アヒル
(有)坂井利夫家禽家畜診療所
1・分類、歴史、品種
(1)分類
アヒルは学名Anas plathyrhynchos domesticaといい、脊椎動物亜門、鳥網、カモ目、ガンカモ科、マガモに属する。
(2)歴史
アヒルは野生のノガモ(マガモと推定される)を飼い慣らして家禽としたもので、中国大陸、ヨーロッパ、アメリカの3カ所で別々に馴化された。中国では3000年前に家禽化されている。ヨーロッパや西アジアでは、中国より遅く2000年前頃に家禽化されている。マレーシアやインドネシア等の東南アジアでは、別のマガモが家禽化されたようである。アメリカ(1800年頃)を除き、かなり古くから家禽化されて、人類と共に生活してきたようである。
日本で平安時代に飼育された形跡がある。また、大阪の河内地方では豊臣秀吉がアヒルの水田放し飼いを奨励したと伝えられている。その後江戸末期にヨーロッパで改良されたものが長崎に導入された記録がある。産業的な飼育は1877年(明治10)にアメリカよりペキンアヒルが入ったことによる。昭和初期には50万羽を超える飼養羽数となったが、その後ブロイラーの普及などにより減少した。
アヒルの名称の由来
徳川吉宗のころの「和漢三才絵図」(1713年)の記述のなかで、“あひろ”とは足が広いことからきているという記述がある。アヒルの名称は“あひろ”から来ているようである。またアシヒロから変化したという説もある。
(3)品種
アヒルは肉や卵を取るために家禽化され、その用途によって肉用種、卵用種、卵肉兼用種に大別される。世界的には多くの品種、系統が飼育されている。その主な品種を挙げてみる。
ペキンアヒル PekinDuck
中国の原産で300年以上の歴史がある品種である。19世紀にアメリカに導入後改良され、現在ではかなり多く飼養されている。全身白色羽毛で、脚は赤く、くちばしは黄色、姿勢は他種に比べて斜立している。標準体重は、雄で4.0kg、雌は3.5kgである。卵殻は白色である。卵肉兼用種であるが、肉用が主である。
青首アヒル Japanese Mallard Duck
日本在来種で雄は青い首と褐色の羽装をもち、雌は全体が茶褐色で黒点があるマガモ型の羽色を持つアヒルの総称である。成体重は雄3.7kg、雌3.4kgとかなり大型である。関東大型アヒルはこの一系統である。先祖は中国からはいったと考える人もあり、また渡り鳥のマガモが交配された可能性もいわれている。
大阪アヒル Osaka Duck
日本の在来種である青首種とペキン種を交雑して、白色羽装のアヒルが大阪で作出され、この名でよばれる。さらにアメリカ系ペキンとの交雑により今日の改良大阪種が作られた。羽毛色、嘴、脚色ともにペキン種に類似する。成体重は雄3.0kg前後である。日本で数多く飼われている。
ナキアヒルまたは合鴨
ナキアヒルは別名合鴨(アイガモ)と呼ばれ、おそらく江戸時代の頃にマガモを飼い慣らしてカモ囮に使われていたが、現在はごくわずかに飼育されるのみである。仙台鳴アヒル、下総鳴アヒルはナキアヒルに属するものと考えられる。体型は脚がやや太いほかは、マガモと同じ羽色で、雄は青首、雌は赤褐色から黄褐色の羽装である。
また、この説とは別に、アヒルとマガモの雑種や野生のマガモが飼育されてできあがった家禽の総称をアイガモと呼ぶ。近年水田に放し飼いして話題になったアイガモである。また、マガモと青首種またはマガモとカーキーキャンベル種のアヒルとの交雑した一代雑種がいわれることがある。アイガモは間鴨、相鴨、合鴨の字が用いられる。
カーキーキャンベル KhakiCambell
