1,経絡(けいらく)とは
経絡の経は経脈を意味し、ツボとツボとを結んで流れている道です。絡とはその道と道とを連絡する細い道です。
中国の最も古い医学書である、『素問(そもん)』とか『霊枢(れいすう)』に経絡が記述されています。
前漢(紀元前202年〜世紀8年)ころの医学思想を持った体系的な医学書で、中国医学最古の原典です。
『素問(そもん)』は、人体の生理・病理・解剖・養生法や医学倫理を述べています。『霊枢(れいすう)』は、鍼灸の理論と実際を述べています。
『素問(そもん)』の医学思想の根本に、人体と自然は一体で不可欠だという『天人合一』の考え方が示されています。
人間も自然界の一単位に過ぎないので、「春は生じ、夏は長じ、秋は納め、冬は蔵す」という大自然のサイクルに従うべきで、もしこれに逆らえば、必ず健康を害し、疾病が発生するとしています。(古典の四気調神大論)
DNAを操作し、病気に立ち向かっている現代医学の進歩を横目で見て、天人合一を説くのは逆行しているかのようですが、自然に順応し、天意に逆らわず、自然治癒力を促進させるのが東洋医学の基本原理です。
★経脈‥‥正経と呼ばれる十二の主要なものがあり、ほかに八つの奇経と呼ばれるものがあります。
  経脈は手足にそれぞれ三つの、陰と陽の経絡があります。陰経は臓に属して腑と絡み、陽谿は腑に属して臓と絡む。
手の三陰 手の三陽 足の三陽 足の三陰
@手の太陰肺経 A手の陽明大腸経 B足の陽明胃経 C足の太陰脾経
D手の少陰心経 E手の太陽小腸経 F足の太陽膀胱経 G足の少陰腎経
H手の厥陰心包経 I手の少陽三焦経 J足の少陽胆経 K足の厥陰肝経
この12の経脈は、十二経脈または、正経脈と呼ばれ@Kの順に気の運行が1日50回行われる。
奇経八脈 任脈 督脈 衝脈 帯脈 陰維脈 kiyou.jpg (737 バイト) 陽維脈 kiyou.jpg (737 バイト)
任脈と督脈を除いてその経に属するツボはない。任脈と督脈だけが経に属する独自のツボを持っている
人の気血は、常に十二正経脈を流れるが、気血が充ち溢れると、奇経に流入します。丁度、放水路のように十二正経脈の洪水を防ぐ役割を持つといわれています。
奇経は八脈あり、任脈、督脈はそれぞれ身体の前後にあって専属のツボがあります。他の六脈は専属のツボを持たず十二正経脈の中にツボが存在します。
2,ツボ(経穴:けいけつ)の意義
ツボは体表面にあり、全身のあらゆるところに存在しています。ツボという場合は経脈に所属しているのが原則ですが、それ以外に施術点(経外)奇穴とか阿是穴(あぜけつ)といわれるもので治療効果が認められています。
ツボは病気の際に何らかの反応をあらわし、治療を施す刺激点です。
3,取穴(ツボの取り方)
(1)骨度法
人によって個人差があるため、経脈の長さも異なり、ツボの存在も厳密には違いがあります。尺貫法による寸度では正確なようであって、その人それぞれで正確さに欠けます。そのために人体の一定点からある点までを長さの単位として定め、それを何分割化して尺寸を定めたものが骨度法です。
骨度は、骨格を基準として、個人の尺度を定めたもので、中国医学の古典書の、霊枢経「骨度篇」に出典されています。
1,身長‥7尺5寸 16,膝窩から踵骨上縁まで‥1尺6寸
2,頭蓋骨の囲り‥2尺6寸 17,腋の長さ‥4寸
3,胸の囲り(乳頭の通り)‥4尺5寸 18,肩より肘尖まで‥1尺7寸
4,腰の囲り(臍の通り)‥4尺2寸 19,肘尖より腕関節横紋まで‥1尺2寸半
5,前髪際から後髪際まで‥1尺2寸 20,腕関節横紋から中指つけ根まで‥4寸
6,前髪際から頤まで(顔の長さ)‥1尺 21,中指の長さ‥4寸半
7,喉頭隆起から胸骨頸切痕部まで‥4寸 22,後頭部乳様突起間‥9寸
8,胸骨頸切痕部から胸骨体下端まで‥9寸 23,前髪際額角間‥9寸
9,胸骨体下端から臍まで‥8寸 24,両乳頭間‥9寸半
