『白保メール』 No.81〜90
No.90 2007.4.30
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V..v 白 保 メ ー ル│\ Apr.30.2007
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//転載歓迎//
<覚悟のある楽天主義の勧め>
谷崎 樹生
現在この島の社会で起こっている現象を発展とか繁栄と見る向きもあるようですが、
私には繁栄の中に滅びの気配が感ぜられるのです。絶滅生物の多くは、巨大化・複雑化
・奇形の多発というプロセスを経て絶滅に至っていますが、文明の盛衰にも同じような
傾向が見られます。繁栄の中で爛熟と退廃が進み、未来に向かって果てしなく発展して
いるつもりが破滅に向かって突き進んでいるということもあるわけです。昨今のこの島
の社会の変化の激しさと混乱ぶりには、滅びの臭いを感ぜずにはおれないのです。
中国やインドの経済成長がこのまま続けば世界的な食糧危機が起こって日本でも数百
万人の餓死者が出るだろうと思っています。それは20年後、早くても15年後のこと
だと思っていました。ところが最近の気候変動の加速状況からすると、ずいぶん前倒し
でその時がやって来そうなのです。2010年を過ぎると温暖化は一気に加速し、気候変動
はますます激しくなると予想されています。1993年、本土では梅雨が明けず、長雨・異
常低温・日照不足のため米の大凶作が起こりました。これからはそんなことが頻発する
ようになるはずです。キビ畑や牧草地やゴルフ場や運動場まで耕してサツマイモを栽培
することになるのでしょう。グルメや飽食、肥満・メタボ・ダイエットなどという言葉
が死語になる時代がすぐそこまで来ているのです。今のうちにおいしい物をたくさん食
べておく、という人もいるでしょうが、私達は恐竜が知らなかったことを知っているの
ですから、最悪の事態を回避するための備えに、今すぐ取り組まねばなりません。
地球温暖化については、もはや手遅れだとは思いますが、この期に及んで更になお、
石油を使って快適な暮らしをしたいとは思いません。百年後には日本の人口は半分にな
るそうですが、その前に大変なことが起こるだろうと思っています。あまり長生きしな
くても「人類の最期」とは言いませんが、「現代文明の最期」を見ることはできそうで
す。つまり、文明の維持が困難になるような状況が近い将来現実のものになると思われ
ます。「どうすれば美しくその最期の時を迎えることができるのか?」というのがこれ
からの十年の最大のテーマになりそうだと思っています。そしてその時を巧く乗り越え、
もっとまともな世界を創りたいものだとも思っています。
石垣島を含む八重山は、日本の縮図のような地域です。自然は美しいのですが、人の
社会はいろんな問題を抱えています。もしこの地域でそのような問題をうまく解決する
ことが出来たら、日本を救うことが出来るかも知れないと、本気で思っています。
「新川川での植生管理」や「自然観察」「生ゴミ処理」などの取り組みは、全て「人
が自然によって生かされ、自然に根ざした文化によって育てられる」という島本来の社
会の姿を取り戻すための活動です。私は、このような活動を通して、この地域を美しく
成熟させるための社会学的な実験をしているつもりです。これからがますます楽しみで
はありますが、残り時間は思ったより少なそうなので、少し急がねばならないと思って
います。
環境問題への取り組みでは「出来ることから始めましょう」と、よく言われます。確
かに初めは出来ることから始めるのでよいかも知れませんが、出来ることだけをやって
いたのでは、いつまでたっても出来ないことは出来ないままです。「うまく出来ないか
も知れないが、しなければならないこと」から目を背けず、優先順位を考えて困難を楽
しむつもりで勇気を持って取り組まねばなりません。「案ずるより産むが易し」とはよ
く言ったもので、無理かもしれないと思っていたことが、実際やってみると意外と簡単
だったということが人生には多いものです。具体的な成功イメージを描きながら、より
困難な問題に取り組む「覚悟のある楽天主義」をお勧めしたいと想います。
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白保メール NO.90 07.4.30
発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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V..v 白 保 メ ー ル│\ Mar.31.2007
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<風景に対する責任> 谷崎 樹生
長野県の中央、松本市の東方に美ヶ原という美しい高原がありました。海抜2000メ
ートル級の溶岩台地上に広がる草原の高台からの眺めは、南アルプスから北アルプス・
浅間山・富士山まで見晴らす絶景ではありましたが、今から二十数年前にその高台の
頂きにヨーロッパの中世の古城をまねた「ビーナスの城」という「美ヶ原高原美術館
本館兼展望台」が作られてしまい、美ヶ原の悲劇が始まりました。この城は遊園地に
ありそうな非常に安易なデザインで、安っぽいラブホテル建築のようにも見えるとい
う醜悪なものです。
見晴らしの良い高台に建つ展望台からの眺めは、確かに素晴らしいものですが、そ
の展望台が見える風景は、まさにその展望台のせいで台無しになってしまったのです。
美ヶ原高原美術館ではその後も屋外展示場に彫刻というかオブジェというか奇妙な物
体の常設展示を充実させ、美ヶ原はますます醜く無茶苦茶になっていったのでした。
「この風景の中になぜこんなものが置かれなければならないのだ!」と、叫びたく
なるほどのセンスの無さは、哀しくなるほどです。広大な草原の中に、一つか二つポ
ツンと置かれているのであれば、風景のアクセントとか、ランドマークとして意義が
あったのかも知れませんが、アクセントだらけの風景というのは困ったものです。美
ヶ原高原美術館屋外展示場では、350点もの作品がてんでんばらばらに自己主張し
ていますから「調和」とか「まとまり」とは無縁の混乱の絵図が展開されることにな
ってしまったわけです。
日本庭園や中国庭園には「借景」という造園技法があります。庭園内の風景の背景
として園外の風景を取り込み奥行きを出すという技法です。「借景」という言葉がま
だ生きていた頃の建築家には「よそ様の風景をお借りしているのだ」という謙虚さが
あり、建物が風景を損ねることがないよう、風景に溶け込めるような工夫がなされて
いました。じつは、風景は借りるだけのものではなく、借りたり貸したりするもので
す。建物や庭を造るということは風景の一部を改変することですから、自分が作った
風景を、よそ様に喜んで借りていただける美しいものにしなければならないという
「風景に対する責任感」がかつての建築家や造園師にはあったようです。
ところが、最近の建築家には、自分の作品を見せびらかし、自慢したがる方が多い
ようで、建物も自己主張が強すぎるようです。風景の中でアクセントになってしまう
建築物が増えすぎると、美しくない美ヶ原のようになってしまうわけです。どんな高
名な建築家の設計によるものであっても、風景を乱すものは邪魔者でしかありません。
そのようなものを設計する方には、風景を借りているという謙虚さは無いようで、傲
慢にも風景を独占しようとしていると言えるでしょう。そしてそれは「風景に対する
犯罪」と呼んでもよいほど無惨な結果をもたらすのです。
これからは、建築や造園だけでなく、農業や林業を含む、私たちの日々の生活の成
す風景が美しいものになるよう、一人一人が風景の演出を心がけねばなりません。
「美しく暮らす」ということが風景に対する責任を果たすためのキーワードになるで
しょう。生活の成す風景が美しくなるように、どこから見られても恥ずかしくないよ
うに、各自が心がけ、日々のこまめな努力を続けなければならないのです。
美しい風景の中で暮らすことは確かに快適かも知れませんが、美しい風景を作るこ
とを生活習慣にする暮らし方は、さらに大きな満足を与えてくれるものです。
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白保メール NO.89 07.3.31
発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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V..v 白 保 メ ー ル│\ Feb.16.2007
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//転載歓迎//
<この夏に白保海中公園が誕生する> 農民 小林 孝
[これまで水面下に沈降していた白保の海中公園計画]