多産の卵用種である。羽装は雄・雌ともにカーキ色であるが、雄の首と下腹部後方が青い。成鳥の体重は雄で2.0−3.0kg、雌2.0−2.5kgである。飼育には水浴場を必要としない。卵重は75g前後で年平均300個以上の産卵をする。オランダ、イギリスで多く飼われている。
その他の品種
採卵用品種:インデアン・ランナー種(マレーシア、インドネシア)、テイゲール種(ジャワ)
肉用品種:ルーアン種(フランス)、エイルスベノ一種(イギリス)
バリケン種(Muscovy Duck)
バリケン種はムスコビーアヒルとも呼ばれ、他のアヒルと分類学上の属が異なる。南米原産の野生バリケンは羽色が黒色で、メキシコからペルー、アルゼンチンのラプラタ河にかけて広く分布している。古くから南米で家禽化されていたものが、15世紀末にヨーロッパに導入され普及した。バリケンは耐暑性が強いためもあって東南アジアで多数飼育されている。羽色は白色または黒色が多く、いずれも顔面は赤い。また、頭部に赤い隆状突起がある。鳴声は低く、ほとんど声を出さない。特殊な体香がある。アヒルの雑種ができ、ドバンと呼ばれ、この雌は不妊である。成体重は雄4.6−6.4kg、雌2.3−3.2kgである。飼育にかならずしも水浴場は必要ではない。
2・形態、生理
水上が得意な体型
アヒルの形態は首が長く、ニワトリのように肉冠、肉垂、耳采等はない。体は扁平楕円形であり、脚は短く体の後部に位置し、体型は斜立型(ペキン種、インデアンランナー種等)と水平型(大阪アヒル種、カーキーキャンベル種等)に分かれる。肢指は4本あり、前方の3指間に水かきを有し、1指は後ろに向いている。陸上では脚に負担のかかる体型であり飼育には注意が必要である。
嘴は特製
アヒルの嘴は鶉鶏目の嘴と違い幅が広く、その両側にはノコギリのようなギザギザがあり、獲物をくわえたり、草を食い切ったり、しごいたりするのに都合のよい形をしている。歯はない。
夜見える目
先祖であるリクガモ類は主に河川、湖沼、湿原に住み、静かな場所の日中では水面に浮かんで寝ることが多く、夜になってから飛び立ち、餌を探して食べる習性があり、目は夜でも見えるようである。
海水にも適応する
アヒルは、淡水の水辺ばかりでなく、海辺でも飼育ができる。これは、祖先のマガモが海上も渡る渡り鳥であったので、塩水を飲んでも鼻腺からナトリウムを排出できる機能を保持しているからである。
卵は夜産む
アヒルの産卵は、午前2時頃から始まり、ピークは午前3−4時で、夜が明ける2時間以内に終了する。まれに昼近くに産卵するものがいるが老齢の個体である。
雄はしっぽがカールしている
7−8週齢の換羽頃より性徴もはっきりしてくるようになり、羽装の外観は雄では後尾羽の3−4枚ほどが背中の方に捲き込まれてくる。性徴がより明確になるのは120−150日齢頃からで、有色アヒルでは雄の首のまわりに白い輪が現れ、羽装は雌に比べて明らかに美しくなり、雌雄の区別がよりはっきりしてくる。
ドナルドダックの声はメスの鳴声
雌の鳴き声はガアガアとやかましく、雄はギーギーまたはクエクエと、喉を押しつぶしたような発生をする。これは、気管支の部分に鳴器があって、雄ではこぶ状に発達しているのに対して、雌のは退化消失しているために起こる摩擦音であるといわれている。つまり、ドナルドダックのあの声はメスの鳴声である。
<解剖学的な体の特徴はニワトリと類似>
アヒルの解剖学的な特徴はニワトリの消化器、呼吸器、泌尿器、性殖器、骨格等おおまかには変わりがないようである。
アヒルの生理学的値
餌消費量:150−250g/日
飲水消費量:200ml以上/日