10,臍から恥骨上際まで‥6寸半 25,腋より季脇(章門穴)間‥1尺2寸
11,横骨の長さ‥6寸半 26,季肋(章門)より大転子上縁‥6寸
12,横骨上際から大腿骨内側上顆上縁まで‥1尺8寸 27,環跳より膝窩横紋の頭(委陽)間‥1尺9寸
13,大腿骨内側上顆上縁から脛骨内側上顆下縁まで‥3寸半 28,膝より(委中)内果まで‥1尺6寸
14,脛骨内側上顆下縁から脛骨内顆まで‥1尺3寸 29,外果下際より地まで‥3寸
15,内顆から地まで‥3寸 30,足の長さ‥1尺2寸
(2)同身寸法
骨度法の繁雑な方法より簡便な方法として、人の身体のある部分を長さの尺度として用いる方法です。
男性は左、女性は右とし、手の母指第一節の横幅を1寸。
第二・三・四指の第一節を合わせた幅を2寸。
手の第二指から第五指までの中節を合わせた幅を3寸とする。
手の母指と中指の指頭を合わせて環を作り、中指指節関節の背側間を1寸半、中指の内側にできる横紋の端を結ぶ間を1寸とする。
一寸 一寸 二寸 三寸
中指の内側横紋間 母指第一節の横幅 三指を合わせた幅 四指を合わせた幅
4,ツボの運用
ツボの名称は、素問という古典では160(総ツボ数295)のツボ、また甲乙経という書では349(総ツボ数649)のツボ、後の十四経発揮では354(総ツボ数657)のツボが、現中国鍼灸大辞典やWHOへ提出されているツボは、362(総ツボ数671)が掲載されています。
そのほかに、奇穴(きけつ)、阿是穴(あぜけつ)、新穴(しんけつ)などがあり、経脈に属していません。
ツボの中でも特別の機能を持ったツボは、重要なものという意味で、要穴(ようけつ)と呼ばれています。
5,要穴
ツボの中には、特に重要な作用を持つとされている特定のツボがあります。それらを総称して要穴といいます。要穴には次のようなものがあります。
@五兪穴(ごゆけつ)。A原穴(げんけつ)。B絡穴(らくけつ)。C(げきけつ)。D兪穴・募穴(ゆけつ・ぼけつ)。E会穴(えけつ)
@五兪穴(ごゆけつ)
手・足の指先から肘、膝関節に向かって、井穴(せいけつ)、栄穴(えいけつ)、兪穴(ゆけつ)、経穴(けいけつ)、合穴(ごうけつ)が並んでいます。
中国医学書の古典、「霊枢」九鍼十二原篇に、『出ずる所を井(せい)と為し、溜る所を栄(えい)と為し、注ぐ所を兪(ゆ)と為し、行く所を経(けい)と為し、入る所を合(ごう)と為す』とあって、十二の正経脈の経絡に、井栄兪経合の五兪のツボが配当されています。
これを古典に基づいて説明すると、井は手足の先端にあり、脈気の出ずる所で、水流に例えると泉源の如くであるが故に井という。
栄は、その次に位(基節骨部)し、脈気の流れる所で、あたかも泉源を出て流れる水の尚かすかなるが如くであるが故に栄という。栄はきわめて少ない水をいう。
兪は、その次に位(中手・中足骨部)し、腕関節および足関節の部、またその近傍にあり、兪は脈気の注ぐ所で、あたかも微かに流れていた水が漸(ようや)く深くなって潅注(かんちゅう:そそぐ)するが如くであるが故に兪という。兪は輸と同音で意味が相通じ、輸送の意味で脈気が此ここに注いで彼処に輸すの意味があります。
経は、その次に位(手・足関節)し、脈気の行く所で、あたかも潅注した水が大いに行きて此の処を経過するが如くであるが故に経という。経は経過を意味しています。
合は、その次に位(肘・膝関節)し、肘関節部および膝関節部にあり、またはこれに近く、脈気の入る所で、あたかも川流が海に合会するが如くであるが故に合という。脈気はこれより中に入って臓腑に入り、衆経と相会するのです。
以上は、脈気の流れですが、臨床的にはそれらの各ツボの主病について知ることの方が役立つでしょう。
井穴 心下の満を主る
栄穴 身熱を主る
兪穴 身体重く節痛むを主る
経穴 喘咳と寒熱を主る
合穴 逆気して泄らすを主る
五兪穴表
陰経 経気 主治 陽経
井穴(木)