いわゆる白保のサンゴ礁の海を海中公園にしようという動きは、随分以前からあり
ました。最初にこの計画の存在を知らされてから、もう10年になるでしょうか。
しかし、いつの間にやら立ち消え状態になっていました。国立公園を管轄する環境
省の担当官からは、その理由を伺うことができません。私たちには知らせたくない政
治的な背景があるのでしょう。私の憶測を述べれば、これまた新石垣空港問題がから
んでいることが容易に想像できます。
新石垣空港建設予定地がカラ岳陸上に決まりそうな時に、石垣島の東海岸に海中公
園を設定することは、国の事業として整合性に欠けてしまいます。だから、新空港の
建設場所が不動のものになるまで、白保海域の海中公園地区指定に誰かが「待った」
を掛けたに違いないとにらんでいます。そして、新空港予定地が決まった今、この計
画が再び動き始めたということなのでしょう。
白保のサンゴ礁の海(陸域も同様ですが)にとって予測不可能な脅威を及ぼす計画
を優先させ、その後にその海域を保全するための計画が再び動き始めたというわけで
す。新石垣空港計画の矛盾は、こうした面にも及んでいます。
[海中公園とは何か]
海中公園とは何か、なるべく簡潔な表現での説明を試みてみましょう。
私たちが認識している国立公園が陸域のものであるのに対し、海中公園は海域を対
象にした国立公園だと理解できます。陸域での国立公園が、その地域の重要度に応じ
て、それが高い方から順に、特別保護地区、第1種特別地域、第2種特別地域、第3
種特別地域、その下に普通地域が設定されています。海域の場合は、重要度が最も高
い海中公園地区と、その下位に設定される普通地域の2種類があります。
そして「海中景観の保護と利用を図る」ことを目的として、「熱帯魚、サンゴその
他の生物や海底地形が特にすぐれている地区」が海中公園に指定されるのです。
さらに詳しく「海中公園地区の選定要件」を環境省からの配布資料から引用してご
説明しましょう。
・周辺の陸域、海域がともに国立公園等の区域として指定されており、かつ陸域の自
然保護が十分図れる場所。
・海底地形に特色があり、海中動植物が豊富であること。
・海水が清澄(せいちょう)であり、河川等により汚濁されるおそれが少ない。
・水深はおよそ20m以浅を標準にする。
・潮流および波浪があまり激しくない。
・桟橋、休憩所、自然教室、駐車場等の陸上関連施設を設ける土地が周辺にある。
・漁業との調整が可能であり、特に海中景観の保護について地元漁業関係者の協力が
得られること。
・その他各種産業開発による景観破壊のおそれが少ないこと。
とされています。
海中公園に指定されるとどういう制限が設けられるかは、以下の通り。
・工作物を新築し、改築し、または増築すること。
・鉱物を掘採し、または土石を採取すること。
・広告物等を掲出、設置し、または工作物等に表示すること。
・海底の形状を変更すること。
・物を係留すること。
(☆以上の5項目について、漁業を行うために必要な行為は除く。)
・熱帯魚、サンゴ、海そう(海草、海藻類:筆者注)等で環境大臣が農林水産大臣の
同意を得て指定する動植物を捕獲、殺傷、採取、損傷すること(漁業対象種は含ま
ない)。
・海面を埋め立て、または干拓すること。
・汚水または排水を排水設備を設けて排出すること。
ということです。
この他にも、自然公園法ではいろいろと定められていますが、それらについてはネ
ットで環境省のホームページを訪ねるなどしてみてください。
今回の石垣島周辺海域での海中公園地区の指定は、白保海域だけではなく、平久保、
米原、川平石崎も対象にされています。これらは、西表国立公園内に編入され、ひと
つの国立公園内の海中公園として同列に扱われるということです。これまで西表国立
公園内に設定されていた海中公園は、石西礁湖内の4箇所、タキドングチ(竹富島北
西方)、シモビシ(竹富島南西方)、キャングチ(黒島東方)、マイビシ(新城島北
方)の、それも局地的なものでしかありませんでした。新たな海中公園の総面積は
1106.5ヘクタールに及びます。これで西表国立公園内の海中公園は、日本最大規模に
なります。
[石垣島の陸域も国立公園に指定される]
さらに2007年2月8日の八重山毎日新聞の記事では、今回の西表国立公園の見直し
は、上記の海中公園だけではなく、石垣島の陸域にも及びます。代表的な予定地域は、
平久保半島・伊原間、玉取崎・野底岳・吹通川、於茂登岳、米原海岸・川平湾、屋良
部半島、名蔵アンパルで、面積は7022ヘクタールです。これは石垣島の面積の31%に
及ぶそうです。
環境省はこれから、市民を対象にした説明会を行い、パブリックコメントを募集し、
関係機関との協議を経て、中央環境審議会から答申を得られれば、今年夏を目処に公
園を指定するということです。
なぜこれほどの大規模な国立公園化(西表国立公園への編入)がなされるのかとい
えば、環境省は「石垣島の社会情勢は大きく変化しつつあり、優れた自然環境の保護
と適切な利用を進めていくことが必要」だと説明しています。つまり、それだけ今の
石垣島は危機的な自然環境の破壊が進行しているということでありましょう。
[白保の海中公園化についての住民の反応]
昨年(2006年)の5月25日には、環境省の担当官による白保集落への説明会が行
われました。対象は、白保公民館の審議委員、執行部役員、白保魚湧く海保全協議会
の会員で、全住民ではありませんでしたが、先ずは白保の代表者たちへ、海中公園に
ついての勉強会のようなものが行われました。また同年6月には、白保のウミンチュ
(漁業者)を対象にした、環境省担当官からの、捕獲を制限する魚種を決めるための
聞き取りが行われました。
5月25日の白保での説明会では、集落の東の海が海中公園に指定されることに賛
同する意見が大半を占めましたが、環境省への要望として、(1)指定範囲をもっと広
げるべき、(2)海域だけではなく、指定海域に隣接する陸域も開発を制限する場所と
して指定せよ、という声が強く上がりました。
(1)については、最初の予定地域の南端が、白保の海の代表的な地形のひとつであ
る「クシキヌワタンジ(集落の北東方向にある。ワタンジとは、干潮時には浜からリ
ーフまで干出する海中の廊下のような地形のこと)」の半ばに設定されていたことへ
の不満でした。どうせなら「ワタンジ」をすっかり指定区域内に入れたらどうか。そ
うすれば、このワタンジのリーフ外洋側にあるブーグチ(リーフがくびれて小規模な
入り江状になっている。ブーグチとは大きな口の意味)も含まれるし、付近の好漁場
も保全される、というわけです。
(2)は、現在石垣島のあちこちの海岸線が住宅やホテルの建設のために乱開発され
ていることへの白保住民の不安の現れです。同じような状況が白保の海岸では起こっ
て欲しくはない、だから陸域も出来る限り国立公園の指定をかぶせて、海域陸域が連
続して保全されることを望んだのです。その要望はその後の計画図にきちんと反映さ
れました。
因みに白保海中公園の指定範囲は、轟川の河口から約500m南の東西の直線を北端
(新石垣空港予定地の南端の緯線=東西の線は2km前後しか離れていない)とし、南
端は集落の海岸線の半ば(WWFしらほサンゴ村に面した道路の延長上辺りか)を起
点に位置する東西の直線、それから海岸線と、リーフから外洋側の数百m(最大で
500m程度)沖合いに設けた南北の線に囲まれた地域が、予定地として示されていま
す。面積は約311.6haにも及びます。
また陸域は、海中公園の海岸線沿いに存在する海岸の保安林のほとんどが、国立公
園の第2種特別地域として指定されます。地図で見ると、陸域の国立公園の帯は予想
していたよりははるかに狭く、心許ない気もしますが、これで少なくとも海岸線の景
観が人工物で壊されることへのある程度の防御ができるものと解釈できます。
ウミンチュからの聞き取りでは、彼らが漁で捕獲する魚類は、捕獲禁止魚種のリス
トに載せないための調整がなされました。のちのち問題が発生するような可能性が極
力抑えられた調整ができたものと信じています。基本的には、観賞魚に類する魚はほ
とんどリストに残っています。ウミンチュの中には、「漁業資源の保全のためには、
もっと厳しくしたって良いぐらいのもの」という意見もありました。
[私自身の思い]
白保住民の多くは、海中公園地区指定を好ましく思い、ウミンチュにしても、大い
に支持するという姿勢を見せています。海中公園地区指定による環境保全への期待が
強いからだと思います。
「海中公園になどなったら、規制だらけで何もできなくなるよ」と訳知り顔で反対
を表明する方も中にはいらっしゃいますが、本当にそうでしょうか。
白保の自然・社会環境が、地元住民が望むように保全されるためには、謳われてい
る規制などはまだ緩いぐらいのものだと、私自身は思っています。陸域の、国立公園
には含まれない個人有地の改変などには規制が掛からない訳ですし、現在石垣市で制
定しようと作業が進められている「景観条例」にしても、法的な拘束力は弱いといわ
