エイズ教育と人権について
松阪保健所長 佐甲 隆
【はじめに】
エイズ、感染症をめぐる差別と偏見の歴史から何を学ぶか
そしてそれを教育にどう活かしていくか
【いくつかの問いかけ】
・感染者の人権問題は
モラルの問題である? Yes , No , Don’t know
正しい知識の有無の問題である? Yes , No , Don’t know
社会防衛や経済成長の枠内で限界がある? Yes , No , Don’t know
病気の見方(病気観、疾病観)が根っこにある? Yes , No , Don’t know
人間の価値観(人間観)と深い関係がある? Yes , No , Don’t know
社会のあり方と切り離せない? Yes , No , Don’t know
・あなたは、感染者を差別しない自信がありますか? Yes , No , Don’t know
【感染者に対する人権的アプローチ 〜 重要な概念とキーワード】
脆弱性(vulnerabilityもろさ、弱さ、感染しやすさ); エンパワメント(empowerment)の逆の概念。個人が自分の生き方を自由に、必要な情報に基づいて決定する事ができるかという尺度
「HIV感染への脆弱性と社会の脆弱性が人権問題と不可分であることの認識」
【エイズ・HIVへの対応の進展】
個人レベル:感染リスク軽減(正しい情報、教育)→脆弱性の低減(ハイリスク集団、ハイリスク行動)
「ハイリスク集団」= 差別されるが故に高い感染リスクにさらされる集団
(社会的弱者) ←→ 差別する側の弱さ、もろさ、不安、過剰反応
差別は感染の「結果」だけではなく、流行の「原因」でもある
→人権の保護と促進(エンパワメント) する側される側双方に
社会レベル:ハイリスク者、HIV感染者、エイズ患者への差別の防止(観念的、倫理的、人道的レベル)
→社会的脆弱性の認識(社会文化的、経済的、政治・行政的要因)
→人権的観点から見た社会的脆弱性への対応
プログラムレベル:保健医療サービスの提供(治療、検査、予防手段、医療の安全性)
→社会的サービス、情報、教育の提供(福祉、知識の普及、行動変容)
→差別防止プログラムの実施(コミュニティ、職場、学校)
【エイズ・HIVに対する人権的アプローチの方法】
@個人レベルの脆弱性を減少するために
認識面;感染の知識、セクシャリティやジェンダーへの理解、サービスや必要な情報へのアクセス能力、判断能力
行動面;個人の特性(情緒的発達、セルフエスティーム、共感への意欲、リスクへの態度、性行為、セクシャリティへの態度、性的虐待、薬物乱用の経験)
スキル(技能)としてセイファーセックスの交渉能力、話し合う能力、コンドーム使用法
教育、情報共有手段;カウンセリング、ピアサポート、トレーニング実習、性行動や薬物乱用に関するKABP(知識knowledge, 態度 attitude, 信念 belief, 実践 practice)調査、
参加型教育プログラム(教育内容、企画にターゲットメンバーの参加)
A社会的脆弱性を低減するために
「社会的脆弱性」とは、社会全体の疾患への「罹りやすさ」と疾患が引き起こす社会的・経済的「影響のうけやすさ」を表す
社会的要因の理解;例えば、人種や宗教への態度、ジェンダー(男女)の力関係、セクシャリティへの態度、異質なグループ、貧困への見方、などの文化、制度、慣習、社会構造。
具体的には、病気をたたり、のろい、刑罰と考え病人に対してスティグマ(差別的烙印)を押したり、隔離、入院させたりするなど。あるいは、立場の弱い女性がコンドームの使用を頼めないなどの「現実」
「差別する側」の脆弱性 : 人間的弱さ、無知、ストレス、不安、パニックなどが偏見・差別を生む。 閉ざされた社会、未成熟の社会が人権侵害を引き起こす
社会的改革・人間的開発の可能性 : 教育機関、政府の役割、コミュニティの役割
【エイズ教育(コミュニケーション)に関する人権的アプローチのポイント】
@エンパワメントとセルフエスティーム(自尊感情)
こども、親、教師、地域ともに自らを大事にし、力を引き出すことで、自立し、他に共感しともに問題解決が図られるような成長へ! 自尊を通じて人権感覚と個人の尊厳へ!
差別する必要のない自信に満ちた自分と地域をつくる!
A開かれた教育(コミュニケーション)参加型、体験型、企画型、ピアプログラムなど
Bコミュニティエンパワーメントにいたるヘルスプロモーションへ展開
【終わりに】
感染者への偏見・差別は、「心理的・社会的暴力」であり、一言で言えば「弱いものいじめ」
いじめが無くなるような教育を!
あえて「人権」「差別・偏見」と叫ばなくてもいい教育を!