キャブレター
CARBURETOR
ソレックスPHHとウェーバーDCOEは、共にスポーツ車とレース車用に開発されたキャブレターである。旧型車に対応するコンバージョンキャブレターとしても最右翼の両者は、360ccから大排気量車、さらにはチューニングの施された競技車両までその適合範囲は広い。
セッティング次第でそのエンジンの持つ潜在能力を効率よく引き出すことができ、しかも取り付けが比較的容易にもかかわらず、効率の上がる度合いが大きいという利点を持つ。
第1章 ウェーバーからソレックスへ
第2章 キャブレターの選択
第3章 キャブレターの取り付けの前に
第4章 同調とアイドリング調整
第5章 走行によるセッティング
第1章 ウェーバーからソレックスヘ
ウェーバーDCOEとソレックスPHHを比べるとき、世界的な認知度という点で見ると、当然ウェーバーのほうが高い。長年にわたるレースでの実績やコンバートされてきた適応車種の豊富さがDCOEの歴史であり、市場のほとんどが日本国内であったミクニとは比べ物にならない。
ウェーバーDCOEのルーツをたどっていくと、1930年代初頭から1950年代の終わりまで作られていたDCOタイプにたどり着く。最も古いものには1931年のマセラッティ・グランプリ車に搭載された50DCOがあり、これはツインチョークキャブとしてグランプリレースに採用された最初のものだといわれている。
当時のウェーバーは、マセラッティ、アルファロメオ、フェラーリなどと提携して積極的にレース用気化器を開発供給し、その成功は世界中の耳目を集めていた。さらに、ウェーバーはレースでの実績を足がかりにし、イタリアの自動車メーカーに対してキャブレターの納入メーカーに指定することを求める。その結果、実質的にすべてのイタリア車、つまり最小型のフィアットから最高級のフェラーリにいたるまでウェーバーキャブレターが採用されるようになるのである。
そんな中でDCOタイプは、やはりレース車や量産型でもチューン度の高いタイプに選定される、ウェーバーキャブの中ではどちらかというと少数派に属するものだった。DCOのDCとはdoppio corpoの略。これはダブルチョーク(ツインチョーク)という意味であり、Oはorizzontale、すなわちホリゾンタル(サイドドラフト)をあらわす。
1950年代の後半から1960年代にかけては、DCOタイプがCDOEへと移行していった時期である。DCOEもまた、レース車やチューン度の高い量産車向けに設定され、特に、コンバージョンキャブとしては他の追随を許さない存在となっていった。
日本においてウェーバーの名が広く知られるようになるのは、1964年の第2回に本グランプリでスカイライン2000GTがウェーバーDCOEを採用してからだろう。同年にはスカイライン2000GTの量産型S54がデビュー。当時はレース用のオプションだったウェーバーも、1965年からは標準設定となる。そして、レース用にチューニングされたS54BR型は国内のレースに数多く参加して好成績を残し、ウェーバーキャブの評価も定着していった。
このころ、ウェーバーのDCOEは54Bに設定される以外はスポーツオプションとして使われており、たとえば日産ではフェアレディやシルビア向けに、またトヨタでは、コロナ1600S用にスポーツキットとして販売されていた。ちなみに当時のウェーバーDCOEの価格は、1基3万円(日本価格)、同時期のベレットGT用SUツインキャブキット(SU+インマニ+タコ足)が5万4000円だったというから、やはり高価なものだった。
ウェーバーからソレックスへ
スカイラインが日本GPで活躍する4年前の1960年、三国商工(株)(三国工業の前身、現在(株)ミクニ)はフランスのソレックス社と技術提携を結び、ソレックス型気化器の生産をはじめる。当初はダウンドラフト型のシングルバレルからスタートし、国内のモータースポーツ志向への高まりにあわせるようにスポーツタイプのPHH型が作られ始める。
しかし、まだまだ実績のあるウェーバーDCOEのほうが人気は上、スポーツキットにしてもソレックスはウェーバーの下にランクされていたようだ。ただ、すでに性能的な差はなかったようで、ソレックスPHHが材質的にやや重くなる以外に実質的なパワーアップ度は変わらなかった。
そして、輸入品のウェーバーの何分の一かの価格で入手できることも魅力のひとつだった。たとえば1965年当時のコロナ1600S用ウェーバーキット(キャブ+インマニ+エアクリーナー)が工賃込みで約13万円だったのに比べ、キャブをソレックスPHHにすると8万円程度だったという。
1967年にはフェアレディ2000が登場し、ミクニソレックスPHHははじめて標準装備となる。続いて出たトヨタ1600GTにもPHHが設定され、その後のトヨタツインカムとは切り離せないキャブとなっていく。アフターマーケットにおいても、価格とサービス体制で有利なソレックスが主流となり、日本におけるコンバージョンキャブといえば、まずソレックスPHHが挙げられるようになったのである。
第2章 キャブレターの選択
もともとどちらかのキャブが標準設定されているクルマであれば、そのキャブをメンテナンスし、セットアップしていくことがソレックス&ウェーバーと関わっていく第一歩だ。
