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特集

 学術研究機関と箱根町が観光創造を模索
 観光振興懇話会シンポジウム

 箱根町 (山口昇士町長) と有限責任観光振興懇話会 (作古貞義会長、 東京都品川区) は2月、 シンポジウム 「国際観光地 『ハコネ (箱根)』 の活性化を考える」 を同町湯本の湯本富士屋ホテルで開いた。 神静民報社など後援。 ホテル・観光関連事業の会員で構成される同懇話会の調査委員会が企画。 同委員会は各観光学会の主導的立場にある学識経験者が日本の観光地の活性化や外国人観光客の受け入れなどについて研究、 調査を重ねている。 シンポジウムでは、 国内屈指の観光資産 「箱根」 を見直し、 名実ともに観光立国の復活を目指して、 新たな観光創造による地域振興の方法を模索した

左から、佐古会長、山口町長、数馬理事長、岡本教授
■出席者(五十音順、敬称略)

 観光振興懇話会理事、立教大学観光学部教授
 日本観光ホスピタリティ、教育学会会長
  岡本 伸之 

 財団法人箱根町観光協会理事長
  数馬 勝

 観光振興懇話会会長
 流通科学大学名誉教授
 日本観光研究学会前会長
  作古 貞義 

 箱根町町長
  山口 昇士   


山口町長―真の国際観光地へ
 岡本教授―体験型の広域観光
  数馬助役―顧客満足度を10へ



作古 近年はビジットジャパンキャンペーンを含め、 メディアが 「観光」 という言葉をよく使うのですが、 バブル期の乱開発をつい思い出してしまいます。 実は、 やはり全国金太郎飴的な開発計画が大変目についております。 「箱根らしさ」 をどう軸に据えられるのか。 今年は、 箱根にとって本当に国際観光年になるのでしょうか。

山口 箱根は国際観光地といわれて久しいわけですが、 観光がグローバル化した中、 昭和年代半ばまでは箱根の訪日外国人観光客は欧米の旅行者が多かった。 現在、 東アジアを中心に外国人客がたくさん来ています。 外国人観光客を迎える受け地としての箱根を考えた場合、 名前が選考している部分がたぶんにあるのではないか。
 国際観光地といわれる箱根にするには、 まだまださまざまな問題があります。 例えば、 われわれがヨーロッパなどへ旅行する際、 不自由なく旅行ができる。 そういう環境を整備をしていく必要がある。
 また、 欧米人はウエルカム、 東アジアの人はノンウエルカム―これは箱根に限らず各地の観光地に見られますが、 できれば欧米の観光客にたくさん来てほしいという意識が見受けられる。 どこの国の観光客がきてもウエルカムといえる、 受け地としての温かい気持ちが大事だと思っております。
 私も毎年、 中国へ誘客キャンペーンに行くが、 中国の方はそういう部分を敏感に感じ取っているようです。 政治的な影響もあるかもしれないが、 迎え入れる日本人の目が、 気持ちが冷たい―そう言われる方もたくさんいます。 心底 「ウエルカム」 といえる環境にしていかなければ、 本当の国際観光地・箱根といえないのではないか。
 バス停や宣伝パンフレットなども、 多言語で制作し発信しているが、 外国人観光客が安心して一人歩きできる観光地にしなければ、 真の国際観光地とはいえず、 名前負けする観光地になってしまいます。

 数馬 年の歴史がある旧箱根町観光協会と町の観光施設を管理運営する箱根町観光公社が昨年4月、 合併し新たに箱根町観光協会としてスタートしました。
 観光協会の理事長となり、 町の各地域をあいさつにまわったとき感じたことです。 各地域にはすばらしい観光資源があり、 すばらし人材にも恵まれている。 しかし、 箱根町が誕生し昨年周年を迎えたが、 年経っても何かまだ箱根はひとつじゃないような気がした。 もう少し、 連携がほしいと思う。
 次に、 観光宣伝のあり方ですが、 自然景観に豊富な温泉、 数多くの歴史文化遺産や観光施設に恵まれています。 乗り物も大変バラエティーに富み、 町全体が旅のテーマーパークです。 それを、 どう発信していくのか。 もっと、 旬の情報を提供していきたい。
 また、 広域観光への対応を考えたい。 モータリゼーションの発達により、 一泊圏の観光地が日帰り観光圏になってきた。 もう少し滞在させるためには、 他の地域と連携し、 広域で体験型の観光地にしていくことです。
 箱根町でいえば伝統工芸の寄木細工の自主体験などが挙げられるが、 例えば、 開成町であればアジサイや農業を体験する、 真鶴町には漁業があり、 南足柄市にはアサヒビールなど先端技術の会社があり、 体験してもらう。 連携することによってもう少し滞在期間を延ばすことができるのではないか。

