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紀州犬および柴犬を飼うことの楽しみ(041106横田俊英)

子犬は小さいが大きくなったときのことを考えて犬種を選ぶこと

 日本犬には小型犬の柴犬、中型犬の紀州犬、四国犬、甲斐犬、北海道犬などがあり、また大型犬の秋田犬がおります。小型犬の柴犬と中型犬の紀州犬の体格差は一般の人々が考える以上に大きなものがあります。小型、中型、大型の日本犬に共通して用いられている「日本犬」という言葉からどれも似たようなものであろうと考えると、その体格差からくる犬の違いがわからなくなってしまいます。体格差は大きいと考えて欲しいのです。後から、こんな積もりではなかった、失敗したと思っても遅いのです。これは日本犬に限ったことではなく、子犬の頃はどの犬種も小さいですから、その小ささに惑わされて、育った後のことを考えないことが多いものです。十分い注意したいものです。

日本犬は似たような形をしていても体の大きさが随分違う

 小型犬の柴犬に比べて、中型犬の紀州犬はずっと大きな体をしておりますし、力も強いのです。小型犬に比べれば大型犬の秋田犬はとんでもなく大きい体をしております。小型犬を飼う感覚で秋田犬を飼い始めたら、途中で気持ちを完全に切り替えなくてはなりません。それほどの体格差があると思ってください。  こうした日本犬の小型犬、中型犬、大型犬の体格差は犬の本、図鑑などで見ていてはあまり実感できないものです。どれも立耳、巻尾など似たような姿・形ですから、体格の違いが理解しにくいのです。  体格と力の強さの違いを車にたとえれば小型犬の柴犬は軽自動車、紀州犬はクラウン、秋田犬は大型トラックだと考えて良いでしょう。どれくらいの感覚でいないと間違ったと思うことになります。こうしたことを説明してもなかなか理解しにくいようですので、実際に小型犬の柴犬と中型犬の紀州犬を実際に見て比べたらよいでしょう。  紀州犬であればシェパード、ラブラドール、ゴールデンなどより二回り小さい程度という言い方ができます。オスとメスでは体格差がありますから、メスはゴールデンよりも二回りほど小さく、オスは一回り半ほど小さいという言い方もできると思います。

柴犬はオスでもメスでも飼って失敗したと思うことが少ない

 小型日本犬の柴犬の場合には人の体格と比較しますとずっと小さいので、オスでもメスでも扱いに困ることはないと思います。メスはオスよりも小さいですし、オスはメスよりも大きいのですが、柴犬の場合にはオスを選択しても成長後に一般家庭で失敗したと思うことはほとんどないようです。メスの優しさ、オスの凛々しさ、逞しさを柴犬でも十分に味わい、楽しむことができます。柴犬の場合でもオスよりもメスの方が飼いやすいと思います。車に乗せて旅行につれて行くのにもオスよりもメスの方が体が小さいのと優しいので楽です。

柴犬は軽自動車、紀州犬はクラウン以上の大きさと言える

 紀州犬の体格および力の大きさのことですが、小型犬の柴犬より少しい大きい程度と考える人が多いようですがそうではありません。ずっと大きいのです。柴犬を軽自動車とすると紀州犬はクラウン程度だということができます。人によってはそれよりも大きな差があると考えるかも知れません。紀州犬のオスとメスとの体格差は、柴犬のオスとメスとの体格差よりも遙かに大きなものがあります。この体格差は一般の人々の想像を超えるもののようです。紀州犬のオスをクラウンとすると、メスはカローラということができます。 メスをクラウンとすると、オスはセルシオよりも大きいと言えるでしょう。

「日本犬の根幹をなすのが中型日本犬」(平岩米吉氏『日本犬を飼う知恵』)

 紀州犬は大きいということを強調しましたが、柴犬の大きさの感覚で中型犬の紀州犬のことを考えて、後で違ったという思いをしてもらいたくないからです。平岩米吉氏『日本犬を飼う知恵』のなかで、「日本犬の根幹をなすのが中型日本犬です」と述べております。中型犬を飼ったことがある人はこの言葉をみな実感するようです。いかにも犬だなー、日本犬だなーと実感させるのが中型日本犬です。飼ったことがある人にそのように思わせるのが中型日本犬の紀州犬です。