ざるを得ません。条例は一地方自治体の自主規制に過ぎませんから。
また環境省の担当官からは、海中公園に指定されたことにどういうメリットを付加
するのかは地域の創意工夫にあるという趣旨の言葉も聞いています。となれば、白保
公民館や「白保魚湧く海保全協議会」などが、白保海域の海中公園地区指定をうまく
利用する戦略を持たなければならないでしょう。「海中公園頼み」の姿勢では望むよ
うな状況を確保することは難しいわけで、白保は新たな課題を背負うことになったの
かもしれません。幸いにして、白保の人々は、これを機に安易な地域振興を図ること
など望んではいません。環境省にお願いしたいことは、その住民の意を汲んで、「海
中公園になった白保海域への入域人数が激増して、結局は海域の環境負荷が高まって
しまった」などという事態にならぬよう、国の機関としての力を発揮していただきた
いということです。世界遺産に登録された途端に観光客の入域が増加し、自然環境に
異常なほどの負荷がかかったという他の例があるので、その点が心配なのです。
もうひとつ、海中公園地区指定による明確なメリットを挙げておきましょう。映画
「ファインディング・ニモ」のメッセージをきちんと受け取ることができない人々が
大勢いらっしゃるようで、カクレクマノミをはじめとする鑑賞魚たちが、この海域で
乱獲され、結構良い値段で取り引きされているのが現実です。白保の海域では、彼ら
観賞魚たちがたくさん生息していますから、捕獲はたやすいのです。白保の住民では
ない人々が白保の海に入って、白保の一員であるいわゆる熱帯魚が、業者の手によっ
て捕獲されるという光景が展開されています。これは白保住民にとっては相当不愉快
な事態です。
熱帯魚の捕獲については、沖縄県知事の許可証が必要なのですが、この許可証は、
申請さえすればたやすく発行されるということですから、許可制の意味がほとんどあ
りません。
ところが海中公園になれば、県知事の許可証があっても、熱帯魚、サンゴ、海そう
等を捕獲することができなくなりますから、漁業対象種には該当しない「ニモ」たち
は拉致されることなく、白保の海で生活していけるというわけです。これは大きなメ
リットだと思います。
いずれにせよ、住民が望む環境保全の筋道が一応は構築されることになりました。
これまで何も保全の網が掛かっていなかった白保海域にとって、朗報だと捉えるべき
なのでしょう。
一方で、この原稿を作文している2月12日にも、白保の海をシュノーケルで体験
しようという観光客が多数お出でになっています。中にはシュノーケル体験が乏しい
にも関わらず、この類が無いほどの見事なサンゴ礁の海に入り込んで、海中環境に負
荷を与える人々もいらっしゃることでしょう。そういった人々に、白保海中公園の存
在価値、あるいは意味を知っていただくための活動が、新たに白保集落には課せられ
たと思います。白保住民の多くが、今の自然環境、集落での生活環境の変化を望まな
いのですから、そのための対応が更に求められることになります。それこそが、先述
したような「白保が背負う新たな課題」だと考えます。
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白保メール NO.88 07.2.16
発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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<猪突猛進?> 谷崎 樹生
亥年が廻ってくるたびに個人的に心配していることがあります。イノシシは牙と硬
い鼻先を武器に突進することがあるので「猪突猛進」という言葉ができたのでしょう。
全力疾走で直進する様に決断力や行動力があるという意味を込めて「猪突猛進」とい
う言葉を使ってしまう人が多いようです。
12年前もそうでしたが、今年もまた同じように、「猪突猛進で頑張ります!」な
どと勇ましく所信表明する方がたくさんいたようです。「猪突猛進」の正確な意味は
「一つのことに向かって、向こう見ずに猛烈な勢いで、つき進むこと。」ですから、
この言葉は、どちらかというと褒め言葉ではなく、物事を深く考えずに行動すること
を批判しているわけです。行動力をアピ−ルしたいのであれば、せめて「熟慮断行」
と言っていただきたいものです。
さて、新石垣空港問題をきっかけに島の未来について冷静に考えようと書き始めた
「白保メール」も六回目の新年を迎えることになりました。私達「白保メール」は常
に正確な情報を集め、冷静に分析し、間違いのない判断をするよう心がけていますが、
新空港の方は文字通り「猪突猛進」の勢いで、無理を通して道理を押しのけるように
起工式まで来てしまいました。そして、島は今「新空港バブル」に舞い上がっていま
す。
ここ数年で島の風景は激変しました。人口も異常なペースで増え続けています。島
外業者による宅地分譲やアパート新築の多さには驚かされるばかりです。じつはこの
ようなブームはこの島ではよくあることのようです。20年ほど前には太陽熱温水器
が流行りましたが台風のたびに壊され、今では残骸だけが残っています。確かに太陽
は集金には来ませんでしたが、設置した業者は引き上げてしまってメンテナンスにも
来なかったようです。
歴史は繰り返すようで、今度は大規模なローコストアパートの新築ブームが巻き起
こっているわけです。入居率30%でも採算が取れるというアパートもあるそうです
から、驚いてしまいます。数年後には早くも老朽化が始まり、水漏れ・カビ・ダニ・
排水管の詰まり、シックハウス症候群など、様々なトラブルが一斉に噴出するのでし
ょうが、メンテナンスするべき施工業者は引き上げてしまっているでしょう。
今は島中が、一時的なブームで舞い上がっているだけです。やがて潮が引くように
石垣島ブームは去るでしょう。その時後に残るのは、空き家と空き部屋だらけのアパ
−トの廃墟だけかも知れません。
どうやらこの島の人達はブームに乗りやすく乗せられやすいようです。島の農業の
過去を振り返ってみても、実に様々な作物の栽培が流行し、やがて消えていったこと
が判ります。適地適作という農業の原則を無視して、儲かる作物に殺到して品質を落
とし、値崩れを起こして自滅してしまい、産地形成に失敗したという事例はたくさん
あります
大きな金の流れをいち速く見つけて群がり、我先に利益を貪るというやり方がこの
島のスタンダードだとしたら、もはや救いはどこにもないでしょう。
「生活のため」と言う方がよくいますが、「贅沢のため」ではないかと耳を疑って
しまうような暮らしぶりをなさっている方もたくさんいます。韓国や中国やお隣の台
湾のように、この島もまた限りなき発展の夢を追い求め、果てしのない欲望を満たす
ために破滅に向かって「猪突猛進」するのでしょうか?
突き進んで行くその先に何があるのか?冷静に考えていただきたいものです。
私の今年の努力目標は「猪突猛進」でも「熟慮断行」でもなく、あまり有名ではあ
りませんが「飛耳長目」ということにしておきます。「飛耳長目」とは「情報収集・
分析能力に長けていること」です。さらにおまけに「沈思黙考」「不言実行」という
のもくっつけて、三点セットにしてみましょう。
「飛耳長目」「沈思黙考」「不言実行」・・・歩きながら考え、時には立ち止まっ
てよーく考え直す、そんな自然観察のような生き方を理想として生きてみたいと想う
わけです。
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# 亥年最初の白保メールをお送りします。
少しご挨拶が遅くなりましたが、本年もよろしくお願い申し上げます。
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白保メール NO.87 07.1.11
発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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<新石垣空港起工式が終わって> 鷲尾 雅久
10月20日、新石垣空港の起工式が行われました。建設予定地に大型のテントを張り
400人の人を集めるという大掛かりなもので、夜はホテルでさらに大規模な祝賀会ま
で開かれたそうです。しかし、このことは昨年末の空港設置許可のときと同様、本土
ではほとんど報道されなかったようです。400億円近い国費の投じられる事業が、他
の地域の人々の知らない間に進められようとしています。
設置許可後ここに至るまでの動きをご報告します。
[06年度予算と用地買収]
今年度(2006年度)の新石垣空港関係予算は、国庫補助事業54億4千万円余(補助
率9割)、県単独事業16億7千万円余、合計で71億1千万円余が計上されました。前
年度は合計で5億5千万円ほどでしたから、10倍以上の大幅な伸びです。今年度予算
の内訳は、大半が用地取得費で、この他試験盛土の経費、モニタリング調査費などが
含まれます。