心下満

井穴(金)
栄穴(火)

身熱

栄穴(水)
兪穴(土)

体重節痛

兪穴(木)
経穴(金)

喘咳寒熱

経穴(火)
合穴(水)

逆気而泄

合穴(土)
A原穴(げんけつ)
古人が手足の要穴として記載したものの中で、原穴は特に重要なものとして、別に十二原穴として選び出されているのです。
臨床的な立場からいうと、それぞれ臓腑を中心として、機能的に相関関係にあり、内臓の臓器に異常があるときには、これら十二原穴に電位差が出現してきます。
これらの原穴は、上肢で手関節部とその近くに、下肢では足関節部とその近くに位置し、いずれも重要なツボばかりです。
原穴は人身の原気と深い関係にあります。原気の虚実はこのツボに現れるといわれています。
五臓六腑に病変のあるときは、必ずこの十二原穴に反応が現れるのです。そして、その反応を診てそれを治すことによって、身体の違和感を調節するのです。
中国医学の古典、霊枢の九鍼十二原篇に、次のように記載されています。

五臓に疾あるある時は、応十二原に出ず

明らかに其の原を知り、其の応を見て、そして五臓の害を知る
およそこの十二原は、五臓六腑の疾患のあるものを主治す

五臓に疾ある時は、当に之を十二原に取るべし

要約すると

内臓に違和があれば、その反応が十二原穴に現れ、その反応の現れた原穴を診て、五臓のうちの不調の臓を知ることができ、その原穴に刺激を加えると、その内臓を調節することができるのです。

原穴表

陰経

原穴

陽経

原穴

手の太陰肺経

太淵

手の陽明大腸経 合谷
手の少陰心経

神門

手の太陽小腸経 腕骨
手の厥陰心包経

大陵

手の少陽三焦経 陽池
足の太陰脾経

太白

足の陽明胃経

衝陽

足の少陰腎経

太谿

足の太陽膀胱経 京骨
足の厥陰肝経

太衝

足の少陽胆経 丘墟

手の陰経原穴

手の陽経原穴 ashigenketu1.jpg (2822 バイト) 足の陰経原穴

ashigenketu3.jpg (2111 バイト)

 

B絡穴(らくけつ)
絡穴は、経脈からの絡脈の分かれるところにあります。そして気血の配分調節ができるツボです。したがって慢性病に多く使われます。
絡穴の代表的な臨床効果
陰経 ツボ 臨床的効果 陽経 ツボ 臨床的効果
手の太陰肺経

列缺

手の麻痺・歯痛 手の陽明大腸経

偏歴

手の麻痺・鼻出血
手の少陰心経

通里

前腕の痛み・喉の腫れ 手の太陽小腸経

支正

肘のつり・めまい
手の厥陰心包経

内関

肘のひきつり 手の少陽三焦経

外関

肘・前腕・指の痛み
足の太陰脾経

公孫

足部の麻痺・頭部の腫れ 足の陽明胃経

豊隆

腹痛・便秘・手足の冷感
足の少陰腎経

大鐘

喘息・嘔吐 足の太陽膀胱経

飛陽

めまい・目の痛み
足の厥陰肝経

蠡溝

月経不調・腹部固まり 足の少陽胆経

光明

下腿麻痺・頸のこり
任脈経(ツボ…鳩尾、臨床…胸腹部痛・嘔吐) 督脈経(ツボ…長強、臨床…便秘・痔) 脾の大絡(ツボ…大包、臨床…胸脇の痛み)
C(げきけつ)
とは、骨や筋等のすき間という意味や、攻撃の撃にも通じ、また閉じるとかしりぞく意味にも通じるといわれています。
そしてこのツボは、気血の集まるところでもあり、臨床上においては、急性病の劇症を頓挫的に処理するときに用いられ、極めて有効なツボです。
このツボの応用は、臨床的には極めて必要なことが多く、たとえば胃の激痛の際には、梁丘(胃経の)に鍼灸を施すと急速に鎮静します。
心悸亢進の際には門(心包経の)を用いると即効的に効果が出てきます。
坐骨神経痛の激痛の際には、外丘(胆経の)に鍼灸を施すと著効があります。

