3種類のエネルギー

参考文献:幡井勉著⇒生命の科学。アーユル・ヴェーダ
◎「集団の医学」から「個の医学」へ
ドイツのウィルヒョウ(1821〜1902)が細胞病理学説を唱えて以来、西洋医学は病気を個々の細胞や組織の病変であるとし、疾病の診断と治療は身体の部分のみに集中し、自然科学の欠点である要素還元主義的傾向を強めていったのです。したがって西洋医学は分析的医学と言われています。
それに対し、約2500年前に体系化された中国医学、ギリシャ医学とインドのアーユル・ヴェーダは身体の中を流れる気とか血、あるいは血液以外の水分のバランスの乱れを重視し、これらを調整することを医療の根幹としています。包括的医学といわれるゆえんです。
西洋医学の考え方、方法によって克服された疾病は確かに多くあります。19世紀を通じて、顕微鏡による病原体の発見が端緒となって、それに対応する20世紀前半の抗生物質の発見以来、多くの生命を救ってきたのです。また自然科学の発達と共に、診断器具と外科治療器械が驚異的に開発され、普及してきたのです。
こうして医療はいわゆる西洋医学しかないとまで思われ、つい最近まで東洋医学は迷信とまでいわれてきたのです。しかし、その西洋医学的医療では、何としても対応できない疾病が数多くあることや、肉体だけでなく精神的要素を重視する心身医学的なアプローチの必要なことがわかってきたのです。カナダのセリエ(1902〜1982)のストレス学説がそうです。
三千年前の起源と推定されるアーユル・ヴェーダは「健康は食である」ということを強調しています。アーユル・ヴェーダの古典のなかに、「医師は薬より食の指導を先にせよ」とあります。インドに生まれたアーユル・ヴェーダは豊富な薬物資源を持ちながらも、それに頼るよりも食物をどのように選択し、どのように摂るかを教えています。
血液、胆汁、粘液のような体液病理学説に立脚したギリシャ医学を捨て、ルネッサンス以降、細胞病理学説を押し進めてきた現代(西洋)医学は、また集団の医学であるのに対し、古代医学を継承する東洋医学は、個の医学であるといわれています。個人個人は違った体質を持って生まれている以上、疾病を治療する場合、個人の体質を無視することはできない、というのが東洋医学と西洋医学の大きな相違点です。
◎アーユル・ヴェーダは体質の医学
1.三つの体質
私たちは、母の胎内で生を受けた直後(精子と卵子が合体)から、つまり先天的に体質や気質が決められると、アーユル・ヴェーダではいっています。体質、気質といっても複雑なものですが、例えば痩せ型、肥満型、筋肉型といった体格があり、後天的にそれは変化するものの、基本的に大きく分けると三つのタイプがあります。
痩せ型はヴァータ体質、肥満型はカパ体質、筋肉型はピッタ体質といいます。ヴァータ、ピッタ、カパという三要素が人体にはあるというのがアーユル・ヴェーダの基本的に考え方です。中国医学、あるいは日本の漢方でいう気、血、水に類似した考え方です。
ヴァータは「気」、カパは「水」ですが、アーユル・ヴェーダのピッタというのは「火」であるところが違っています。ヴァータはまた、「気」というより、「風」といった方がいいかも知れません。つまり、風・火・水という自然のなかで動きのあるものが、身体のなかを循環していると考えています。
インドの古代思想のヴェーダのなかに、人体は小宇宙であり、大宇宙の空、風、火、水、地(土)という五つの元素(パンチャ・マハーブータ)がそっくり身体のなかにあり、あるいは五大要素が身体を構成しているという概念があります。空は体腔や消化管、気管などの空隙を、地は骨や軟骨、筋肉、靱帯のような固い部分を構成しているのですが、風、火、水は流動性のものです。
三つの体質というのは、それぞれ、風の要素、火の要素、水の要素が圧倒的に多い体質ですが、なかには、風と火、火と水、水と風がほぼ平均した体質もあります。また三要素が平衡状態の体質もあります。したがって、以上七つの体質に分類されると、アーユル・ヴェーダではいっています。
2.三つの体質の属性
ヴァータは風の性質を持っているので冷・乾・軽・速という属性があります。
カパは水の性質を持っているので冷・湿・重・遅という属性を持っています。
ピッタは火の性質を持っているので、ヴァータやカパと違って熱性です。気質的にいっても攻撃的で激しやすく、弁舌にすぐれています。
一方、こういう体質の人のかかりやすい病気というのは、次のようです。
ヴァータ性 神経系、循環器疾患
ピッタ性 消化器疾患
カパ性 呼吸器、尿生殖系疾患

◎三つの体質の特徴表

体質 ヴァータ ピッタ カパ

体格

痩せ型

筋肉型

肥満型

体力

弱い

普通

強い

食欲

不規則

強い

普通

排便

便秘

下痢しやすい

普通

睡眠

不眠傾向

普通

よく眠る

余りかかない

かきやすい

普通

音声

小さい

大きい

深みがある

話し方

多弁

批判的

遅い、無口

顔色

色黒

赤ら顔

色白

皮膚

乾燥

しわ、ほくろ

柔らかい

毛髪

少ない、枝毛

若白髪、若禿

多い、剛毛

10

歩調

速い

普通

遅い

 

 

◎三つの気質の特徴表

気質

ヴァータ

ピッタ

カパ

忍耐力

ない

ない

ある

寛容度

ない

ない

ある

記憶力

余りない

普通

よい

理解力

速い

普通

遅い

気分

不安定

すぐ嬉しがる

安定

いらいら

しやすい

しやすい

穏やか

怒り

怒りやすい

怒りやすい

怒らない

友人

長続きしない

少数

多数

他人への援助

できない

消極的

積極的

信仰心

ない

余りない

深い

10

攻撃性

強い

場合による

弱い

 

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