たとえば、ソレックス40PHHが標準ならば、まずセッティングがスタンダードかどうかを確認し、調整を見なおすことからはじめてみよう。調整がうまく取れず調子の出ないときはオーバーホールすることも必要だが、燃料の状態、タイミング調整も含めた点火系の状態、バルブクリアランス、圧縮圧力など、キャブ以外の部分に目を付けることが大切だ。
ノーマルの状態である程度調子が出たなら、自分の走り方や気候などにあわせて各ジェットサイズを少し動かし、エンジンの様子がどう変化するか試してみるのもいいと思う。また、点火系や排気形のライトチューンに合わせてベンチユリーを拡大し、ジェットをセッティングしたりするのも、スタンダードサイズの40PHHで十分間に合う。ノーマルエンジンに対して無理に44PHHや45DCOEを持ってくるのは、セッティングを困難にし、扱いにくいエンジンにしてしまうおそれがあるのだ。
シングルキャブやSUツインキャブなどのクルマにソレックスやウェーバーを換装する場合も、まずはスタンダード仕様の状態を完全なものにし、そのエンジンの特徴を覚えることが大切だ。そして、できれば最初は40φを選び、なるべく扱いやすいセッティングにもっていくほうがソレックスやウェーバーと長く付き合っていけると思う。はじめからノーマルエンジンに44や45を装着したものの、セッティングに苦しんだ結果、最後にはシングルキャブやSUに戻して、余裕を持ってその車を楽しむというところに落ち着いてしまったオーナーもいるはずだ。
良くセットされた40PHHや40DCOEは、ノーマルキャブの扱いやすさはさほど損なわずに、低中速でのレスポンスの向上と高速域での伸びを味わうことができる。これに慣れてしまい飽き足らなくなったときこそエンジン本体のチューンアップに足を踏み入れ、44PHHや45DCOEの装着を考えるべきである。
換装に使用するのに、どんな状態のキャブレターを持ってくるかということも問題である。まずは中古品だが、ほとんどの場合オーバーホールをしてからとりつけなければ調子を出せないと断言できる。また、たとえ過去にオーバーホールを受け、その後未使用であったとしても、時間がたったものは再度点検してからとりつけたい。
オーバーホールして使用する中古品はソレックス、ウェーバーともなるべくボディの程度が良く、素性のはっきりしたものを選びたい。ソレックスの場合は3型以降ならばボディの材質がアルミダイキャストなので変形が少なく、初期のものでもオーバーホールすれば完全に再生できる。特にSR311向けには44PHHの3型があればベストだと思う。ほとんどのSRに装着されていたPHH1・2型はメインボディが亜鉛ダイキャストなので柔らかい。熱による変形や摺動部の磨耗によって燃料漏れやスロットル周りのトラブルを抱えているものが多く、オーバーホールするには手間と費用がかかるのだ。新型の4型でももちろんいいのだが、3型はSRの後期に設定されていたこともあり、4型より納得できる気分になるはずだ。
中古のソレックスで注意したいのは、車種によってバイパスホールの穴径に違いがあったということだ。たとえばS20の40PHH3型では、4個あるバイパスサイズが、1.2φ、1.2φ、1.2φ、1.4φだが、同じ3型の117クーペではすべてが1.2φとなっている。バイパスホールの異なるキャブを混同して使うことは、セッティングの混乱を招く原因になるため避けなければならず、素性のわからない中古のソレックスはこのあたりを良く点検して選ぶべきである。
また44PHHでは、パイロット系統の構造にモノジェタイプ(パイロット系へ流れる燃料が一度メインジェットを通過するもの)とビジェタイプ(パイロットとメインがそれぞれ個別に燃料を吸う)があり、これらを混同して使用することはできない。加速ポンプ部を取り外すと、メインジェットの見える穴の斜め横の穴の奥に穴加工してあるのがビジェタイプ、加工されてないのがモノジェタイプだ。
一方ウェーバーDCOEでは、極東が輸入していたころのイタリア製が見つかれば、比較的新しい時代のものなので程度が良いはずだ。40DCOEならば18系、45DCOEなら9である。ウェーバーもまた、DCOEの後につくナンバーによってプロダクションホール(バイパスホール)のパターンやスロットルバルブの種類が違ってくるので注意したい。厄介なのは、フローとブリッジの破損などでアッパーカバー部分だけ交換している場合だ。たとえばメインボディは45DCOE9でも、カバーが45DCOE13になっていたとすると、このキャブをもうひとつの45DCOE13とツインで使用することはできない。スロットルバルブの種類とプログレッションホールのパターンが違うからだ。ウェーバーもまたソレックスと同様、細かな比較点検が必要なのだ。
新品のキャブレターを購入する場合、ソレックスに関してはほとんど心配ない。スロットル周りの状態を点検しておく程度だ(ねじれとバルブ密着不良がまれにある)。ただし、もともと2型がついているSR311、トヨタ2000GT、1600GTなどは、すんなりと新品へ交換することはできない。2型のスロットルレバーは、4型にとりつけることができないからだ。これはスロットルシャフトのレバー取り付けキーの角度が違うからで、レバーを改造するか、リンケージの方式を変えるしか方法はない。