 岡本 観光地の発展開発、 段階説がありまして、 一般の企業でもいわれるが、 プロダクトライフサイクルがあり、 商品や企業、 あるいは産業や観光地にも、 人と同じように命があり、 誕生から成長して最終的に死に至るまでのサイクルがある。 観光地にもある。
 熱海は非常に成長した昭和年代は大変な勢いだったが、 今は衰退した。 鬼怒川も衰退期です。 しかし、 別府などは入り込み客数が落ちるところまで落ちたが、 1年を通してイベントを打ち、 若い女性にも人気のある国際的な観光地として復興を遂げた。
 どうしてそのようなサイクルが起きるのかというと経営環境が変わるからです。 経営環境に適応していかないと具合が悪くなる。
 鍋の中に水をはってカエルを入れると気持ちよさそうに沈んでいる。 少しずつ温度を上げると最初はじっとしているが、 だんだん温度を上げていくとカエルの体からエネルギーが奪われ本当に熱くなって 「逃げなきゃ」 という時に体力がなく、 そのまま茹であがる 「ユデガエル現象」 という実験がある。
 観光地の場合も、 企業の場合も同じで、 「会社の寿命も年」 という本がベストセラーになったが会社も年くらいで駄目になるわけです。 観光地も経営環境の変化に対応していくことを認識するべきだ。
 それでは観光地が衰退しないためにはどうすればいいか。 顧客の欲求・要求を事前に十分に従属させる、 満足させればいいわけです。 観光客を満足させる場合にレベルがあり、 1からまであると、 1は最低で、 は最高に満足、 6、 7が真ん中くらいというレベルがあるわけです。
 ところが6とか7とか8とかというレベルですと、 お客が2度来るかというと来ないのです。 もう9とかでないと2度と来ないのです。 ところが、 観光というのは非常にうれしいことに、 9とかですと、 繰り返し来てくれるのです。
  「限界効用逓減 (ていげん) の法則」 というのがあり、 リンゴを食べる時に1つ目はおいしい、 2つ目はまあまあ、 3つ目は飽きて、 4つ目はもう勘弁してくれ、 だんだん追加的な1つの商品の効用は減っていきます。
 しかし、 観光というのは良かったと思っても消えてなくなるから、 また行きたいと思うんですね。 箱根にもそういう店がある。 ある人は一泊4万円以上の湯本の旅館に一昨年の月まで過去7年間、 200回行ったそうです。
 外国の場合でいうと、 フランスのシラク大統領は日本に回来ている。 回もなぜ来たかというと日本が好きだからです。 本当に満足できるから。 観光事業というのは、 本当にお客を満足させることができれば、 非常においしい商売だといえます。
写真左:岡本教授

写真右:作古会長


山口町長―箱根観光の多様性
 岡本教授―事前期待を上回れ
  数馬助役―リピーターを上回れ



 作古 いろんな経営者が言いますが、 サービスの仕事でお客がまた来たいと思うか、 2度と来ないと思うかを知らないままお客を送り出すことが一番怖いと聞きます。 そういう意味では箱根にまた来たいと思わせるためには具体的に何をポイントにして何をすればそれができるのでしょうか。

 山口 箱根の場合、 首都圏に近いということで、 新宿から小田急線一本で来れる、 あるいは東名高速を車で1時間半くらいで到達できる、 到達のしやすさがある。 東京という大市場では非常にリピーターの多い観光地と認識しております。
 昨年の秋、 情報誌 「じゃらん」 が発表したアンケート結果がありました。 もう1度行ってみたい観光地の中で、 箱根が1位でしたがその反面、 一度は行ってみたい観光地となると9位でした。 根強い箱根ファンがいることは確かです。 その数はかなり多いと思っています。 年に何回も来ている方がいます。
 温泉やハイキング、 ドライブ、 食事など、 さまざまな楽しみ方があります。 ですから箱根のキャッチフレーズは 「なんかいいよね箱根」 ですが、 人に言わせれば何かそれじゃ焦点がボケてちょっと訴えが弱いんじゃないかという意見もあります。
 しかし、 それだけいろいろな楽しみ方ができる観光地なんです。 「温泉地・箱根」 と温泉を突出させてアピールするだけでは言い尽くせない、 たくさんの資源があり、 それぞれの観光客がそれぞれの楽しみを味わっています。
 四季を捉えても春夏秋冬それぞれに楽しみがある。 繰り返し来ていただくには、 いつ来ても新鮮さが感じられる、 何か新しい発見が、 学びがあるということが大事です。
 私も1町だけでなく、 お互いにすぐれた資源を補完し合いながら広域観光を進めていくべきだろうと思います。 例えば県西地域それぞれの資源を結びつけた中で多様な楽しみをしていただき、 その結果、 滞在日数を増やす。 外国からの観光客をお迎えするにも活用できるのでは。