沖縄県は、2006年度と2007年度の二年度で全用地の取得を終える計画で、2006年度
中に9割の取得を目指す方針も示しました。
その後、用地の大きな部分を占めるゴルフ場(石垣島ゴルフ倶楽部)の買収は終わ
り、すでに県に引き渡されたようです。
一方、地元白保集落の地主達は、「新石垣空港整備事業用地地主会」を結成し県と
交渉してきました。低い金額が提示され、代替地も地主達の希望に沿うものではない
ため、交渉は難航し、地主会は、抗議のため起工式をボイコットしたとのことです。
農地の買収価格について県は、第5回位置選定委員会(2000年2月14日)で「概ね1
万円/坪」と言明していました。金額の当否はともかく、今回はこれよりかなり低い
金額を提示しているようですから、地主の同意が得られないのも無理からぬことです。
県の説明では、事業用地面積約195ヘクタールに対し、11月下旬での取得面積98.6
ヘクタール、これに取得が確実な国、県、市などの公有地24.2ヘクタールを加えると
122.8ヘクタール、取得率63%とのことです。ゴルフ場の買収面積78.1ヘクタールを
差し引くと、この他に実際に取得した面積は20ヘクタール程度に過ぎません。しばら
く前に県は、起工式までに用地の70%の取得をしたいと言っていましたが、その目論
見どおりには進んでいないようです。
土地造成工事は、赤土流出を避けるため海側から順次行うものとされており、2007
年度は概ね平行誘導路とそこから海側の部分で行う予定となっています。しかし、こ
の部分には、白保の方々の農地が多く含まれます。来年度工事予定箇所の用地買収も
終わっていないものと思われます。
[三つの委員会]
9月から10月初めにかけて、ひと月あまりの間に、新石垣空港関係の三つの委員会
が相次いで発足しました。
9月5日発足した小型コウモリ類検討委員会は、まぎらわしいことに、同名の委員
会を引き継ぐものです。モニタリング調査や人口洞の設置、餌場・移動経路としての
緑地の確保などを検討することとされています。建設工法検討モニタリング委員会は、
建設工法検討委員会と同じメンバーで10月2日発足し、赤土等流出防止対策と地下水
保全対策、それに際してのモニタリングについて検討することとされています。事後
調査委員会は、環境検討委員会を改組して10月10日発足し、モニタリング調査を踏ま
え、環境影響の回避・提言措置について検討することとされています。
いずれも、環境影響評価書で宿題とされたことを扱うものですが、今回の環境影響
評価では脱落した議論があります。それについては触れられぬまま、細部の「仕上げ」
だけが目指されているように見えます。
特に気になるのは、小型コウモリ類に関連する問題です。県やマスコミの関心は、
小型コウモリ類の保護だけに集中しているようですが、今回の環境影響評価で小型コ
ウモリ類が取り上げられたのは、洞窟という特殊な環境または生態系における注目種、
代表選手としてでした。評価書においても、そのことは途中で忘れられ、工事により
洞窟内環境がどう変化するのか、洞窟の他の生物はどうなるのかは、明らかにされま
せんでした。まして、洞窟という特殊な環境をこの島の中でどう位置づけ保全するの
か、示されることはありませんでした。
個別事業の環境影響評価とは言え、実施主体は、この地域の環境行政に責任を持つ
沖縄県です。この島固有の自然、生態系をどう保全していくかという基本的な考え方
を持って、事業に当たってほしいと思います。
[工事先行]
起工式は終わりましたが、今年度の工事予定は、「空港本体盛土に使用する機械の
選定、土工事に用いる諸数値を求める」ための小規模な試験盛土工事の他、ビオトー
プ整備工事、小型コウモリ類のための人工洞設置工事と採餌場・移動経路の植栽工事
です。実質的な本体工事は、来年度始められる予定です。その上来年度工事箇所の買
収も進んでいない状況で、なぜ今起工式を行う必要があったのでしょうか。事業が進
んでいることを予算当局などにアピールするのが眼目なのかもしれません。ひと月あ
まりの間にあわただしく三つの委員会が発足したのも同じ理由なのでしょうか。
起工式に際しては、相変わらず、「新空港により観光客の飛躍的な増加が期待でき
る」といった声が聞かれました。ひところ全国各地で空港の新設が相次ぎましたが、
当初の計画通りの利用者数のあるところは数少ないようです。新石垣空港の場合は、
今ある空港の移転ですから、現状程度の利用者は確保できるとしても、それ以上に利
用者が見込まれるかどうかは不明です。
新空港はキャパシティ、うつわの拡大でしかありません。それをどう利用するか、
例えばどのような観光を目指すか、どのような産品の出荷を目指すかを予め考えるの
でなければ、新空港もせいぜい「宝の持ち腐れ」に終わるでしょう。どうやら、そう
した地道な作業が欠けたまま、事業ばかりが進んでいるようです。
今に至り、市街地と新空港を結ぶアクセス道路が空港完成に間に合わない可能性が
大きくなってきました。ルートの選定委員会を作ったものの、隣接する二つの集落が
相容れない案を主張し、論議は棚上げとなっていました。最近県は、区間を区切って
着工するが全面供用開始は新空港の供用開始後になる、と言っています。
しかし、そうすると、新空港の利用者は、市街地から十数キロメートル(現空港へ
は3キロメートル)もの距離を移動しなければなりません。また、多くの車が三つの
集落内の往復二車線の道を通過することになり、住民にも迷惑です。と言って裏道を
通っても、問題が生じるでしょう。
こういった、ちぐはぐな面を残したまま、新石垣空港事業は進められようとしてい
ます。
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<台風13号から学ぶこと>
台風13号は、9月15日夜から16日夕方まで丸一日八重山を暴風圏に巻き込み、
建物や船、作物などに大きな被害をもたらしました。近年にない強い台風で、1977年
のベラ台風に次ぐものだったそうです。
今号執筆予定だった小林孝の住む白保集落は5日間停電と断水が続きました。本人
が農作業小屋兼事務作業部屋として使っている隣の建物(旧小林家)も、前の家から
鉄骨造の小屋が飛んできて逆さまに乗り、まるで屋根から鉄骨が生えたようです。窓
ガラスが割れ雨が入り、資料が水浸しになりました。田んぼも被害を受けたとのこと
です。
小林の執筆が困難なため今号は予定を変更し、谷崎と鷲尾が台風13号に関連して
書くことにしました。
<<ふるい分け>> 谷崎 樹生
30年ぶりという猛烈な台風13号は一夜にして島の風景を一変させてしまいまし
た。コンクリート製の電柱が折れたり、プレハブが吹っ飛んだり、信号が壊されたり、
街路樹が根こそぎ引き抜かれたり、台風一過の島の風景は津波に洗われたような惨憺
たるものでした。このような自然災害には、島の風土にふさわしい物とそうでない物
を厳しく選別するという機能もあるようです。
一見緑豊かに見える石垣島の風景ですが、よく見ると、モクマオウやギンネム、ナ
ピアグラス、シロノセンダングサといった移入種や帰化植物の暴走で破壊されたもの
でした。今回の台風で、モクマオウ林の受けた壊滅的なダメージを見ると、やはりモ
クマオウは島の気候に合わないということがわかります。
最近の数年間では、植生のような自然物だけでなく、建物や看板、電線などの人工
物によっても、島の風景は激変しました。
今後温暖化が進めば、今回のような猛烈な台風が毎年襲来することになります。そ
してその度に、暴風雨は島にふさわしくない物を容赦なく破壊していくことでしょう。
防災のためには過去の災害の記録からたくさんのことを学ばねばなりませんが、今
後は過去に例のないような極端な気候変動も起こり得ます。
私たちは今回の台風から何を学び取ることができたでしょうか?復旧工事は台風か
ら二週間以上経った今でも急ピッチで進められていますが、元に戻すだけではまた次
の台風で同じような被害が出るだけです。
災害に強い質の高いインフラの整備やその有効活用のためにどのような態勢が必要
なのか、徹底的に検討し、実践する良い機会を与えてくれたのが今回の台風13号で
した。出来ることからではなく、しなければいけないことからすぐに、対策に取り掛
からねばなりません。このチャンスを是非、活かしたいものです。
<<災害のあと>> 鷲尾 雅久
今回の台風の影響は、あとあとまで残りました。何日間も停電と断水が続いたとこ
ろもあります。ところによっては電話回線の回復も遅れました。スーパーの棚からは
飲料やインスタント麺が消え、しばらく補充されませんでした。
こうしたことは、台風だけでなく、地震や津波のあとでも起こることでしょう。こ
れらの場合、港や空港も被害を受けることが予想されますから、復旧はさらに遅れる
ことを覚悟する必要があります。
普段から、住民一人一人が備えをすべきでしょう。食料や水、燃料の備蓄、懐中電
灯やロウソクの用意、携帯電話の電源の確保(使えるとしたら、ですが)などが必要
です。傷薬や包帯、ラジオも用意しなければなりません。