繁殖開始:6−7カ月齢(雄はやや遅れる)、発情は2一5月が盛んである。
孵化日数:27−28日間
体温:40.5−41.5℃
寿命:10年以上一20年(マガモは飼育で20年の記録あり)
3・飼い方、増やし方
(1)飼育場所
アヒルを飼育するには屋外の小屋と水浴びのできる運動場があれば理想的であるが、鳴声がうるさかったり怪我等の場合にはケージで飼育する必要もでてくる。
「飼育」
立地・小屋
飼育する場所は日当たりが良く、排水の良い場所がよい。アヒルの排泄物は水分が多いので粘土質は水が溜まりやすく、病原体の温床となるので、砂土質のところに作るか、コンクリートの床にする。夜間は小屋に収容するがイヌやネコなどの浸入を防ぐために、丈夫な構造が必要である。またアヒルの産卵は真夜中に行われるので卵の回収にも有効である。
水浴び場
アヒルには必ずしも水浴びを必要としない品種もあるが、一般には交尾は水中で行うので、自然交配させる時には水溜りが欲しい。ただしいつも清潔にしておきたい。
水入れ
水入れには絶えず清潔な水を十分与えられるようなものがよく、粉末飼料を与える場合には餌箱の近くに置く。水入れの下はスノコにして床の乾燥に努める。また、育成期のアヒルでは夜間の給水は呼吸器疾患などの原因になるので行わない(体に水をふりかける性質があり、蒸れが起きやすい)。
ケージ飼育
ケージは太い針金製のものがよく、W45×D45×H50cmくらいが適当で、ケージの床の下に糞の受け皿を置いて清潔にする。スノコは脚を傷めないような配慮が必要である。
(2)温度・湿度
アヒルは祖先がマガモであり、渡りという厳しい自然淘汰をうけているためか、温度・湿度にはかなりの適応力がある。基本的には乾燥と換気であり、夏の直射日光を遮る設備程度でよい。
(3)糞と掃除
アヒルは飲水量が多く水分含量の多い糞を勢いよく排泄する。また、足が広いことから飼料や敷料および土などを踏みつけ不潔になりがちで、常に清潔を保つためには床を勾配をつけたコンクリートにすることが便利である。
(4)餌
自然界に存在するアヒルの餌は約90%が植物性のもの(種子、いちご類、くだもの、ナッツ、球根、根、多汁の葉や草)であり、10%が動物性である。こうしたことから、成長したアヒルの飼料はニワトリの成鶏用飼料(粗蛋白質15−18%)に30−50%の野菜クズや残飯等を混合するとよい。
(5)ヒナの管理
加温
人工孵化したヒナは、人工的に育てなくてはならない。初めのうちは30℃くらいに保てる飼育箱が必要で夏期は5−7日間、冬期で10日間くらいが目安である。その後数日かけて廃温する。
餌
ヒナの餌はニワトリのヒナ用のチックフードを使うのが簡単である。以後、ニワトリの中雛用の飼料で3週齢まで飼養する。その後は成鳥アヒルと同様に給餌していく。
水について
ヒナの時期は夜間水は与えないほうがよい。また、水浴の憤らしは3週齢頃からが適当である。なお、この頃は水深があまり深いと溺れてしまうので10−15cmが適当である。
(6)繁殖
「雄雌鑑別」
雄雌鑑別は孵化してから2週間以内であれば肉眼で観別ができる。2週間を過ぎるとその後7週齢くらいまでは判別は難しくなる。7−8週齢頃からは鳴き声や、雄の尾の形態(カールする)から判別できるようになる。また、雌は首が太くなる。
ヒナの性別の見分けかた
ヒナの頭を手前にして、左右の手の人差し指と中指でヒナの両脚をはさみ、保定する。次に右人差し指と親指で、後ろ尾羽をはさみながら左人差し指、親指と共に肛門を開いて観察する。雄であれば3−5mmの白いペニスを出す。
「性成熟」