ウェーバーDCOEで新品が購入できるものは、対策品と呼ばれている40DCOE151や、45DCOE156,48DCO、50DCOなどだ。また、オールドタイプの45DCOE9も、数は多くないが市場に出ている。ただ近年製造された新しいウェーバーでは、特にDCOEに限らず、加工ミスや製造ミスが昔のものに比べて目立つ。フロートレベルを調節していないものや、内蔵されるべき部品が入っていないもの、穴開け加工後のシールプラグの加工がされていないキャブもあった。しかし、どのミスも致命的なものではなく、十分リカバリーできるものだと思う。販売する側はきめ細かいフォローをおこなって欲しいと思うし、購入する側もそのようなことに対しての理解を持って欲しいと思う。大事なのはウェーバーのスポーツキャブを存続させていくことであり、市場に出た製品に関する情報のフィードバックは品質向上につながり、それがまた需要の維持にも結びつくものと思う。
第3章 キャブレター取り付けの前に
その1
ソレックスやウェーバーへの換装は、キャブレター本体以外にも様々な部品が必要になってくる。シングルキャブやSUからの換装ならば、そのクルマ専用に製作されたインテークマニホールドはどうしても必要だ。旧型車では、このインマニの設定があるかどうかが一番のネックになってくる。
L型やA形などのポピュラーなエンジンについては、現在でも新品のマニホールドが販売されているので問題ないが、需要が少なく、すでに生産が打ちきられてしまっていたり、もともと設定がないような場合はあきらめるしかない。当時設定があったが絶版になってしまったものとしては、サニー1000の36PHH用、カローラ1100の36PHH用、クラウンMS50系の36PHH用、初代シビックの36PHH用、ホンダN360、ライフ用などがある。
また、極東で販売されていたウェーバー用のインマニシリーズも中古品を探すしかない。インマニは入手できないが、それでもどうしてもという場合は、あらたに製作するしかないだろう。
インマニが調達できたら、リンケージ類などの周辺パーツが必要になってくる。普通インマニキットには、リンケージ類をはじめキャブの取り付けに必要なパーツがセットとして含まれているが、このあたりのパーツは様々なタイプのものが市販されている。その中から自分なりに選んでセットアップしていくことも可能だ。
キャブの取り付けマウントにゴムインシュレーターなどのソフトタイプを使用する場合は、同調プレートが必要になってくるし、ターンフローエンジンではヒートシールドも必要だ。燃料ポンプは、吐出量が多く圧力の安定する電磁式へ交換する。
汎用品の電磁ポンプとしてはニスモなどで出している日立製のペンディックスタイプがある。ニスモのポンプはやや燃圧が高いため、レギュレーターを介して減圧する。また、同タイプでノ−マルキャブ用の純正ポンプもあり(S20用やL28用など)、こちらのほうはそのまま使える。
ミツバ製のポンプも信頼性は高く、定番となっているポンプだ。ただ、フューエルパイプが6.5φと細い外径のため、ソレックスやウェーバーに使う8mm内径のホースを使うには。6.5φ/8φの変換パイプを使いたい。
現在クラッシックカーレースなどで盛んに使われ出しているのが、ホーリーのレース用ポンプである。吐出量が毎分4.2Lという大容量であり、これはミツバの3倍にあたる。ただし燃圧が0.6kg/cm2と高いので、専用のレギュレーターによって減圧しなければならないが、デュアルタイプのレギュレーターのため、それほど吐出量を落とさずに作動させることが可能だ。
電磁ポンプの取り付け位置は、できれば燃料タンクの近くがいい。これは多くの電磁ポンプが、引く力よりも押し出す力のほうが強いという特性を持っているからである。トランクルームがあればその中に、なければ床下のデフメンバー近くなどに取り付ける。外付けにする場合は足回りと干渉しないように慎重に場所を選び、脱落などが起きないようしっかりとした取り付け作業をおこなう。また、耐候性なども考え、できれば保護カバーを自作して取り付けたい。
電磁ポンプをタンクよりに持ってくるということは、熱対策に関しても有利だ。エンジンルーム内などに取り付けたポンプは、熱にあおられ、ベーパーロックやパーコレーションを引き起こす要因になる。ベーパーロックとは、ガソリンの沸騰した蒸気が燃料ラインに発生し、燃料の流れをせき止めてしまう現象である。これは当然キャブレターへのガソリン流入を妨げ、油面が低下して吹き上がり不良やエンストなどを引き起こす。また、高温となったガソリンがただでさえ熱にあおられているキャブに入るのだから、キャブレター内でもガソリンの沸騰が起こる。フロート室内で発生した蒸気はエアホールやジェットカバーの合わせ目などから外へ滲み出し、エアクリーナー付きの場合は、吸入空気と混ざることによって過濃混合気となる。
キャブ内部の通路にも蒸気は発生し、気泡ポンプとなって生ガスを各ポートから押し出すようになる。これがパーコレーションであり、パーコレーションは、アイドリング中やエンジン停止後など、燃料供給の少ないとき、あるいはないときに多く発生する。そして、アイドル不調からのエンストや再始動不良などの原因となるのだ。
