幼児のこころとからだの健康

〜最近の話題から

松阪保健所長  佐甲 隆

  1. はじめに

何となくバランスの悪い子供たち 、親らしくない親たち

 子供を取り巻く現状  親と家族、地域社会、さまざまなストレス

 発達と環境との相互作用  バランスの崩れやすい時代 ルールと習慣(伝統)の崩壊

 健康な子供とは? 身体的(からだ)、精神的(こころ)、社会的(なかまと世界)、そして霊的spiritual(いきいき) によい状態で、すくすく育っているか?

 生きる喜びに満ちているか?

 

2. 心をめぐって(こころ)

 子供にとっての快感、気持ちよさ 〜 優しさ、暖かさ、自由さ、活発さ、、、 

 これらが奪われるとどうなるか、、、、!?

 脆弱性(vulnerability)ということ

 未成熟な心を取り巻く様々なストレス、

   虐待の問題、 ADHDについて トラウマ〜心的外傷について(PTSD)

   いじめ、友達、人間関係、 言葉の発達とコミュニケーション、 

 性的な発達とその理解、ジェンダーとセクシュアリティ、

 

3. 身体とこころの問題について(からだ)

 心身症〜こころと体の相互作用

 感染症とこころ (食中毒、0−157,サルモネラ、インフルエンザ)

 アレルギーとこころ (アトピー、食物)   

 救急対応 : 発熱、痙攣、転倒打撲、外傷、火傷、腹痛、脱水、溺水、喘息

 障害を持つ子どもをどう考える? 個性としての「障害」 完全ではない「健常」

 

4. 社会と環境(なかまと世界)とこどもの心

 家族はどうなのか? 安心と愛情の関係

  家庭機能不全、アダルトチャイルド(AC) →傾聴と共感、カウンセリングマインド

 社会はどうなのか? なかまの世界

  ストレス社会、管理社会 →親への精神的支援、こどもへの救い 

 物理的な環境はどうか? アメニティと安全

  環境ホルモン、化学物質過敏症 →環境問題への関心

  SIDS、事故、→健康危機管理

 

5. 人間的(人格的)なトータルヘルス(いきいき)

 食生活とこころ、

 からだを動かすことと、こころとの深い関係、

 生活リズム(あそび、活動と睡眠)、情緒の安定、感動、表現、言葉とこころ

 からだ、こころ,なかまの深い関係と調和のとれた発達、

 自信と安心をもって育っていく姿

 しつけとルールでアメニティ、コミュニケーションでたがいに暮らしやすく 

 spiritual なこどもと快適な社会をめざして

 

  1. おわりに

  親、家族への援助  親の現実、言動への共感と理解、→指導でなく援助を、

発達の遅れが気になる親、障害のある子を育てる家族、虐待が疑われる時、家族内暴力に悩む親、親自身の抱える問題、働く親、単身の親、外国人の親、子供を亡くした親

 こどもの健康づくりは、園づくり、家庭づくり、地域づくりから

 

【註】

★ADHD: Attention Deficit Hyperactive Disorder 注意欠陥多動性障害(のびた、ジャイアン症候群); 注意の集中ができない、落ち着きがない、切れやすいなどを特徴とする子供たち。アメリカではかなり多く、日本でも増えてきている。

★AC: Adult Child (Children) ; 従来アルコール依存症の子どもで、トラウマを抱えながら育った結果こころに問題を抱えるようになった人々を意味したが、最近は機能不全家庭(dysfunctional family)で育った子供たち全般を意味するようになっている

★PTSD : Post Traumatic Stress Disorder 心的外傷後ストレス障害 ;強いショックなどこころに深い傷(トラウマ)を負った人が、後々までさまざまなストレスに悩まされる状態

★スピリチュアル(spiritual): WHOは、健康の定義に、身体的、精神的、社会的に加え「霊的(魂のある、気力のある、宗教心のある、人間として立派な、人格的に崇高なといった意味か)に良好な状態」を加えようとしている。


子供のこころのきず(強いストレスとトラウマ)

原因 

 突然で、圧倒的な恐怖体験、性的いたずら、暴力、事件の目撃、災害、事故によるけが、病気、恐ろしい体験
  脆弱性、易傷性 (きずつき安さ、ひ弱さ、) ;幼稚園自体がストレス

サイン 

 (表現力の未熟→行動の変化)おそれと不安、パニックや苦悩、分離不安、神経過敏、緊張、退行(おねしょ、ゆびしゃぶり)、遊べない、ひきこもり、睡眠障害(眠れない、悪夢、夜驚症、夢遊病)、性格変化(わがまま、おもいやりなし、いらいら、)痛みをうったえる、無茶をする、攻撃的、衝動的

  性的虐待のサイン;性器に異常な関心、性的行動、性知識高まる、自慰、接触

           性器の痛み、あざ、炎症,うみ、おりもの、std

           男、女、場所などにおびえ、不信感  

心理療法とサポート 

治療(略)

サポート ;

 子供の状態、立場で反応が異なるので、こどもの性格、態度、社会性、人間関係のスキルなど十分考慮

 家族の力(支える力、問題解決能力)を高めてやる

 友達や頼りになる大人の存在を確保

 園や地域社会のサポートが得られるか

母親の育児不安とストレス

 家族同士の交流の希薄さ、孤立化、「公園デビュー」ストレス、父親のストレス、非協力、精神的時間的ゆとりのなさ、支援者の欠如、経済的不安、欲求不満、
「児の問題」「母の問題」「家族機能と支援」「育児技術」「母親の対処能力」「社会資源」 などの側面

 

アプローチ

@不安と緊張 →→ 安心感、安全感、世の中を「安心できる場所」と感じられる、

「だいじょうぶ」「心配ないよ」

A恐怖、おそれ →→ 保護されている感覚、「守ってくれている」「愛されている」感じ

「わたしがついている」「○○ちゃんのこと好き」

B孤立、無理解、無力感 →→ 共感される、援助されうると感じられる。

「みんな仲間」「自分に力がある」と感じる、できたらほめる、達成感、

C感情のコントロール →→ 感情の解放(怒りでなく)、泣く、笑う、叫ぶ、体を動かす

【解説】幼稚園の先生方にお話ししました。ストレスフルな現代で、こどももすくすく育ちにくくなっているようです。ふかいトラウマを受けずに育てるのは、難しいのでしょうか?幼児教育にもカウンセリングマインドが必要なようです。