黒板ははっきり見えるのに教科書の字が二重に見える。音読で行をとばしてしまう。こんな子どもが増えている。近くを見る視力の低下や視機能の障害が原因らしい。メガネをかけたり、簡単なトレーニングをしたりすれば、数ヶ月で改善するという。 東京都武蔵野市の医師は2年前、長男(7)の目の異変に気づいた。運動神経は悪くないのに、大なわとびに入ることができない。マッチ棒で迷路を作る遊びでは、目をこすったり、片方を隠したり。 斜視を疑われたが、視力は両目とも1.5。小学校に入り、担任から「黒板の字を写していない」と言われた。ギュッと目をつぶって授業の内容を暗記しようとしていた。 去年11月、神戸市中央区の視機能トレーニングセンター「Joy Vision」を訪ねた。「眼球運動に問題がある」と指摘された。寄目ができない、動くものを目だけで追うことが難しい、などだ。1日30分のトレーニングを課され、2ヶ月後、行を飛ばさないで教科書が読めるようになった。 この男児の検査を担当した北出勝也さんは、アメリカで、視機能を検査するオプトメトリストの資格を取り、2年前から検査と指導をしている。年70〜80人が訪れる。「視力がよくても、眼球運動やピント合わせの力が弱かったりと、視機能に問題がある人は意外に多い」と話す。 電光掲示板の光る部分を手で押さえる「もぐらたたき」や、鉛筆を顔に近づけ目を寄せるなどのトレーニングにより、半年ほどで改善する、という。名古屋市中区の特別視機能研究所のオプトメトリストの内藤貴雄さんは5年前、テレビ番組で紹介され、「視機能を検査してほしい」というファックスを400通受け取った。6割が学習障害児の親からだった。「斜視の手術などで、視力の問題が解消した後も、転びやすい、本が読めないなどの問題が残ることがある。目と体が運動するように、神経系をつなぎ直すことも大切です」 桃山学院大学の高橋ひとみ教授(健康教育)は10年前から、大阪河内長野市の小学校2校で、「近見視力検査」をしている。 通常の視力検査に使うランドルト環をを50分の3に縮小した検査表を、目から30センチ離して視力を測る。 96年に1040人を調べたところ、視力1.0未満が31.3%、0.7未満が14.8%を占めた。0.7未満では高学年の教科書のルビがかすんで見える。 現在の学校保健法では、5bの距離で測る視力検査しか義務付けられていない。高橋教授は「目が悪いだけなのに、運動神経や学力が劣ると思っている子は多い。近見視力検査や高学年にたいする機械による屈折率検査をぜひ義務付けてほしい」と話している。
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