アヒルが卵を産むようになるのは150−180日齢である。繁殖に適するのは雌で6−7カ月齢頃からである。雄はやや遅れて適期になる。
「交配」
アヒルは、一般に交尾を水中で行うので、自然交配させるときには池や水溜りを設置するのがよい結果を得られる。受精率は、ニワトリよりやや低い(80%くらい)。ケージ飼育では、人工授精が必要である。
「孵化」
現在のアヒルの品種は、就巣性がほとんどないので人工孵化を行う。一般に、渡り鳥のほうが、留鳥よりも早く就巣性を失うようである。アヒルの卵は産卵してから1週間以内のものがよい。孵化に要する日数は28日くらいである。
孵化の方法
<人工孵化>
温度管理:
はじめの1週間は38℃くらいとし、第2週は39℃、第3週は40℃と次第に上げていく。また、湿度もニワトリの場合より高くし、最後の1週間には時々霧を吹いてやる。
湿度:
湿球示度で31−32度(温度38−39℃の時)。
検卵:
検卵は1週間ごとに3回行えばよい。また、アヒルの卵は無精卵が多いので第1回めの検卵で早く取り除くことが必要である。
<ニワトリに抱かせる場合>
卵の数はl0個くらいまでとする。検卵は人工孵化の場合と同じである。アヒルの卵はニワトリの卵の場合よりも湿気を多く必要とするので、孵化する1週間くらい前になったら親鳥が巣から離れたときには1日1回は卵だけでなく、巣の内面にも霧を吹いてやることが必要である。また、アヒルのヒナが生まれるときは初めに孵化したヒナと最後に孵化するヒナの時間差が大きいのでニワトリが巣から立ってしまう。これを防ぐために生まれたヒナを次々と別の箱に移して保温して、全部生まれてから仮母のニワトリに預ける。
4・病気の見分け方、治療法
アヒルは一般的には成鳥になると病気に強いが、他の鳥類にとっては重篤な病気のベクターになることがある。トリインフルエンザやニューカッスル病などである。ヒナの時期には症状の激しい疾病もある。
(1)消化器疾病
アヒルの疾病も他の鳥類と同じように、消化器症状と呼吸器症状とを同時に示すことが多い。
「ヒナ白痢」
発生:
保菌している成鳥は無症状であるが、介卵感染などにより孵化直後の幼雛が感染した場合は典型的な症状を示す。日本では家畜伝染病予防法の法定伝染病に指定されている。
原因:
Salmonella Pullorumの感染による。
症状:
幼雛に感染した場合は元気消失、白色下痢を呈して死亡する。死亡のピークは2−3週齢で以後次第に滅少する。成鳥に感染した場合は一般に無症状である。
診断:
細菌検査、剖検(遺残卵黄の吸収不全、肝の小壊死巣、心膜炎、脾の点状壊死、肺炎等)。
治療:
ニューキノロン抗生剤が有効であるが、種鳥や同居している成鳥の対策が重要である。
「サルモネラ症」
発生:
ヒナ白痢および家禽チフス以外のサルモネラによる感染症は、パラチフスと呼ばれ、日本では、Salmonella EnteritidisおよびS.Saintpaulによる発生の報告がある。
原因:
上記以外にS.Typhimurium、S.Anatum、S.Mocow等によるものが知られている。
症状:
(消化器症状などの)前駆症状はなく、群の30一40%が歩行困難を示して死亡する。慢性型は21〜50日齢に多くみられ、群の約20%が食欲不振、歩行困難、発育不良を示して、死亡する(剖検:肝および脾の小白班と軽度の脆弱化)。
診断:
細菌検査、剖検等による。
治療:
ヒナ白痢と同様。
「コクシジウム症」
発生:
通常発生は散発的であるが、時として群全体に流行することがある。
原因:
アヒルのコクシジウム症はEimeria、Wenyonella、Tyzzeriaの3種の原虫により起こる。