熱害をあまり受けないような車なら、電磁ポンプの取り付けやアフターケアの面で有利なエンジンルーム内へ設置してもかまわない。旧車の中には、エンジン側の問題(冷却系の機能低下や点火時期の遅れなど)が熱害の原因になっていることも多いので、ポンプの取り付けで悩む前に、そのあたりを見なおすことも必要だと思う。
キャブ換装にあたっての熱対策としてヒートシールドがあるが、パーコレーションを起こしている車については焼け石に水的状態になっていることが多い。そのようなときに非常に効果的なのが、エキゾーストパイプに巻く遮熱テープであり、ターンフローエンジンには必要不可欠なものといってもいいくらいである。
ソレックスPHHの加速ポンプ部に取り付けるクーリングチャンネルも、熱対策パーツのひとつである。純正でもSR311やトヨタ2000GTなどに設定されていたクーリングチャンネルは、燃料ラインの途中からガソリンをバイパスさせ、クーリングチャンネルを循環させることでキャブレター内部のガソリン温度を下げるようにしているものである。しかし、キャブレターに来るまでの燃料ラインがすでに熱せられてしまっている場合には、この方法はあまり効果を発揮せず、独立したキャブ冷却系を設ける必要が出てくる。
キャブ冷却用のラジエターを別個に付け、専用のポンプで冷却水を圧送するという方法もとられるようだが、冷却水は、長い間にはクーリングチャンネルボディを腐食させるという問題が出てくる。そうなると、チャンネルの壁は薄いので穴が開き、加速ポンプ室のガソリンがリークし、新設した冷却系へあふれ出すというおそれもある。やはり、燃料ポンプをフューエルタンク近くに取り付け、燃料ラインやエキゾーストの断熱をおこなった上で、クーリングチャンネルは燃料バイパス式にするというのが適当だろう。
最後にどうしても見ておきたいのが燃料そのものの状態である。フューエルライン途中についているフューエルストレーナーの中や、はずしたノーマルキャブのフロ−ト室を点検してみよう。これらの汚れ具合によって、フューエルタンク内やフューエルライン内の状態が判断できる。赤茶けた泥サビが沈殿しているようなときは、フューエルタンクの中はサビていると思っていい。
きっちりと修理するならば、タンクとラインすべてを交換する。しかし、旧車の場合、燃料タンクが新品で入手できるものはほとんどない。その場合は、タンクを切断して大掃除をし、中のサビをブラストして落としたり、切断したタンクを見本にしてアルミなどで製作するといった方法をとることもある。ただし、これらの作業は危険を伴う。絶対に個人ではやらず、専門工場か旧車ショップに委託するようにしよう。
タンク内壁をコーティングし、サビの進行を止めてしまうシーラーも市販されている。基本的な手順さえ抑えておけば、比較的アバウトな作業をしても効果が出るようだ。
どちらにしても、ガソリンタンクの取り扱いには十分な注意がいる。特に、中のガソリンを抜いて乾燥させた状態のタンクは、最も引火しやすい状態にある。ちょっとした火種でも爆発の起こるおそれがあり、大事故につながる。したがって、燃料タンク関係のメンテナンスは、脱着から処理まですべてプロに任せることをやはり勧めたい。
フューエルラインも製廃になっているときは、銅管などで製作することができる。また、フューエルホースも様々な種類のものが市販されているので、自分の好みに合わせて選ぶことができる。ストレーナーは純正のものを交換するか、効率の良い汎用品を使ってもいい。ストレーナーの取り付け位置は、儀装の関係からタンクとポンプの間か、ポンプとキャブの間かのどちらかになる。後者にした場合は、ポンプ内のエレメントも定期的な清掃と交換をおこないたい。
その2
キャブレターを取り付ける前に、暫定的なセッティングをしておく。ノーマルエンジンであれば、車種ごとの基本データがだいたいあるので、とりあえずはそれに従ったセットにして取り付ける。暫定的なセッティングに付いては、各キャブメーカーやチューニングショップなどによって、それぞれの公式や、ノウハウがある。次にそれらを紹介しよう。
まず、キャブの口径とベンチユリーの選択は、三国工業では次のような公式をPHHのマニュアルの中に示している。
D=0.82√(C・N)、d=0.65√(C・N)
D:キャブ口径(mm)、d:ベンチユリー径、C:気筒容量(1気筒あたりcm3)、N:最高出力回転数(1000rpm)
たとえば、4気筒1600ccで、最高出力回転数が6600rpmの場合、D≒42mm、d≒33mmとなる。また、6気筒3Lのチューニングエンジンで、8000回転まで対応できるカムをいれている場合を仮定すると、D≒51mm、d≒40mmとなり、50PHH(50DCOE)にアウターベンチュリー40mmを合わせるということになる。(実際にはチューニングされているほかの要素のプラスαを見こんで42〜45mmくらいのベンチュリーを選ぶ)
ベンチュリー径を選ぶには、他にも次のような公式がある。
CV:シリンダー容量(cc)、rpm:最高出力回転数
ベンチュリー径=rpm/2600・√(CV)
