「左の眼球運動が不安定。インコースにバットが出ないんじゃないか」「目を縦に動かすスピードが足りない。低めは不得意?」柏崎市の新潟産業大付属高校野球部で4月18日に開かれたVTの講習会。視覚行動研究所(新潟市西堀通五)の野沢康代表は、事前に行った目の検査データから、各選手に打撃や守備で問題になりそうなケースを問い掛けた。
遠藤鉄也監督は「これまでの指導は監督の経験と感覚に負う部分が多かったが、データの裏打ちによって自信を持って指導できる」と手ごたえを語った。
VTとは、動いている目標物を正確に追う眼球運動能力や、目標物までの奥行きをつかむ立体視能力、目で得た情報で身体を瞬時に反応させる情報処理能力を総合的に高めるものだ。
野沢代表は「視覚と身体運動とのつながりを良くするためには、目から情報を取り入れようとする意識も含めて強化しなければならない。単に動体視力を鍛えるのとは異なる」とVTの奥深さを力説する。
たとえば眼球運動は、投手が投げた球の軌道をバットで打つポイントまで追うときに必要だ。投手はマウンドからホームベースまでの奥行きをつかむことで安定した投球ができる。バントを処理しながら視界の片隅をよぎる走者の動きを見て、どの塁ならアウトにできるかを判断するとき、情報処理は威力を発揮する。
眼球運動の代表的な練習法はトレーニングボードとブロックストリング。トレーニングボードは縦35cm、横50pの紙を顔の前に掲げ、ボード上であらゆる方向に目線を動かす。ブロックストリングは5pから1mの間隔で5つのビーズを付けた糸の端を鼻の前で固定。遠くから近くへ、近くから遠くへとビーズに次々に焦点を合わせる。これらが立体視・情報処理能力を高める基礎にもなる。
目には個人差があるため、それぞれの特徴を知り、効果的な練習をするための検査が必要になる。項目は視力、意識して物を見ていないときの目の向き(眼位)、両目を近くに寄せたときと、寄せた両目を元に戻すときに動いた角度、ピントを合わせる力など。視力が悪かったり、上下方向に眼位がすれていると運動の障害になるため、眼鏡で矯正するよう勧める。両眼を上下、左石、斜め方向に、正確に、滑らかに、遠く動かせるかどうかが重要なポイントだ。目の動きをビデオに録画して問題点を探し出し、不得意な動きは重点的に練習する。