の代表的な臨床効果

陰経 ツボ 臨床的効果 陽経 ツボ 臨床的効果
手の太陰肺経

孔最

喘息・痔痛・痔出血 手の陽明大腸経

温溜

歯痛・拇指痛・上腕神経痛
手の少陰心経

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心痛・狭心症 手の太陽小腸経

養老

上腕神経痛・急性関節リウマチ
手の厥陰心包経

geki.jpg (750 バイト)

心悸亢進症・肋膜炎・リウマチ 手の少陽三焦経

会宗

狭心症・腕関節痛
足の太陰脾経

地機

胃潰瘍・糖尿病・下腿浮腫 足の陽明胃経

梁丘

胃痛・急性下痢
足の少陰腎経

水泉

月経痛・足心痛 足の太陽膀胱経

金門

坐骨神経痛・足部痛
足の厥陰肝経

中都

子宮出血・腸疝痛 足の少陽胆経

外丘

胆石症・坐骨神経痛
奇経‥陰脈(ツボ=交信腎経)。陰維脈(ツボ=築賓腎経 奇経‥陽脈(ツボ=膀胱経)。陽維脈(ツボ=陽交胆経

 

手の太陰肺経 手の陽明大腸経
手太陰肺経 手陽明大腸経

足の陽明胃経

足陽明胃経
足の太陰脾経 手の少陰心経
足太陰脾経 手少陰心経

足の太陽膀胱経

足太陽膀胱経

足の少陰腎経

足少陰腎経
手の厥陰心包経 手の少陽三焦経
手厥陰心包経 手少陽三焦経

足の少陽胆経

足少陽胆経

足の厥陰肝経

足厥陰肝経

 

D兪穴・募穴(ゆけつ・ぼけつ)
各臓腑と最も関係の深いツボは背中にある『兪穴』で、それぞれの臓腑の名を冠にしてあります。これは五兪穴の兪穴とは区別します。
そしてもうひとつ、胸や腹部にもそれぞれの臓腑に対応してツボがあり、これは『募穴』と総称されています。
兪の付いているツボは、背腰部に多くあります。これらのツボは大変重要なツボで、診断上や治療上、重要な役割を持っています。
兪は「然り(しかり)」という肯定の語で、「はい」という返答声、「いよいよ」、「ますます」という意味があり、「兪」に通じまた「癒」に通じます。
中国医学大辞典によると、兪も輸も相い通じて用いられ、背腰部にあるツボを兪となし、『経絡の気の運び送られるところ』の意味であると載っています。兪穴は病証の診断とその治療にとって重要なポイントです。
背腰部の兪穴と胸腹部の募穴とは、経絡的にみると表裏陰陽の関係になっています。中医学の古典・難経六十七難には「五臓の募は皆陰にあり、兪は陽にあり」と記載されています。
五臓の兪穴と関連のあるツボは五っつあり、これらは、病の反応の現れるところのツボと理解しています。
胸腹部にある募穴といわれるツボは、治療的応用に際して必要なものです。
中国医学の古典・難経本義に、募とは『募結の募のごとし、経気これに集まるなり』と註されています。
また、難経本義諺解には『臓腑経気もっぱらこれに集まりつどう処の元』とあります。
そして、中国大辞典によると、「次の胸腹にあるものを募となす、経気の結集するところなり」とあります。
難経の六十七難によれば、『五臓の募は皆陰にあり、陰病は陽に行き、陽病は陰に行く』とあります。
すなわち胸腹部(陰)にある募穴と、背腰部(陽)にある兪とは、陰と陽の関係におかれていて、経気は陰より陽に行き、陽より陰に行くのであり、募を診て兪を察し、兪を診て募を察し、募によって兪を治し、兪によって募を治すというように、診断治療を行う上で密接な関係にあります。
兪と募との関係は、一般の経絡の縦の系統ではなく、脊椎断区と相似的な横の系統です。
兪穴 募穴
兪穴 募穴

 

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