今回は、冷蔵庫への頼りすぎの危うさも思い知らされました。無理に全部食べたな
どというのは笑い話で済まされますが、だめになったのに他に食べるものがないとい
う状態は悲惨です。備蓄といっても、昔からの保存食を日常の食事に取り入れるなど
の発想の転換もあっていいと思います。
1年ほど前見た新聞記事では、沖縄県が調査したところ、県内市町村の非常用備蓄
は不十分で、石垣市には備蓄がなく竹富町も毛布だけとのことでした。これは今は改
善されたでしょうか。
災害に備えること、それを乗り切ることがまず必要なのはもちろんですが、離島で
は、救援の手が差し伸べられるのは遅くなることも考えるべきです。それまで持ちこ
たえるための備えの重要性も実感させてくれた今回の台風でした。
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//転載歓迎//
<商業主義の餌食になった石垣島> 農民 小林 孝
まだまだ内地のテレビや印刷メディア(雑誌など)では、八重山が異様なまでにも
てはやされているようです。向こう受けを狙うには、今は八重山を扱うのが手っ取り
早いのでしょう。しかしそれらは表層的な八重山の表情を伝えているに過ぎませんし、
あるいはJARO(社団法人日本広告審査機構)に諭されても不思議ではないような、過
剰な美辞麗句に飾られているものがたくさんあります。
実態はどうかといえば、島々は相当酷いことになってきました。ひとつは、今後も
増加するであろう観光客を相手にする商売が増えたことでしょう。例えば、エコツア
ーと称するエコノミックツアーが、異常繁殖したツアーショップで催され、数多くの
自然との付き合い方に慣れていない人々をマングローブやサンゴ礁の海や山へ案内し
ています。エコツアーとは名ばかりの、環境に多大な負荷を与える行為が、「エコ」
の名のもとで行われているのです。また新規参入ホテルも次々建設され、営業を開始
しています。さらには沈静化していたリゾート施設開発の流れも活性化してきました。
また内地のメディアによる「八重山への移住の勧め」広報活動が功を奏し、沖縄県
外からの八重山への移住者が、これまた常軌を逸脱したレベルで増加しています。そ
れがもたらす影響は、新築住宅建設の増加でしょう。市街地周辺だけではなく、街か
ら遠く離れた過疎地域にも、新たな住宅が増えています。それまで田畑が広がり、あ
るいは原野が広がっていたこの島々の緩やかな光景の中に、人工物が増殖しているこ
とで、かつての景観は相当損なわれてきました。
これらがもたらすこの島々の負の影響については、改めて詳しく書く機会を作りた
いと思いますが、総じていえることは、異文化と異人種の大量移入によって、八重山
の土着の文化、風習、習慣が、圧迫を受けているということです。もっときつい表現
をするなら、内地の情け容赦無い資本主義者たちに、この島々と「素朴で純情な人た
ち」は食い物にされているとさえいえるでしょう。
そうした事態になることは、ある意味時代の流れなのかもしれませんが、だからと
いって諦観する気にもなれません。また、新石垣空港建設が実現するとなった時点か
ら、こうした流れが加速されたことは事実でしょう。
現在、こうした事態になっていることに、八重山のネイティブの人々の中には困惑
の空気が停滞しています。しかし、観光都市宣言をした石垣市をはじめ、八重山の行
政を司る方々にとっては、狙った通りにことが動いているわけですから、満足してい
らっしゃるのでしょう。
私の持論は、石垣市に限っていえば、基幹産業はあくまで第一次産業であるべきで、
観光に頼っていてはいずれ破綻する、ということです。そのことに気が付いていらっ
しゃるネイティブの先輩たちも少なからずいらっしゃるのですが、なかなかことはう
まく運びません。
また、よそ者がそうした問題に口出しをすることは、島の方々には喜ばれませんし、
白保メール前々号(No.81「盲動」)にあるようなリスクを背負うことも覚悟しなけれ
ばなりません。
だからというわけでもないのですが、ネイティブの方々が、明確な将来ビジョンを
作り上げて、それに則った石垣市作りをするべきなのです。彼らが主体であるべきで
す。だから、彼らが声を上げることを期待していますが、それがなかなかできない土
地柄でもあり、いらいらさせられます。また、それが彼ら地元民の選択ならば、尊重
せざるを得ないでしょうが、本音は違うところにあることを知っていますから、これ
また「仕方が無い」で終わらせたくないのです。
そこで私に今出来ることといえば、これをお読みいただいている内地の皆様に、少
なくとも私が生活している石垣島は、メディアの謳い文句のような麗しい島ではあり
ません、万が一この島への移住を考えておられるなら、相当な覚悟が求められますよ、
とお伝えすることだと思っています。自分自身が「内地からの移住者」であることを
棚に上げて、敢えて述べてみました。
<この5年、これからの5年> 鷲尾 雅久
この5年、八重山は変化の時代を経験しました。
一見して分かるのは、開発の進行です。市街地やその周辺を中心に住宅やホテルが
競争のように建てられ、東シナ海側の地域などではリゾートの計画が進められていま
す。赤土流出防止を標榜して始まった農地の勾配修正事業では、元の地形が分からな
くなるほどの土地造成が行われています。道路建設も相変わらず盛んで、市街地でも
郊外でも、交通量が多いからではなく、ただ計画があるからという理由で整備が行わ
れているように見えます。この5年だけでも、島の風景は大きく変わってしまいまし
た。
また、こうしたことの背景ともなっている社会の変化があります。
一つは、新石垣空港が呼び起こしたバブルです。工事が始まればその関係者が大勢
島外からやってくるだろう、近くに空港ができればお客さんは増えるだろうといった、
どの程度根拠があるか分からない期待が人々を動かしているようです。もう一つは、
由来の分からない八重山ブームがもたらした人の動きです。一時減少していた観光客
は増加に転じ、それと共に、よその地域からの移住により人口が増えています。過疎
化しさびれつつある地方が多い中で、例外的な繁栄と言うべきかもしれません。
これからの数年間、もし新空港事業が実施に移されるなら、建設業や不動産賃貸業、
飲食店などは繁盛することになるでしょう。団塊世代の退職を受け、移住者もさらに
増えるかもしれません。
しかし、一方で、石垣市では、市民税などの市税が伸び悩み、歳出抑制を続けてい
ます。住民は「繁栄」の恩恵に浴していないように見えます。人口増のかげで、学業
のため就職のため島を出て行った若者の多くは帰って来ていないようです。
今でも、手放しで喜べる状態ではありません。そして、先行きはさらに憂慮すべき
ものです。
観光客や移住者の増加は、むしろ過熱と言うべきです。どこかで反動が来るでしょ
う。新空港の工事は、やがて終り、一時の好況を謳歌した業界は、倒産、廃業が相次
ぐでしょう。国のサトウキビ政策の変更により、農業も現在の形を維持することは困
難です。さらには、石油価格の高騰は離島にとっては運送費を含めた二重の負担増を
意味し、生活と産業に影響を及ぼす恐れがあります。
このまま進んでいったら、おそらく立ち行かなくなるでしょう。これまでの進路を
反省し、できる限り早く方向を変えることが必要です。
例えば、外からできるだけ多くのものを手に入れようと腐心するのではなく、島で
何が作れるか試してみることです。リゾート施設を整えることより、訪れた人が豊か
に過ごせる時間を提供するにはどうすればいいか考えることです。車にとって便利な
道路を新しく作るより、緑陰があり歩きやすい道にすることを考えることです。ある
いは、道路などの施設が周囲の自然となじむようにするために、人手と時間をかける
ことです。
多くの課題がありますし、多くの試みが可能でしょう。白保メールもその答を見出
すべく、次の5年に向けて歩き出します。
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# 前号に引き続き、白保メール発刊5周年に当たり、発行者が今思うことを書きま
した。
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白保メール NO.84 06.8.20
発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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V..v 白 保 メ ー ル│\ Aug.15.2006
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//転載歓迎//
・・・白保メール5周年・・・
今日8月15日で、白保メールを発刊して5年が経ちました。皆さまのご愛読ご声援
に感謝します。
当初から取り上げてきた新石垣空港については、昨年末国から設置許可が出され、
今年10月には起工のセレモニーが予定されています。白保メールが指摘してきた新空
