一流の秘密・目と脳にあり
瞬間視・空間認知イチローら抜群
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日本経済新聞(平成13年8月19日) |
優れたスポーツ選手は、筋力や反射神経などのほかに、人並みはずれた能力を持つ。最近、図形の認知やその判断速度も重要な要素であることが分かってきた。イタリアのプロサッカーリーグで活躍する中田秀寿選手や、米大リーグで好成績を出すイチロー選手が行った試験でも、そんなことが裏付けられるという。二人の秘密に迫ってみた。
「これだけ早く正確に解いた人は初めてだ」。1998年4月、東京文京区の筑波大大学院の一室。21歳の男性の、ある能力検査に立ち会った杉原一昭筑波大名誉教授は驚いた。
若者は赤と白の小さな積み木で、、見本と同じ立方体、模型を簡単に組み立てていった。一般の人なら、組み合わせては崩すといった試行錯誤をするが、そんなそぶりも見せない。この「積み木模様」と呼ぶ課題は満点だった。
完成図が浮かぶ
この若者が中田選手。複雑なパズルを組み立てるなど図形問題が良く解けた。11ある全検査項目でも100人中上位8位以内の水準に当たる高い数値を残した。この検査結果に、中田選手が試合を決定づけるキラーパスを繰り出せる秘けつがある。
図形問題がよくできるのは「積み木の断片を見た瞬間に、完成したときのイメージが浮かび上がるから」(杉原氏)。この才能は、サッカーの試合でフィールドに散らばる敵や味方がどう動くのか、それを瞬時に予測、判断する空間認知能力につながる。これが備わっていなければ絶好のパスを出せない。
中田選手は試合中、一瞬視線を巡らせただけで数秒後の状況が頭の中に浮かぶという。脳研究の専門家らは、中田選手の場合、図形認識をつかさどる右脳の働きと、その判断に基づいて素早く動く小脳の運動学習能力が高いのではないか、と推測する。
優れた動体視力
大リーグで打率上位につけているイチロー選手。鋭い変化球や時速160qの剛速球もバットの芯でとらえる秘密は、人並みはずれた動体視力によるところが大きい。
「彼は、野球選手に必要な視覚機能をすべて兼ね備えている」。スポーツ選手の視覚を調べている田村スポーツビジョン研究所(大阪府吹田市)の田村知則代表はこう証言する。96年、イチロー選手が所属していたオリックスの選手41人の動体視力などを調べた。イチロー選手は800点満点で687点。もちろんトップだった。
スポーツ選手に必要な視覚機能は@動く対象物を鮮明にとらえるA移動する目標に素早く視線を移す眼球運動B瞬間に多くの目標を認識する瞬間視---など7つ。野球選手は、物を立体的にとらえる能力などが必要だ。
イチロー選手が特に優れていたのは瞬間視能力。8桁の数字を0.1秒だけ見せて答える検査で、7桁まで正解だった。平均は4桁。投手の手からボールが離れてホームベースに届くまでが0.4秒あまり。スイングに0.2秒かかるので、打者は0.2秒の間に球種やコース、高低などを判断してバットをコントロールしなければならない。「視覚機能のよさがプラスに働いているのは間違いない」田村代表は言う。
訓練で能力向上
イチロー選手は中学3年まで毎日バッティングセンターに通い、時速140qの球を打ってきた。走る車のナンバーを見て、その数を足すこともやった。こうした訓練が動体視力を高めてきた。
練習で中田、イチロー両選手のレベルに到達できるだろうか。遺伝要因は大きいが、視覚の認識能力はある程度向上するようだ。杉原名誉教授は「脳の処理能力を鍛え、持てる素質を最大限発揮させることは可能」とみている。
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スポーツ選手に必要な視覚能力
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動体視力
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移動する一つの目標物を追い続ける能力 |
野球(打者)、テニス、スキーなど |
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眼球運動
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移動する複数の目標物に対して素早く視線を動かす能力 |
サッカー、ホッケー、ボクシングなど |
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周辺視野
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移動中、静止した目標物と同時に周りの状況を認知する能力 |
野球(投手)、バレーボール、ゴルフなど |
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瞬間視
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移動中、静止した目標物が持つ情報を一瞬に把握する能力 |
レスリング、バスケットボールなど |
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