これに前述の1600ccのエンジンの数字を当てはめると約32mmと出てくる。
ウェーバーでは、ベンチュリー設定の基準として、ボア径×0.7〜0.9が示されており、これはソレックスにも当てはめることができよう。
ベンチュリーサイズの選定を排気量との関係で見ると、およそ次のような関係が一般的である。
| ベンチュリー径mm | 1気筒あたり容量cc |
| 30〜 | 300〜350 |
| 32〜 | 350〜400 |
| 34〜 | 400〜450 |
| 36〜 | 450〜500 |
| 38〜 | 500〜550 |
| 40〜 | 550〜600 |
| 42〜 | 800 |
| 43〜 | 900 |
次に、低速用ジェットについて考えていこう。ソレックスではパイロットジェットといい、ウェーバーではアイドルジェットと呼ばれる低速用ジェットは、共に#50〜60くらいのものが最も多く使われる。ソレックスでは#2.5飛び、ウェーバーでは#5飛びに設定されている。ジェットの番手は燃料を吸うオリフィス径であり、ウェーバーは#10が0.1にあたり、ソレックスでは単一時間あたりの燃料流量によって加工されているので、両者は同番手であっても若干サイズが違う。
ウェーバーには、同じ#50であってもF8とかF9といったナンバーがついている。これはアイドルジェットの横に加工されているエアホール径と、ジェット自体の内径との組み合わせによって変わってくるナンバーだ。エアホール径が大きくなると燃料オリフィスにかかる負圧は下がり、同じ#50であっても燃料流量は減ってリーン化する。また、ジェット内径が小さくなると、混合気の流量が絞られるため、やはりリーン化することになる。
国産車向けのウェーバーDCOEには主にF8、F9、F11が使用されてきた。そのため、現在国内ではこの3種類以外は入手しにくい。恐らくセッティングの混乱を避けるために、極東などで設定され、それが踏襲されたものと思われる。
ソレックスのパイロットジェットには、ウェーバーのようなエアホールはなく、パイロットエアブリードというエアジェットがキャブボディ側に加工されている。ジェット径には0.8mm、1.0mm、1.2mmなどの設定があるが、ボディに直接加工されているためセッティングはできない。
ウェーバーにしろソレックスにしろ、エンジン始動前のアイドリング系ジェットは、やや薄めのものでセットしておくことが基本となる。
メインジェットはベンチュリー径に合わせてセットしておく。ウェーバーDCOEについて、VWのチューニングで有名なアメリカのCBパフォーマンスにメインジェットの暫定セットの公式がある。
ベンチュリー径34mm以下:ベンチュリー径×4
たとえば32mmのベンチュリー径ならば32×4=128となり、#130を選ぶ。(The4.0ルール)
ベンチュリー径が36mm以上になると4.2ルールに変わり、40mmのベンチュリーでは40×4.2で168≒#170を選ぶということになる。
以上のようなウェーバーのやり方は、そのままソレックスに当てはめることもできるはずだ。あとは排気量やエンジンのしようによって若干前後させておけばいいと思う。
各ジェット類のセッティングのほかにフロートレベルを必ずチェックしておきたい。ウェーバーではまず基準の寸法を測定し、レベルゲージを使って油面を測る。寸法が合っていてもフロートの作りにばらつきがあるため、それぞれのキャブで油面が前後する場合があり、このような時はゲージの油面を優先して修正する。
ソレックスでは、メインボアの中心から油面までの距離がデータとしてある。
この寸法からジェットブロック取り付け面から油面までの距離を割り出し、レベルゲージを使って調節する。なお。ソレックスではキャブタイプによって調節のやり方が違ってくる。2型や36PHHでは、ニードルバルブワッシャーの厚みを換えることでニードルバルブの高さが変化し油面が上下する。ワッシャーの厚さには0.5mm、1.0mm、1.5mmの3種類があり、これらを組み合わせて修正していくのだ。0.5mmに対し油面は約2mm変化する。
3型では、フロートチャンバーカバー面からフロート上面までの寸法を15〜16mmに調節するのが正規だ。このとき、フロートによってニードルバルブ針弁部を押さないよう、必ずフロートリップと針弁先端がタッチした位置で寸法を測るようにする。4型やS型では12〜12.5mmにとり、最終的には油面を測りながらアジャストスクリューによって修正する。
ソレックスのニードルバルブには1.5mm、1.8mm、2.0mm、2.3mm、2.5mmの口径が設定されており、ウェーバーは1.5mm、1.75mm、2.0mm、2.25mm、2.5mm、3.0mmから選べる。ニードルバルブはエンジンが必要とする燃料を十分供給できる容量のサイズを選ばなければならない。が、排気量や出力に対して大きすぎるニードルバルブは油面の変化を激しくし、ジェットのセッティングなどに混乱をきたす原因となる。
ニードルバルブの選定には、次のようなデータをおおよその目安とすればいいだろう。
| ニードルバルブ径mm | 1気筒あたり容量cc |
| 1.5 | 300ccまで |