港建設のマイナス面は顧みないまま、沖縄県は事務的に事業を進めつつあるように見
えます。
一方、この間、八重山ブームで観光客や移住者が増え、新石垣空港の工事と開港も
当て込んだ建築ラッシュが起こるなど、大きな変化がありました。
この5年を振り返り、発行者三人が、今思うことを書いてみました。2回に分けて
掲載します。
<質と量> 谷崎 樹生
先日、自然解説の仕事で十日間ほどマレーシアに行ってきました。マレーシアはほ
ぼ赤道直下の国で、熱帯雨林の成す風景は台風の常襲地石垣島とは全く違っていまし
た。どの樹も皆スクスクノビノビ真っ直ぐに育って見上げるような巨木がそこかしこ
にそそり立ちボリュームたっぷりの涼しい木陰を作っています。
そんな大きな木陰を作ってくれる巨木にフタバガキ科というグループがあります。
内陸の谷間のような風の当たりにくい所には、今でも樹高70mにも達する森の巨人
フタバガキの巨木が樹冠を突き抜けるようにそびえ立ち、超高木層を形成しています。
フタバガキの材は硬くて樹脂を多く含むため腐りにくいので古くから建材として利用
されています。
フィリピンではフタバガキの材をラワンと呼び、ラワン材の名は日本でもよく知ら
れていますが、残念ながらフィリピンのフタバガキの森はほぼ伐り尽くされてしまい
ました。ラワン材の主な輸出先は日本で、日本ではこの巨大な丸太を桂剥きにして接
着剤で張り合わせ、ベニヤ板を作っています。コンクリートの型枠に使われるコンパ
ネというベニヤ板はほぼ使い捨てで、熱帯雨林の巨人はこんなゴミになるために切り
倒されているのです。
麻雀のパイを作るために、立派な牙を持ったアフリカゾウが殺されているのと同じ
ように、果てしない人間の欲望の犠牲になっているわけです。そんなくだらない物に
なるために産まれてきた命ではないはずです。命の質を尊重しないで使い捨てにして
いたのでは、近い将来必ず行き詰まり、破綻します。
今の日本の豊かさを支えているのは「大量生産・長距離輸送・大量消費・大量廃棄」
というシステムです。経済活動の規模が大きくなると、物とお金の大循環が起こり、
世の中が活気付いたように見えるものです。政治家が好きな「活性化」とか「振興」
というのはそういうものだと思いますが、石油で大儲けしたい人達が手段を選ばず原
油価格を操作している今日では、先ず「長距離輸送」ができなくなります。これから
は「少量生産・短距離輸送・少量消費・リサイクル」という小さくても質の高い循環
を実現せねばなりません。ところが、薄利多売路線に走りがちな観光業界など、この
島の様々なサービス業の現場ではこれとは逆の方向を目指しているようです。行き着
く先は破滅ですが、その前に稼げるだけ稼いで巧く足抜けしようと考えている方も多
いようです。
白保メールでも何度か書きましたが「あらゆる分野での質的向上」が緊急の課題で
す。社会の質を向上させるには個人の質が向上せねばなりません。ところがこの島で
はいつの頃からか、躾のなっていないどうしようもない子供が、そのまま大人になっ
てしまってどうしようもない社会を作り始めている・・・と言うのは少々言い過ぎか
も知れませんが、その懸念は大いにあります。
「若い人がなかなか職場に定着しない」と、言う声がよく聞こえてきますが、それ
は若者に覇気が欠けているからだけではないでしょう。「こんな奴の下では、バカバ
カしくって働いていられるか!」と言われても仕方がないようなとんでもない上司も
いるのです。
実は職場に定着しないのは若者に限ったことではありません。より楽により高収入
を得られる職場を求めて中高年の転職が多いのもこの島の特徴かも知れません。それ
も全く畑違いの職場への転職です。それまで培った知識や技術を活かせそうもない全
く畑違いの仕事でも、ポストが空けば身内を呼び寄せ利益を身内だけで分配するとい
ったことがよく行われているようです。
そのようにしてでも収入が増えれば生活の質は向上するかも知れませんが、仕事の
質は落ちるばかりでしょう。より大きな金の流れをいち早く見つけて群がり、利益を
貪るというやり方では、仕事の質も社会の質も向上するはずがありません。この先、
この島の社会を美しく成熟させるには、物質的な豊かさではなく「豊かな心」を求め、
育てる工夫が必要です。仕事の質を高めるには人材育成が絶対に必要です。人材は使
い捨てにするものではなく育てるものです。人を育てる立場の人は常に自分自身も育
ち続けなければなりません。その努力を楽しめない人は早々に退場すべきでしょう。
子供達に「大きくなったら何になりたい?」と尋ねるのではなく、大人も子供も
「どんな生き方をするべきなのか?」を自分自身に問い続ける人生を送らねばなりま
せん。
今後、団塊の世代がリタイアし始めると、八重山観光にも新しい大きな市場が出現
しますがそれも一時的な現象です。やがてブームは去るでしょう。その時が来れば、
偽物は淘汰され、本当に質の高い本物だけが残ります。その前に、目の肥えた団塊の
世代の厳しいチェックにどれだけのものが耐えられるのか、覚悟は必要だと思います。
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<石垣島白保での海と人との新たな関係 ―垣の復元事業― >
白保魚湧く海保全協議会事務局長 上村 真仁
白保メールNo.79、80では、白保魚湧く海保全協議会の小林前副会長から昨年7月
に白保の人々によって設立された白保魚湧く海保全協議会についての紹介がありまし
た。今回は、協議会が設立以来取り組んできた伝統的な漁具“垣(カチ)”の復元に
ついて白保魚湧く海保全協議会事務局長の上村真仁がご紹介します。
1.白保サンゴ礁沿岸に見られた伝統的な定置漁具
2004年3月『白保今昔展』の聞き取りのなかで1980年代後半に白保で活動していた
“魚垣の会”のことを知りました。そこで早速、“魚垣の会”の会長である島村修先
生を訪ね、会の活動やサンゴ礁と白保集落の関わりについてお話を伺いました。
“魚垣の会”とは石垣島白保出身の教員の方々が中心となった組織で、聞き取り調
査や自然観察などを通じて白保の自然環境や生活文化の価値を再発見し、保全活動に
つなげていくことを目的としたものです。同会ではトヨタ財団の助成を受け、白保の
サンゴ礁と人々との関わりの他、白保周辺の文化財や生物の調査などを行いました。
日本野鳥の会八重山支部長や日本自然保護協会の参与などを歴任された島村先生は波
照間島の出身ですが、波照間と関わりの深い白保の自然や文化を守るためにこの活動
に参加されたそうです。
その際に教えていただいたものが、会の名称にもなっている“魚垣”のことです。
“魚垣”は浜にサンゴなどの石を用いて半円形や馬蹄形に石垣を積んで利用した定置
漁具で、満ち潮にのって岸辺の浅瀬に回ってきた魚が、引き潮のときに石垣にはばま
れて沖に戻ることができず潮だまりに身を寄せているところを網や手づかみで捕ると
いう原始的なものです。白保では“垣(カチ)”と呼んでいたようですが、会の名称
とする際に一般にわかりやすいように“魚垣(ウオガキ)”としました。
「宝の海」、「命継ぎの海」を次世代に継承したいとの思いから、当時、サンゴ礁
の海を守るための活動をしてきた白保公民館や、白保ハーリー組合は白保の垣の復元
を計画しました。白保のサンゴ礁保全のシンボルとして垣がふさわしいと考えたから
です。しかし、空港問題の変遷の中で、復元計画は頓挫しました。
*『白保今昔展』とは、しらほサンゴ村が2002年より取り組む、白保に伝わる海とと
もに生きてきた伝統的な生活文化を地域の古老への聞き取りを通じて掘り起こし、次
世代に継承していこうという活動。
2.白保の垣について
白保で“垣(カチ)”と呼ばれるこの漁具は、瀬戸内海や周防灘、有明海沿岸など
でも利用されており、沖縄県下では伊良部島や小浜島のものがいずれも自治体の文化
財に指定されています。海外では、太平洋や東南アジアの島々、オーストラリアやア
フリカ、北米、ヨーロッパにも類似のものがあります。しかし、いずれの地域でも漁
具や漁法の発達、流通の変化など近代化の過程で、利用されなくなりその多くが姿を
消していきました。
ここ白保でもかつては16基あったといわれていますが、戦後、他の島から自由移民
として移り住んだ人々が専業の海人がとなったこともあり、徐々に利用されなくなり
ました。その後、台風で壊されたり、市街地の埋め立てのために運び出されるなど、
往時の姿は失われ、わずかに70歳代以上の人たちの記憶に残るだけでした。
垣は農民が利用したもので、畑の近くの海岸に一族で石垣を築き潮時にあわせて畑
仕事の手を休め海に下り魚を捕ったものです。まさに、半農半漁の生活の歴史を伝え
る貴重な文化財と呼べるものです。また、垣を利用していた皆さんが楽しい思い出と
して垣での漁について語ってくれたことがとても印象的でした。
泳ぎや船の操船など高度な技術を必要とせず、潮時に行けば必ず獲物が捕れた垣。
楽しみながら生活の糧を得ることができ、人々が身近に海を利用できる仕組みとして