症状:
Tyzzeria pemiciosaの感染は、食欲滅退、体重滅少、衰弱を示し、5−6日の経過で死亡する(剖検:小腸は広範な出血がみられ、内腔は出血性またはチーズ様滲出物が認められる)。
Wenyonella philiplevineiの感染では経過が早く、出血性病変は72−96時間以内に認められる。時として感染4日で死亡する。
診断:
糞便および病変部からの原虫の確認(剖検:回腸下部粘膜の点状出血が認められる)。
治療:
サルファ剤やST剤およびペニシリンなどを投与する。
「アヒルペスト(アヒルウイルス性腸炎)」
発生:
アヒル、ガチョウ、およびハクチョウなどのAnatidae属にのみ発生する。野生アヒルなどから感染する。回復鳥は長期にわたりウイルスを保持し感染源になる。日本での発生はない。
原因:
へルペスウイルスに属するアヒル腸炎ウイルスの感染による。
症状:
食欲不振、運動失調、後弓反張等を呈し、眼を閉じて著しく渇きを訴える。末期にはうずくまり、翼や頭をたれ、水様性あるいは出血性の下痢を排泄して起立不能となる。1一3週齢の死亡率は通常50%以下であるが、時には95%になることもある。
診断:
剖検(諸臓器の出血、腹腔内の血液貯留)および組織学的検査、病原検査による。
治療:
なし。
「アヒルの寄生虫病」
回虫症と条虫症などが知られている。ニワトリに準じた対策で対応する。
(2)呼吸器疾病
「アナチペスチファ感染症(モラクセラ感染症)」
発生:
本症はアヒル、キジ、七面鳥などにみられる敗血症性疾病で、若齢のアヒルは感受性が高い。日本では1978年(昭和53)に大阪市で初発が確認され、その後埼玉県での発生が報告されている。
原因:
Riemerella anatipestifer(Moraxella anatipestifer)の感染による。
症状:
流涙、鼻汁流出、発咳、くしやみ、頭頸部のふるえ、運動失調、緑色下痢便の排泄、発育不良などである。5週齢以下のヒナは感染しやすく発症1−2日後に死亡することが多い。
診断:
細菌学的検査および剖検(気嚢炎、心膜炎および肝被膜炎がみられる)。
治療:
抗生物質やサルファ剤が使われるが、死亡率を低くおさえる程度といわれている。
「家禽コレラ」
発生:
本病の発生は季節の変わり目に多く、水禽類の感染は池や沼の病鳥からの排菌によることがある。死亡率の高い発生(70%以上)は法定伝染病に指定されているが、日本ではこれまでに、法的処置の対象になるような例はないが、種々の鳥種で多くの発生がある。
原因:
Pasteurella multocidaの特定の血清型の感染によって起こる急性出血性敗血症である。
症状:
沈鬱、発熱、食欲廃絶、羽毛屹立、下痢、呼吸速迫、チアノーゼなど。通常、2−3日の経過で死亡する。慢性型のものでは、肢や翼の関節、水かき、胸部などに腫脹がみられる。また、気管のラッセルや呼吸困難がおこり、衰弱死する。
診断:
菌分離、剖検(肝、脾の黄白色小斑点の出現と腫大、皮下織・心外膜の点状出血)等による。
治療:
合成ペニシリン等が有効と考えられるが、経過の速さや保菌鳥の出現を考えて未発症鳥に対する予防的投与に止めるべきであろう。
「クラミジア感染症」
発生:
アヒルのクラミジア感染症は、日本での発生はないが海外では激しい流行があり、注意すべき人畜共通感染症である。アヒルの発症率は10一80%で、死亡率は0−30%である。
原因:
Clamydia psittaciの感染による。
症状:
若齢の症状は激しく、食欲滅退、緑色または水様性下痢をし、ふるえ、歩行異常を示す。また頭部の羽毛が抜け、滲出物で迦皮を形成する。サルモネラと混合感染しやすく、肺炎、心膜炎等が認められ症状が悪化する。
診断:
抗原の検出または菌分離による。菌の同定は既知抗血清による蛍光染色等による。
治療:
テトラサイクリン系抗菌剤の長期間投与が有効とされている。
(3)歩行異常や神経症状を示す疾病
二足歩行する鳥類は感染症など種々の原因で正常な姿勢を維持できなくなると採食できなかったり、二次感染などにより死に至ることが多い。
「ボツリヌス症」
発生:
温度が上昇する夏期に多発する。また、発生場所の多くが水場の水深が浅く、通水不良でよどみ汚濁していることが原因とされる。
原因:
Clostridium botulinumC型菌の感染による。
症状:
元気・食欲不振、脚麻痺、リンバーネック症状(首垂れ)、翼の下垂、眼瞼麻痺、昏睡状態になる。大半の病鳥は2−3日の早い経過で死亡する。
診断:
発症鳥の材料の抽出液より毒素の確認をする。(マウスとボツリヌス毒素血清の反応)
治療:
なし。予防は環境整備。
「ブドウ球菌症」
発生:
アヒルは陸上の生活は不得意な体型をしているために脚に負担がかかり、脚に損傷を受けやすい。こうした外傷に種々の感染を受けて発生する。老齢のアヒルに多い。
原因:
Staphylococcus aureusの感染による。
症状:
関節と水かきの裏側の付け根が腫れ、歩行困難になったり、起立不能になる。
診断:
細菌学的検査。
治療:
病巣の除去。消毒、抗生剤の適用。
「アヒルウイルス性肝炎」
発生:
本病は5週齢未満のアヒルに高い死亡率を示す伝染性疾病である。1960年代に関東地方の数県で流行した。伝播は早く、発生後3−4日以内には死亡する。
原因:
アヒル肝炎ウイルス(DHV)の感染による。DHVは3種類あり、DHV一1と3はピコルナウイルス、DHV一2はアストロウイルスである。
症状:
末期症状では行動が鈍くなり、その後眼を閉じて横臥し両足でもがく動作をした後死亡する。死亡時のアヒルは後弓反張の姿勢を示すことが多い。
診断:
ウイルス分離、剖検(肝の腫大・班状出血、脾および腎の充血・腫大)。
治療:
なし。
(4)その他の疾病
「トリインフルエンザ」
アヒルはトリインフルエンザに感染しても、発症することはほとんどなく不顕性に終わる場合が多い。ただし野鴨などは本ウイルスを保持している可能性があり、アヒルと野鴨との接触や同居する他の鳥類への感染に対し十分な注意が必要である。
「ニューカッスル病」
アヒルなどの水禽類は、本病に対する感受性が低く、発病することはないといわれるが、インフルエンザと同様に他の鳥類への伝染を考慮して、ニワトリ用ワクチンの接種も考慮すべきである。
(5)アヒルの病気の発見
アヒルの病気は経過が早く、発症から死亡までの時間が短くて診断・治療のプロセスが取り難い。したがって常に飼育場所における寄生虫・細菌・カビなどの清浄化の指導がポイントとなる。また、巡回時には次の項目をチェックすると病気を発見しやすい。
@挙動の異常:隅でうずくまったり、眼を閉じていたり、口を開けて呼吸している。
A餌の消費:気温の急な上昇以外に餌の消費が少ないか、痩せてきたか。
B糞の異常:下痢、血便、緑便の有無や内部寄生虫卵の検査。
C剖検:死亡したものは必ず解剖を行い、記録をしておく。
D孵化後の早い時期から死亡がある時は同居の成鳥の検査も重要。→介卵感染症(ヒナ白痢)
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