〜はじめに〜
全国の文化財には多くの様式があります。ここでは長野県の文化財において顕著に見られる様式を紹介します。何気なく見る寺社や民家の建物には各時代の背景に沿った様式があり、そういった基本知識を少しでも知る事ができれば、より文化財を楽しむことができます。基礎知識として、いくつかの宗教統制も上右へ載せました。参考にどうぞ。
〜建築学の知識〜
下記写真は、木曽郡大桑村にある国指定重要文化財の定勝寺庫裏になります。この建築物を参考にして建築学の基礎を勉強してみましょう。
文化財のパンフレットや資料などを見ると、その建築物の紹介文として「○○年築、瓦葺屋根、切妻造、妻入り」などと書かれているはずです。「瓦葺屋根」は瓦を並べた屋根であるという事が理解できますが、「切妻造、妻入り」は何の意味なのでしょうか?

木曽郡 大桑村 定勝寺庫裏 妻入り形式の建物。
〜@屋根形式による分類〜
建築物の屋根は、凡そ以下の4項目に分類されます。例に挙げた定勝寺庫裏の屋根を写真で見ると、下表から切妻造となるのが分かります。
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切妻造
きりつまづくり |
寄棟造
よせむねづくり |
入母屋造
いりもやづくり |
宝形造
ほうぎょうづくり |
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屋根の素材として下記の方式があります。
| 草 葺 |
茅葺かやぶき(ススキ、チガヤなどのイネ科植物)、藁葺わらぶき(ワラ)、麦藁葺むぎわらぶき(ムギ) |
| 板 葺 |
柿葺こけらぶき(スギ、サワラ)、木賊葺とくさぶき(トクサ) |
| 木皮葺 |
檜皮葺ひわだぶき(ヒノキの樹皮) |
| その他 |
瓦葺、銅葺 |
〜A玄関による分類〜
次に、出入口の位置によって建物を分類することができるのでみてみましょう。出入口の位置といっても「妻入り」、「平入り」の2種類しかなく、一般的に妻入りとした建物の玄関は、圧迫感を感じて狭く見えます。一方、平入りにした建物の玄関は、開放感を感じ広く見えます。定勝寺庫裏の出入口は、写真から妻入りというのが分かります。

〜B垂木による分類〜
屋根を支える為、その軒下に木材を配置しなければなりませんが、その主材を垂木(たるき)と言います。垂木は棟木から軒へ渡す材で、屋根の裏板を支えています。垂木が1、2、3段の場合、一軒(ひとのき)、二軒(ふたのき)、三軒(みのき)と呼びます。二軒では下の垂木を地垂木(じだるき)、上の垂木を飛檐垂木(ひえんだるき)と呼び、垂木の鼻を横に連ねる材を木負、茅負と言います。
鎌倉の建長寺、京都の南禅寺などの禅宗の寺を訪れると、大きな山門があります。山門を通り抜ける際に上を見上げると、屋根の下に美しく放射状に配置された木材を見ることができる。これを扇垂木と言い、別名「禅宗様」と言います。さらに、禅宗様に対して平行垂木の「和様」という物もあります。唐招提寺や法隆寺など鎌倉時代に臨済宗と曹洞宗が伝わる以前の奈良や平安時代の建築物は和様で造られています。
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平行垂木
へいこうたるき |
扇垂木
おおぎたるき |
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(参考)
上の写真は、下伊那郡大鹿村の国指定重要文化財福徳寺本堂の屋根裏になりますが、垂木が1段で木材が平行に並んでいることから、平行垂木「和様」であるのが分かります。そこで単純に考えると、「和様」であることからこの建物は禅宗以外の天台宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗の何れかの宗派あったと推測できます。そして建物の棟札や地元の文献等から室町時代に再建された天台宗の寺院だったという事が判明するのです。
〜C柱による分類〜
焼失などによって建物が失われ、数百年経ってその遺構を発掘した時、柱跡が出てきます。柱の太さ、配置、柱数によって、その建築物の規模や、用途をある程度判別することができます。下図を見ると、大棟と呼ばれる建物の主体となる柱と、平行に並ぶ4本の柱が見えます。この間を桁行(けたゆき)と言い、間が3つあるので「桁行3間」となります。これと反対に、垂直方向の柱の間を梁間(はりま)と言い、下図のように2つの間があるので「梁間2間」と言います。また、中央上の□2つと、○2つに囲まれた場所を内陣と言い、その他側を外陣と言います。内陣には通常その建物の本尊である仏像などが安置されます。

(参考)
上写真は上田市にある国指定重要文化財の中禅寺薬師堂になります。正面の柱が4本で間が3箇所あるので、「桁行3間」になります。垂直方向には4本(内、桁行の柱と2本ラップ)あるので「梁間3間」になります。よって桁行3間で梁間3間なのでほぼ正方形になるのがわかります。