上手く機能していた漁でした。豊かな海であったからこそ成り立った漁ではあります
が、こうした漁法が身近にあったからこそ白保の人々は農家であってもこの海の恩恵
を受けることができ、この海を大切にしてきたと言います。
3.何故、白保の垣を復元するのか
24時間営業のスーパーの出店や全国から運び込まれる生鮮食料品の増加、自然の恵
みを直接感じることの少なくなった島の暮らしの変化は人々の海への関心を薄れさせ
ています。そこに追い討ちをかける赤土の流出などによる環境の悪化。「魚が減った」、
「海が汚れている」という言葉に、目の前の海に行って確かめることもせずに「もう
海はダメだ」とあきらめている人たち。
ここ白保でも「海のことは海人がやればよい」、「僕は農家だから海は知らない」
という人々も見られます。かつて、「海の畑」、「海は冷蔵庫」と呼び日々の暮らし
の糧を得た白保の人たちの海との強い絆は何処へ行ってしまったのでしょうか。
地元の方々にサンゴ礁保全へ取り組んでいただくためには、まず、海への関心を高
めるために海と関わる場所を作る必要があります。白保の人々が先祖代々受け継ぎ利
用してきた海の文化財ともいえる垣を復元することは、白保の人々の海への関心を高
める最良の方法だといえます。復元された垣の維持・管理を通して海と身近に付き合
う場ができ、海の環境やそこに棲む生き物への関心も高まっていくことが期待される
からです。では、いったい誰がこの垣を復元するのでしょうか?白保の人たちが自ら
石を運び、垣を築かなければ復元を行う意味がありません。
白保のサンゴ礁環境の保全と持続的な利用による地域の振興を目指して2005年7月
に設立された“白保魚湧く海保全協議会”。その第1回の理事会において検討された
事業計画の中に、白保での垣の復元が満場一致で盛り込まれました。海の体験学習の
場として子どもたちにかつての海の文化を伝えたいという協議会のメンバーの思いが
一つになりました。
4.白保の垣復元事業のスタート
2004年3月魚垣の会の島村会長への聞き取りから協議会での復元が決まるまでに約
1年半かかりました。しかし、それだけでは垣の復元はできません。沿岸部での工作
物の設置には、沖縄県知事の許可が必要となります。また、漁業資源の管理や環境保
全、船舶の航行上の安全など様々な観点から石垣市、八重山漁協、海上保安部、環境
省などの関連機関との調整が必要となります。協議会では、許認可の取得に向けて関
係機関との度重なる協議を粘り強く続けました。また、垣の設置方法や垣による環境
改変などの影響予測やモニタリング方法などについて白保をフィールドとされる研究
者の方々から助言や指導、協力をいただきました。
2006年2月11日、本格的な復元に向けた準備が始まって約半年、沖縄県知事からの
復元に対する許可が出る見通しとなったことを受け白保公民館において垣復元の結団
式を開催しました。
結団式には、公民館長、白保小学校、白保中学校関係者など24名が出席。八重山文
化研究会の石垣繁会長からは「200年、300年先に貴重な文化財となることを目指して
取り組んで欲しい」と激励を受けました。1980年代の復元計画に地元漁業者の代表と
して関っていた内原克さん(白保魚湧く海保全協議会顧問:81歳)も感激に目を潤ま
せておられました。
この結団式により白保の竿原(ソーバリ)地区での垣の復元が正式にスタートしま
した。
5.こどもたちへこの文化を如何に伝えていくか
白保魚湧く海保全協議会が白保の垣を復元する目的は、次世代を担う白保のこども
たちに海に親しみ、海とともに生きてきた先人の知恵(海とともに生きる文化)を受
け継いでもらうことです。そのためにこどもたちにどういった体験活動をしてもらえ
ばよいかが一つの課題となっていました。
しかし、答えは意外にも身近にありました。垣の復元について模索をはじめた当初
から強い関心を持って様々な場面でご協力いただいた白保中学校鈴木光次郎教諭の総
合学習の時間への取り組みがそうです。
白保中学校の総合的な学習の時間は、生徒が自然コース、郷土芸能コース、地域探
検コースの3つの中から希望のものを選び、自分自身でテーマを決めて学習を行うこ
ととなっています。2005年は、自然コースの生徒6名が垣をテーマとして1年間を通
した学習をしてきました。海の学習をサンゴや魚などの生物についてだけではなく、
人々の暮らしとの関りについて学ぶことが重要だと考えた鈴木先生の想いが形となっ
た結果でした。
総合学習の締めくくりとして実際の垣の石積みを体験したい。こどもたちの希望に
こたえるために2006年3月4日に石積み体験が行われました。この体験学習には、白
保中学校生徒10名、先生4名、白保小学校児童12名、先生4名、協議会会員や小中学
校のPTAなど39名が集まりました。
午後1時30分より山城常和白保魚湧く海保全協議会会長の挨拶で起工式、石積み体
験がスタート。魚垣の会の島村会長も駆けつけてくださり、約20年前の思いが形にな
ることを喜んでいただきました。その後、協議会の内原克顧問を中心に参加者全員で
復元工事の安全を祈願しました。
まず、垣の大きさを体感するために2グループに分かれ垣を復元する位置の両端か
らロープを持って、石を積む場所を皆で囲みました。石垣の延長は約400mです。ま
た、浜から沖への最遠部は約90mとなりました。面積は2ha弱です。続いて、石工の
大泊一夫さんの指導により、てこを利用して大きな石を動かす方法を子どもたちが体
験し、昔の石積みの際に用いたオーダ(モッコ)を利用して石を運ぶ体験なども行い
ました。
小学生から80歳代のおじぃまで皆で力を合わせて約20mほどの石垣が積みあがりま
した。参加したこどもたちは垣の大きさや機械の無い時代に一つずつ石を運び、垣を
築いた先人の努力に感銘を受けていました。
当初、復元した後にこどもたちに漁体験をさせれば良いという考えもありましたが、
石運びや石積みといった復元作業そのものに参加することが意味があるということを
強く実感した体験学習会でした。
6.おじぃの技と想いが石積みを完成
2006年4月5日に県知事からの許可が出ました。そこで、15日に大規模な体験学習
会を開催しました。白保中学生44名、先生6名、白保小学校高学年14名、先生2名、
地域の方々20名の総勢88名が集まりました。浜の石をリヤカーに積み、水のあるとこ
ろまで運び、そこから先はカヌーに載せて復元場所まで引っ張っていくという作業。
子どもたちは寒さも忘れて、精一杯取り組みました。北風が強く、かなり寒い天気で
したが、誰一人弱音を吐かず、未来の文化遺産を目指して石を運びました。
こうしたこどもたちの体験学習も重要ですが、垣を完成させるためには専門的な技
術者の参加・協力が不可欠です。台風のうねりが直撃する白保の東海岸は、湾内に垣
を築いた他の地域よりも石積みに工夫が必要です。そこで結成されたのが石工の大泊
一夫さんを棟梁とする石積み部隊です。
若い頃に垣の中でイザリ(夜の干潮時に松明をもって魚やタコを捕ったという漁)
をし、海でのおかず捕りの経験の豊富なおじぃたち。もちろん、石積みの作業もお手
の物です。海の知識もあり、石積みの経験もある人と言うことで、8名のおじぃが棟
梁のもとに集まりました。
4月25日朝8時。この日は、大潮の干潮時にあわせて、75歳2名、67歳1名、65歳
2名を含む6名のおじぃが集まりました。作業内容は、子どもたちが運んだ石を波に
負けないようにしっかりと組みなおすというものです。200kgから500kgぐらいの石は、
ティンガラと呼ばれる鉄の棒やバールで簡単に転がします。大きな石を両脇に並べて
いきその間に小さな石を詰めていきます。最初はぐらぐらしていた大きな石もおじぃ
の手にかかれば座りの良い場所に収まります。おじぃたちの連携プレーで見る見る石
垣がきれいでしっかりとした形に組まれていきました。その後も、石積みのおじぃた
ちの作業が何日も続きました。
7.人々と海との新しい関係のスタート
“飢饉の時も戦争のときもこの海に助けられ生きて来た”島の人々は、イノーと呼
ばれる浅く穏やかな海を巧みに利用して命をつないできました。網や船の無い時代、
海辺に打ち寄せられて転がっているサンゴを利用し石垣を築き、潮の干満と魚の回遊
する習性を巧みに利用した定置漁具を作りました。
しかし、垣が姿を消して30数年、石垣島は急速に変化しています。時代の流れは、
人々と海とのつながりを希薄にしてきたのかもしれません。
サンゴ礁の保全のためには人々の海への関心を高めたい。海とともに生きて来た先
人の文化に誇りを感じ、また、現在を生きる人々にも海への愛着を感じてもらいたい。
そうした考えから始まった、垣の復元事業。地域の人々が海と常に接する場所を持ち、
海の状態を自分達で把握することができることは、持続的なサンゴ礁の保全を進める
上でとても重要なことです。
この事業には、白保村のこどもからおじぃまで本当にたくさんの方々が参加してく
ださいました。石積みの棟梁として中心的に参加した大泊一夫さんは、“垣を実際に
見て、使ったことのある私たちの責任として、次の世代に受け継ぐために復元作業に