元気な成人男性であれば紀州犬オスの世話は楽しい

 元気な成人男性であれば紀州犬オスの世話は楽しいものです。女性でも元気な人であれば同じです。しかし、あまり気張らずに、構えずに紀州犬を飼いたいと思うのであればメス犬を選択するのがよいと思います。メス犬は発情期に困るという先入観念が多くの人にあるようですが、現代の犬の飼い方として引き綱から離れたオス犬が寄ってくるということなど考えにくいことですし、発情期であれば犬舎に入れておけば問題はないはずです。むしろオス犬の方が隣で飼っているメス犬の発情に反応して大変である場合もあります。このことは紀州犬オス犬「コンタ」を飼っていた作家の安岡章太郎氏が、『愛犬物語』『犬を選らばば』のなかの文章で克明に述べております。オス犬でもメス犬でもそれぞれ楽しいし、大変さや苦労があるものです。しかしオスよりもメス犬が飼うのに楽であるというのが紀州犬に関しては言えます。メス犬のやさしさと飼いやすさ、オス犬の格好良さと迫力ということができます。

紀州犬はメスよりオスが人気がある(ベテラン飼育家の弁)

 中型日本犬を飼うことを始めていただくためには以上のようなことの説明がどうしてもいると考えます。構えずに飼えるのが柴犬のオスとメスおよび紀州犬のメス。そして日本犬の根幹をなすといってよいのは、たくましい中型の紀州犬オスということができます。紀州犬はメスよりオスが人気があるというのがベテラン飼育家の声です。これが全てではないと思いますが、そのように経験を述べる人がおります。

性格のよい紀州犬を繁殖させているのが現代紀州犬の世界

 また紀州犬に関しては世間の風評のようですが、「猟犬だから気が荒い」という言い方をされます。本当にそうでしょうか。そのような事実もあるかも知れませんが、それが全てではありません。わざとケンカを仕掛けるという育て方をすると、多くの場合犬はそのようになるものです。人を噛んだり、犬とケンカをすることを容認すると、犬はどんな犬でもそのように育っていきます。大きな犬は小さな犬より力が強いですし、噛む力も同じように大きいのです。大きな犬は小さな犬より力が強いということか、秋田犬などもより大きな体格の犬に育ててきたようです。闘犬が奨励された時代にはケンカに強い犬にするために体格の大きさを重要視して飼育したことが、本にも書かれております。土佐闘犬も大きな体格をしております。  実際に猟に使われている紀州犬はイノシシなどと格闘しているために、犬仲間をみてもケンカの対象と考えないことが多いようです。人に対しても同じようであることが多いようです。実猟犬は普段は犬とも張り合わないことが多いですし、気力がないと思われるような素振りをしていながら、一端イノシシのような獲物に立ち向かうと気力が満ちて豹変することが多いのです。  こうしたこともさまざまな例外がありますから、一つだけの結論を出すことはできないと思います。現代の紀州犬の繁殖家は人を噛んだり、犬を噛むことが良いと思っていないはずですし、実際にそのような犬が多くなっております。これとても個体によっては例外があることを心得ておかなくてはなりませんし、そのことは紀州犬に限らず全ての犬について言えることです。両親犬の性質は子犬に引き継がれると考えて、性格のよい気性のしっかりした犬を繁殖に用いて、紀州犬を繁殖させているのが現代の紀州犬の世界であるということができると思います。紀州犬を飼い始める前に、できることならば両親犬の性格を確認しておきたいものです。

二頭飼えば二頭分の労力がかかると思うべき

 紀州犬を飼う楽しみのことを述べたいと思います。これは柴犬を飼う楽しみにも通じることであります。紀州犬のことを述べることによって、体格の違いから発生する小型犬の柴犬の世話の手軽さがなどが解ることになると思います。ですから柴犬のことを述べているということができますし、オス犬の性格とを述べることによって、メス犬の性質を理解することにもなると思います。  紀州犬のオス犬を飼うということはどういうことか、そしてその楽しみについてお話しします。ここではオス犬一頭を飼うという条件です。もう一頭メスがいても大した違いではないだろうと考えるのは間違いです。二頭飼うということになれば、実質的な労力の二倍になると考えていいでしょう。食事の世話など一回ですみ、一緒に散歩に連れ出せば手間は一頭分と同じだという言い方をする人もおりますが、やはり二頭いれば二頭分の労力がかかると考えてもらいたいと思います。

早ければ生後6ヶ月で成犬と同等の背丈になります

 紀州犬オス犬の子犬をわが家に迎え入れます。子犬は生後40日から90日あるいは100日程度で迎え入れます。生後6ヶ月であったり、生後1年である場合もあります。性格のよい犬であれば生後1年、2年でも問題なく新しい家に馴染むものです。  生後40日から90日ごろは紀州犬は白くてコロコロしていて可愛いものです。どんな犬種の子犬も可愛いものですが、白い紀州犬の子犬はことのほか可愛いものです。子犬としてはおそらく世界一可愛いと思います。このころに迎え入れた子犬は生後6ヶ月頃までグングンと成長します。早ければ生後6ヶ月で成犬と同等の背丈になります。生後8ヶ月頃までには体高が決まりますが、なかには生後1年半ほどまで徐々に背丈が伸びる犬もおります。