| 2.0 | 400ccまで |
| 2.3 | 600ccまで |
| 2.5 | 600cc以上 |
第4章 同調とアイドリング調整
以下の調整方法は、車やリンケージの種類によって手順ややり方が多少違ってくるが、基本的な方法として参考にしてもらいたい。
独立式
エンジンをかける前に独立式ではまず、それぞれのターンバックルの長さを揃えておく。押しレバーのロックを1つのキャブ以外は緩め、それぞれのキャブのスロットルアジャストスクリューをスロットルレバーから離れるまで緩める。これで全部のキャブのスロットルバルブが全閉になっているので、再びスロットルアジャストスクリューを締めていき、スロットルレバーにちょうど当たるところから2回転くらい締めこむ。
この位置で最初に緩めた押しレバーのロックを締めつけておく。次にそれぞれのターンバックルの頭をつまんで左右に振り、フリクションの重さに違いがあるかどうかチェックする。違いを感じるときはターンバックルの長さを微調整して揃える。そうしてから、メインシャフトによってスロットルを開けていったとき、すべてのキャブのスロットルが同時に開き始めるかどうかをチェックする。
ズレがあるときはターンバックルの長さを再度調整する。次に、アクセルを全開にしてみる。このときキャブが全開にならないようなら、アクセルロッドやワイヤーを調整して修正しておく。
パイロットスクリュー(アイドルミクスチャースクリュー)は、軽く締めこんだところから1〜1回転半程度戻してエンジンを始動し暖機しておく。エンジン始動直後、振れが大きくてエンストしやすいときは、少しの間アクセルを踏んで暖機運転を補助したり、パイロットアジャストスクリューを同量ずつ動かして、ある程度安定した暖機運転にしてやる。
暖機後、再び1ヶ所以外の押しレバーのロックを緩める。シンクロテスターを当て、吸入空気量を揃えるようにスロットルアジャストスクリューで調整しながら、アイドル回転を1000rpmくらいに持っていく。
次に、それぞれのパイロットスクリューを調整する。1/4回転くらいずつ締めたり戻したりして、エンジン回転数が最も高くなり安定する位置を探していく。このとき、パイロットスクリューをいっぱい近くまで弛めないと回転が上昇してこないとか、また、締めこんでもやや良くはなるがほとんど変わらないときには、パイロットジェット(アイドルジェット)を1サイズ薄いものに変えてみる。逆に、弛めていっても回転がほとんど変わらないとか、弛めるほどに上昇していってしまうときには1サイズ上げてみる。
パイロットスクリューの調整によって回転が上昇した分は、スロットルアジャストスクリューを同量ずつ締めて落し、シンクロテスターで微調整する。(再度各パイロットスクリューを1/16くらいずつ微調整し、エンジン回転数の最も安定する位置にセットする)。
スロットルアジャストスクリューでアイドル回転をきめ、シンクロテスターで吸入空気量を再チェックしたら、押しレバーのロックを締め付け、始動前におこなったターンバックルの微調整を再度やっておく。また、メインシャフトを動かすことによって、エンジン回転を2000rpmまで上げ、そのときのバランスもシンクロで確認。狂っているときはターンバックル調整の見なおしとリンケージ取り付け各部のがたつきなどをチェックする。
センタージョイント式
この方式も、始動前に左右のキャブのスロットルバルブ開度を揃えることからはじめる。あらかじめ、両方のキャブのスロットルアジャストスクリュー(片方のみならばそれを)とジョイント部の同調スクリューを、スロットルレバーから離れるところまで弛めておく。また、スロットルワイヤーかターンバックルをはずし、キャブとアクセルを分離しておく。
左右のレバーを見ながら同調スクリューを締めていくと、はさみ込まれているほうのレバー(同調スクリューが付いていない)が動き出すポイントが出てくる。ここがほぼ左右のキャブのバルブ開度がそろった位置であり、ここから片側のスロットルアジャストスクリューを締めていき、レバーに当たったところから1〜2回転ほど締めこんでおく。
暖機後、聞いているほうのスロットルアジャストスクリューによってエンジン回転を約1800rpmに持っていく。次に、シンクロテスターを使い、ジョイント部の同調スクリューで左右のキャブ吸入空気量を揃える。同調スクリューはスロットルアジャストスクリューとは逆に、締めこんで基準値にする。つまり、弛めた方向(左回し)でバランスのとれるポイントが見つかったとしたら、さらに少し弛めてからバランスがとれたポイントまで締めこむ。
スロットルアジャストスクリューを弛め、1000rpm前後のアイドリングに持っていく。弛めたままにしておいた片方のキャブのスクリューを締めていき、いったん1000rpm以上に上げてから、弛めて1000rpmのアイドリングに持っていく。2〜3回空吹かしをしてからシンクロを当て、バランスの狂いがないかを再チェックする。
アイドルミクスチャースクリュー(パイロットスクリュー)を独立式と同様に調整してから、再度スロットルアジャストスクリューによってアイドリング回転をきめる。エンジンを一度止め、アクセルとキャブの連動を元に戻す。このとき、アクセルが突っ張らないように、またアクセルの遊びが多くなりすぎないように注意し、全開になるかどうかをチェックしておく。