 岡本 お客の要求と欲求を完璧に充足させることができれば満足してもらえる。 いろんな情報に期待してお客は来る。 事前期待と申しましょうか、 事前期待を十分に満足させるだけでは足りない。 それを上回るような 「聞きしに勝る」 というような評価がほしい。
 非常に増えているマーケットは団塊の世代です。 体験型とか学習型とか、 それも非常に大事です。 ただ、 いろいろなことを考える必要があります。 例えば、 今、 健康や美容、 美肌など 「体に良い」 ということが売れる一つのキーワードがある。 だったら、 健康に良かったり、 「きれいになれる」 「美しくなれる」 と思うような体験を提供できなかったらどうしようもないわけです。
 この世代にはものすごい数のトレッキング愛好家がいます。 箱根町が団塊の世代に対し、 トレッキングというような機会を提供できているでしょうか。 箱根町のホームページで 「トレッキング」 とパソコンで検索しても、 該当するものはありませんでした。 「体に優しいライフスタイル」 ということで 「ロハス」 「スローフード」 とキーワードを入れてもヒットしません。
 箱根ほどの資源や市場を持つ観光地であれば、 恐らく国外であれば立派なスパリゾートになっているでしょう。 安さを競ってるようではどうしようもない。 私はロマンスカーで来る前に、 箱根、 湯河原、 熱海のパンフレットを見ましたが全部1泊2日です。 食事付きです。
 健康を気をするなら、 忙しい1泊2日でたらふく食って帰ったんじゃ健康によくないわけですよ。
 箱根なんだから2泊3日連泊してもらう。 そういうふうに考えていけば、 いろんな方向性が出てくると思う。
 その場合にも、 数馬さんが言った一体感が大事です。 経済学で 「合成の誤謬 (ごびゅう)」 というものがあります。 一つ一つは一生懸命やって正しいことをやっておられる。 しかし、 全部合わせると大きな間違いとなり全体で沈む。 一体感をもって箱根町がどこに行くかを考えなければいけない。

 数馬 私はリピーターを増やすという中で 「また来たい」 という前に、 「ぜひ行きたい」 という気持ちにさせたい。 宣伝の情報の提供になるわけですが、 焦点がぼけているところを絞り込む必要があると思います。 時々、 ヒットは放つが得点に結びついてこない。 やはり大事な場面でタイムリーヒットを打たせる、 タイムリーな情報を提供していくことです。
 大変地理的に恵まれているので、 東京中心の100圏、 約3000万人の大市場があるわけです。 その人たちが箱根にリピーターで来ている。 年間観光客数1900万人のうち、 7割は首都圏のお客さまだと思います。 そういった意味では、 リピーターに非常に支えられた観光地です。
 リピーターを増やすには、 おもてなしの気持ちが大事だと思います。 まず、 「心構え」。 お客様と対等という考え方でいいのであろうかと。 福沢諭吉先生の世界ではなく、 むしろ三波春雄の世界で、 「お客様は神様です」 という気持ちが大事です。
 次に、 「連帯感」。 箱根は高低差が約700、 温度差が下と上とでは5度ぐらい違います。 各地域の持つ歴史や文化が違いますから難しさもあります。 前に提案したのですが、 地域の浴衣を作ったらどうでしょうか。 ホテルや旅館それぞれの浴衣でなく、 例えば湯本の浴衣を作り着てもらう。 それを見て土産物や飲食店、 旅館の人たちも湯本に来てくれているお客さんだという認識を持てる。
 午後6、 7時ごろになると、 店のシャッターが閉まってしまいます。 色もグレーや茶色が多い。 あそこに何か感謝の気持ちを表せないだろうか。 「ありがとうございます」 「またのお越しをお待ちしております」 など書かれていれば、 感謝の気持ちが伝わるのではないかと思っております。

 (「神静民報」2007年3月29日付紙面から抜粋)



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