紀州犬オス犬の体高標準は49cm〜55cm

 紀州犬オス犬体高標準は49cm〜55cmと決められております。メス犬は46cm〜52cmです。柴犬はオスが38cm〜41cm、メスが35cm〜38cmです。早ければ生後6ヶ月には標準体高程度に成長します。この体高に入っていることが望ましいのですが、絶対に入るということではありません。10%を超える確率でこの背丈の範囲から外れるようです。その確率を30%と見る人もおりますから、家庭犬として飼う場合には神経質にならない方がよいのではないでしょうか。日本犬標準に照らしてチェックしていくと必ずといってよいほど不満な箇所が出てくるものです。

オス犬も生後8ヶ月になると後尾して子をつくることができるようになる

 紀州犬オス犬は背丈52cmが標準であり、前後3cm以内であればそれは標準の範囲ということになっております。生後6ヶ月、あるいは8ヶ月になりますと成長の早いものは背丈が52cm程度になりますから、ずいぶん大きくなったなと思うことでしょう。一般の人がみれば成犬に見えるでしょうが、全体にあどけさは残ります。頭の大きさ、体全体の張り、その他まだまだ幼さはありますが、ちょっと見には大人です。メス犬は早いものは生後6ヶ月で発情しますし、オス犬も生後8ヶ月になると発情したメスに興味を示し、後尾して子をつくることができるようになります。柴犬もこれと同じです。

人の動きと周波数が合うのが中型日本犬の紀州犬

 格好良い紀州犬のオス犬に生後6ヶ月にもなると成長します。平岩米吉氏が『日本犬を飼う知恵』のなかで述べているように、「日本犬の根幹をなすのが中型日本犬」であることを実感すると思います。紀州犬のオスを含めてメス犬も人の体の大きさとバランスが良いですし、散歩で一緒に歩くときにも波長がよく合うように思います。人の動きと周波数が合うのが中型日本犬である紀州犬であると思います。  小型犬の柴犬はキビキビした動きをする犬であり、これはこれで格好良く素晴らしいものです。紀州犬と柴犬では体格が違いますから、体格差から発生する迫力は自ずと違うといっていいでしょう。

引き綱はしっかり握ること

 生後6ヶ月あるいは8ヶ月に達した紀州犬オス犬を散歩に連れ出しましょう。まずは十分な大きさに気持ちを引き締めることになります。勇み込んで前を歩く犬の引き綱に与える力は大きいですから、しっかりと握らなくてはなりません。指に掛けていると急に力がかかると思わぬ事故につながりますから、しっかりと握らなくてはなりません。紀州犬は飼い主が体全体で引き綱を持つような感じになります。柴犬の場合には肘の先の力で済むような感じです。こうした違いがあります。紀州犬のメス犬はオスに比べれば力はずいぶんと弱いですから、さほど身構えなくてよいでしょう。

モンロー歩きのラブとゴールデン、紀州犬は腰を振らない歩き方

 歩行のリズムは紀州犬の場合人とよく合うと思います。ゴールデンレトリバーですと腰をユラユラを揺さぶってのモンロー歩きになりますが、紀州犬は腰は振りません。四肢がスッスッと前にでます。柴犬も同じですが、紀州犬に比べれば何となくチョコチョコ歩きです。紀州犬は中型日本犬であるからこその歩き方があります。人の歩行とリズムが合うのです。大きな体は存在感も十分です。体をなでてやるとそのことを実感すると思います。走らせるとその姿は美しいものです。

1時間散歩すれば人は気分爽快になる

 仕事を終えて家に帰る。あるいは目覚めて今日一日を生きる力がみなぎってきたら、紀州犬を散歩に連れ出しましょう。散歩の合図で愛犬は喜びを示します。引き綱を付けてもらうのをもどかしがるほどに喜びます。一時間ほどのあるいは三〇分ほどの散歩で飼い主は気分爽快になることでしょう。散歩の後で体を濡れたタオルで拭いてやれば入浴の必要などないのが日本犬です。入浴するのは構いませんが、濡れタオルでこまめに被毛の汚れを落としてやれば臭いなども発生しません。

ゴールデンとの対比でいうと紀州犬オス犬でも体格的には問題なく飼える

 紀州犬のメスであっても迫力は十分です。散歩などの世話をする人に女性が混じっているのであれば、紀州犬のメスが手頃です。オスの場合には力が強いですから、女性には手強いかも知れません。しかしゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーを女性が世話している様子をみると、紀州犬オス犬は女性には無理というのは少し心配しすぎた考え方という言い方もできると思います。  柴犬の場合であればオス・メスとも体力面からは気軽に飼うことができます。シツケは別のことになりますが、性質のよい犬であればシツケで苦労することは少ないものです。

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