再びエンジンを始動し、決定したアイドリング回転と狂いが出ていないか、2〜3回空吹かしをしても、同じアイドリング回転へスムーズに戻るかをチェックする。
独立式、センタージョイント式とも1つのキャブで2つのボアの吸いこみ量の違うことがあり、このような時はミクスチャースクリューの調整も決まりにくくなる。たいていは、スロットルシャフトがわずかにねじれ、左右のバルブの開き方が違っているためで、キャブ取り付け前は、たとえ新品であってもこのあたりのチェックを忘れないでおきたい。
アイドリング調整にはシンクロテスターのほかに、できればエンジン回転計とタイミングライトが欲しい。エンジン回転系はLoレンジとHiレンジの切り替えがあるタイプが良い。ミクスチャースクリューの調整による回転の変化を、より狭い範囲でつかむことができるし、回転の安定する範囲の中でリーン側へ片寄らせたりする場合にも便利だ。
また、シングルキャブなどからソレックスやウェーバーに換えた場合、バキューム進角は使わなくなることが多いため、タイミングライトを使って点火時期を再調整する必要が出てくる。点火時期はバキューム進角がなくなった分、やや進めておきたい(進角特性にもよるが、基準値よりも0〜5度の範囲で)。
第5章 走行によるセッティング
アイドリングの調整が終わったら、実際にクルマを走らせて各ジェット類などのセッティングをつめていく。
アイドリングジェット(パイロットジェット)
アイドリングからゆっくりとアクセルを踏んで走り出したとき、トルク感がないとかファンネルから吹き返しが起こるといったようなときは、アイドリングジェット(パイロットジェット)を1サイズ濃いものに変えてみる。また、アクセル開度を1/4くらいまでに抑えて走り、時々プラグの焼け方を見る。プラグがくすぶってくるようならばジェットを1サイズ薄くしてみる。アイドル系ジェットは、アイドリングからアクセル開度15%くらいまで、回転では約3000rpm以下を目安にセッティングしていく。
メインジェット
メインジェットはアクセル開度にして15%以上、回転数で3000rpm以上を目安にセットしていく。ただし、高回転域や全開付近ではエアジェットの影響が大きくなるため、あまり回転をガンガン上げないよう、ある程度抑えた走り方をする。加速感やプラグの焼けをチェックしながら、まずは暫定セットしたジェットで走行テストをおこない、次に濃い側に#10動かしてみる。最初のセットより良くなった場合は#5上下させてみて最良のサイズを選ぶ。逆に悪くなったときは、最初のジェットより下げる方向でつめていく。
低速から中速にかけてのつながりに段付きが出るようなとき、、、これは多くの原因があるが、まずその1つは基本的なキャブの口径、アウターベンチュリーが大きすぎるということ。次にアイドル(パイロット)ジェット、メインジェットの片方、もしくは両方ともが大きすぎて、両者の重なる回転域で過濃状態になっている場合と、逆にサイズが小さくて過薄な場合だ。
他にもエマルジョンチューブの選定やインナー(オギジリアリ)ベンチュリーが原因になることもあるが、それらはあまりひどい状態となっては表れない。やはり大口径、大ベンチュリーになるほどつながりの悪さは目立ってくるようで、低中速と高速を両立させるには、あるところを妥協点ときめて折り合いをつける考え方も必要となってくるだろう。
メインエアジェット
アイドルやメインジェットによって低中速のセッティングが決まったなら、急全開して最高出力回転数まで引っ張るテストをおこなうことで、メインエアジェットを選ぶ。メインエアジェットのセットは高回転を多用するため、プラグのチェックはより頻繁におこないたい。
やはりまず暫定セットで走行、このとき明らかに不調であったり、またはっきりわからなかったとしても、次に#10〜#20サイズを小さくして濃い側に片寄らせてみる。そのようにして、不調がよりはっきり体感できるポイントまで濃くしていってみる。過濃による高回転域での不調は、急激な出力の低下として回転の伸びにはっきり出てくることが多いのでわかりやすいと思う。
このポイントがわかったら、今度は#10ずつ大きくしていき、出力の落ち込みが消えるところまで薄くする。そのポイントよりさらに薄くすると回転の伸びがよりシャープになることはあるが、エンジンへの負担を考えると、多少濃い側に片寄らせておいた方が安全である。そのあたりのところは、走る条件や走り方を踏まえてきめて欲しい。
加速ポンプ系
急全開時のレスポンスやつながりが悪かったり、一瞬息つきを起こすような場合は、ポンプジェット(ポンプノズル)をセットしていく。これらの症状は、たいてい口径の大きいほうに換えていくと改善されることが多いが、大きすぎるポンプジェットは低速でカブリを引き起こすことがあるので注意したい。ポンプジェットの選定は乗車感を満足させる範囲で小さめのものを選ぶのが基本だ。
ポンプジェットサイズの変更は、加速ポンプからの燃料の吐出速度を変化させるということである。よって、大口径、大ベンチュリーのキャブなどでは、メインノズルからの噴出遅れを補正するため、より大きめのポンプジェットを選ぶことは有効となる。
