東洋伝承医学の考え方
東洋伝承医学には、世界の東洋三大伝承医学というのがあり、それはインドのアーユル・ヴェーダ、イスラムのユーナニ、中国の中医学のことをいいます。
インドのアーユル・ヴェーダは、サンスクリット語で、言語学的にはアーユス(生命)とヴェーダ(知識あるいは科学)という言葉の複合語です。
したがってアーユル・ヴェーダとは、生命の科学、生命についての知識、あるいはその知識に基づく実践的な生活法ということになります。
ユーナニ医学は、「イスラムの伝統医学」や「アラビア医学」とも呼ばれています。アラビア医学といっても、民族的にアラブ人の医学を指すものではなく、むしろ、反アラブ民族のペルシャ人(イラン人)やトルコ人などの古代医師達の業績によって造り上げられた医学です。イスラム医学として確立したユーナニ医学のほとんどの書物が、アラビア語で書かれたことから、アラビア医学という誤解を招いたのです。
ユーナンという言葉は、ペルシャ語では「ギリシャ」という意味です。そして「ユーナニ」とは「ギリシャの」または「ギリシャに源をするもの」という意味があります。したがって「ユーナニ医学」は「ギリシャ医学」ということになりますが、ギリシャ医学そのものを指すものではありません。
中国では、伝統医学を祖国医学または西洋医学に対して中医学と呼んでいます。その中には、「天人合一:人体と自然の一体観」という考え方があります。これは、中国で発展した医学ですが、黄河流域を中心として起こったものと、長江(旧:揚子江)の流域を中心に発展したものの二つがあります。
黄河を中心に発展した医学は、按摩・鍼・灸の医術で、地味な土地で植物もあまり育たない岩石や石ころの類が多く、植物といってもヨモギとか小さな草類しかなかったのです。そしてそこで生活する人々が、ケガをして膿が溜まると岩石を加工したものを使って膿を出したり、身体の調子が悪いと、ヨモギを使い皮膚を焼いて治療するといった、生活の知恵を絞りだした、鍼・灸の治療法が盛んになったようです。
また、「按摩(あんま)」という治療法も、鍼・灸とともに、黄河流域の人々の生活の中から生み出された知恵のひとつで、北方圏医学とも呼ばれています。
これに対して、長江流域から南方の地域で発達した医学が、日本でもおなじみの漢方薬です。豊かな土地に植物が豊富に茂っていた長江流域の住民は、草の根や木の皮を採取してこれらを煎じて飲んでいたのです。この地域の医学は北方圏医学に対して南方圏医学とも呼ばれています。
このように、中国医学は、黄河流域に始まる鍼灸、按摩の術と、長江流域にはじまる漢方薬という、二つの体系で出発したのです。中国が漢の時代に入り、大陸を統一したとき、この二つの医学は、ひとつに統合し体系化されることになり、日本では中医学イコール東洋医学と呼ばれています。
東洋伝承医学でアーユル・ヴェーダの考え方には、「健康とは、単に病気や疾患から解放されている状態というよりは、妨げられることのない肉体的、精神的、霊的な幸福と充実の状態である」と考えています。
そして、ユーナニ医学は、ギリシャの医学やインドの医学が統合されてできあがったものですが、ヒポクラテスやガレスに対して批判もしています。しかし、原文の解読が不完全でペルシャ語に翻訳されているものも、?マークや誤訳が多いといわれていて、本当の所はわかっていません。しかし、自然界の中に存在する人間としての位置づけは他のものと同じです。
中医学も、その古書、「素問」という書物の中に、医学思想の根本に、人体と自然は一体で不可分だという「天人合一」の考え方が示されています。
いずれにしても、伝承医学の中には、自然に逆らうと病気になるという考え方があります。
人間も自然界の一単位にすぎないので、「春は生じ、夏は長じ、秋は収め、冬は蔵す」(四気彫神大論)という大自然のサイクルに従うべきで、もしこれらに逆らえば、必ず健康を害し、疾病が発症するというのです。
現代医学は、自然界との交わりをを無視し、分子生物医学というナノ(10億分の1メートル)の世界で進化しています。そこにはもう、人間としての個体は存在していません。そこにあるのは、人間を構成している分子や原子の集まってできた、単なる生き物として扱われています。こんなんでいいのかなぁと思う。

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