ千鳥の なく声に 幾夜寝覚めぬ 須磨の関守

あわじしま かようちどりの なくこえに いくよねざめぬ すまのせきもり

源兼昌(みなもとのかねまさ)

解説

百人一首の78番、「金葉集」にも記載された冬の歌です。

実は、「幾夜寝覚めぬ」という言葉は文法的には正しくないとされています。正しくは
「寝覚めぬらむ」もしくは「寝覚めぬる」で、それが略されたものであるとか、諸説ありますが
はっきりコレだというものはないようです。和歌の世界もまだまだ分からないことが多いのです(笑)

海の向こう、淡路島から千鳥が飛んでくる。そのもの寂しい鳴き声に
幾夜眠りを覚まされ、物思いに沈んだだろうか、須磨の関守は。

須磨というのは今の神戸市南西部で、明石海峡を挟んで淡路島と向き合った場所です。
ここは「源氏物語」の話の中で、源氏がここに流された(島流しみたいなもの)場所として有名で、
(何故源氏が流罪にされたかを知りたい人は源氏物語を読みましょう(笑))
須磨というのはもの寂しい、悲しい雰囲気を連想させる場所になっています。

「関守」というのは、昔は場所ごとに「関」というものがありまして、通行証がないと
通れないようになっていました。(いわゆる「国境」の国内版のような感じかな?)
関守はそこを守る人・・・入国審査官みたいなものです。当然須磨の関に泊まることになります。

寒々とした夜、ふと鳥の鳴く声に須磨の関守は目を覚ます。
淡路島から飛んできた千鳥、その鳴き声に何となくもの悲しくなって、物思いに沈む・・・
情景的に分かりやすいとは言えないと思いますが、須磨の雰囲気をしっかりと捉えて
映画のワンシーンのような場面を巧く描いている歌だと思います。


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新しき 年の始めの 初春の 今日降る雪の いや重け吉事

あらたしき としのはじめの はつはるの きょうふるゆきの いやしけよごと

大伴家持(おおとものやかもち)

解説

万葉集の最後の一首。なんかもう、解説しなくても大まかな意味が分かると思います(笑)
「重け」とは「しけ」と読み、読んで字のごとく「重なれ」ということです。
あ、それから「あたらしき」ではなく「あらたしき」と読みます。紛らわしいですね(^^;)

新たな年の始めである今日という日の雪がつもるように
今年も良いことが重なるといいなぁ。

21世紀も「雪の玉水」をよろしくお願いします。m(_ _)m


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冬ながら 空より花の ちりくるは 雲のあなたは 春にやあるらむ

ふゆながら そらよりはなの ちりくるは くものあなたは はるにやあるらん

清原深養父(きよはらのふかやぶ)

解説

作者は、枕草子で有名な清少納言のひいじいさんです。
この深養父と、清原元輔(きよはらのもとすけ、清少納言のお父さん)は有名な歌人で、
清少納言の「清」は「清原」という姓から来ています。つまり、歌に関しては名門ですね。

冬なのに、空から花が舞い散ってきた。雲の向こうは春なんじゃないだろうか。

空から花が、というのは本物の花ではなく、雪のことを表しています。
梅の花 それとも見えず…の歌でも説明したとおり、雪→白→梅の花という連想ですね)
雲の上はもう春で、梅の花が散っているのだろうと洒落たわけです。

雪見酒とお花見を同時に楽しめる、ナイスアイデアかもしれません(笑)


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