参加した。自分達の財産だということを若い者が自覚して、受け継いでいって欲しい”
とおっしゃっていました。
6月末に白保の垣が完成しました。この垣を将来に渡り白保の人々自らが維持・管
理していくことが課題となります。7月15日『ふるさとの海交流会』に参加する白保
の小中学生と佐賀県鹿島市から来る小中学生の垣体験漁が白保竿原の垣の柿(こけら)
落としとなります。
※『ふるさとの海交流会』:2006年からWWFジャパン主催で始まった小中学生を対象
とした交流事業。有明海の干潟(佐賀県鹿島市)とサンゴ礁(沖縄県石垣市白保)の
こどもたちが相互に行き来をし多様な海に触れるとともにふるさとの海を再発見する
企画。
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白保メール NO.82 06.7.10
発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
shiraho@estate.ocn.ne.jp
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。 ─ ○ ─
V..v 白 保 メ ー ル│\ Jun.12.2006
>>∈∋<< v..V 。 No.81
"" >>⊂⊃<< . . 。
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//転載歓迎//
<盲動> 谷崎 樹生
「盲動」という言葉で思い出すのは「よど号ハイジャック事件」です。この事件は
1970年3月31日羽田発福岡行きの日本航空ボーイング727型機を「赤軍派」
の9人が乗っ取って北朝鮮行きを要求したものでした。当時の北朝鮮当局が赤軍派の
行為を「盲動」と決めつけるコメントをしたのか、赤軍派のメンバーが自己批判とし
て自らの行為を「盲動」と言ったのかは憶えていませんが、「人間というものは思い
込みが激しすぎると、とんでもないことをしてしまうものなんだなぁ・・・」と、当
時高校生になったばかりの私は思ったものでした。
以前この『白保メール』に書いた「盲目的郷土愛」の中でも述べましたが、沖縄で
は、時に「盲目的」と言っても過言でない、異常に熱い、危険なほどの郷土愛を感じ
ることがあります。私の周りで二年ほど前から続いている事件も、おそらく盲目的郷
土愛に突き動かされた人達の盲動によるものだと思われます。とても興味深い社会現
象なので(内容は極めて低次元ではありますが・・・)皆さんにも考えて頂けたらと思
い、紹介いたします。
事件というのは、あまりにもくだらないので詳しく説明するのもはばかられますが、
日頃の私の言動を快く思っていない人達が、電話盗聴・ネット盗聴・盗撮・脅迫など、
様々な手段で私達家族を監視し、嫌がらせを繰り返しているという事件です。嫌がら
せメールも随分増えました。彼らの狙いはよく解りませんが、「白保メール潰し」と
「私の家庭潰し」なのかも知れません。我が家ではこれを「谷崎家離婚促進プロジェ
クト」と呼んで、彼らスパイ君達の活躍を観察して楽しんでいます。
スパイ君達のプロジェクトチームはなかなか充実したネットワークを持っているよ
うで、最盛期にはおそらく二十人近くの人間が関わって、私達家族を監視し、嫌がら
せを続けていたようです。最近では脱落者もいるようですが、それでもそろそろ二周
年を迎えますから『白保メール』のような息の長い活動になるのかも知れません。
よそ者(と言っても沖縄に来てもう32年、この島に来て21年経つのですが・・・)
の私が、しがらみが無いのを良いことに、普段からいろんな場面で大胆な発言をし、
行動していること、そしてそれが世間の皆さんにある程度認知されていることに対す
る妬みから出た嫌がらせなのかも知れません。
この二年間は私も個人的にとても忙しい期間でした。家を建て、引っ越しをし、長
期出張も増え、ウミガメの産卵調査や月例自然観察会、雑誌や新聞の原稿執筆、さら
に新川川の植生管理等々、新しい活動も始めたので、体が一つでは足りないような状
態で、とても彼らのお相手をしておれるような状況ではありませんでした。
彼らも直接私を攻撃しても効果が無いということはわかっているようで、家族をタ
ーゲットに攻撃をし続けています。私がとても残念に思うのは、このプロジェクトチ
ームのメンバーに観光業や商業など様々なサービス業の現場で働いている人達が関わ
っているということです。詳しいことはプライバシーに関わるので、お話しできませ
んが、オーム真理教のような思い込みの激しい新興宗教の信者ではなく、一見ごく普
通に社会生活を営んでいる人達、しかも、人を幸せにする仕事であるはずのサービス
業の現場にいる人達が匿名性を利用してこのような卑劣な行為に走っているというこ
とが、私には残念でならないのです。
この島の幼い社会が、今後まっとうな成熟した社会になるためには、あらゆる分野
での質的向上が必要です。ところが、基幹産業と言われている観光業の現場でさえ、
一時的な八重山ブームに踊らされ、質より量の薄利多売路線に走りがちになっていま
す。質の高いサービスを提供するには、何よりも先ず「人材育成」が必要ですが、残
念ながら「人材使い捨て」がまかり通り、島の観光業は産業として成熟するどころか、
質的向上さえおぼつかない状況です。
もう一度言いますが、サービス業というのは人を幸せにする仕事です。その現場に、
このプロジェクトチームのメンバーのような志の低い人々がいたのでは、産業の成熟・
社会の成熟の妨げになるばかりです。再教育が必要でしょう。それができないのなら、
速やかに退場して頂かねばなりません。
彼らの行為は、いわゆる盲目的郷土愛に突き動かされた盲動なのでしょう。志が低
く、モラルのない未熟な人間が、知識や技術の使い方を誤るとこうなってしまうとい
う典型的な事例です。ただ、なぜ彼らが私の家族にこのように執拗な攻撃を続けてい
るのか?ということもまた興味深い現象ですので少し分析してみました。
物質的な豊かさだけを追い求め、お金という物差しでしか、ものの価値を計ること
ができない人から見れば、私達が取り組んでいる「新川川を育てる会」や「月例自然
観察会」の活動は、全く理解できないことなのかも知れません。確かにどちらの活動
も、お金儲けには全く縁が無く、個人的な楽しみで取り組んでいる「新しい文化を育
てるための社会学的な実験」なのですから、普通の人は「なんと物好きな!」と呆れ
返るばかりでしょう。だけど、新しい文化は常に少数派から産まれるものです。物好
きの輪も徐々に広がりつつあり、今後の展開が楽しみです。
そんな私達の活動は、かのプロジェクトチームの方々には不気味に感じられるのか
も知れません。確かに一見何の得にもならないようなことに嬉々として取り組み、草
刈りや自然観察を楽しんでいるのですから、彼らには私達が「異星人」や「異文化人」
のように理解しがたいものに見えるのでしょう。人間というものは理解できないもの
を恐れ警戒します。古来「鬼」と呼ばれてきた者の正体は、おそらく異なる文化・価
値観・習慣を持った異文化人であったのかも知れません。私を恐れる彼らの振る舞い
を見ていると、「僕は彼らにとっては鬼のようなものなんだなぁ」と妙に納得してし
まいます。
我が家では今後もこの路線で進み、人生を大いに楽しむつもりです。親が仕事を楽
しみ、日々人生を楽しんでおれば、子供はその姿を見て幸せに育つはずです。我が家
ではそうやって個人が育ち、家族が育っています。
かのプロジェクトチームの方々は、幸せな人生を歩んでいるのでしょうか?他人事
ながらいささか気がかりではあります。
今回のテーマは、『白保メール』にはふさわしくない次元の低いものになってしま
いましたが、世の中にはいろんな人がいるもので、彼らのような志の低い人達とも同
じ社会に暮らしていかなければならないのですから、それなりの覚悟が必要だという
ことです。「個人の成熟無くして社会の成熟は有り得ない」と、改めてそう想うわけ
です。
(『白保メール』は個人の資格と責任で発言し、行動しています。情報の発信を含
む全ての行為には責任が伴わねばならないと思っています。だから『白保メール』は
匿名での発言や行為を無視することにしているのです。今回はそんな『白保メール』
には全くふさわしくない人達に注目し、分析してみました。)
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http://www1.ocn.ne.jp/~shiraho/
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白保メール NO.81 06.6.12
発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
shiraho@estate.ocn.ne.jp
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