ウェーバーDCOEではポンプの吐出時間を変化させるために、ポンプジェットの口径以外に、ポンプスプリングの強さを替えることでもセッティングできるようにしている。また、加速ポンプの供給する吐出量全体の増減は、ウェーバーではポンプロッドの長さで、ソレックスではポンプロッド部のピンの位置を替えることによって、共に、ポンプストロークを変化させおこなうことができる。
ウェーバーのほうには、燃料をポンプ室へ導く通路の入り口にチェックバルブがあり、これはインテークジェットと呼ばれる。このジェットはリーク穴のサイズをセッティングすることができ、吐出量の増減を調節することができる。リーク穴が大きくなればポンプ吐出時に多くの燃料がフロート室に戻るため、吐出する量は少なくなる。
たとえば、ポンプジェットが#40では小さすぎ、#45では大きすぎるというような場合に、インテークジェットを#5飛びで替えることによって、適切なセットに持っていくというやり方をする。ただし、インテークジェットのサイズ変更は吐出時間にも影響が出てくる。ジェットサイズが大きくなれば、吐出量は少なくなる代わりに吐出時間は短くなり、逆に小さくなれば吐出量は増えて吐出時間も長くなる。
以上のように、ウェーバーの加速系セッティングは多種多様に組合すことができるという反面、逆に混乱を招くというデメリットも持ち合わせている。
インナーベンチュリー(オギジリアリベンチュリー)
ソレックスのインナーベンチュリーをウェーバーではオギジリアリベンチュリーと呼ぶ。ソレックスのインナーベンチュリーはキャブサイズに関係なく、全長、スロート径とも共通である。(全長37.5mm、スロート径10.5mm)。
S型以降の40PHH用は全長43.5mmで、ノズル部が真鍮の丸パイプタイプもある。また50PHHや旧40、44の2型ではポンプノズルがなく、インナーベンチュリーのブリッジ部分に加速ポンプの吐出穴が穴開け加工されている。よって、これらのキャブに他のタイプのインナーベンチュリーを使うことはできないので注意したい。
ウェーバーDCOEのオギジリアリベンチュリーは、40用がスロート径10mmで全長37mm、45ではスロート径8mmで全長40mm、48以上では12mmのスロート径となる。他に、アルファロメオ用などにロングタイプのスロートを持つベンチュリーも設定されている。オギジリアリベンチュリーには、メインノズル部のサイズによって3.5とか4.5というような設定がある。これらのサイズは、メインノズル噴出部の断面積を円に置き換えたときの直径を表す数字であり、単位はmmである。
オギジリアリベンチュリーのノズル形が大きくなれば、それだけエンジン側からの圧力の影響を受けやすくなり、メイン燃料の噴出時期が早まる。これによって、アイドルジェットの受け持つ領域とのオーバーラップが大きくなってくると、その部分でオーバーリッチになる可能性が出てくる。あわせて、空気流速の低い低回転域では燃料の微粒化も悪いため、エンジン回転の立ち上がりに不快な不連続感をもたらす場合がある。
これとは逆に、小ノズルはエンジンからの圧力を低減する効力を持つ。それによってメイン燃料の噴出時期も大ノズルに比べて遅くなり、適切なジェットと組み合わせることにより、低速からのスムーズな立ち上がりを得ることができる。反面、高回転域ではエンジンからの圧力が弱退化するため、必要十分な濃混合気が得られない原因になることもある。
一般的に、容量の大きいエンジンに対しては、大ノズル径のベンチュリーを選定する必要があり、小排気量でテクニカルコースのジムカーナやラリーなどを走るときは、小ノズルのオギジリアリベンチュリーに小径のアウターベンチュリーを組み合わせるやり方が適しているようだ。
エアファンネル
空気の慣性によってプラスアルファの空気量を得る慣性過給と、吸気管内の脈動による圧力波のタイミングをインテークバルブの開閉に合わせる吸気脈動。これらの効果を最も出したい回転域は、吸気管の長さを変えることによってセットすることができる。各エンジン回転数においては最効率のいい吸気管長というものがあり、これは次の式によって求めることができる。
L(吸気管長m)=2550/N(希望回転数)
たとえば、7000rpmで最も効率のいい吸気管の長さとは、2550/7000で360mmとなる。吸気管長とは、キャブ長+インマニ長+スロート長となり、これらはすべて変更できないわけだから、あとの長さはエアファンネルの長さを選ぶことによっておこなうことになる。
たとえば、ウェーバーDCOE(118mm)に20mmのインシュレーター、管長100mmのインマニ、スロート長70mmと仮定すれば、360-(118+20+100+70)となり、52mmのファンネルが必要ということになる。たいていの場合、最高出力回転数のときに最も吸入効率を上げたいわけだから、ファンネルの多くは40〜70mmくらいに設定されている。
最適回転数をもう少し下に持っていきたければ、吸入管長も長くなっていくということであり、ヒルクライムのステージが多い外国のラリー車には驚くほど長いファンネルがついているというのもうなずけるだろう。
(Oldtimer レストア入門マニュアルより)